ビジネスパーソンインタビュー
いしかわゆき著『書く習慣 〜自分と人生が変わるいちばん大切な文章力〜』より
“どうでもいい日常”が企画の宝庫→どうやって見つける?ライターが教えるネタ視点の培い方
新R25編集部
自己発信することでキャリアが広がるようになった今、SNSやブログなどで「何か書いてみよう!」と挑戦する人が増えています。
でも、「何を書けばいいのかわからない」「この文章でいいのか?」などとつまづき、結局「続けられなかった…」と落ち込んだ経験はありませんか?
そんな方にぜひ手にとってほしいのが、新R25でも活躍しているフリーランスライター・いしかわゆきさんの著書『書く習慣 〜自分と人生が変わるいちばん大切な文章力〜』。
ルールにこだわらずに本音を書き続けることで、さまざまな夢を叶えてきたといういしかわさん。
「どんなにノウハウやテクニックを学んでも、そもそも書くのが好きではなかったら続けるのはつらいこと。でも、『書きたい』気持ちを育みながら書き続けてさえいれば、勝手に文章はうまくなっていく」と言います。
書きたい気持ちを高め、「書く」ことを無理なく楽しく続けるにはどうしたらいいのか?
書くことを習慣化するコツや、日常生活でのネタの探し方など、「書く」以外にも応用できるヒントを一部抜粋してお届けします!
「日常をネタにする」力を身につける
「いざ書いてみよう!」と思った人が最初にぶつかるのが、「なにを書いたらいいのかわからない」問題。
でも、SNSやブログを見てみると、毎日欠かさずなにかしらのネタを見つけて書いている人もいますよね。
その人と自分との違いって、一体なんなんだろう?
先に明かしてしまうと、その答えは、「いかに日常をネタとして書けるかどうか」です。
わたしたちは、残念ながらそんなにドラマティックな人生を生きているわけじゃありません。
「今日1日、なにをして過ごしていたっけ…」と思い返してみても、いたって凡庸な暮らしだと思います。
朝起きて、パンを食べて、会社に行って、営業先でプレゼンをして、友だちと飲んで、帰ってきてテレビを観て寝る。
ものすごく普通ですよね。
でも、「日常をネタにする」力が身につけば、なんでもかんでも立派なネタにして文章を書くことができます。
わたしも普段は、自分の人生を切り売りするように「日常をコンテンツ化」して発信しています。
「人生を切り売りする」というと、ものすごく数奇な人生を送っていたり、漫画のようなスリリングな毎日を過ごしていたりするようにも思えますが、全然そんなことはないんです。
たとえば、日常の出来事をもとに、最近はこんなテーマの記事を書きました。
書く習慣 〜自分と人生が変わるいちばん大切な文章力〜・長時間座りっぱなしでいたら足が痺れた→「集中力が長続きする人は早死にしそうだね」
・韓国ドラマを観ながら夜更かしをした→「頭のまわらない真夜中っていいね!」
・好きなアーティストのライブに行けない→「好きな人には好きって伝えよう!」
・実家で自堕落な生活を送った→「休むのだって大義名分が必要だね」
・計画どおりに行かない仕事がなんとかなった→「計画性ってじつはいらなくない?」
自分で言うのもなんですが、ものすごくどうでもいい内容ですよね。
実家でダラダラしたり、足が痺れたり、夜更かしをしたり。
普通の人だと、「えっ、これって『ネタ』のうちに入るの…?」と思うような、ありふれた日常じゃないですか?
でも、これも立派なネタなんです。
文章の価値を決めるのは、自分ではなく「読んだ人」です。
ただの日常でも工夫して発信することで、ときとして有益なものになります。
それに、毎日をまったく同じように過ごしている人なんて存在しません。
起床時間から、働く場所、関わる人まで、まるで違う。
物事への考えかたやコンテンツに対して抱く感想だって変わってきます。
だから、あなたの「日常」は、他人には「非日常」かも。
平凡な日常も、誰かにとっては面白くてタメになって、不思議な日常になる。
自分の日常を「ありふれた日常」だと勝手に決めつけているのは、他ならぬ自分自身なのです。
「愛」のある発信は、無益でも受け取ってもらえる
平凡な日常を送る人が一番書きやすいネタは、「好きなもの」です。
ドン引きされそうなぐらいの偏愛だって、ちゃんとネタになるんです!
たとえば、わたしは今までに次のような記事を書いてきました。
書く習慣 〜自分と人生が変わるいちばん大切な文章力〜「私の推しの“さゆりちゃん(51)”の話を聞いてくれ」
「田村ゆかりさんのライブで考えた『好きなことで生きる』こと」
「『ひぐらしのなく頃に』はグロアニメじゃない、心あたたまるハートフルアニメなんや」
はい、ヲタク全開で非常に気持ち悪いですね。
でも、多くのファンの人から「わかる!」と共感していただいたり、逆に知らなかった人から「こんな人がいるんだね」とコメントをいただいたりしました。
最初の記事の「さゆりちゃん」は、関西を中心に活躍する夫婦漫才コンビ「かつみ♥さゆり」の「さゆりちゃん」のことです。
この溢れんばかりの愛がこもった文章を書き、ラブコールを送った結果、最終的には取材にまで漕ぎ着け、なんと一緒にお仕事をすることができました。
どんな文章テクニックをも凌駕する最強のコンテンツ。
それは、「好きなものについて書く」ことです。
ここで、ひとつ質問です。
みなさんはこれまでの人生で、いろんなお店に行ったり、なにかを観たり、物を買ったりしてきていると思います。
それって、すべてご自身で発掘してきたものですか?
「仲のいい友人にオススメされたから」
「芸能人が紹介していたから」
「Twitterで見たから」
おそらく、自分で見つけたものだけではなく、誰かしらの「感想」を見て買ったり足を運んだりしたものも多いのではないでしょうか。
あなたを動かしたその「感想」には、「本当に好き!」「本当にいい!」という、「愛から生まれる熱量」があったはずです。
だからこそ「好きなもの」について書くと、自分のなかにある「愛」から生まれた「熱量」がギュッと詰まり、読んだ人にもその連鎖が広がっていきます。
情報量の多い今の時代、もっとも信頼できるのは「好き」というピュアな気持ちだと思っています。
その気持ちを大切に、堂々とさらけ出してみてください。
でも、なかには「熱狂できるものがない」という人がいるのも事実です。
そんな「好きなものがない」という人にお聞きしたいのですが、
いま、心に余白はありますか?
そもそも心に余白がないと、好きなものは見つかりにくいと思います。
「好き」という感情はとても儚い気持ちです。
好きだと思っているうちは、それが人生の糧になったりするのに、忙しくなって心の余裕をなくしてしまうとすぐに忘れてしまいます。
だからわたしは、仕事に忙殺されそうになったとき、仕事道具を手放して遠い場所に出かけます。
すると「なんだか本が読みたいな」と、好きなものを思い出してくるのです。
「好きなものがないなぁ」と思う人は、少し立ち止まって、自分の心の声に耳を傾けてみるのもいいかもしれません。
「枯れた心」からネタは生まれない
毎日のように書きつづけていると、「今日は書きたくないな…」という日が誰でも来ます。
スマホも見たくないし、パソコンも開きたくないし、手帳も開きたくない。
そんなときは、もしかしたら「インプット」が足りていないのかもしれません。
本を読んだり、映画を観たり、あるいは人の話を聞いたり…。
そうやって自分の外側にあるものからなにかを受け取るのが「インプット」です。
反対に、文章を書いたり、絵を描いたり、人に話したりすることは「アウトプット」といいます。
今さらこの言葉を説明したのは、わたしはこの「インプット」と「アウトプット」のバランスがすごく大事だと思っているからです。
インプットだけでもダメだし、アウトプットだけでも書きたいことはいつか枯渇してしまう。
だから、「書きたくないな」と思うときは、いったん気持ちを切り替えて、意識的にアンテナを立てて情報を集めてみてください。
本や映画など、好きな作品に触れるのもいいし、誰かに電話して話を聞いてみるのもいい。
自分の外側に目を向けてみることで、「言いたいこと」が湧き出てきて、「書いてみようかな」となるんです。
もちろん、いろんなコンテンツに触れてみることも重要なネタ探しのひとつ。
むしろコンテンツに触れつづけているかぎり、テーマは無限に出てくる。
そう言っても過言ではありません。
たとえば本の映画を観ていても、いろんな感想が出てくると思います。
「塞ぎ込む主人公を見て、自分の高校時代を思い出した」
「告白シーンがベタすぎて微妙だった。わたしならこうする」
「好みのタイプの俳優を見つけた」
など、「楽しかった」「良かった」だけではない思いが浮かんでくるはず。
でも残念ながらこれらの思いは、コンテンツに触れてからしばらくすると思い出せなくなって、「楽しかった」だけの、ペラッペラな感想になってしまいます。
たしかに「楽しかった」けれど、なにが「楽しかった」のかを詳しく思い出せない。
それってすごくもったいないことですよね。
最近、衝撃的なことがありました。
友人に「オススメの小説を教えてほしい」と言われたので、高校生のときにつけていた読書記録を見返したのですが、当時読んだ本がどんな話だったのか、あまり覚えていなかったんです…。
高校生のフレッシュな頭にインプットしたことすら思い出せないんだから、大人の記憶力なんてたかが知れています。
だから、忘れないうちに言語化して残しておくこと。
これを念頭に置いてコンテンツに触れれば、「これを見て自分はどう感じただろう?」と自分に問いかける癖がつき、おのずと「人に伝えたい、自分の考え」が湧いてくるでしょう。
書きたいことがなくなったときは、無理に頭をひねらず、まっさらな気持ちで「吸収」をしてみてください。
「私にも書けそう!」と背中を押してくれる優しい一冊
「書く」ってもっと自由でいいんだなあ…。
同書を読み終えたとき、真面目に考えすぎていた気持ちがほろほろと崩れていくような感覚になるはずです。
何かを始めようとするとき、つい「完璧にしなきゃ」「頑張らなきゃ」と思ってしまいがちですが、「自分が思っている以上にハードルを下げて取り組んでいいんだ」と思える、実践に基づいた“ゆるく楽しく続けるコツ”が詰まっています。
いしかわさんの優しい言葉の数々に、「これなら書くことを楽しく続けられそう」と背中を押してもらえる一冊です。
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