ビジネスパーソンインタビュー
小巻亜矢著『逆境に克つ!』より
「今の仕事に不安があるなら、103%だけ頑張って」サンリオピューロランド館長が伝えたい“働く意味”
新R25編集部
サンリオキャラクターのテーマパーク「サンリオピューロランド」が、2018年度に過去最高の来場者数を更新。
平日の来場者数は2014年度にくらべて4倍以上の成長を遂げています。
この成長の立役者となったのが、2014年にサンリオピューロランドに赴任し、2016年にサンリオピューロランドの館長に就任した小巻亜矢さん。
株式会社サンリオで社内ベンチャーを立ち上げていた小巻さんは、低迷状態だったサンリオピューロランドをみて、「底知れない可能性を秘めている」と見抜き、みごとに復活に導きました。
小巻さんの新著『逆境に克つ!』には、当時どんなことをおこなったのか、小巻さんはどんな思考で仕事に取り組んでいるのか、ということを25の質問から引き出しています。
そのなかで、「若手ビジネスマンが抱えてやすい悩み」「新たにリーダーになった人が持つ不安」についての小巻さんの回答を2記事からお届けします。
Q1. 自分自身に持っているイメージを変えることはできますか?
できます。
私はサンリオピューロランドに赴任してから、さまざまな課題に対して自分なりの解決方法を考え、実施しようとしたことが数回ありました。
新しいことを始める時には、社内で慎重な意見が出るのは当然です。
会議で、そういった新たな施策について賛同してもらうためには、それによってどんなメリットが得られるのかを、数字で示した方がいいとアドバイスを受けました。確かにメリットを感情論で語るより、数値化して示せたほうが納得しやすいですし、説得力があります。
でも、私には困ったことがありました。私は数値化というものが苦手なのです。
それまで、「数値化は面倒」とも思っていましたし、自分は数字アレルギーだと 思っていました。
けれど、サンリオピューロランドで、多くの男性幹部と仕事を進める上で、数値化はとても大切なコミュニケーションスキルでした。
お客様満足度、従業員の離職率、お客様からのクレーム数の増減など、数字で見ることで喫緊な課題も浮き彫りになります。
「数字は苦手」と決めつけていただけで、数値化の効果がわかれば、苦手どころか、自分にとって必要であり、便利な方法だとよくわかってきました。
ただ、もっと難しい数字が、私を待ち受けていました。
財務諸表です。
実は、それまでの仕事では、研修のプログラムを作ったり講師をしたり、イベントやプロジェクトの企画立案のような業務が多かったため、きちんと財務諸表を見て読み解くということをしてきませんでした。
赴任当時は、経営会議に出ても、当初は数字がすぐに頭に入ってこない状態でした。
勉強するとは、メガネをかけること
数字で表したほうがいい、と言われても、「数字アレルギーなので、できません」 とは言えないですし、課題を改善するためにも、諦めるわけにはいきませんでした。
そのため、まず基本となる簿記を勉強することにしました。普段は勉強をするなら通学派ですが、この時期学校に通うのは時間的に難しそうだったので、通信教育を選びました。
簿記の知識がわかると、とりあえず数字に興味が湧きました。
見えなかった物が見えるようになる。メガネをかけるようなもの。
その新しいメガネをかけた自分は、見えるものも変わりましたが、鏡に映る自分も、他の人の目から見ても、それまでのイメージとは違う、新しい自分です。
A.自分で思い込んでいるイメージは、必要に応じて変えていくことができるのです。
Q2. 今の仕事がまったく面白くありません
常に仕事が面白くてやる気に満ちて毎日が充実しています、という人の方が少な いのではないか、と思います。
誰にでも、「仕事いやだな、つらいな」と思う時期、あると思うのです。
私は仕事が大好きですが、時期で区切ってみると、つらいと思う時も結構ありました。
でも、そもそも仕事をさせてもらえることは「ありがたい」 と心底思っているので、やめたい、と思ったことはありません。
今、どうしてその仕事をしているのでしょうか。
稼ぐためでしょうか、生きていくためでしょうか。
もしもそうなら、仕事をしたくないから稼がない、仕事をしたくないから生きていかないという選択はできないはずなので、どんなにその仕事が面白くなくても、やらなくてはならないと思います。
その仕事をする理由が、夢に近づくためとか、なりたい自分になるためであっても、「今やっていることは面白くない」と感じることもあると思います。
人間には、体調もあれば、その時の人間関係の影響もありますし、同じ仕事でも 面白く感じる時、退屈な時、無意味に思える時、いろいろあります。
一つのアドバイスとしては、悩んでいるときは、やめない方がいい、と言いたいと思います。
「もう絶対に無理」というタイミングを超えて我慢する必要はないとも思います。
きっと、身体に拒否反応が何らか出ると思います、そのタイミングもまた、人それぞれいろいろありますから、耐性の強い人、弱い人、いろいろいます。
ですから、一概に「3年は我慢してやってみましょう」とも言えません。でも「絶対無理!」と思うまでは、少し頑張ってみたらどうか、と思います。
そうすると、 面白み、達成感、自分の成長などを感じるようになるかもしれません。
ぜひ、仕事の面白さ、やりがい、何の役に立っているか、などを探すような気持ちで挑戦してもらいたいです。
この仕事の面白くないところ、いやなところばかりを考えていると、ますますそういうポイントを探し当てることにフォーカスしてしまい、マイナスのスパイラルに陥ってしまうからです。
100%面白みや楽しさを感じないままずっと続けるのは辛いものです。
私も、結婚と育児のためにしばらく仕事から離れていて、そして、社会に戻ってきたときにはある戸惑いがありました。
一番戸惑ったのは、自分の扱われ方です。これを告白するのは少し恥ずかしいのですが、同様の経験をしている方も多いと思うので、正直に書きます。
私は大学を卒業後、新卒でサンリオに入社しました。新人であることで、私は周りにいわゆる「ちやほや」大切にされていました。
飲み会に出ても、大抵は、主役のような立ち位置でした。女子大生ブーム、そんな時代背景もあったと思います。
その記憶を持ったまま、昔を引きずったまま、 歳が近くなって再び社会に出てみるとそうした「大切にされている」という感覚を抱くことができないどころか、突き放されているなと感じました。
こちらが本当の世間で、世間とは厳しい、優しくないんだと思い知らされました。自分が「なんぼのものか」思い知らされました。
なので、当初は仕事を面白いとは感じられませんでしたが、でも、そのときの私は、長いブランクを乗り越えて、仕事をして経済的に自立したいという夢があって、そのためには、今目の前にある仕事をしなければならなかったし、それがその時の私のしたいことでした。
なので「私は、世間から優しくされたいわけじゃないよね」と自分に言い聞かせました。「だったら、甘えるな」とも。
その経験は、とてもありがたい経験でした。仕事の本質は、甘やかされることではなく、自分の目指す方向に向かって、何かを乗り越えながら成長すること、という信念が育まれました。
乗り越えることで自信が生まれる
そこを乗り越えてもなお、仕事の中身をじっと見つめ直してみたときに「どうしてこれをやらなくてはいけないんだろう」「こんな仕事をするために私は生まれてきたのだろうか」と思ってしまうことがあると思います。
こうした疑念は、将来への不安と葛藤も生みます。
今、かつての私のような人に言えることがあるとすれば「そこで103%だけ、頑張って」ということです。
任された仕事に100%の成果で応えるだけでなく、相手の期待値を少し超えるのです。
絶対にふてくされずに、お客様に今日のうちに御礼のメールを書くのでもいいし、報告書を提出するときにメッセージを添えた付箋をつけるとか、本当に、小さな努力でいいのです。
その3%の努力を続けていると、二つの効果が得られます。
まず、自分に自信がつきます。面白くないと思っていた仕事を工夫しながら乗り越えようとしている自分は、やがて自信につながります。
そして、その3%の努力を、見ていてくれる人は必ずいます。それが誰なのかは、努力の真っ只中にいるときにはわからないと思いますが、でも、います。
世間は甘くはありませんが、でも、味方になってくれる人もいるのです。
ですから「なんでこんな仕事を」という憤りのエネルギーを、なんとか頑張るエネルギーに変えてみて下さい。
そうすることが、自分自身にも会社にも、そして世の中にも、プラスになります。
A. 本当にやりたいことを見失わず、少しの努力を続けていれば、自信が生まれ、味方もできます。今やっていること、ではなく、仕事をしている自分、を好きになって下さい。
サンリオピューロランドの復活秘話を知ろう
『逆境に克つ! - サンリオピューロランドを復活させた25の思考』「逆境だけが人を強くする。教訓を学んだときに苦痛は消え失せる」
これは私の大好きな『人生は廻る輪のように』(エリザベス・キューブラー・ロス/角川書店)という本の冒頭にある言葉です。
逆境に立たされたサンリオピューロランドを救った、小巻さんの根底にある哲学です。
今回はビジネスマンの悩みについてを抜粋しましたが、書籍のなかでは「いかにしてサンリオピューロランドは復活したのか」ということが書かれているので、興味のある方は手に取ってみてください。
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