

「つきぬけた」はずの、あのころ
「私はもう一度つきぬけたい」後藤真希のブレイクスルーは、LOVEマシーンから続く“モヤモヤの歴史”だった
新R25編集部
毎月新R25の 「表紙」を飾る、「つきヌケ企画」。
悩み多き若手時代のモヤモヤに打ち克ち、ブレイクのきっかけをつかんでつきぬけた人たちに、「つきぬけた瞬間~ブレイクスルーポイント~」と題し、モヤモヤ期から抜け出した瞬間の話を真正面からお聞きします!
2月の表紙を飾ってくださるのは…後藤真希さん!
デビュー1カ月で、モーニング娘。の絶対的センターとしての地位をつかみ取った後藤さん…。つんく♂ さんに「10年に一人の天才」と言わせるほどの才能を持ち、言うまでもなく圧倒的につきぬけた経験をお持ちの後藤さんに、当時のことを振り返っていただきました。
〈聞き手=サノトモキ〉
【後藤真希(ごとう・まき)】1985年生まれ。東京都江戸川区出身。1999年、オーディションに合格し、3期メンバーとしてモーニング娘。に加入。グループ内ユニット「プッチモニ」でも人気を博すなど活躍する。2002年に17歳でモーニング娘。を卒業。2014年には結婚を発表し、現在まで2子の出産を発表
世間的に「つきヌケ」て見えたアイドルとしてのデビュー。しかし実際は…

サノ
さっそく、アイドル時代のことをお聞きしたいのですが…
アイドルは、子どものころから目指していたんですか?

後藤さん
はい。まず、私が保育園のときに…

サノ
(保育園までさかのぼるんだ)

後藤さん
お遊戯会で、プリンセスプリンセスさんの曲を踊ったのが楽しくて、歌って踊れる歌手になりたいと思ったんですよ。
当時は口にするのが恥ずかしかったんで、卒園アルバムには一応「ケーキ屋さん」とか子どもらしい夢を書いてたんですけど(笑)。
6歳にして「子どもらしい夢」を狙って書いていたゴマキさん。ませておられる

後藤さん
で、小学校5年生くらいのときにSPEEDさんがデビューして、こんなに歳の近い子たちがテレビで歌って踊ってる!とハッとして。「もしかしたら、自分にも」なんて気持ちが芽生えて…
そこから、中2で一気に人生が変わります。
『ASAYAN』というオーディション番組を観て、「あっ募集してる~、お姉ちゃん履歴書書いて~」くらいのノリで応募したんです。本当にたまたま、日常のワンシーンでした。

サノ
そこから伝説のアイドル「後藤真希」の快進撃が…

後藤さん
いやあ…
デビューをきっかけに、今まで味わったことのない体力的・精神的なつらさを経験していくことになりましたね。
あれ? こっからシンデレラストーリーの流れでは…?

後藤さん
オーディションに受かった次の日には、もう仕事がはじまったんですよ。
ジャケ写撮影、カレンダー撮影、メンバーとの初顔合わせ…本当に何が起きてるかわからなかった。
大人たちにただ言われるがまま、いろんなことをやってるって感じでした。

サノ
ちょっと待ってください…!
今日って、アイドルとして晴れやかにつきヌケていくお話しではないんですか?

後藤さん
世間的にはそう見えてたかもしれないですけど…
ただの中学2年生の女の子が、オーディションに受かって1カ月後に「LOVEマシーン」でデビューですからね。
心も身体も全然追いつかなくて、全然快進撃って感じじゃなかった。

サノ
そっか、当時まだ中2…中2か…。1カ月前まで普通の暮らしを送ってた13歳がいきなりセンターとしてステージに立つって…

後藤さん
ほんとに不思議ですよね?(笑)
「そこに立て」と言われるままに立っただけなので、当時は「私がセンターなんだ!」とも思わなかったし。
立ち位置が決められていたので、「そこに立つのか、なるほど」みたいな感じで立って、写真撮られるだけでしたね。ふふ…
「ね? 不思議でしょ?」な微笑み

後藤さん
そこから半年間くらいオフがなくて。
毎日寝るのも遅かったし、こんなに芸能人って大変だったんだってビックリしましたね。

サノ
半年間オフがない13歳て…

後藤さん
大変でしたよ~(笑)。
ダンスの振付も、先輩たちはすぐできちゃうけど、私だけ基礎からだから休憩時間もなかったし…1人で入ってるから、なかなか先輩たちに相談もできなかったんですよ。
だから、最初の3週間で7kg痩せて。

サノ
13歳が、3週間でマイナス7kg!?

後藤さん
マジでやばかった。37、38㎏になってたんじゃないかな。
脳みそも身体も追いつかない焦りもあって、ストレスで激やせしたり激太りしたりを繰り返したりして。見た目が大事なお仕事なので、それも余計にストレスで。
親が心配して毎日「今日どんな仕事してきたの?」って聞いてくれることすら、当時はすごくストレスに感じてしまって…
とにかく1人になる時間がなさすぎて、落ち着ける瞬間がまったくなかった。

サノ
もう何をやっても全部ストレスにつながってっちゃうようなモードだったんですね…
「『LOVEマシーン』からモヤモヤしてました」卒業まで続いた苦悩

サノ
モヤモヤが積み重なりすぎてる時期だったと思うんですが…
あえて言うなら、当時の最大のモヤモヤって何だったんでしょうか?

後藤さん
「自分が何をしたいのか」「自分はどうしていくべきなのか」。
そういうことが全然わからなかった。「じぶん」というものが、ない。
自分の意思で動いてる感覚がない毎日なんです。

後藤さん
もともと私が目指してた歌手ってもっと…オトナっぽい「カッコイイ」感じだったんですよ。
でも、私が入る前のモーニング娘。と私が入ってからのモーニング娘。って、曲や魅せ方のイメージがまったく違って。
なんか…全然変わりましたよね!?

サノ
た、たしかにそうかも…(圧がすごい)

後藤さん
いきなりバラエティ感強くなったというか、歌手以外にもいろいろ挑戦していく感じになっていったし。
だから…正直「LOVEマシーン」をもらったときからモヤモヤはしてました(笑)。
これはさすがに笑ってしまう

後藤さん
その次にプッチモニでデビューすることが決まって、「ちょこっとLOVE」「恋のダンスサイト」「ハッピーサマーウェディング」…ひたすら自分がやりたかったイメージと違うモヤモヤ期間が続いて。
入って3年。モーニング娘。を卒業することが決まって、卒業曲「DO IT! NOW」でようやくちょっと大人っぽい曲が来たんですよ。そう、これ! これ! って…
いや私これで卒業するけど!?????
ゴマキさんが止まらない

後藤さん
「私は何をやりたくて歌手になったんだっけ?」って(笑)。

サノ
スーパーアイドルとして活躍するなかで、そんな理想と現実のギャップを抱えていたとは…

後藤さん
もちろん、その場その場は楽しんでやっていたんですけどね。
「ファンの存在」も大きかったと思います。ファンの子の無邪気な表情とか姿を見ていると「ありがたいな」「もっと頑張ろう」って気持ちになれて。
当時は「サインしてください」とか言われても、「何を書けばいいんですか…!?」みたいなレベルだったので漢字で「後藤真希」って書いてましたけど…
逆にそのサイン今めちゃくちゃ貴重なのでは
卒業後もまだモヤモヤ…!? 脱却のきっかけは…

サノ
その時期抱えてたモヤモヤが完全に晴れるのって、「卒業」のタイミングになるんですか?

後藤さん
いやーー、モーニング娘。を卒業してもずっとモヤモヤしてましたよ。
後藤さん、さすがにそろそろつきヌケエピソードください

後藤さん
卒業してソロになったものの…思い描いていたような歌手活動ができなくて。
謎は深まるばかり。
「つんく♂さん、私をどうしたいの!?」みたいな。
「私、これでいいんですか…!? って」

後藤さん
その後も、つんく♂さんプロデュースで楽曲をリリースしていくものの、毎回イメージが変わるんですよ。かわいい曲、クールな曲、めっちゃ子どもっぽい曲…その三角形をずっとぐるぐるしてて、「じぶん」がずっと定まらなくて、わからなくて…
本当にずっとモヤモヤしてたの。「私、これでいいの? 本当に、何をしてるんだろう?」って。
でもあるとき、自分なりに「あ、こうやれば突破できるのかも」と思える瞬間がついに来たんですよ。

サノ
おおお…!
どんな瞬間だったんでしょうか?

後藤さん
初のソロライブです。はじめはすごく不安だったんですけど、藤本美貴とか松浦亜弥が私より先にソロライブを成功させていたので、私もなんとか成功させたいと思って。
そのライブスタッフチームとの出会いで、私、はじめて少し「つきぬけた」と思えたんです。
そこではじめて、「じぶんを作る経験」ができたんですよ。

後藤さん
デビューからずっと、大人に言われた通りにやってきた。ソロになってからも、つんく♂ さんがプロデュースしてくださる通りに活動してきた。
もちろんそのおかげでアイドルとしてつきぬけることができたのは間違いないと思うんです。
でも、はじめて自分で「じぶん」を作るという経験ができたことが、私にはすごく大きな出来事で。

サノ
そっか…ある意味はじめて自分の仕事に「裁量」を持てた瞬間だったわけですね。

後藤さん
舞台監督はじめライブスタッフさんたちも、「私らしさ」を理解して、尊重して、さらにその先を提供してくれた感覚があったんですよね。
その結果、ハロプロのスタッフさんたちに「後藤真希のコンサートがすごい」って言ってもらえるようになったり、ファンの間でも「ごまコンはすごい」って言ってもらえるようになったり…
そこから、ライブに力を入れるようになって、私の目標が明確に定まったんです。自分がどうしたいか、ようやくわかった。
「じぶん」だと胸を張って言える自分で、もう一度つきぬけられるように

サノ
デビュー以来ずっと探してきた、「自分がどうしたいか」。
答えはずばりなんだったんですか?

後藤さん
私自身が「じぶん」だと胸を張って言える自分で、もう一度つきぬけたいんです。

後藤さん
今の私は、ソロコンサートのような素の「じぶん」を出せる居場所を一つひとつ増やしているんです。
昨年はじめたYouTubeチャンネル「ゴマキのギルド」もそう。

サノ
めちゃくちゃがっつりモンハンの配信やってますよね。
「ラージャン」とか「リオレイア」とかめっちゃ叫んでるし…
概要欄にも「イメージを壊したくない方は今のうちにお引き取りを~!(笑)」と書いてあって、振り切り方がすごいなと思いながら観てました。

後藤さん
アイドル時代のイメージで止まってる人からしたら衝撃的なチャンネルかもしれないけど…(笑)、飾らない自分のままいられる環境があるのは、精神的にすごく楽なんですよね。
自分のチャンネルだし、興味がない人は見に来なくたっていい。
今までそういう場ってライブだけだったんですよね。そういう場が、YouTubeというかたちで見たい人にいつでも見てもらえるようになったのは、すごくありがたいです。

後藤さん
世間が思ってる「後藤真希」のイメージってあると思うんですよ。
もしかしたら、「アイドルとしてつきぬけた人」と思っていただけてる人もいるかもしれない。
でも私は、「じぶん」で、もう一度つきぬけられるようになりたいんです。

サノ
「じぶん」だと言える自分で、もう一度。

後藤さん
そう。誰かに作られたイメージじゃなくて。
この気持ちさえ大切にしていけばそれでいいんだって…ようやくモヤモヤの出口というか、答えが見つかったんです。

サノ
ちなみに、ライブ、YouTubeと「素の姿を出せる居場所」が増えていった今、モヤモヤを突破できた感ってあるんですか?

後藤さん
いや。たぶん、完全に突破はできてない。まだまだ見せてない私がいるので。
視聴者の人たちも、まだそこまで(本当の私を)受け止められないと思う(笑)。
だから、これからの私の「つきヌケ」を、楽しみにしてもらえたら!
素の自分、まだまだ出しきってないそうです。「ゴマキのギルド」の今後に期待だ…!
後藤真希にとっての「つきヌケ」とは、アイドルとしての成功ではなく、素の「じぶん」が心の底から楽しめるようになること。
世間的な成功が、自分の幸せに直結するとは限らない。僕たちビジネスパーソンも、なんとなくの「成功」をぼんやり目指してしまったりするけど、「自分にとっての幸せ」とは何かを考えることって、じつはすごく大切なのかも。
ちなみに完全に余談ですがどうしても書きたかったので、最後に。
「ゴマキのギルド」、エヴァの「残酷な天使のテーゼ」のカバーが最っ高にかっこいいです。とくにサビがもう…ぜひ聴いてみてください。(完全に個人的なオススメです)
〈取材・文=サノトモキ(@mlby.sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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