ビジネスパーソンインタビュー
就活で使える“面接のコツ”も教えてもらえました
「軸を動かさないとダメ」年収240万→1000万のmotoさんが語る“年収を上げる転職”
新R25編集部
「終身雇用を守ることは、もう難しい」
先日、トヨタ自動車の社長、豊田章男さんの発言が話題となりました。日本のトップ企業がこう言ったことで、名実ともに終身雇用の考え方は終焉を迎えようとしています。
とすれば、これからの時代のサラリーマンにとって、「転職」は他人事ではない。…ちゃんとステップアップできる転職をするには、どうすればいいの!?
そんな疑問を持ちつつ、出会ったのがこのお面の男「motoさん」。転職サイトや転職エージェントを活用し、32歳で現在5社目。ホームセンター、リクルート、楽天などを渡り歩き、現在年収は1000万円超だとか。
前編のインタビューは「副業」をテーマにお話を聞き、大いに話題化。
後編では、「転職」について教えていただきました!
〈聞き手=半蔵門太郎〉
【motoさん】32歳5社目のジョブホッパー。地方の短大を卒業後、新卒で地方中小企業(ホームセンター)へ入社し、人材広告会社→リクルート→スタートアップ(買収されて楽天)→ベンチャーというキャリアを歩む。現在年収1000万円超のサラリーマン。同時に「転職アンテナ」というブログを運営中
半蔵
お話を聞くのを楽しみにしていました!
まさか同じ長野県出身、しかも地元の高校の先輩だったとは…
motoさん
驚きました(笑)。よろしくお願いします!
※取材前に偶然発覚しました
半蔵
motoさんは、計5社に転職して年収を上げつづけている経験をブログ「転職アンテナ」につづっています。
「年収を上げる転職」のノウハウは、再現性のあるものなのでしょうか?
一般化することは難しいのかな、とも思ってしまいます。
motoさん
そんなことないですよ!
自分の「軸」を見極めることができれば、年収を上げる転職は実現できます。少なくとも僕は実現してきました。
半蔵
自分の軸…
【転職のコツ➀】コアスキルを活かして、「軸をズラす」
半蔵
軸というのは、「今まで自分は出版の仕事をやってきたから、より給料がよさそうな出版社に行こう」というイメージですか?
motoさん
いや、そうじゃないんです。それだと「軸」を動かしてない。
年収を上げる転職は、「業界の軸をズラす」のがコツです。
よく「転職しても年収は上がらないよ」って言う人が多いんですけど、それは同じような会社に転職しているからなんですね。同業界にスライドするだけでは年収を上げるのは難しいです。
半蔵
同じ業界で転職する人は多いですよね。
motoさん
軸をズラす転職は「今までできなかったことをやれる人」を求めている「平均年収の高い業界」へ行くのがポイントなんです。
たとえば、金融業界に勤めている人が、ファイナンスまわりの知識を求めている急成長ベンチャーに役職をつけて転職する。AIを専門とするエンジニア系企業に、営業の第1号として転職する。メーカーでの営業経験や知識を活かして、平均年収の高い商社に営業として転職するとか…
自分の持っている知識やコアスキルがありがたがられるような、「今までのキャリアから業界の軸をずらした転職」ができるといいですね。
さっそくの納得感
半蔵
でも…同じような業界に転職してしまうのって、まったく新しい業界に行く不安があるからだと思うんですよね。
そういった不安は解消できるんでしょうか?
motoさん
「ちがう業界に行って勝手がわからなくなるのが不安」というのはわかります。
でも、実際には逆です。「できなかったことをやってくれる人」を求めている会社に行くので、自分の業界ではできて当たり前だったことでも、価値になるんです。
不安どころか、すぐに“必要な人材”になれますよ。
半蔵
なるほど…
「軸をズラす転職」は、どんなタイミングで決断するものなんでしょうか?
motoさん
僕は「自分のコアスキルを、人に教えられる状態になること」を1つのものさしにしてます。自分の感覚的なものを言語化し、人に教えられるようになって初めて、「スキル」と呼べる。
会社のメンバーに仕事を教えて、再現できるようになったら、メンバーに自分が追い越されないためにも、「次に自分がバリューを身につけられる場所」を探しにいきます。
R25世代の若者であれば、まずは今いる職場で頑張って、コアスキルを身につけることが必要ですね。
【転職のコツ➁】採用面接をフィードバックの場所にして、自分の強みを知る
半蔵
motoさんは数々の面接を突破してきていると思うんですが、具体的な面接のコツとかがあれば教えてほしいです!
motoさん
僕が実践しているのは、面接官に“自分の印象”を直接聞くことですね。
面接中でもいいです。「面接してみて、実際どうでした?」みたいな。
半蔵
うわー、なかなか聞けない気がする…
それは、何がいいんでしょうか?
motoさん
まず、自分のバリューに気付けること。自分の持ってるものって、意外と自分では気付かないんです。
「面接でお話されていた~~がすごく弊社にほしいスキルなんですよ」とか言われると、自分では当たり前だと思っていたことに、意外と価値があることに気付く。不採用でも、それ以降の転職活動に活かせます。
半蔵
たしかに。
motoさん
もうひとつは、ムダに落ち込まなくて済むこと。
「面接ではあんなにいい雰囲気だったのに何で落とされたんだ…!?」って悩むことよくあるじゃないですか(笑)。
でも、その場で「どうでした?」って聞いておけば、「○○はすごくよかったです。でも、ウチの会社の年齢構成的に、今若い人を採るべきかっていう判断になると思いますね~」とか、意外と内情を教えてくれるんですよ。
半蔵
不採用の理由がわかるから、落ち込まない…!
motoさん
転職はスキルやスペックだけでなく、タイミングや相性もあるので、ダメだったことを落ち込むより、良いところを次に活かすほうが生産的ですしね。
【転職のコツ➂】公開されてる情報を読み込み、会社が求めてるものを想像する
ところどころ疲れてお面を外すmotoさん
motoさん
あと、内定を獲得するコツとしては、シンプルですが「その会社が求めてるところに“刺す”」。
転職活動でやってしまいがちなのは、自分を良くみせようと思って、自分が一番活躍したところだけアピールしてしまうこと。
たとえば、今の会社でテレアポ実績が表彰されていても、転職先の企業が飛び込み営業だったら、どんなにテレアポで表彰されたことをアピールしても、刺さらないですよね。
半蔵
独りよがりな「見せ方」にならないようにするってことか…
でも、会社がどういう人を求めてるかという情報を、どのように手に入れるんでしょうか?
motoさん
これ、意外とみんなやらないんですが、転職したら自分がやる仕事を、映像で想像できるくらいまで情報を集めるんです。
僕がよくやってたのは、中途採用に応募してるんだけど、新卒採用のページを見ること。
社員さんのSNSや、IR情報も見ます。もし可能であれば、営業資料も人事の人にもらったり。
半蔵
中途採用なのに…?
motoさん
新卒のサイトってすごくわかりやすく書いてあるので、社会人経験のある人が読むと、よりリアルにわかるんですよ。
いろいろな角度から会社を眺めるだけで、何が求められているかの“解像度”が上がるはず。
この手法は中途だけでなく新卒でも使えるので、就活中に中途採用の募集ページを見るのもおすすめします。
これはたしかにみんなやってない…!
motoさんのキャリアが特殊すぎる件
半蔵
ちなみに…motoさんのキャリアについても聞かせていただきたいんですが、話によると、高校卒業後は短大に進学されていますよね。四年制大学に進学する学生が多いなか、なぜ短大に?
motoさん
当時、まわりにいた大学生を見ていたんですけど、結構ヒマそうだったんですよね(笑)。
いわゆる「普通の大学生」なんですけど、大学で時間を潰すくらいなら、2年間で学ぶべきことを学んで人よりも早く社会に出たいと思うようになったんです。
半蔵
四年制大学を休学してフラフラしている僕としては、耳が痛いです…
motoさん
親からは「大学からは一切支援しない」と言われていたので、奨学金を借りないといけない事情もありました。
すでにせどりなどでお金を稼いでいたので、社会人になって“多額の借金”を背負ったスタートを切るより、早く社会に出て、2年後に大卒より高い給料をもらった方が生涯年収が上がるんじゃないかと思ったんです。
半蔵
高校生の時点でそんなことを考えてたんですね…
短大に2年通って、新卒で「ホームセンター」に就職したというのも気になります。失礼な言い方ですが、やはり、地方の短大から大手企業への就職は難しかったんでしょうか?
motoさん
一応、○○(ECサイトを運営する超大手企業)や、○○(誰もが名前を知るインターネット企業)からも内定をいただいていました。
半蔵
え…!? コネですか?
motoさん
違います(笑)。
半蔵
じゃあどうやってそんなところから内定を?
motoさん
そもそも大卒しか採用していなかったので、僕から人事の人に直接連絡したんです。
たいていは取り次いでもらえなかったり「採用ページから応募してください」と言われたりしてしまうので、社長や人事の人に手紙を送って「実は、どうしても入りたくて社長に手紙を送らせていただいたんですけど」と、なんとかつないでもらうように工夫したり(笑)。
徐々に「高卒扱いでもよければ…」みたいに、話を聞いてくれる人が増えてきたんです。
半蔵
もうその時点で一般的な就活と全然ちがう…!
motoさん
まわりの就活生からも「え、短大卒?」とイヤミを言われて、悔しくなって(笑)。自分の選択を間違いにしたくなかったですし…
それで、必死に自分をアピールする資料をつくったり、社長や人事に手紙を書いたりしてました。
実際につながったときには「僕が入社した場合にできる、御社の改善案」みたいなプレゼンをしてました。
僕の実家は、いまでもソフトバンクの電波が入らないほどド田舎なんですけど、「ECサイトは、買い物が不便な田舎の人にこそニーズがある。もっとサイトを軽くして、地方のインフラ整備までビジネスとしてやるべき」みたいな壮大なことを言ってました。今は怖くてできないですけど(笑)。
半蔵
なのになぜ、大手企業に入社しなかったんですか…?
motoさん
内定はもらったものの、「30代で1000万円稼ぎたい!」と思っていたので、たぶん難しいという現実に気付いてしまったんです。
短大卒というハンデがある僕が、優秀な大卒の人たちにまじって、評価されるのか不安だった。
だったら、評価してもらいやすい環境に行って、転職でのし上がって30歳で1000万円稼ぐようになろうと思ったんです。環境も慣れているところがいいだろう、と地元で働くことにして、イケてないけど自分の裁量で自由に働かせてもらえそうなホームセンターに就職しました。
半蔵
なるほど…
正直自分も、まわりの友だちも「東京で大手企業に入る」ことがゴールというキャリア観を持ってる人ばかりなので、考えさせられます…
転職のキモは「今の仕事を頑張る」「自分のコアスキルを認識する」
半蔵
ここまでmotoさんの「転職テクニック」を聞いてきましたが、転職を考えているR25世代に向けて、オススメの「業界」はどこかあるのか、教えてください!
motoさん
基本的には「利益率が高い業界」や「今後儲かりそうな会社」がおすすめです。あとは「レガシーな領域」もいいですね。今まさに変わろうとしている金融業界のフィンテックとか。
ただ、繰り返し言っておきたいのは、自分にどんなスキルがあり、どんな貢献ができるかを認識しなければ、「年収を上げる転職」の実現はありえないということ。
自分のバリューを認識できない人ほど、同職種の転職を繰り返して、また職場のグチを言っているという、負の転職サイクルに陥ってしまいます。
半蔵
僕自身、転職は同業種のなかでするものだと思っていましたが、自分のコアスキルを知ることで、どんな業界にも行ける可能性があるんだなぁと、すこし未来が明るくなりました。
motoさん
前編では副業のキモとして「本業で得た知見を資産化すること」を挙げましたが、転職のキモは「本業で得たコアスキルを認識すること」と言えると思います。
どちらにせよ、本業でちゃんと頑張ることで、「転職」という次の一歩が見えてくると思います。同じアドバイスになってしまいますが、R25世代はとにかく本業をやりきってほしいですね。
「転職、副業を専門としたアフィリエイター」と聞いて、どこか言葉だけ上滑りしたインタビューにならないかと不安だったのですが、めちゃめちゃ骨太で内容のあるものとなりました。motoさん、変な先入観を持っていてすみません。
「本業をやりきることで、初めて横展開できる」
繰り返し語られたこの言葉から、仕事人としてのあるべき姿を学びました。
終身雇用制度が終わりを告げ、誰も守ってくれなくなるこれからの時代。僕も、自分の「コアスキル」と「バリュー」を見つけられるよう、日々経験、失敗していこうと思いました…!
〈取材・文=半蔵門太郎(@hanzomontaro)/編集=天野俊吉(@amanop)〉
“軸ずらし転職”を実現したい人におすすめなサービス
motoさんによると、自分が持っているスキルが重宝される、別の業界へ行くのが年収の上がる転職の秘訣、とのこと。
とはいっても、当てはまる場所を探すのは意外に難しいはず。
そんな方には、さまざまな業界を知り尽くしたアドバイザーが無料でキャリア相談にのってくれる「転職エージェント」への登録がおすすめです。
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