ビジネスパーソンインタビュー
「死ぬまで過程。失敗だと思ってない」
リスクを取って突き抜けた極楽とんぼの成功哲学「打ちにいかないと、打てないことに気づけない」
新R25編集部
さまざまな業界のトッププレイヤー12組が表紙を飾る連載「つきヌケ」。
うだつの上がらない若手時代を乗り越え、“一流のプレイヤー”へとつき抜けた瞬間を深ぼる本企画、2022年2月号を飾るのはこのおふたり。
【加藤浩次(かとう・こうじ)/山本圭壱(やまもと・けいいち)】1989年に「極楽とんぼ」結成。20代の頃から「めちゃ×2イケてるッ!」で活躍。2017年からはABEMAでレギュラー番組を担当し、現在、「週末極楽旅」、「アッパレやってまーす!」などにも出演中
極楽とんぼの加藤浩次さん、山本圭壱さん。
20代から「めちゃ×2イケてるッ!」などで活躍し、冠番組も多数。現在は、加藤さんは「スッキリ」「がっちりマンデー!!」などMCとして、また山本さんも10年の謹慎期間を経て、登録者数43万人の人気YouTuber としても活躍されています。
山あり谷ありのさまざまなエピソードを持つおふたり、いったいどんな「つき抜け哲学」を教えてくれるのか…?
〈聞き手=サノトモキ〉
「リスクから逃げた人間は一瞬で見抜かれる」極楽とんぼの“いったれ哲学”
サノ
本日なんですが、一言で言うと「仕事でつき抜けるためには、何が必要なのか?」を伺いたいと思っております。
加藤さん
おおー、なるほど。でも俺らも正直、いまだにくすぶってるからな…な?
山本さん
うん、つき抜けてないな!
終わっちゃった
加藤さん
でもまあ、強いて言うなら…「いったれ」。
この姿勢だと思うんですよね。つき抜けるために必要なことって。
サノ
「いったれ」?
加藤さん
僕らまだまだほんとにくすぶってた若手時代に、大きい番組の“数集め要員”として集められたことがあったんです。
雛壇に50人くらいいたのかな。烏合の衆のなかのひとりで、出どころなんて一切ない。
サノ
はい、はい。
加藤さん
で、その番組のメイン司会が鶴瓶さんだった。
番組の最後に、鶴瓶さんがフリースロー入れたら鶴瓶チームの勝ちみたいな状況があった。鶴瓶さんがボールを構える。緊張の瞬間ですよね。
そのとき、何を思ったのか僕、鶴瓶さんが投げようとする瞬間に落ちてるボール拾って後頭部に思いっきりぶつけたんですよ。バーン! って。
これぞ“狂犬”
サノ
なんでそんなことしちゃったんですか!?
加藤さん
「何かやってやりたい」って、モヤモヤしてたんです。
「これやったら絶対面白い」と思った。で、リスクを背負ってぶん投げちゃった。
スタジオ「シーン…」ってなったんですよ。みんな、何が起きたかわかんなくて。
サノ
その後、どうなっちゃったんですか…?
加藤さん
「あいたーっ!」ってべーさん(鶴瓶さん)が叫んだ。「誰やーーーっ!」って。
そのべーさんのリアクションで、その場がドッカーン! ってなったんですよ。
「俺も覚えてますね、あの光景は」
山本さん
さらにすごいのが、ドーン! ってなってる最中のサインね。
背中の後ろで「もう1回来い!」ってサイン出してくれた、あの手。
加藤さん
「お前ら絶対やめろよ! 誰かわからへんけどなぁ!」って言いながら、「クイッ、クイッ」ってね。
「あ、これがプロか」と。
その瞬間が、明確に僕らのターニングポイントなんですよね。あそこで“極楽とんぼの芸”みたいなものが生まれた。めちゃイケで「狂犬」と呼ばれるようになったり。
サノ
なるほど。そのターニングポイントをつくったカギが…
加藤さん
「いったれ!」だったと思うんですよ。
仕事の差がつくのって、結局「リスクを取る」という覚悟だけだと思うんです。僕らは「みんな引くかもしんないけど思いっきりケンカしてみっか」とか、舞台上で「いったれ」で挑戦したことが1番ウケるようなコンビだった。リスクを取ることでここまで来たふたりなんですよね。
そのぶん、「うわ、今日負けたわー」ってこともいっぱいあります。
サノ
「いったれ」でうまくいく打率って、どれくらいの感覚ですか?
加藤さん
2割5分…いや、2割だな。
5本に1本。5の1あれば御の字だよな?(笑)
「十分でしょう!」ふたりの空気、見ていて尊い…
サノ
失敗を避けて、コツコツ小さな成果を積み上げる戦い方でつき抜けることはないんですかね…?
加藤さん
なんかずっと中途半端なビジネス本読んどきゃいいんじゃないですか。そういう方は。
無理ですよ。リスクとらないと、リターンなんかないですって。
加藤さん
単純に、打ちにいかない人って、自分が打てないことに気づけないんですよ。
失敗が、一番正しく“自分の等身大のサイズ”を理解できる方法なんです。
「自分はこの程度の人間だ」ってわかることが一番大事。
サノ
…!!
加藤さん
これがないと絶対ダメですよ。偉そうなこと言わしてもらいますけど。
頭のなかで「本当はもっとできるはず」って勝手に自己評価して自分を保ってる人。まったく意味がない!
み、耳が痛え…
加藤さん
打ちにいった人は、自分が打てないことに気づけるわけですから。
小さな成功を手に入れることより、失敗によって自分のサイズを知ることのほうが圧倒的に価値が高いんです。
サノ
言われてみれば、加藤さんの「いったれ!」という感覚ってMCとしての活躍にもつながってる気がしました。
ほかの人には踏みこめないことも、加藤さんは「いってくれる」信頼感があるというか。
加藤さん
リスクから逃げた人間って、一瞬で見抜かれるんです。
朝の番組なんてとくに、「これ言っとけば無難だな」「こう言ったほうが風上に立てるな」ってリスクヘッジした瞬間にもう、視聴者の方々に一瞬で見抜かれると思ってますから。
これはよくも悪くもですけど、自分がどんな姿勢で仕事してるかって、けっこう人に見抜かれてると思ったほうがいいと思います。
「調子が悪いときは、振らずに待つことも大事」山本さんの“動かない”というアクション
サノ
山本さんはいかがですか? つき抜けるために必要なこと。
今でこそYouTubeチャンネルを登録者数43万人というとんでもない規模まで成長させていますが、最初はかなりこう…鳴かず飛ばずの時期も経験されてますよね。
山本さんは芸人としていちはやくYouTubeに挑戦しつつ、長らく伸び悩みの時期を経験されていました
山本さん
う〜ん…でも僕はそれを「失敗した」なんてこれっぽっちも思ってないんですよ。
「うまくいかないこと」があったからこそ、まわりからネタにしてもらったり、いかに改善していくかを徐々に徐々に考えてアクションしてこれたりしてきたと思ってるんで。
全部過程なんですよ。僕はまだあの時期を「失敗」だとは思ってない。
「他の人より過程が長いというだけで」
加藤さん
でも、その考え方のほうがいいかもしれないね。
「死ぬまで過程」だわ、たしかに。
山本さん
そうです。死ぬまでです。
「なにを今結論出しとるんだと」
山本さん
あと、さっき打率の話になりましたけど…
調子が悪いときには「振らずに待つ」ことも大事だと僕は思うんですよ。
サノ
どういうことですか?
山本さん
調子がいいときは、とりあえず振っとけば勝手にヒットコースに飛んでいくんです。
ただ、本当に調子が悪いときに振ってくというのはやっぱり危険も多いから、自分のコンディションをちゃんと確認して、振らずに見ておくことも大事。
調子がよくなったらガンガン振っていけばいいんですよ。そのときは当たれば絶対ヒットコースに飛ぶから。
…ということをカープの天才・前田智徳選手が言っていて、なるほどなと思いましたよ。
加藤さん
お前の言葉じゃないの?
爆笑してしまった
山本さん
それこそ僕は、10年の謹慎期間がありました。動かなきゃという気持ちもあった。何かしなきゃと。
でも、そういうときは振らずに待つことも必要なんだなと、やっぱり思いましたよ。
サノ
でも待ってるだけで状況って変わるんでしょうか? 自分から何もしなくていいのかな…
山本さん
生きてる以上、「何もしない」ってないんですよ。
今日1日何もできなかった人も、きっと何百、何千と必死に「考えてる」じゃないですか。「物事が動いていない」からと言って、進歩がないというのとはまた違うと思うんです。
「動かない」というのもひとつのアクション。そう考えることが自分を前を向かせてくれる瞬間も、人生にはあるんじゃないかと。
すごく励まされる言葉だ
「調子が悪いときは勉強しとけ」加藤さんを支えた“圧倒的な勉強量”
サノ
それでいうと加藤さんは、調子が悪いときの向き合い方、山本さんとはまた違いますか?
加藤さん
僕はもう、圧倒的な勉強量だと思います。
勉強量っていうのは、やっぱり絶対結果につながると思うので。そこがないと話にならない。
調子悪いし今すぐ結果は出ないかもしれないけど、とりあえず積んどけっていう。
加藤さん
『スッキリ』が始まったとき、最初、本当に何もわかんなかったんですよ。
ゲストで政治家の方とか来ても、「これ誰なんすか? 何党なんすか?」みたいな感じだったし。
サノ
加藤さんも最初はそんな感じだったんですか!?
加藤さん
そうですよ。
会議にしても、テリーさんとかスタッフさんの「本日のゲストこの方で」「あぁ、わかった。このテーマどうしようね」みたいな会話が、何も理解できないままどんどん空中で進んでいく。
「これはやばい、全然わからん」と思って、すぐに勉強を始めました。
加藤さん
そこからは日テレの政治部の人に、週に何回か授業受けて。
授業で基礎知識を入れたら、次は新聞を読む。「なるほどこういうことか」と頭に入ってくるようになる。
それを継続すると、「あ、この件ってこういうことね」とニュースの全体像が理解できたり、大見出しを見るだけで「ああ、こうなったのか」ってわかったりするようになっていく。
サノ
結果を出せない時代の勉強の蓄積が、今の自分を支えていると。
加藤さん
今もずっと続けてますよ。勉強は。
もちろんすぐに追いつくことはできないけど、努力すれば会話に飛び込むきっかけが1個はつくれる。「それ全然違うよ」って言われたとしても、理解できる自分になってることがまず前進だから。
調子悪いときでも、勉強だけはやっとこうって僕は決めてますね。
つき抜けるのは、「ゴルフ場のトイレで、洗面台を拭くような人」
サノ
最後に…「つき抜ける人の共通点」って何だと思いますか?
加藤さん
うーん…今ポンと浮かんだのは、「かっこつけていない人」。
加藤さん
「バカだと思われたくない」とか、「等身大以上に見られたい」と思っているときに人はかっこつけると僕は思ってるんですけど。
つき抜けてる人って、「自分が得することを考えてない」んですよ。
自分のこと以上に、番組のこと、まわりのことにちゃんと目を向けられる人がつき抜けてる感じがしますね。
サノ
答えにくい質問かもしれないんですが、加藤さんご自身は「かっこつける」みたいな感覚ってなくなりましたか?
加藤さん
いや、あります。「得しようなんてまったく思いません」なんて、絶対に言えない。
でも、「やばいやばい」って思います。「やばいな」と思えることが、まず大事だと思ってます。
サノ
たしかに人間って、“美学含めてその人”なのかも。弱いし醜いけど、それを「やばいな」「こうありたくないな」と思える自分含めて“自分”というか。
…山本さん的にはいかがですか? つき抜ける人の特徴。
山本さん
そうですね。あの…まぁ、清潔感。
清潔感がある人は、やっぱりつき抜けてる人が多いと思うんですよ。
加藤さん
だいたいあるだろ…
山本さん
いやでもね、ゴルフ場なんか行くとですね、「トイレで手を洗ったついでにタオルで洗面台を拭いてく方」いるでしょう。
…に、悪い人はいないです。
笑っちゃう
加藤さん
あ、でも、なるほどですよ。それは。
清潔感とかじゃなくて…誰もいないときにトイレの洗面台を拭くって、「かっこつけてない」もんね。
人に見られてないところで、人のために何かできる人って、そういうことでしょう。
山本さん
そう、そう。それが言いたかった。
人のためにサッと何かできる人って、今つき抜けてるかどうかはわかんないにしても、「つき抜ける可能性がある人なんだろうな」って、僕は思うんですよね。
ここでお時間。人間に「芯」に迫る素敵なお話ばかりだった…ありがとうございました!
30分の取材でおふたりから強く感じたのは、「飾らず、本当の言葉で話す人たち」ということ。
目の前の20代に対し、「それなりにこなす」じゃなく、まっすぐ等身大の目線で対峙してくださった感覚がすごくありました。(そして、おふたりの絡みが本当に尊かった…)
近日中に動画も公開予定なので、ぜひそちらもチェックしてみてください!
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=福田啄也(@fkd1111)/撮影=森カズシゲ〉
極楽とんぼの新番組・超爽快お悩み相談バラエティ『迷えるとんぼちゃん』(ABEMA)が絶賛放送開始!
3/3(木)夜11時から新番組「迷えるとんぼちゃん」の放送がスタート!
人生に迷えるゲストタレントが、極楽とんぼのおふたりにお悩み相談。打ち明けられるさまざまな“リアルな悩み”に、数々の芸能界の荒波を乗り越えてきた加藤さん、山本さんはどう切り込んでいくのか…!?
取材中にお聞きしたおふたりのコメントがとっても素敵だったので、気になった方はぜひ番組も併せてチェックしてみてください!
加藤さん
迷ってない人なんか、いないと思うんです。
1回目のゲストは元プロ野球選手の清原和博さんだったんですけど、「迷いを吐露できる強さ」ってあるなと思いました。
清原さんももともと、「自分の弱さを見せられない人」だったんですって。自分の弱さを見られないように、虚勢を張って人を近づけないようにしてたんだと。
でも事件があって、自分と向き合って、自分は本当に弱い人間なんだって認めたら、言えるようになったって。すげぇ深えなぁって。すげぇ大事だよって思って。
そういう「本当の声」をカメラの前で自然としゃべれる番組になっていったら、面白いなと思ってます。
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