ビジネスパーソンインタビュー
「LINEの次の“大海原”は何か…知りたくないですか?」
「日本のインターネットは、弱者に優しい」こうみく×田端信太郎が語る“日本と中国”
新R25編集部
先日、「SNSをレバレッジにして、ブランド人になるためには?」という対談イベントが行われました。
登壇したのは、LINE、ZOZOなどを渡り歩く田端信太郎さんと、中国の最新トレンドを発信するこうみくさん。
※前編の記事はこちら
今回は、このイベントの“後半”の様子をお届けします!
三井物産を経て、「中国トレンド情報局」というオンラインサロンを立ち上げた、中国出身のこうみくさん。彼女が語る「中国と日本のインターネット」論とは…?
田端さんも「こんなに解説できる人いないよ!」と舌を巻いた、有益すぎる対談の様子をお楽しみください!
【田端信太郎(たばた・しんたろう)】(写真左)株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室長。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げ、創刊後は広告営業の責任者を務める。その後ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPAN、LINEを経て、2018年3月から現職/【黄未来(こう・みく)】(写真右)1989年中国·西安市生まれ。6歳で来日。南方商人である父方、教育家系である母方より、華僑的ビジネスおよび華僑的教育の哲学を引き継ぐ。早稲田大学先進理工学部卒業後、2012年に三井物産に入社。国際貿易及び投資管理に6年半従事したのち、2018年秋より上海交通大学MBAに留学。現在は中国を本拠地として、オンラインサロン「中国トレンド情報局」も主宰
こうみくさん
私、以前は三井物産でコーヒー豆の貿易をしてたんですけど、本当にうだつの上がらないサラリーマンだったんですね。毎日つまらないな~、将来が不安だな~と。
で、めっちゃ田端さんの“信者”だったんで本を買って、読み込んだんです。そしたら「会社のことをディスれ」って書いてあったんですね。
田端さん
うん、採用面接ではその会社を褒めるんじゃなくて、課題をツッコんで、その解決方法を提案しろ!って話ね。
こうみくさん
「社畜になってるやつは終わってる」みたいなことも書いてあったんで、私は生まれ変わろうと思って、ツイッターをほんのちょっとやり始めて、ZOZOの広報職に応募したんですよ。
そしたら、一次面接で田端さんが出てきて。
「きた!」と思って、思い切りZOZOをディスったんですね。そしたら通りました。「やっぱり田端さんの言うこと正しいな」と思って。
この人すごいことを実践してるな…
こうみくさん
で、2次面接で田端さんと前澤(友作)さんが出てきたんですね。で、またディスったんですよ。そしたら通って、「あ、私イケるな」と。
最後の面接では現場の方が出てきたんで、そこでも思いっきりディスったら……
落とされました。
(会場爆笑)
田端さん
なんで前澤さんの面接通ったのに、落とされるんだよってね(笑)。
そんなこともありましたね(笑)。わたくしは心苦しく思っておりました…
(追記:こうみくさんは広報職としての応募でしたが、社長面接の結果「中国事業の担当ではどうか?」ということになり、中国事業担当の面接を受けるが、結果的に採用見送りになったとのことです)
こうみくさん
そこで、やっぱりブランド人たるものは一筋縄ではいかないと。
TPOと、自分の頭で考えないといけないなと学びました(笑)。
日本でLINEの次に“来る”ものってなに?
(ここからは来場者からの質問タイムになりました)
Q.中国のトレンドやテクノロジーを見ていて、「日本で次にこれが来るはず」というものはありますか?
こうみくさん
中国だと「ライブ配信市場」っていうのがどんどん成長している市場なんです。まさに“大海原”という感じ。
私、田端さんって「LINE」という大海原な市場でいち早く活躍したのがすごいと思っていて。私の友達は、「田端さんって、あのLINEを流行らせた人でしょ?」って言ってました(笑)。
田端さん
それはない、それはない(笑)。
こうみくさん
そこでですね、みなさん、LINEの次の大海原ってどこだか気になりません?
みなさんには、LINEの次の“大海原”がどこなのか?っていうのを、今日はこっそりお伝えしようと思っています。
田端さん
なんかすごい煽りが(笑)。最後まで聞いたら課金しなきゃいけないんじゃないの?(笑)
こうみくさん
ははは(笑)。次の大海原はどこかっていうとですね…「TikTok」なんです!
田端さん
えぇーっ?(笑)
もう十分流行ってるんじゃないの?
こうみくさん
いや、これからなんですよ。みなさん、これからですよ!
田端さん
これからなのか…? 今は山でいうと何合目まで来てるんですか?
こうみくさん
2合目だと思います。
これから“来る”と思う理由は二つあって。ひとつは「5G」。中国では、5Gのサービスが今年の11月から始まったところ。日本では来年以降ですかね。
なので、動画プラットフォームの価値がめっちゃ上がると思います。
こうみくさん
もうひとつは、TikTokは「技術」が強いこと。
たとえば、「SNOW」とか流行ったじゃないですか。あれってフィルターがかわいくて流行りましたよね。フィルターっていうアイデアがよかった。
でも、アイデアってパクれるじゃないですか。あれが他のいろいろなアプリに実装されてしまったと。
田端さん
ほーう。同じようなアプリでいうと、「Snapchat」とか?
こうみくさん
Snapchatは、「24時間以内に消える」っていうアイデアが真似されちゃいましたよね。「インスタのストーリーでいいじゃん」って。
でも、TikTokの本当の強さって技術なんですよね。
田端さん
うん。
こうみくさん
彼らはレコメンドの技術で評価されてるんですよ。TikTokって、起動したときに、検索しなくてもコンテンツが始まってるじゃないですか。
「私たちはわかっています。好きなのこれでしょ?」っていう機械学習の技術がすごくて、自信を持っているからああいうUIになってるんですよ。
日本はまだユーザーが若い人に偏っているけど、中国のように老若男女みんながやるようになると、その“レコメンド”がどんどん意味を持つようになるんです。なので、世間がTikTokの真の面白さに気づくのは、これからなんですね。
煽っただけあってめちゃくちゃ有益なお話でした…
日本のインターネットは「弱者に優しい」?
Q.中国籍のこうみくさんから見て、日本のSNSやインターネットのいいところってどんな点ですか?
こうみくさん
これは、「弱者に優しい」っていう一点に尽きると思うんですよ。
田端さん
優しい? どういうことですか?
こうみくさん
たとえばツイッターで、前澤さんが「絵買ったよ」とかってつぶやくと、「自慢ですか?」みたいなリプライがつくじゃないですか。
「プライベートジェットに乗ってサッカー見に行きました」って言うと、「貧乏人はテレビで見てろってことですか?」とか。
田端さん
はい(笑)。それの何がいいことなんだ…?
こうみくさん
日本のインターネットでは、お金がない人にもちゃんと“権利”があるんですよ。
ジェット機に乗るお金がなかったら、テレビでサッカー見るなんて当たり前じゃないですか。中国だったら、お金がないことが一番カッコわるいことなので、そのリプをすること自体が恥ずかしくて誰もしないんです。
何言ってんだ?ってなります。
田端さん
なるほど…
こうみくさん
お金がなかったら享受できるサービスが少ないのは当たり前だし、なんだったら医療にすらかかれないこともザラにある。
日本のツイッターって、「貧乏人には死ねって言ってるんですか?」みたいなの来るじゃないですか。中国だったら「…死ぬしかなくない?」みたいな。
(会場爆笑)
田端さん
ははははは!(爆笑)
燃えるなこれは(笑)。
こうみくさん
いや、日本は素晴らしいって話です(笑)。
ちゃんと弱者にも権利があって守られるべきで、お金があってもなくても平等な機会があるっていう前提でみんながいろいろな話をしているので。
どうですかね? 田端さん。
田端さん
俺はいつもクソリプが来たとき、イラッとしてるんだけど…
まあ、たしかにどんな人でもクソリプを言える自由というのは、社会の多様性に貢献してるのかもしれない。クソリプすら言えないっていうのは抑圧的だね。
きれいごとに聞こえるかもしれないけどね…
320万人フォロワーがいる堀江さんに叩かれた
Q.炎上しても、なぜ冷静に対応できるのでしょうか?
田端さん
なんか、こうみくさんは前に堀江(貴文)さんに叩かれたことがあるみたいですね。
こうみくさん
そうなんですよ。経緯を説明すると、私が日本と中国における「真似すること」の価値観の違いをブログに書いて公開してたんです。
そしたら堀江さんの「コイツ、消えてなくなればいい」っていう痛烈なツイートとともに私のブログのリンクが貼られていて…
こうみくさん
国籍でレッテルを貼ってて、「人種差別的だ」ってことらしいんですけど。
田端さん
はははは(笑)。
こうみくさん
私は当時6000人くらいのフォロワーがいて、「なんか私イケてるな~」とか思ってたら、まさかの320万人のフォロワーを引っさげたホリエモンが隕石のように落ちてきたんです…
(会場爆笑)
田端さん
ツイッターだとよく「アンチに石投げられる」っていうけど、石どころか隕石だったと(笑)。
こうみくさん
そうなんです。
でもこれってあくまでツイッターの世界の話なんですよね。何とも思わない。現実で好きな人からフラれたりするほうがよっぽど過酷ですよ。
田端さん
僕も同意見。ツイッターでも雑誌のインタビューでも、何でもそうなんですけど、メディア上に映った自分って、いわば “影” なんですよ。
影がどう見えるかっていうのは、実体と違う。よく子どものときにやった、手がキツネに見えたりカニに見えたりする「影遊び」ってあるじゃないですか。あんなイメージ。
ナイフ持ってグサグサ刺されても、「影」だからおれは痛くもかゆくもないみたいな。家に火つけられるわけじゃないですからね?
こうみくさん
まさにそうですね。逆に、みんな何を気にしてるんだろうって思いますね。
田端さん
まあ、こうみくさんはだいぶ心臓に毛が生えてると思いますけど(笑)。
「あははは!(笑)」
インフルエンサーの社会的立場が、あと半年から1年後ぐらいに上がる
Q.ツイッターのフォロワー数を増やす方法を教えてください。
こうみくさん
私、1年前まではツイッターのフォロワー数700人程度だったんですが、この1年間で3万人に増えたんです。
田端さん
というと?
こうみくさん
私はもともと、はあちゅうさんに憧れて恋愛ブログをやっていたんですけど、それがまったく鳴かず飛ばずで…
そこで「自分のタグは何なのか」を整理したんです。商社勤務、女性、アラサーとか。そのなかに「中国」がありました。
中国を解説する人はほかにもいたんですけど、“わかりやすく、日本に関連づけて”解説する人は意外といなかったんです。
田端さん
ふむふむ。
こうみくさん
隣国の中国を「知っておきたい」っていうニーズはある。だけどみんな、そこまで手間ヒマかけて勉強したいとは思っていないんですよ。自分に関係がある話題、普段の仕事でちょっと役に立つ話、話題のトレンドだけチャチャっと押さえておきたい。
そういうライトな中国を知りたい層にフォーカスした、わかりやすい情報発信を心がけました。
実は、この『TikTok 世界最強のSNSは中国から生まれる』という新刊も、「中国の今を知れば、日本の未来を知れる」部分がいちばんのコンセプトなんです。
田端さん
たしかに、これだけわかりやすく語れる人なかなかいませんよ。
こうみくさん
その戦略が当たったことでフォロワー1万人くらいまでいきました。
さらに、ちょっと横のピボット(軸足をずらすこと)して隣の畑を取りに行ったんです。私の場合でいえば、「中国×テクノロジー」や「中国×ビジネス」、そして若手サラリーマンのキャリアです。
そうして扱う幅とターゲット層を広げたことで3万人くらいまで増えていきました。
田端さん
着実ですね。さっき言ったようにメディアに映った自分は“影”だから、力も実績も何もないうちから、影を大きく見せようとばかりしても意味ないんですよね。
しかし…聞けば聞くほど、めちゃくちゃまじめで努力家ですよね(笑)。俺そんなことまで考えたことなかったなあ(笑)。
こうみくさん
田端さんレベルならキャラとかどんどん出して好きにやればいいと思うんですけど、正直、我々みたいな凡人が…(会場に向かって)あっ、すいません我々って言っちゃった(笑)。
…凡人が「ブランド人」になるためには戦略性が第一で、キャラとか個性なんていうものは後回しです。「こういうことを叫びたい」「言いたいから言う」っていうことは、一度もしたことないですね。
田端さん
俺はそれしかしてないよ(笑)。
ですよね…
こうみくさん
まあ田端さんは(笑)。
田端さん
俺の場合は言いたいことしか言ってないけど、ツイッターのいいところは、“自分のアウトプット” に対して、リプライとかいいねとかですぐにフィードバックが来るからトライアンドエラーが超早く回るんですよね。
だから使い方によっては、「アウトプットの1000本ノック」みたいになるんですよ。すごくいいですよね。
「呼吸するのと同じようにツイートしてるから、何も考えてないけどね。お茶飲むときに何も考えないのと一緒!」
こうみくさん
私は売れなかった恋愛ブロガー時代が長かったので、いまはツイートに多くの人が反応してくれたり、私のブログを「待ってました!」って言ってくれる人がいたりするのが、もううれしくてうれしくてしょうがないですね(笑)。
田端さん
なんか売れない時代が長かった地下アイドルみたいな(笑)。
こうみくさん
あはははは(笑)。もう本当、地下アイドルとしてはうれしい限りですよ(笑)。
こうみくさん
最後にまとめると、動画市場が伸びて、日本でもTikTokがさらに人気になったりすると、インフルエンサー経済っていうのがものすごく伸びてくるはず。
そうすると、インフルエンサーの社会的立場が上がるんですよ。
田端さん
うん。
こうみくさん
今だとツイッターを普段からバリバリ使ってる人って、なんか“承認欲求が強い”とか、「お前仕事しろよ」みたいな感じじゃないですか。
それが、フォロワーがいることが本当の価値になっていく流れが加速するっていうふうに感じています。近い未来、確実にインフルエンサーは強力なメディア、そしてチャネルになっていく。
日本ではあと半年か1年後ぐらいに、それを実感できるようになると思います。
貴重かつ、白熱するお話をありがとうございました!!
〈会場=la billage〉
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