ビジネスパーソンインタビュー
これさえわかっていれば、リーダーになれる
「リーダーは“前に立つ人“だから、社員の顔が見えない」GO三浦崇宏が語る“リーダーのつらみ”
新R25編集部
『新R25』の新連載「リーダーのつらみ」…。
さまざまな業界で活躍するリーダーに、“なかなかメンバーには見せられない”悩みやつらさを吐露してもらおうという企画です。
リーダーシップを発揮している人は、ふだんは強い一面しか見せてくれないもの。なかなか聞けない「つらみ」を吐露してほしい人は誰だろう?
今回話を伺ったのは、数々の注目のプロジェクトを手がけるThe Breakthrough Company GOの代表取締役でPR/CreativeDirectorの三浦崇宏さん。
最近では、メガネメーカーJINSの企業姿勢を示すCMが各所で評判を呼んでいます。
【三浦崇宏(みうら・たかひろ)】TheBreakthrough Company GO代表取締役兼PR/CreativeDirector。早稲田大学第一文学部を卒業後、博報堂入社。マーケティング、PR、クリエイティブ部門を経て独立、2017年にTheBreakthrough Company GOを設立。ヒット作『言語化力(言葉にすれば人生は変わる)』に続き、『人脈なんてクソだ。』も本日より販売開始
プレイヤーとしてバリバリ活躍する姿は知っているのですが、企業の代表、リーダーとしての三浦さんの姿はどんな人なのでしょう?
いつもとちょっと違った三浦さんの姿をご覧ください!
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
リーダーは、社員の「本当の弱み」を見ることができない
「リーダーのつらみ」の企画を説明したら、すぐそれっぽい雰囲気をつくってくれた三浦さん
福田
GO代表取締役の三浦さんに、リーダーならではのつらさをききにきました。
三浦さんはリーダーとして悩むことってあるんですか?
三浦さん
めちゃくちゃあるよ!
リーダーって本当に孤独なわけ。
たとえば、会社の集合写真がそれを象徴してるんだよね。ちょっと見てもらえる?
GOの集合写真。カッコいい企業写真ですが…
三浦さん
この写真の構図を見ればわかるんだけど、リーダーって上に立つ人じゃなくて“前に立つ人”なんだよ。
一番前に立って、組織がどこに向かうべきかを決めるし、社会でどんな風が吹いているかってこともキャッチする。
さらに、向かい風が来たら、後ろの社員たちを守らないといけない。
福田
カッコいいじゃないですか。
三浦さん
でもよく見てみると、社員からは俺のことが見えているけど、俺は社員のことが全然見えてないんだよ。
福田
それは…たとえ話ってことですよね?
三浦さん
違うわ。
今日の三浦さんはマジだな…
三浦さん
ウチにいる若手と雑談してるとき、「社内で誰が一番怖い?」って聞いたことがあって、そのとき「けっこう厳しいことを言う俺か田中(ビジネスプロデューサーのリーダー)だろうな」って思ってたの。
でも、そいつが挙げたのは、俺が「社内でもっとも性格のいいヤツ」だと思っていた名前だった。その若手に対してはかなり厳しかったんだって。
めちゃくちゃ衝撃的だったね。
俺にはそんな一面を一度も見せたことがなかったから。
福田
それは、三浦さんがリーダーだったから…?
三浦さん
うん。俺はみんなの上司であり、評価者でもある。
だから、社員は俺に対して絶対にいい顔を見せるんだよ。
同僚には「この仕事やる気起きないんだよね…」って言ってたとしても、俺に対しては「この仕事最高です!」って言うの。
結局、メンバーは俺に対して、自分の奥底の思いを打ち明けることはないんだよ。
三浦さん
あと、会社のリーダーはメンバーに対して無自覚に圧をかけていることを自覚しなきゃいけない。
福田
どういうことでしょうか?
三浦さん
評価者として存在しているだけで、「ちゃんと仕事している部分を見せなきゃ」「評価を下げないために無理しても頑張らなきゃ」って勝手に思わせちゃうじゃん。
そういうことを自覚すればするほど、孤独になっていくんだよね。
どんなに友人として接していても、組織の構造上、それは仕方ない。
これはマジのつらみだ…
メンバーに嫌われても、信頼は失ってはいけない
三浦さん
あと、マネジメントですごく悩んだこともある。
俺は社長だから、社員に対して「お前が必要だ」って言うじゃん。
一方で、俺は彼らに技術を伝える上司でもあるから、厳しく叱らないといけない場面もあって。
福田
社長としての接し方と上司としての接し方が違ってくると。
三浦さん
そう。メンバーからしたら、励ます人と叱る人が同じ人間だと、パニックを起こすんだよ。
俺という人格がまったく見えなくなるんだって。
福田
これはあるあるだ…! 結局その人自体がめちゃくちゃ怖くなるんですよ。
三浦さん
でしょ? そのことに気づけなくて、最初はマネジメントに苦労した。
今では、マネジメントするときは「励ます人」と「叱る人」の役割を分担することにしたけど、メンバーがどう思うかってことに対して、まだまだ想像力が足りないな…って思うよ。
わかりやすくしゅんとしてるの新鮮だな…
福田
メンバーとの接し方は、多くのリーダーに共通する悩みのタネだと思います。
三浦さんも、メンバーから嫌われないように意識することもあるんですか?
三浦さん
いや、正直嫌われたっていいんだよ。
人間は多面的だから「この部分は好きだけど、この部分は嫌」みたいなのは当たり前じゃん。
それより、リーダーとして信頼されなくなるほうがヤバい。
どんなに嫌われていても、「この人の判断はきっと何か理由があるし、正しいだろう」っていう信頼だけは失っちゃいけないと思う。
福田
なるほど…!
メンバーからの信頼を失わないためにはどうしたらいいんでしょう?
三浦さん
ここぞというときに、大きな判断を間違えないこと。
その判断のために必要なのが「思想」なんだよね。
この「思想」に関しては、丁寧に説明させて。
リーダーになりたい人は、ここからしっかり読み込んでください!
「思想」を明確にし、公言することができれば、誰でもリーダーになれる
三浦さん
リーダーにとって一番必要なのは、「みんなをどこに導いていきたいか」っていう思想を明確にすることだと思うんだよ。
逆に、それが公言できれば、誰でもリーダーになれる。
福田
いわゆるビジョンですよね。
三浦さん
そう。環境活動家のグレタさんなんかはすごくいいリーダーだと思う。
彼女は、みんなをどこに導こうとしているかがすごく明確じゃん。
福田
たしかに。「気候変動の危機から地球を救う」というメッセージはわかりやすいな…
三浦さん
でしょ? もちろん彼女の目指す未来は、すごくハードルが高い。「無理ゲーだ」って言う人も多い。
でも、「グレタの思想は間違っている」って批判はないよね。それが彼女がリーダーとして優れている点だと思う。
福田
それで言うと、三浦さんが掲げる「GOの思想」は何なんですか?
三浦さん
「あらゆる変化と挑戦にコミットする」。
GOの持つクリエイティブの力で、世の中に新しい価値観を届けようとするクライアントを応援することだね。責任と覚悟を持って。
GOが仕事を受けるかどうかは、この思想を基準にして決めている。
福田
じゃあ、大きな仕事でも「それはGOの理念に反する」という理由で断ることもあるんですか?
三浦さん
そう。ある大手メーカーのプロモーションをお手伝いすることになって、かなり話を進めていたんだけど、その会社の代表がネットで差別的発言をかなりしていたことがわかったことがあって。
すぐに「すいません。貴社の方がGOの思想にそぐわない主張を持っているようなので、この件はなかったことにさせてください」って破談にしたことがある。
そういう判断を下すために「思想」が必要なんだ。
ちなみに最近のGOの仕事がこちら。誰でも広告を出せるようにすることで、人々の新しいチャレンジを応援しています。応援するタレントの誕生日をみんなでお祝いしたり、知ってほしいイベントを広めたりできるとのこと
三浦さん
この「思想」は、超優秀なメンバーを引っ張るためにも必要なんだよね。
というのも、彼らはどこに行っても給料には困らないから、報酬がモチベーションにならないんだよ。
福田
だから思想で惹きつけると。
三浦さん
そうそう。
ウチのエースクリエイターの砥川直大は、もともと大手広告代理店のトップクリエイターで仕事も生活も安定していたのに、「クリエイティブの力で世界を変えようとする思想に共感した」って応募してくれた。
そんな超優秀なクリエイターたちが集まってくれるのは、「思想」のおかげだと思う。
砥川さんはGOのトップクリエイターとして「エコアルフ の#資源を無駄にしない広告」などを担当しています
三浦さん
だから、これからリーダーになる人が覚えておいてほしいことは、「思想を明確にすること」「それを絶対に曲げないこと」。
俺がGOのリーダーとして前に立っていられるのは、自分の掲げた思想を世界で一番信じているからなんだよね。
「社員は俺のことを心から愛することができない」とわかっていても…
三浦さん
この「リーダーのつらみ」って、メンバーには言えないような心境を吐露するものなんでしょ?
福田
そうですね。普段はなかなか言えない悩みを聞くのが狙いです。
三浦さん
だとしたら、この場で言わせてもらいたいんだけど、俺は社員を心の底から愛しているんだよ。感謝もしてるしね。
今でこそ世の中からうちの会社も多少は知られる存在になったんだけど、もともとは誰も知らないような小さな怪しい会社の冒険に、一緒にチャレンジしてくれているのがうれしくて仕方がない。
だからある意味では、クライアントよりも社員のほうが大事なの。
福田
そこまで!
三浦さん
経営者にとって最大のお客さんは社員なわけよ。
クライアントとなってくださる企業は、こちらがきちんとしたサービスを提供している限り、世の中にいくらでもある。
だけど、GOのミッションに共感してくれた超優秀なクリエイターやプロデューサーは、かけがえのない存在。
ここまで「社員を愛している」って公言するのは初めてらしいです
三浦さん
だから、メンバーに対して嘘は一切つかないし、隠し事もしない。
毎週の全体会議でも、「今の経営状態はこんな感じで、こんなことに悩んでいる」ってハッキリ言うの。
福田
そうすることで、メンバーからも信頼されるんですね!
三浦さん
いや、社員はそれでも腹を割ってくれないね。
「本音で接しろよ」ってめっちゃ言うけど、俺には誰も本音を語ってくれない。
やっぱり結局のところ、上下関係が明確だから。
福田
ええ…
三浦さん
社員が俺のことを心から愛することはできないとわかっていても…
フラれっぱなしでも「愛してる」って言いつづけるのが、リーダーの役割なんだよ。
福田
なんて悲しいラブコールなんだ…! 赤裸々なリーダーの心構えをありがとうございます!
いつもはふてぶてしい(すいません!)三浦さんが愛らしく見えてくる取材でした
GOの行動指針のひとつに「おれたちはファミリーだ」という言葉があります。
「社内外問わず、GOと関わる人間はすべて家族」という温かい姿勢を表したキーワードなのですが、当の三浦さん本人は、リーダーのつらみを背負ってメンバーたちに接していたとは…。
ただ、三浦さんによると、「このリーダーとメンバーの緊張感が、組織の成長の原動力になっている」とのこと。
リーダーとメンバーの関係性を考えるきっかけになりました…!
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
三浦さんの新刊『人脈なんてクソだ。』発売!
愛すべきリーダー、三浦さんの新刊『人脈なんてクソだ。 変化の時代の生存戦略』(ダイヤモンド社)より発売されます。
「サッカーをやっていたら、ある日突然ラグビーになる時代」「『働き方改革』なんてクソ」「『なんでもやります』というバカな若手」など、見出しから三浦さんのパンチラインが満載の同書。
「リーダーシップ」についても丁寧に書かれているので、ぜひ手にとってみてください!!
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