ビジネスパーソンインタビュー
”自己肯定力が低い”を武器にしよう。
8万人の販売員の頂点!「極められない仕事」を突き詰めるユナイテッドアローズ仲希望さんの“はたらくWell-being”
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループと新R25のコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
「はたらくWell-being」とは、はたらくことを通してその人自身が感じる幸せや満足感のこと。それを測るための3つの質問があります。
①あなたは、日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか?
②自分の仕事は、人々の生活をよりよくすることにつながっていると思いますか?
③自分の仕事や働き方は、多くの選択肢の中から、あなたが選べる状態ですか?
3つの質問すべてに「YES」と答えられる人は「はたらくWell-being」が高いと言えます。「“はたらくWell-being”を考えよう」では、日々、充実感を持ってはたらく方々へのインタビューを通して、幸せにはたらくためのヒントを探します。
今回、お話をお伺いしたのは株式会社ユナイテッドアローズ ユナイテッドアローズ 新宿店勤務 / DXセールスマスターの仲 希望さんです。
仲さんは服飾専門学校を卒業後、株式会社ユナイテッドアローズに入社し、勤続21年。結婚や出産といったライフステージの変化により短時間勤務を続けながら、2023年には令和のカリスマ店員を決める「STAFF OF THE YEAR 2023」で約1300のアパレルブランド・約8万人の頂点となるグランプリを受賞しました。
華やかな経歴を持ちながら、自身を「自己肯定力が低い」と話す仲さん。なぜ彼女は令和のカリスマ店員に輝いたのか? ファッション販売員という仕事に感じる“はたらくWell-being”を聞きました。
1983年三重県生まれ。文化服装学院を卒業後、株式会社ユナイテッドアローズに入社し、2023年に勤続21年を迎える。プライベートでは13歳・11歳・8歳の三兄妹の母でもある。「仕事は絶対休まない」「言われたことは120%で返す」と芯のある仕事ぶり。しかし、子育てのために時短勤務となり勤務時間内にこなせる業務に制限が生まれ、周りのスタッフに負い目を感じていたことも。コロナ禍でお客様の来店が減少する中、当時の店長の薦めで始めたスタイリング投稿は、投稿数もPV数も常に全国TOPレベル。令和のカリスマ店員を決める「STAFF OF THE YEAR 2023」に出場し、グランプリを獲得した。さらに、日頃の投稿実績が評価され、ユナイテッドアローズ独自の人材認定制度である初代DXセールスマスターに任命された
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ファッション販売員は「極められない仕事」
ーー(飯室)販売員21年目とのことですが、お仕事は楽しいですか?
仲さん
楽しいですよ!
お洋服が大好きなので、新作を手に取る瞬間は毎回「わああっ」とワクワクしますし、お洋服を通じて日々色々な方とコミュニケーションを取れるところが好きです。
「お洋服を新調したくなる予定があるんですか?」など、 自然にプライベートなお話しまでできるお仕事だなと思って。
ーー(飯室)確かに、初対面の販売員さんなのにプライベートの相談をしちゃった経験、あります!
仲さん
大事な瞬間をサポートできると思うと、よりやりがいがあります!
旅行だったりデートだったり、その方の「楽しみ」を共有していただける気がします。
ーー(飯室)仲さん自身も、お洋服を通じて人生を楽しく過ごされている印象があります。
仲さん
そうですね、40代になり、もっとおしゃれが楽しくなりました。
ただ、年齢を重ねることで抵抗感のある色が増えたり、出産を経て体型が変わり好きだったお洋服が着られなくなったり、お洋服が楽しくなかった時期もあって。
ーー(飯室)仲さんでもそんな経験が。
仲さん
だけど、もったいないなと思って。
私は20代、30代、40代と洋服屋さんで働いてきたので、その知識と経験は、多くのお客様のライフスタイルにあったお洋服選びに役立てたいと思っています。
特別おしゃれをしなくても生きてはいけます。
でも、どうせ毎日何かを着るのであれば、少しでも気分が上がるお洋服を選べれば、人生が楽しくなるはずです。
ーー(飯室)仲さんは「STAFF OF THE YEAR 2023」で8万人の販売員の頂点になられましたよね。側から見ると販売員の仕事は極めた!って感じがするのですが、ご自身としてはどのようなお気持ちなのでしょう。
仲さん
私としては、販売員の仕事を極めたと思ったことはありません。
「ベテランだね」と言ってもらえることもあるのですが、そうも思っていなくて。「社歴が長い人」くらいの捉え方ですね(笑)。
(あれ?ものすごく謙虚な方?)
ーー(飯室)謙虚!
仲さん
いえいえ、本当なんです。
私、販売員は極められない仕事だと思っています。
ーー(飯室)どういうことですか?
仲さん
毎日多様なご要望をもったお客様がいらっしゃって、ご紹介できるお洋服もどんどん入れ替わります。
「この方にこのお洋服をおすすめすれば絶対に気に入ってもらえる」といった正解はないので、どうしたら満足していただけるか、毎回一対一の真剣勝負なんです。
お客様にとても喜んでいただける日もあれば、お力になりきれない日もあります。
自分の仕事に満足したり課題が見つかったり日々波があるので極められない仕事だなと思っています。
ーー(飯室)極められない仕事。そうすると、どうして21年間続けてこられたのでしょう?
仲さん
負けず嫌いな性格のおかげだと思います。
人に負けたくないというよりは、昨日の自分に負けたくない。負けたまま辞めることもできない。
ーー(飯室)うまくいく日、いかない日、波があるから続けられたということですか?
仲さん
そうかもしれないですね。
本当に、一人ひとりのお客様、1日1日の積み重ねの仕事。
先日、ふとスタッフが月間の売上推移を見ながら「3歩進んで2歩下がるだな~」って言っていたのを聞いて、「えっ私、3歩進んで2歩下がりたくない!」って返してしまったんです。みんなに笑われました(笑)。
「3歩進めたなら、そこからまた先に進みたいじゃないですか」「確かに」
ーー(飯室)ストイック!
仲さん
周りからも、よく言われます。
でも、同時にネガティブだねとも言われます。
ーー(飯室)ネガティブですか!?
仲さん
良くも悪くも、自分のことを認められない。自己肯定力は低い方だと思います。
「もっとこうすればよかった」ばかり見つかって、それが次の課題になる。
同じこと繰り返すのは満足いかない性格ゆえ、永遠に課題が見つかり続けるんです。
「令和のカリスマ店員」の要素は、会社で学んできた
(この方、向上心の塊なのでは...?)
ーー(飯室)自己肯定力が低い中で、令和のカリスマ店員を決める「STAFF OF THE YEAR 2023」という大舞台にチャレンジしたのは、なぜですか?
仲さん
コロナ禍をきっかけにお洋服の販売もDX化が進み、販売員は店舗だけでなく、スタイリング写真を自社オンラインショップや自分のSNSに投稿することによってオンライン上でもお洋服の紹介ができるようになりました。
私は子育てをしながらの短時間勤務なので、「朝少し早く来ればコーディネート写真を撮れるな」と投稿を始め、その結果2022年度の社内の表彰制度でOMO推進賞をいただけたんですね。
※OMO:Online Merges with Offlineの略語で直訳は「オンラインとオフラインの融合」。 ECと実店舗の垣根をなくし、お客様の購買意欲を促す施策のこと
ーー(飯室)ユナイテッドアローズ社内で、最もスタイリング投稿に尽力してその売上が1位だったということですね。
仲さん
それをきっかけにこれは私がここで止まっていてはダメで、次のステージにチャレンジしないといけないなと思いました。
この実績が後押しになって、「2023年のSTAFF OF THE YEARではグランプリを取ろう」と決めましたね。
ーー(飯室)出場だけでなく、グランプリを取ることを決めた!
仲さん
はい。
決めてからは、1年間かけて準備しました。
ーー(飯室)準備!?
仲さん
はい。
まずは大会が始まるまでの1年間、それまで以上にストイックに、毎日スタイリング投稿をあげ続けました。
ーー(飯室)大会が始まる前、ですよね?
仲さん
そうですね。
大会に向けてではありますが、もちろん第一はお客様の役に立つためです。
うちのブランドのスタイリングがたくさん載っていることで、これ着たいなという気持ちになってくれたらとても嬉しいので。
ーー(飯室)確かに、参考になるスタイリングたくさん乗せていらっしゃったら、仲さんをフォローしちゃいますね。
仲さん
信頼してくださる方を増やしたい、という意図はありました。
というのも、「STAFF OF THE YEAR」では令和の販売員に必要とされる提案力・汲み取り力・オンライン接客力を評価されるのですが、グランプリを取ろうと思ったら人間力を高めないといけないなと感じて。
ーー(飯室)人間力ですか?
仲さん
はい。大会が始まると一次審査ではオンライン接客の実績やSNSの活動実績が評価対象になり、二次審査では一般投票があります。
一般投票は1ヶ月半に及ぶ長期間で、毎日票が入れられる仕組みなんですね。
一次審査を通過し、二次審査では多くの方からの票を獲得できなければ最終審査に進めないとなった時に、人としてきちんと認めてもらわないと、「投票してください」とお願いできないと思いました。
ーー(飯室)ごもっともです。
仲さん
まずは身近なスタッフに応援してもらえるように、本来の仕事を気を抜かずに行うこと。
さらには、他のスタッフの仕事も自分の仕事と同じように一生懸命取り組むようにしました。
ーー(飯室)身近な方に応援してもらいたいという気持ちだったんですね。最終的に一般投票で5万票近く集められたとのことですが、これはどのように努力されたんですか?
仲さん
応援していただきたい方には、直接お電話をしたりメールをしたり、会いにいったりすることもありました。
SNSでフォローしてくださる方からは「投票を忘れてしまうといけないから、毎日Instagramのストーリーズにあげてほしい」というお言葉をいただき、こちらも毎日あげると決め、あげ続けました。
ーー(飯室)オンライン接客やDX化と言われども、やはり人と人の繋がりは大切なんですね。
仲さん
こういう人との繋がりは、21年間この会社で学んできたことです。
販売員の仕事は、お店という舞台で360度常に見られている仕事。
それゆえ、入社以来先輩方にはお洋服の知識以上に、所作や言葉遣い・コミュニケーションの方法などをたくさん教わってきました。
そういったことが実を結んで私を評価してもらえるのは、会社を評価してもらえることだと感じ、嬉しかったですね。
ーー(飯室)グランプリ受賞を経て、自己肯定力は増しましたか?
仲さん
それが、本音はグランプリを取ることが何かのゴールになるのかな? と期待したんですけど、やっぱりゴールじゃなかったですね。
次なる目標が増えただけでした(笑)。
120点を目指すから、続けていける
ーー(飯室)仲さんの次なる目標とは?
仲さん
売上目標としては、前年の1.5倍を掲げています。
ーー(飯室)明確!
仲さん
ステップアップができないなら、「私はもうここまでだな」と判断してやめてしまうと思うので、同じことは繰り返しません。自分が満足いかないので。
ーー(飯室)誰かから支持されるわけではく、自分で昨日の自分を超えていく。ステップアップし続ける姿勢は、どう学んだんですか?
仲さん
そうですね、これも会社で学んだことです。入社当時に先輩からかけてもらった「100点を目指すのではなく、120点で返すべきだ」という言葉はずっと心に残っていて。
たとえばお洋服をバックヤードに収納する仕事も、10分でお願いと言われたら8分で終わらせる。そんなことを続けてきました。
120%を目指さないと、気が済まない
ーー(飯室)そうか、常に120点を求め続けたら、改善点がいくらでも出てくるということなんですね! そのほか、注力されていく活動はありますか?
仲さん
DXに関する後輩教育を担っていきたいなと思っています。
取り組み方がわからないスタッフも多いと思いますが、会社としてもまだまだ伸び代がある分野だと思うので。
ーー(飯室)圧倒的に実績をお持ちなので、説得力がありますね。
仲さん
販売員がオンラインでも活躍できるとなれば、子育てとの両立が難しく販売の仕事を離れてしまうスタッフにとっても、新しい道が開けるかもしれないですよね。
短時間勤務になった女性スタッフのロールモデルにもなれたらいいなと思います。
そうして、この会社を販売の仕事が好きな人たちが、長く働き続けられる会社にしたい。
そのためにとことん結果を出して、背中を見せていくしかないのかなと思っています。自分を追い込むことは、得意なので(笑)。
〈取材・文=飯室 佐世子〉
「“はたらくWell-being”を考えよう」
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