ビジネスパーソンインタビュー

転職に失敗する企業は求人票からわかる。専門家が教える“募集要項の読み解き方”

海外では異動の打診は“死刑宣告”

転職に失敗する企業は求人票からわかる。専門家が教える“募集要項の読み解き方”

新R25編集部

2020/02/06

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就職して数年経つと、誰でも頭をよぎる「転職」の2文字。

しかし未経験だと、「自分の希望は単なるわがままでは?」「転職したら年収は下がりそう…」など不安は山積み。

そんな人のためになる書籍があります。転職市場の生態系を知り尽くした小林毅さんが、キャリアと年収を上げる戦略を詰め込んでいる『転職大全』です。

今回は本書より一部を抜粋し、転職の失敗を防ぐ “募集要項の読み解き方”についてご紹介します。

【小林毅(こばやし・たけし)】人材コンサルタント。外資系ヘッドハント会社を経て、2010年にホライズン・コンサルティング株式会社を設立。法務系人材を中心に約11年、延べ4400人の相談、サポートをおこない、日系大手企業、ベンチャー企業、外資系企業の採用支援にも従事。2013年より厚労省認定「職業紹介責任者講習」講師として、人材紹介事業者に対する法定講習を延べ2000社に対しおこない、不健全と言われる人材業界全体のボトムアップに尽力している。著書に『転職大全』(朝日新聞出版)、『成功する転職「5%」の法則』(自由国民社)がある

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※こちらの書籍では、転職活動をリアルに理解してもらう意図で、下記の空想の人物2名が対話する形式で構成されています。

久間真司さん(仮名)
30歳男性。大手製造業で営業職。最近会社の業績不振で転職を考えている。

永楽圭佑さん(仮名)
50歳男性。転職経験4回、大手企業、ベンチャー企業、外資系ヘッドハント会社を経て独立起業。「成功する転職」の啓蒙活動に力を入れている。

募集要項がざっくりしてる企業のほうが実は選考が厳しい

久間:中途採用はどのような基準で選考されるのでしょうか?

永楽:今までに求人票を見たことがあるでしょうか? 基本的に求人票に記載されている内容が、企業が欲しい人材の要件です。そこには大きく2つのカテゴリーで構成されています。

一つは、今回募集される職種の仕事内容について、もう一つは求められる経験値やスキルについてです。この2つに条件が合えば、応募資格がある、と解釈することができます。

たとえば、このような2つの求人票があります。こちらの企業は、かなり詳細に欲しい人材について記載されていますが、もう一方の企業は非常にざっくりとした募集要項になっています。

どちらの企業のほうが応募しやすいと思いますか?

人事採用担当
・大学卒業以上 
・上場企業での人事採用経験が3年程度
・新卒採用経験必須 
・製造業出身者歓迎
・英語力(TOEIC700程度)  
・論理的思考

総合職
・社会人経験1年以上 
・大学卒業以上
・明るく前向きな人 
・コミュニケーション力が高い
・入社後、適性を見て配属

久間:うーん、細かく書いてある企業は、応募要件が厳しいイメージですね。要求が多いので、厳選して壁が高そうです。

もう一方のざっくりした求人票は、社会人経験1年以上ですから、ハードルは低そうですね。ざっくりした求人票のほうが可能性を感じますので、こちらのほうが応募しやすいと思います。

永楽:たしかに応募要件が緩いと、間口が広く、応募対象に該当しやすいので、チャンスは広いと解釈できます。

しかし一方で一体どんな人が欲しいのかが明確でないと感じませんか? 

久間:たしかにそうですね。一体どのような人がマッチングするのか、どのような人に応募してほしいのかが見えにくいですね。

永楽:判断基準が見えない案件は、実は落とされやすい案件とも言えます。

採用の現場でよくあるのですが、応募要件を満たしているのに応募した後、この人は経験が足りない、転職回数が多い、求めている人物ではない、何か違うなど、いろいろと難癖をつけて、平気で落とされることがあります。

久間:なるほど、企業が門戸を広く開けているというのは、誰を採りたいのかも決まっていない可能性があるということですね。

永楽:このような企業はいつも「いい人が来ないから、応募しやすいよう基準を緩めている」と言っています。

でも実際は高い選考基準を設け、妥協はしたくないとも言っているのです。

厳しく見える条件は、意外と融通が利く

久間:応募要件が細かく記載されている案件はいかがでしょうか? 細かく記載されているので、一つでも外してしまうと書類通過は難しいと思うのですが。

永楽:管理系や技術者、専門職の採用は、特に書類選考は厳しくなる傾向がありますが、応募要件をある程度満たしていれば、実は通過する可能性があります

久間:え? それはどういうことでしょうか? 要件を満たしていなければ、非該当者として落選すると思うのですが。

永楽:基本はそう考えてください。ただ、応募要件が必ず絶対要件なのか、という点は意外と緩やかでもあるのです。

たとえば、企業法務経験5年以上、とある案件に対し、4年の人は絶対NGかというとそうではありません。

年数はあくまでも目安で、同社が求めている経験値をクリアしていれば、1年や2年の不足などはあまり関係ありません。

久間:うーん、ちょっとわからなくなりました。ゆるい求人票は実は選考基準が厳しく、細かい求人票は意外と融通が利く選考基準、ということですか?

永楽:そうです。これは、的が絞れているかどうかの違いです。条件を絞ってから要件を緩和したときは、中心が決まっているので、ある程度の融通は利くということです。

大手企業の中途採用は緊急度が低いため、選考が厳しい

久間:多くの企業が求人を出していますが、やはり大手企業に目が行ってしまいます。大手であれば安定しているし、給与や福利厚生もしっかりしていますから、安心感がありますよね。

今までいろいろと伺ってきましたが、やはり中途採用でもそのような大手企業に入社したほうが安心です。

永楽:企業選びの価値観は、突き詰めれば人それぞれと思います。

大手企業は安定しており、就業規則もしっかりと作られています。法令遵守の精神も高いので、安心して働く環境が整っていると思います。

しかし、仕事が画一的でセクショナリズム、自分の権限も狭く、面白くない、人間関係も複雑、会社の命令には逆らえないという意見もあります

それこそ、自分が何を大切にして仕事を選んでいるかが重要になってくると思います。

久間:大手企業は新卒重視でほとんどが年功序列制度を導入していますから、中途採用にとっては不利でしたよね?

でも最近では企業の採用ページに、多くの職種が募集されています。これはどう考えればいいのでしょうか?

永楽:まず中途採用の動機には大きく2つの理由があります。一つは増員、もう一つは補充。

大手企業では、ほとんどが増員での募集で、スタッフレベルが中心の採用です。スタッフを欲していると考えるのが筋ですが、緊急度が高いか低いかの判断はあると思います。

久間:え? それは一体どういう意味でしょうか? 中途採用は、人員が不足しているから募集を掛けているのではないのですか?

永楽:大手の場合、必ずしも今すぐに欲しい、という姿勢ではないケースがあります。基本は組織化できているので現状人員でも何とかやっていけます。

よって中途募集は、いい人がいれば採用しますよ、という考えなのです。

急いでいませんから選考基準が曖昧で、今いるスタッフよりも、優秀な人材が欲しい、というざっくりとした考えしかない場合があります。

そのため、大手企業を受ける人は、書類選考が必要以上に厳しいことを覚悟しておくべきです。

このような企業は大手ではたくさんあります。ですから、それら企業から書類選考不通過の連絡が届いたとしても、決して気落ちしないことです。

自分を商品として見て、“売れる看板”を持つ発想が大事

永楽:日本企業は、その会社に所属することに価値を置く、「メンバーシップ型」のキャリアを志向し、外資系企業は、仕事内容と成果に価値を置く、「ジョブ型」のキャリアを求めます。

そして転職マーケットは、「ジョブ型人材」を求めるので、「メンバーシップ型」でキャリアを形成してきた日本企業のサラリーマンは勝負できないのです。

久間:求人票はより細かく記載されているほうが良いとおっしゃっていたのは、しっかりとした「ジョブ型人材」を求めているからなのですね。

永楽:その通りです。たとえば5年前に経理をしていたから、経理で転職をしたいと希望しても、転職マーケットでは現在価値が優先されるため選考されにくいのです。

過去にやっていた仕事の価値をゼロとは考えたくないと思いますが、転職マーケットではシビアに評価されます。自分がどのような仕事に就くか、そして続けていくのかの判断がとても重要です。

久間:そうすると、これからは「ジョブ型人材」を志向するべきでしょうか?

永楽:転職マーケットを考慮すると、ジョブ型人材が良いですが、今の日本の雇用環境では、なかなか難しいと思います。

新卒一括採用が根強いですし、企業も学生に専門性を求めて採用するのではなく、採用後研修し、人材を育てるという発想です。

新卒で専門性を追求したくても、環境がまだ整っていない、と考えています。

久間:あとに続く若手人材が自分の専門性を意識したキャリアを志向しているとなれば、私は不安で仕方ありません。

永楽:たとえば外国人の仕事観は、どの分野のスペシャリストか、が基本です。先ほどの経理職の人が、会社から一方的に営業だ、と言われれば、その人は死刑宣告を受けたと考えるのです。

そのため自分の仕事を守るために会社を辞めるという選択を取ります。海外では人材の流動化が進んでいると言われますが、このような仕事観が背景にあります。

久間:異動の打診があれば、それは死刑宣告。とても重要な人生の岐路ですね。あまりにも当たり前に異動があるので、自然と受け入れていました。

永楽:今までは終身雇用で守られていたので、異動して価値が下がっていても、社内での価値は維持できていたので問題は表面化しませんでした。

年功序列は、長く会社にいることだけで給与も上がり、仕事ができない人、いわゆる社内失業した人でも続けることができるシステムです。

そのシステムの利益を享受したという自覚がないと、転職マーケットでは苦戦します。

久間:ここでマーケット感覚が必要になってくるのですね。自分を商品として見たとき、どの看板を持っていれば売れるのか、という発想を持つ。

永楽:転職マーケット的にはそういうことですね。これからは会社と対等に付き合い、自分も会社を利用してやる、と考える気持ちが必要になります。

不本意な異動や転勤が打診されたとき、受け入れるか拒否するかは自分次第。そのときに選択肢があるかないかでキャリアと人生が決まります。

久間:会社と対等に付き合うと簡単に言いますが、具体的にはどのような行動を取ればいいのでしょうか?

永楽:たとえば、自分の仕事が終わったとき、どのような対応をするかでしょう。日本企業は、機会不平等・結果平等の文化ですから、仕事ができる人ができない人を手伝うことを美学としています。

しかし、自分に与えられた時間を他人のために使うという解釈もできます。その時間の使い方を意識することですね。

手伝うことで自分のスキルと評価を上げる考えもあれば、手伝わず、自分のインプット作業のために時間を使うという考えもあります。

どちらも正しいように思いますが、結果、自分の他者評価が上がる選択を普段から意識するということです。

久間:自分なりに線引きをして、組織の犠牲になったと思わないよう、考えて行動したいと思います。

転職する前に読んでおきたい本

転職市場の実態を赤裸々に語っている一冊。“大全”とタイトルの通り、転職にまつわるあらゆる事象が丁寧に解説されています。

はっきりと自分のキャリアプランが見えていないのであれば、読んで損はないでしょう。

転職を検討している人はこちらもどうぞ

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