ビジネスパーソンインタビュー
ドレス選びを通じて、自分を愛せるようになる。“脱いでも消えない”ウェディングドレスのパワーとは?

ウェディングドレスだけが持つ“魔法”

ドレス選びを通じて、自分を愛せるようになる。“脱いでも消えない”ウェディングドレスのパワーとは?

新R25編集部

連載

「“はたらくWell-being”を考えよう」

Sponsored by パーソルホールディングス株式会社

2023/06/23

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リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。

現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはずです。

そこで、パーソルグループ×新R25のコラボでお送りする本連載では、「はたらくWell-being(ウェルビーイング)を考えよう」と題し、「令和の新しいはたらき方」を応援するとともに、さまざまな人のはたらき方や価値観を通して、ビジネスパーソン一人ひとりが今もこれからも「幸せにはたらく」ための考え方のヒントを探していきます。

今回ご紹介するのは、結婚式という人生最高を求める日にドレスの力で女性をときめかせる、フリーランスのドレススタイリストYUKOさんです。

国内大手のウェディングドレスショップで年間MVPを受賞後、2019年にフリーランスに転身。その決断の裏には、「仕事を通じて得たいもの」へのこだわりがありました。

「ドレスが好き」「お気に入りのドレスを着た女性の笑顔が好き」ただそこにまっすぐ向かっていく彼女にとっての「はたらくWell-being」を聞きます。

1990年生まれ。愛知県出身。ドレスが好きすぎて独立した、フリーランスのドレススタイリスト。最近ではスタイリングだけに止まらず、ヴェールブランドや大きい方向けのドレスブランド立ち上げのほか、ドレスショップへのコンサルティング、企業に属するスタイリストへの研修などもおこなっている。YUKOさんのInstagram:@dress.stylist.yuko

「その人だから着られる」運命の一着を追い求める

――(編集部)ドレススタイリストってわかるようでわからないんですけど、どういうお仕事なんですか?

YUKOさん

ドレススタイリストは、結婚式を迎える新郎新婦に対して前撮りや当日の衣装をご提案するウェディング専門のスタイリストです。

スタイリストと聞くと、芸能人や著名人につく役割というイメージがあるかもしれませんが、「特別な日に着るハレの衣装」をスタイリングする人、と思ってもらえるといいですね。

式場やドレスショップに所属して、そこで扱っているドレスのなかからお2人にとって最適な衣装をご提案し、受注することがおもなお仕事です。私が前にはたらいていた会社では、1組に対応できる時間は2時間と枠が決まっていました。

その2時間で初めましてのご挨拶、「どんなものがいいですか?」というヒアリング、それをもとにしたドレスのご提案、平均3~4着フィッティングして「30万円です。いかがですか?」と、お見積もりのお渡しとその営業を、1人で担当していました。

1着数十万円のドレスを売る、営業マンでもあるのです

――(編集部)YUKOさんにドレスのスタイリングをお願いすると、どのように提案してくださるんですか?

YUKOさん

最初のお打ち合わせでは、まずはその人のこれまでの人生について、雑談のようにヒアリングをします。

そこにかける時間が大体1時間半〜2時間くらい。今のお仕事のことや、なぜそのはたらき方を選んだのか、なぜ結婚式をするのか、お2人の出会いや関係性はどのようなものか、そういったことを聞きますね。

「最初からどんなドレスが着たいかは、ほとんど聞きません」「え、聞かないの?」

YUKOさん

だって、どういうドレスが好きかを言語化できないから、みんな困っているんです。

それよりもその人自身の話を聞いて、生き様やキャラクターを知ったうえで「こういうドレスがいいかも!」をご提案しています。

――(編集部)生き様やキャラクター。その人の中身ってことですね。

YUKOさん

今は骨格診断やパーソナルカラーなど、外見による判断で「似合うものにたどり着く」手段は多様にあります。だけど、その結果が必ずしも人間性とマッチするとは思っていなくて。

「低身長だからボリュームのあるドレスが似合います」と言われても、本人がサバサバしてアクティブな性格だったら「私っぽくないな」と感じてしまうはず。それは私にとっては正解じゃないんです。

どんな生き方をしてきて、結婚式というタイミングでどんな自分を表現したいのか。そこにとことん向き合うことで「自分の好き」が見えてくる。

そして、その好きにぴったりフィットしたものをまとったときに「自分だからこれを着こなせるんだ」と思えたら、それまでの過程で得た喜びや自信は、結婚式が終わった後もずっと続くんです。

「その人にしか着られないドレスがある。この体験をみんなにしてほしいな…」

あなたはどんな人なのか、鍛えた力で考え抜く

――(編集部)とはいえ自分のことを上手に話せる人ばかりではないかなと思うのですが…。

YUKOさん

もちろんそうですよね。なので、私は妄想力を磨きました。

妄想力?

YUKOさん

これは会社員のときにたくさんのお客さまを接客させていただいたからこそ得られたものだと思うのですが、2時間しかないのであれば、そのなかでベストを尽くしたかったので、花嫁さんが言葉を発しなくても何を考えているかわかる技術を磨いたんです

――(編集部)言葉を発さなくても…ん?

YUKOさん

ドレスのフィッティングは基本予約制なので、予約時に書いていただいた結婚式の会場や日程、ドレスに関する希望などが書かれたアンケートをチェックしてからお客さまをお迎えしていました。

「次のお客さまは、5月のゴールデンウィークに〇〇ホテルで結婚式をあげるんだ、だとするとこういう雰囲気が好きなのかな」と事前に考えて、いざお店に入ってきた瞬間に「この人だ!」とわかるようになってきて…。

――(編集部)まるでエスパーじゃないですか!

YUKOさん

考え方としては、“パレスホテルを選ぶということは、ステータスを大事にする人かもしれない。ブランドへの安心感を抱きやすい、個性的なものよりはトレンドのもののほうが心地よいかもしれない… ” みたいな感じですね。

これができるようになるために、式場やドレスショップの研究をたくさんしました。その結果、この式場で挙げる人はこういう傾向があるから、こういう接客をしてみようと計画できるようになったんです。

それがマッチすると、相手に必要な言葉が見えてきます

――(編集部)必要な言葉ですか。

YUKOさん

トレンドが好きな方に「これ珍しいんですよ」は響かないです。

「今季の新作ドレスです!」というご提案のほうがうれしいだろうし、みんなと一緒が嫌な方には「このドレスを着こなせる方はほとんどいないです」というご提案ができます。

その提案に共感してもらえることが「この人、わかってくれている!」という信頼につながって、もっともっと深いお話もしてくださるようになる。

それによって、ご本人にとっても見えにくかった「本当の想い」まで辿り着けることが、運命のドレス選びに大きなヒントをくれるんです

「仕事を通じて得たいもの」に気づいてしまった

――(編集部)そこまでの技術があれば、会社員でもフリーランスでも活躍できそうです。ちなみに、フリーランスというはたらき方は、業界的に一般的なのでしょうか?

YUKOさん

フリーランスのドレススタイリストは、ほぼいないと思います。同じウェディング業界の方からも「どうやってフリーランスで仕事しているんですか?」と聞かれることも多いです。

それもごもっともで、ドレスショップに行けばその店のドレススタイリストが必ず担当についてくれるわけで、わざわざ追加でお金を払ってフリーランスのドレススタイリストを頼む意味は何?ってなりますよね。

――(編集部)ではなぜ今、フリーランスというはたらき方を選んでいるのでしょうか?

YUKOさん

うーん…きっかけはいろいろありましたが、私が仕事によって得たいものが、会社に所属していては得られないかもしれない、と感じたことが大きかったですね。

会社員時代は、多いときで月80組を担当することもありました。

大好きなウェディングドレスを扱える幸せを感じる一方で、あまりにもやることが多すぎて、目の前のお客さまの満足度よりもドレスを決めてもらうこと、時間通りに終わらせることが目標になってしまいそうな自分に気がついたんです。

このままじゃ、流れ作業になってしまうと思って…。

もやもや

――(編集部)好きだからこそ、仕事が流れ作業になるのはつらいですね…。

YUKOさん

そもそもドレスを選ぶって結構難しいんですよ。ほかのファッションと違って着慣れている人がいないから、花嫁さん自身も自分がどういうデザインが好きか、何が似合うかがわからない。

さらには気に入るものがあったとしても、「金額が見合わない」「自分に合うサイズがない」「ほかの人が借りていて日程が合わない」ということもあります。

そして、ウェディング業界に多いルールで、結婚式を挙げる式場によって提携しているドレスショップが決まっているため、他店からの持ち込みができずに「着たくても着られない」状況になってしまうことが結構多いんです。

そうしたしがらみなく、数ある素敵なドレスショップのなかから目の前の人にぴったりのドレスをご提案する方法はないかなと考えて、今のフリーランスというはたらき方に辿り着きました。

――(編集部)前例がないなかで、フリーランスのドレススタイリストになるのは大変なことも多いと思います。

YUKOさん

この仕事について理解していただくための努力は必要だなと思います。でも、フリーランスになったことで、一人の花嫁さんと向き合える時間や提案できるドレスの数が変わりました。

売上や効率ももちろん大切ですが、それを一旦横において、目の前の花嫁さんにとってのベストを見つけることに、もっともっと専念できるようになりました

それによって、私にとっての仕事のゴールは、ドレスを決めてもらうことじゃないと気がついたんです。

本当に愛おしそうにドレスを扱う

――(編集部)YUKOさんにとっての、仕事のゴールとは?

YUKOさん

目の前の花嫁さんがドレス選びを通じて自分を愛せるようになること、かな。

もともとファッション業界ではたらきたいと思って専門学校に通っていたので、就職のときはたくさんの選択肢がありました。そのなかからドレススタイリストという職業を選んだのは、ウェディングドレスだけが持つ魔法を知っていたからです。

授業の一環でシャツやスーツ、ワンピースなどさまざまな服を作り、自分たちで着てお披露目する機会があって。なかでもウェディングドレスを着たときは、クラスメイトの表情がまったく違いました。

普段は控えめな子が、高揚したようなキラキラの笑顔になって、ポージングを決めたりして。それって、ドレスを着たことで自分に自信を持てたってことですよね。

その力を目の当たりにして、「ああ、ウェディングドレスってなんて素敵なんだろう…」「どんな人にでも自信と誇りを与えられるウェディングドレスのパワーをもっとみんなに知ってもらいたい」と思ってドレススタイリストになったんです。

――(編集部)ウェディングドレスだけが持つ魔法ですか。

YUKOさん

ドレスを選ぶときには、「こういうのも似合うんだ!」「私、かわいいじゃん!」と、自分に対する新しい発見が生まれる時間を作りたい。ドレス選びをしながら、自分のことを好きになる時間にしたい。

目の前の花嫁さんにとってのベストなドレスを見つけたいという想いは、会社員のときも、そして今も同じです。でも会社に所属していると数字や売上、効率やお付き合いなど、さまざまな制約があることへの葛藤がありました。

そうしたことを一旦置いて、とことんドレス選びをしたいとなったときに「想いも時間も思い切りかけられるフリーランスがいい」という決断ができました。

花嫁さんに、そしてこの業界に、選択肢を増やしていく

――(編集部)YUKOさんにとって、はたらくことで得られる幸せってなんですか?

YUKOさん

ぴったりのウェディングドレスを着て、自信をまとった表情を見られることですね。

もうね、超かわいいんです。花嫁さんみんな、超かわいい!

私、この顔が見たくてこの仕事している!って毎回思います。

この笑顔、偽りがなさすぎる

YUKOさん

過去担当させてもらった花嫁さんたちのフィッティング動画、実は今でも見直しちゃうんですよ(笑)。

ドレスを着るせっかくの機会、「可愛すぎてもう無理、どうしよう!」みたいな興奮を知らずに結婚式を終えるなんて、もったいない! もっともっと、たくさんの人にこの体験をしてほしいなと思っています。

結婚式はたった1日だけど、その瞬間だけのシンデレラ、ドレスを脱いだら終わり、みたいなのは嫌なんです。それはあまりにも、高すぎる買い物だから。

――(編集部)結婚式自体1日だけの魔法だと思っていましたが、ドレス選びって奥深いんですね。自分にとっての「はたらくWell-being」を見つけた今、これからの夢はありますか?

YUKOさん

1つめは、フリーランスのドレススタイリストをつけるという選択肢を、もっと多くの人に知ってもらうこと。

結婚式はルールが多くて、式場によっては提携ショップ以外のドレスの持ち込みNGということが多々あるから、できれば式場を決める前に相談していただけるように認知度を上げていきたい。

YUKOさん

2つめは、このはたらき方ができるドレススタイリストさんを増やすこと。どこにも所属しないことで、たくさんのドレスショップのなかから、花嫁さんがときめいて仕方がない一着を追い求められることができます。

「このなかから決めてください」ではなくて、「運命の1着を一緒に探しに行こう!」という気持ちで、ドレス選びをサポートすることができるんです。

今も「どうやったらフリーランスになれますか?」とご連絡をいただくので、興味がある人もきっとたくさんいるのだと思うんですよね。

まるで美容院で美容師さんを選ぶみたいに、花嫁さんが「私はキュート系が好きだから、その系統が得意なドレススタイリストさんにお願いしよう!」って選択肢ができたら、最高だなと思います。

〈取材・文=飯室 佐世子/撮影=山本真央〉

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