ビジネスパーソンインタビュー
西野亮廣エンタメ研究所Voicyより
「単語脳」「文脈脳」を見極めないと誤解を生む。キンコン西野流“正しい言葉”の伝え方
新R25編集部
ビジネスで起こるトラブルの多くは、「コミュニケーション」に原因があります。
相手に誤解を与えて怒らせてしまったり、ニュアンスがうまく伝わってなくてモヤモヤしたり、現場にはつねに些細な火種が転がっていますよね。
コミュニケーションの根幹にある相手への「伝え方」。キングコングの西野亮廣さんは、自身のVoicyで「“伝わる”話をするためには2つのコツがある」と語っていました。
「西野亮廣エンタメ研究所Voicy」のなかから、言葉のプロである西野さんが意識している「正しい言葉の伝え方」をご紹介します。
話の上手さは「才能」ではなく「気配り」で決まる
僕は漫才師としてデビューをしましたが、今はテレビに出たり、本を書いたり、講演をしたりといろんな仕事をさせていただいています。
でも、自分が売っているものは、デビューから今まで一貫して変わりません。
僕が売っているコンテンツは「言葉」。発信する僕がいて、聞いてくれるお客さんがいる。そのお客さんに話が伝わらないと、僕はお金をいただくことができません。
そういう環境で一応今まで生き延びてきているので、言葉を使うのは得意なほうだと思っています。
今回は、そんな僕が考える「話を伝えるときに気をつけたいこと」をお話させていただきます。
まず大前提としてお伝えしておきたいのが、伝わる話ができるかどうかを決めるのは「才能」ではなく「気配り」であるということ。
逆に言うと、気配りができない人はいつまでたってもおもしろい話なんかできません。
「いかに聞いてくれている相手の気持ちを考えるか」。
極論、この一言に尽きますが、その上で具体的に意識すべきことを2つご紹介します。
話を伝えるコツ①「自分に許されたプレゼン時間を見極める」
まず1つは「自分に許されたプレゼン時間を見極める」こと。
クラウドファンディングなどのサイトをのぞくと、こんな概要欄をよく見かけます。
「僕はこんな経歴で…」「今回のプロジェクトの目的は…」「ここに込めた想いは…」「将来やりたいことは…」みたいなことが、まるで巻物みたいに長〜い文章でつづられている。
でも、相手の立場になって考えたら、知らない人の話なんか長々と聞いていられないじゃないですか。
たとえばこれが菅田将暉くんの話だったら、30分くらい余裕で聞けます(笑)。でも、知らないおっさんの話…しかも自分語りなんか、30分も耐えられないですよね。
知らないおっさんと菅田将暉くんでは、そもそも自分語りが許されている時間の長さが全然違うんですよ。
「誰もあなたに興味がない」状態から始まる場合は特に、長い話を全部受け入れてもらえると思い込んではいけないのです。
また、僕はありがたいことにプレゼンを聞かせていただく機会も多いですが、正直なところ、適切な時間を見極められていない人が多い印象です。
そういう人は、自分のことしか考えていなくて、相手の時間を奪っているという自覚がない。要は、人に優しくないんですよね。
自分に許されたプレゼン時間を見極めていないと、どんなにすばらしい内容やアイデアだろうと相手には伝わりません。
プレゼンに苦手意識がある人や、まわりになかなか熱意が伝わらない…と悩んでいる人は、今一度「プレゼン時間が適切かどうか」を見直してみましょう。
話を伝えるコツ②「相手が『単語脳』か『文脈脳』かを見極める」
世の中には、文章を単語で切り取って理解する「単語脳」と、文脈ごと理解する「文脈脳」の2タイプが存在します。
話をするときには、相手がどちらのタイプなのかをしっかり見極めましょう。これを間違えると、とんでもない誤解を生んでしまうことがあります。
たとえば、僕が先日ダウンタウンさんの番組に出させていただいたときの話です。
トーク中に、松本(人志)さんがふざけて突拍子もないボケを放り投げてきたので、僕は「アホなん?」と返したんですね。
これはもちろん、前後の文脈や、松本さんとの関係性をふまえて発した言葉。運動前のストレッチのように、場の空気やコミュニケーションを十分にほぐしてからの「アホなん?」です。
「アホ」という言葉だけ取ると失礼ですよね。でも、そういった背景があるから松本さんは怒らないし、その場に笑いも巻き起こるわけです。
ただ、もしそのやり取りを単語脳の人が聞いていると、「先輩に対して“アホ”とか言っちゃダメですよ!」みたいなことを言われてしまいます。
単語脳の人の頭の中では、それまで話してきた文脈などの「古いデータ」が、ある特定の単語という「新しいデータ」の出現によって完全に塗り替えられてしまう。
単語脳というより「書き換え脳」と呼んだほうがわかりやすいかもしれません。
逆に文脈脳の人は、話の筋道さえ通っていれば、過激な言葉が入ろうが気にしない。たとえば、堀江(貴文)さんの話をちゃんと聞ける人は文脈脳かもしれません。
だから、堀江さんが話のなかで「バカ」とか「カス」とか言ってもまったく気にならない。
文脈脳の人にとっては、そんなことよりも「話の筋が通っているかどうか」のほうが気になるからです。
これが単語脳の人なら、ホリエモンが「バカ」と言った時点で「最低!」となりますよね(笑)。
「単語脳」と「文脈脳」のどちらがいい・悪いという話ではありません。
ただ、こういったタイプの違いのせいでうまくコミュニケーションが取れない場合があるということは知っておきましょう。
相手が単語脳か文脈脳かを見極め、タイプに合わせて話を組み立てることが大切です。
相手が単語脳の人であれば、印象に残りすぎる「強い言葉」は避けた方がベター。
文脈脳の場合は、多少過激な言葉を使ってもかまいませんが、その分、話に矛盾がないかどうかを徹底的に考えましょう。
「なんでこの人には話が伝わらないんだろう?」と思う場合は、相手のタイプを見誤っている可能性が高い。
同じ内容でも、伝え方次第で180度印象が変わってしまうこともあるのです。
もったいない目に逢わないためにも、これら2つの「伝え方のコツ」を意識してみてください。
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西野さんが日々携わるエンタメビジネスの話だけではなく、「お金」や「集客」「時代」についても語ってくれる「西野亮廣エンタメ研究所」のVoicy。
1つの放送は10分程度にまとめられているので、通勤時間やお昼休みなどちょっとした時間に、西野さんの思考に触れてみてはいかがでしょう?
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〈撮影=三浦希衣子〉
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