ビジネスパーソンインタビュー
仕事が終わらない原因は、「手戻りや抜け漏れ」にある
仕事が3倍速く終わる!? 難しそうな"コンサルの思考法"使えるとこだけ簡単に教えて!
新R25編集部
「コンサル」という仕事にずっと憧れがあるんですよね~。なんかロジカルで頭良さそうだし、あと給料も高そうでモテそう。
まあそれは半分冗談だとしても、コンサルの人たちが普段考えている、いわゆる「コンサルの思考法=ロジカルシンキング」を学んだら、仕事が格段に速くなるんじゃないかと思うんです。
いろいろな本も出てますが、ここは「ラクに、かつ使えるところだけ」教えてほしい!
ということで、現役コンサルタントとして活躍し、人気ブログ「NAEの仕事効率化ノート」も手がけるNAEさんに話を聞きました。
〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉
【NAE】1980年代生まれ。早稲田大学・東京大学大学院で情報工学を学んだのち、外資系コンサルティング企業に入社。ITを軸とした戦略策定と企業変革に従事し、現在管理職を務める。ブログ「NAEの仕事効率化ノート」も人気
天野
NAEさん、今日はコンサルの思考法を、一般R25世代に教えてください!
そもそもそういうのは、入社後の研修とかで叩き込まれるんですか?
NAEさん
いや、僕もそういう研修があるのかと思ってたんですが、実はあんまりちゃんと教わらないんですよ。
「自分で本読んで覚えてこい」って言われました(笑)。
天野
え、じゃあ独学なんですか。
NAEさん
そうです。ただ、その後に仕事を通して、先輩コンサルからみっちりとした“レビュー”を受けるんです。「お前の案、ここがMECE(ミーシー)になってないけど、どうなってんの?」とか。
コンサルタントは実践を通じて学んでいくものですし、足りていない知識や情報、スキルがなにかを自分で見つけて、勝手に学んでいくことが求められるんですよ。
仕事の学び方はロジカルというより根性論なんですね
NAEさん
天野さんは、仕事で悩んでいることなどありますか?
天野
そうですね…「仕事の量が多くて、働いても全然終わらない」という…
NAEさん
そういうときはどうしてますか?
天野
ひたすら残業してます。
NAEさん
最悪ですね。
仕事を早く終わらせたいなら、作業時間を長くしても非効率です。なぜなら、仕事が終わらない原因は、ほとんどが「手戻りや抜け漏れ」にあるからです。
今回は、そこを解消して「仕事が3倍速く終わる思考法」を教えましょう。
“仕事を速くする”基礎は、作業の「抜け漏れ」を防ぐ「ロジックツリー」
NAEさん
さっき言った「MECE」ってご存じですか?
天野
それぐらい分かりますよ。コンサルの人がよく言ってるイメージです。
正しいツブ感で情報をそろえる…ってことですよね。
NAEさん
概念自体は知っている人も多いでしょうね。
「MECE」と「So What/Why So(つまり/なぜ)」という考え方は、「ロジカルシンキング2点セット」。どんな仕事をするにあたっても役に立つ、絶対覚えておいてほしい&使えるようになってほしいポイントです。
そして、この2つを組み合わせて図にしたものが、「ロジックツリー」です。
NAEさん
ロジックツリーはいろいろなトピックで使えるものですが、たとえば仕事の組み立てに使うとすると、横の「MECE」で作業に漏れ・ダブりがないように並べ、縦の「So What/Why So(つまり/なぜ)」で、それぞれの作業の結果が適切な成果につながるかチェックする…なんてことができます。
天野
このロジックツリーで、仕事が速くなるというのはどういうことですか?
NAEさん
「作業の抜け漏れによる手戻り」を防ぐのに有効だからです。
「会議用に、日本の各業界の産業規模をざっくり知りたいから調べておけ!」という仕事があるとするじゃないですか。
すると若手の人は、「小売業はあるよなー、コンビニとか。銀行は金融業か。あ、スマホとかは情報通信…」と、思いつきベースでザックリ業界をピックアップしていっちゃうんですね。
天野
そこがザックリだとどうなっちゃうんでしょう?
NAEさん
たとえば、上司から「林業を参考にしたかったんだよ!やりなおし!」と言われて、倍時間がかかってしまう。
仮に総務省が出している「日本標準産業分類」を見て「日本の業界」をMECEに挙げられていれば、そんなことはないわけです。
ちょっとした会議資料ならいいですが、もっと大規模な仕事で漏れがあったら、サービスのリリースが遅れるとか、手戻りを取り返すのに追加の費用が発生するとか、あらゆるトラブルが起こります。だからロジックツリーで仕事の全体像を俯瞰することが大事なんです。
“誰から仕事が来て、誰のためにやるのか”を意識して「手戻り」がなくなる「SIPOC」
NAEさん
次に覚えてほしいのが、「SIPOC(サイポック)」です。
これは仕事の工程を、「プロセスで切る」ものです。
図を見てください。
天野
仕事の流れが書いてますね。これを意識するとどうなるんでしょう?
NAEさん
SIPOCの流れを意識すると「誰のためにどんなOutputをするのか」「そのためにどんな作業が必要か」「誰からどんなInputをもらわなければならないか」が明確になります。
Outputを起点に逆算して考えるので「手戻り」が発生しにくくなるんです。
天野
普通はそれができないってことですかね?
NAEさん
そうなんですよ。上司から仕事を振られたときに、言われたとおりに作業するだけの人って多いんですね。
先ほどの調査の例でいえば、田中係長から調査を頼まれて、プレゼン担当の小林課長に結果を渡すとします。田中係長(Supplier)から頼まれたまま、30ページくらいの調査資料を作ったら、小林課長(Customer)から「いや、プレゼン時間3分だから、こんな長いの使えないよ! 1ページにまとめて!」って言われてしまう。
29ページ分の作業も残業も、全部無駄だったと。
逆にConsumer=届け先が意識できてれば、必要なOutputを確認できるから、無駄が圧倒的に少なくなるんです。
天野
せっかく仕事しても、「ここもっとこうしてよ」って言われること多いですもんね。
NAEさん
自分の作業が終わったら、エンターキーを叩いて「おしまーい」っていう人もいますけど、そうじゃなく、自分の仕事が誰に届いて、どんなふうに使われるのか、どんな影響を与えるのかを意識すべきという話ですね。
また、このように仕事の流れを分解すると、「仕事がうまく進まない」というときに、どこに問題があるのかもわかりやすくなります。
「自分が頑張っても組織がクソ」というときは、「シックスバブルズ」で改善!
天野
自分がいくら効率的に仕事をしても、「組織全体が非効率だから全然仕事が進まん」ってときはどうしたらいいですかね…
NAEさん
組織を改善するのは、個人の作業効率を高めるより難易度が高いですが、「シックスバブルズ」という図に当てはめて、改善方法を探るアプローチもあります。
NAEさん
これは、会社の組織や仕事を6つの泡で表したもの。
矢印の方向に、改善が作用します。
たとえば「うちのチーム、雰囲気(=風土)が良くないな」ってなったときに、いきなり「やる気を出せ」「雰囲気を良くしろ」と言ったってどうにもならないですよね。
天野
ならないですね。そういう施策、やりがちですけど…
NAEさん
そこでたとえば、
✓効率的なビジネスプロセスを導入することで個人の負担を減らし、雰囲気を良くする
✓縦割り組織をやめてフラット化することで風通しがよくなり、雰囲気を良くする
というように、隣り合ってる泡を改善して作用させようという図なんですね。
そのままマネすれば使えるものというよりは、処方せんを考えるきっかけに使うもの、という感じです。
ロジカルシンキングは「RPG」のようにレベルアップさせることができる!
NAEさん
ほかにも必ずおさえておきたいのが「QCD」の概念。
仕事は「クオリティ=品質」「コスト=金額」「デリバリー=納期」、3つのバランスをとることを意識してください。
たとえば品質を上げても、そのぶん納期が遅れすぎては意味がない。すべての仕事においてバランスがとれるよう管理していかなければならない、ということです。
天野
そう言われればそうだな、という感じですが、たしかに常に意識を持ててはなかったですね…
NAEさん
今日は「R25世代が覚えるべきかんたんなものを」ということだったので、基礎的なものを中心に話しました。これらはRPGでいえば「こん棒」みたいな基本の武器です。
でも“武器が育ってレベルアップしていくゲーム”ってあるじゃないですか。それみたいに、さまざまなシーンで応用して鍛えていくことで、こん棒のレベルが「100」になるんです。
すると、手に入れるのが難しい「天空の剣」みたいなレア武器より全然強くなる。これがロジカルシンキングをはじめとした仕事術のおもしろみなんですよね。
天野
ロジカルシンキングに慣れてレベルを上げていけば、仕事が3倍速になるのも夢じゃないってことですね…!
NAEさん
思考法のなかにはレベル10までしか育たないハズレ武器も混ざってます。
じゃあどれがいいの?という話ですが、著書『外資系コンサルは「無理難題」をこう解決します。 「最高の生産性」を生み出す仕事術』(日本実業出版社)で、“武器になる思考法”をご紹介しています。
ぜひ手にとってみてください!
〈取材・文=天野俊吉 新R25編集部(@amanop)/撮影=福田啄也 新R25編集部(@fkd1111)〉
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