ビジネスパーソンインタビュー
部下に「教えてあげる」なんて大きなお世話!
圧倒的キャリアを誇る勝間和代が「社会人にもなって、努力や成長なんて必要ない」と語るワケ
新R25編集部
人にはさまざまな「弱み」があります。
容姿、頭脳や、どうしても直せない悪癖…。生まれついての“人より苦手なこと”に落ち込んでいる人もいるのではないでしょうか。
しかし、そんな弱みがありながら、独自の活躍をしている人たちもいます。
新R25の8月の特集「弱みは強み」では、そんな人々に、「弱みとの付き合い方」「弱みをどうやって強みに変えたのか」を聞いていきます!
特集ラストとなる今日は…
今回お話を聞いたのは、勝間和代さん。
マッキンゼーなど錚々たる企業を渡り歩き、ビジネス書を出せばベストセラーを連発!
どう見ても“バリキャリ”の彼女ですが、ADHDを公表しており、本人いわく「集中力がない」「ミスが多い」などの「弱み」があるとのこと…。
勝間さんの、独自の仕事論を聞いてみました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
【勝間和代(かつま・かずよ)】東京都出身。23歳で公認会計士試験に合格。監査法人に勤務後、銀行、マッキンゼー、JPモルガン証券での勤務を経て独立。『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』(ディスカヴァー21)、『お金は銀行に預けるな』(光文社)などのベストセラーを多数著している
集中力が続かない…新卒時は「会議中に寝てました」
天野
勝間さんといえば「ものすごく仕事がデキる人」というイメージが強くて、“弱み”があると思ってませんでした。
勝間さん
いやいや…
たとえば今でも、週に1回はモノをなくしてます。
1年に1回はサイフもなくしますし。
それは大変
勝間さん
学生のころから集中力が続かなくて。授業中も、ノートを取る努力はするんですけど、途中でこと切れて寝ちゃうんですよ。
今でもパネルディスカッションに登壇する仕事は受けないようにしてるんです。寝ちゃうから。
天野
社会人になってからはどうだったんでしょうか?
すごく優秀なキャリアですが…
勝間さん
最初は会計事務所に勤めたんですけど、会議中とかしょっちゅう寝てました。
そんな…
天野
まわりはさぞ困惑したでしょう…
勝間さん
そうですね。かわりというわけじゃないですが、「同じ作業を繰り返すこと」ができないので、仕事をどんどん効率化していました。
「あいさつまわり」みたいに必要なさそうな業務を切っていったり、連絡も電話じゃなくすべてメールでするようにしたり。
そうすると仕事って3分の1しか残らないんですよ。3分の1減るんじゃないですよ?3分の1になるんです。
さすが、ロジカルシンキングの鬼
社会人にもなって、「努力」したって変わらない
勝間さん
でも大事な書類を何度もなくすとかミスが多すぎて、結局コンサルの部署に異動したんです。
そこで、自分はコンサルみたいにアイデアを出す“発散系”の仕事ならできるってわかったんですよ。
思索にふけることを専門用語で「マインドワンダリング」というんですけど、私のように注意力がない人は、思考力が強い場合が多いんですね。
天野
自分に合った仕事を見つけられたんですね。
勝間さん
そう。それってすごく大事なことで。
「今の仕事向いてない」なんて悩む人も多いと思うんですけど、自分が仕事に合わせるんじゃなくて、自分に合った仕事を探しにいく動きをしたほうがいいんです。
“弱み”って反対側に必ず“強み”があるから、そこに目を向けたほうがいい。
天野
「できるようになろう」と努力するよりも、頑張る場所を変えちゃうと。
勝間さん
社会人にもなって、努力したって変わらないですよ。
3歳児とか5歳児じゃないんですから。
天野
でも…僕ら会社員は、会社で「自分の苦手なことを克服して成長しろ」って言われるんです。
「成長」は必要ないってことなんでしょうか?
勝間さん
“成長の概念”の違いですよ。
すごく時間や労力を費やして、不得意なことが人並レベルになったからって、果たしてそれが「成長」なんでしょうか?
自分のなかでは成長だと思ってても、所属してる会社の人や、社会全体から見たら意味ある「成長」とは言えないんじゃないですかね。
天野
なるほど…
勝間さん
オリンピックにたとえるとわかりやすいかもしれません。
100mを9秒台や10秒台で走れたらオリンピックに出られますが、14秒で走る普通の人が、頑張ってタイムを13秒に縮めても何も起きない。
たしかに
勝間さん
私、仲のいい友人に優秀な営業マンが何人かいるんですけど、その人たちと話してて「共通点」に気付いたんです。
なんだと思います?
天野
なんだろう…優秀な人の共通点ってたくさんありそうですが…
勝間さん
正解は、「デキる営業マンは、必ずキャリアのはじめから“売れてる”」ってことです。
天野
あー! そうですね!!!
勝間さん
みんな「初年度からトップだった」って言いますよね?
下積みを耐えて、4年目5年目になってようやく売れるようになりました!って人、あんまりいないんですよ。
営業という仕事では特に顕著ですが、結局、うまくいくことって努力しなくてもできるんですよ。
人をマネジメントするときも、「成長」はいらないの?
天野
逆に、まわりに「仕事が合ってない」「努力してるのにできない」ような人がいたらどう接したらいいですかね?
たとえば、後輩が仕事に苦戦してると「なんでできないんだよ…」ってイラッとしちゃうこともあるんですよね…
勝間さん
私もそうでした。
勝間さんが上司でイラっとされたら怖いだろうな…(優秀だから)
勝間さん
私、仕事が速いんですよ。だから、仕事が遅い部下のことが理解できなかったんです。
「この人、私が30分でできる仕事が3時間たっても終わらない…なんで?」って。
天野
やっぱり怒ってたんですか?
勝間さん
管理職になった30代前半ぐらいまでは怒ってましたけど、3~4年目になって「これは人によって相当バラつきがあるものなんだ…!」と理解できた。
集中の持続力がある人にはそういう(仕事が遅い)タイプが多いんです。
天野
そういう、“人の特性”を理解するにはどうしたらいいですかね?
勝間さん
チーム組んだときに、自分の得意なこと、不得意なことを説明しあうといいですね。
実際、大阪にあるパプアニューギニア海産という会社では、社員に「好きな仕事、嫌いな仕事」をきいていて、仕事を選んでいいそうなんです。そんなふうに、得意なことを組み合わせてチームビルディングしていきたいですね。
好きな日に働くエビ工場・パプアニューギニア海産とは|武藤北斗・パプアニューギニア海産|note
[ はじめに ] 1年前に書いた働き方のまとめを短く読みやすく改訂しました。 その前にこの1年ほどを振り返って一言。 なんだか
「嫌いな作業はやってはいけない」「好きな日に出勤、欠勤(していい)」というすごい哲学の会社。こちらのnoteで詳細が解説されています
勝間さん
私は、誰かのマネジメントをするときには、部下の「いいところ探し」をしてあげるように心がけてました。
天野
“部下のここを伸ばして、成長させてあげよう”みたいなのは…
勝間さん
余計なお世話なんですよ。
自分の得意なことが不得意な人を見ると、優越感を感じて、「教えてあげる」とか言いたくなるんです。
天野
ウウッ!!!(やってる気がする)
勝間さん
お互いに疲れません? いつまでもできないことを教えたり教えられたりするの。
天野
全国のビジネスパーソンが共感すると思います…
勝間さん
私、「ストレングス・ファインダー」の講習会に行ったことがあるんです。
そこで言われたのが「弱みにフォーカスすると、人生の時間がムダになる」ということ。そうではなく、自分の強みにフォーカスする働き方をすべきなんです。
※「
ストレングス・ファインダー
」=『さあ、才能に目覚めよう』という自己啓発書でも有名な、オンライン自己診断ツール
天野
強みにフォーカスか…
勝間さん
学校では、小さいころから「弱みにフォーカス」するような教育をされるじゃないですか。通信簿に「あなたの欠点はここです」と書かれたり。
でも、どんな人でもデコボコがあって当たり前。
“デコボコを好む会社”も世の中にはたくさんありますから、今の職場で「合ってない」と感じることがあったら、外に目を向けてもいいかもしれませんよ。
R25世代に向けて「みんな言わないだけで、欠点がある人ってたくさんいるんです。苦手なことを隠さずに『できない』って言ってみたらいい。みんな優しいですよ」と語ってくれた勝間さん。
勝手にめちゃくちゃバリキャリの人だと思ってましたが、自らの内面に向き合い、真摯に「強みにフォーカス」することを続けてきたからこその圧倒的なキャリアなのだなと思わされました。
そして、後輩に「弱い部分を成長させてあげよう」なんて大きなお世話を焼くことは金輪際やめようと思います…。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=福田啄也(@fkd1111)〉
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