ビジネスパーソンインタビュー
ぼったくられた大学生が、いずれ世界を熱狂させる。
田端信太郎も舌を巻く「振り切り力」。ブログがバズってAV男優になった男・篠塚康介の生き様
新R25編集部
新R25では、これまで多くの著名人に取材してきました。
しかし一方で、「まだ世間に知られていない逸材」が、どこかにいるのではないか?という思いも常にあります。
そこで、さまざまなインフルエンサーに、“自分のまわりで、最近注目している人”を推薦してもらうことに。
今回はどんな逸材が登場するのでしょうか?
【田端信太郎(たばた・しんたろう)】NTTデータを経てリクルートへ入社し、フリーマガジン『R25』の立ち上げに参画。その後ライブドアに入社し、ライブドアニュースを統括。2012年にNHN JAPANに移り、2014年からはLINE上級執行役員としてLINE関連の法人ビジネス全般を統括。2018年にスタートトゥデイに入社し、2019年5月にZOZO(スタートトゥデイから社名変更)執行役員 コミュニケーションデザイン室長に就任。同年末に退職。著書に『これからの会社員の教科書』(SBクリエイティブ)などがある
リクルートでフリーマガジン『R25』の立ち上げに参画。その後ライブドア、LINEなどを渡り歩き、先日は“ZOZO退社”で話題になった田端信太郎さんが「めちゃくちゃ面白いヤツがいるぞ」と教えてくれたのは、篠塚康介さん。
早稲田大学に在学しながら執筆していた“風俗ブログ”が話題になり、現在は「日本一のAV男優」を目指しているのだとか…。
「自分の弱さをさらせ」という意味で、普段から「パンツを脱げ!」と公言している田端さんにインタビュアーをつとめていただき、「リアルにパンツを脱いでいる」篠塚さんの魅力を引き出してもらうことにしました!
「勉強ばっかりしていた」篠塚さんが、「このままじゃクソな大人になる」と思ったきっかけ
田端さん
篠塚くんと会ったのは、今日で3回目かな?
「性」にとにかくストイックな姿勢に、尊敬の念を抱いてるんですよ。
篠塚さん
ありがとうございます(笑)。
田端さん
俺もちゃんとバックグラウンドを知らないんだよね。どういう経歴なんだっけ?
篠塚さん
もともとずっとマジメで、勉強ばっかりしてきました。
僕、お母さんのことがずっと好きで。お母さんは中国人で、家庭が複雑だったこともあって、とにかくお母さんを喜ばせたいってずっと思ってるんです。
口グセのように「東大を出て商社に入って」って言われてたんで、そのためには勉強頑張らなくちゃって。
(めちゃくちゃマジメないいヤツじゃねえか…)
篠塚さん
でも高校受験に失敗して、大学も東大には入れなかったんです。
早稲田に入って、サークルのヤツらと高田馬場のロータリーで酒飲んでゲロ吐くっていう生活をしてました。
田端さん
よくいる大学生だったわけね。
篠塚さん
ただ、まわりがどんどん童貞卒業していって…僕はずっと童貞で悩んでたんですよ。
田端さん
若者らしいね~。
篠塚さん
それで「ソープに行こう!」と思って池袋に行ったら、キャッチの人に「AV女優とやれるよ」って言われて。
え?
篠塚さん
「保証金30万円払ってくれる?」「ないなら立て替えておくから、今あるだけ払ってくれればいいよ」とか言われたんで、お金を払っちゃって…
ホテルの部屋まで行ったんですけど、女優なんて来るわけない。
結局、12万円ぼったくられたんです。
田端さん
(笑)
篠塚さん
すぐ交番に行ったんですけど、「はあ?」っていう目で見られて、説明したら説教されました。「授業料だと思って諦めなさい」「そういう遊びするなら、ちゃんと調べてから行きなさい」って。
情けなさすぎて、もう死ぬしかないなと。
田端さん
極端だな!
「2018年6月8日です。金曜日でした。忘れもしません…」
篠塚さん
でも死ねなかったんです。
それで自分の人生について悩んで…頭もいいし、コミュ力もあるほうだと思ってうぬぼれてたんですけど、「今までの俺って何だったんだ?」って絶望したんです。
流されて、酒ばっかり飲んでる。「このままじゃクソみたいな大人になる」って思ったら泣けてきた。だから1回死んだつもりで、なんでもやってみようと思って…
田端さん
人生の転機だったわけだね。
篠塚さん
それで、バナナのコスプレをして大学に行きはじめたんですよ。
田端さん
なんでだよ!(笑)
篠塚さん
ホリエモンの本読んで、「俺は人の目を気にしすぎだ、このままじゃダメだ」って思って…
田端さん
意識が高いんだか低いんだかわかんないんだよな…
そこで「起業します」とかに行かなかったのは面白いけどね。
篠塚さん
あと、大学生って酒飲んでるばっかりでダサいなって思って、「禁酒会」っていうサークルをつくりました。大学の食堂で、お酒全部買い占めて捨てたり。
田端さん
また仕入れられるだけだろそれは(笑)。
篠塚さん
みんながお酒飲んでる駅前のロータリーに行って、自分たちだけみんなで牛乳飲んで、牛乳で鍋してました。
でも牛乳飲みすぎて気持ち悪くなって、結局ロータリーで吐いてるんで「これ酒と同じだな」ってなったんですけど。
コイツは何を言っているんだ…
小説家のような文章。大学に呼び出されたことがきっかけで、一躍有名に
篠塚さん
2018年9月に、ぼったくりの話をブログに書いたんです。
そしたら友だちが「お前最近ヘンだったけど、そんなことで悩んでたの?」って面白がってくれたんですよ。
田端さん
ブログで言語化したことでラクになったと。
篠塚さん
それで、風俗に通って“風俗ブログ”を書き始めました。もともと文章は得意だったんで、「俺、書けるな…」って。
田端さん
篠塚くんの文章って、ちょっと村上春樹みたいだなって思うんだよね。文章の解像度が高い。
ぼったくられて「クソッ!」と思ってるんですけど、それを俯瞰してる自分がどこかにいるというか。客観視してるから情景が伝わる。
https://xiao3zhong3.com/entry/2018/09/19/013854こんなみっともなくてダサくて死んだ方がいいドーテイは未だかつていたことがないでしょう。
翌日親にオブラートに包んで打ち明け、すると「生きて帰って来てくれただけでよかった」と行(編註:言)って10万円僕にくれました。
たぶんこの時僕は人生で一番泣きました。声をあげて泣きました。そして泣き顔を自撮りしました。この時決意したのです。
俺は強くなる。もっと頭も強くして、身体も鍛えることに決めました。
ぼったくり事件について書いたブログより
篠塚さん
風俗ブログって、だいたい文章がクッソ下手なんですよ。あと、男しか読んでないと思う。
僕のブログは、「どんな人でも読みやすいようなエロ」を意識してるんで、女性読者も多いんです。
田端さん
しかも篠塚くん、たまにおしゃれな感じの文章も書くでしょ。芥川賞の選評でよく言う「瑞々しい感性が…」って感じの(笑)。
昔の村上龍みたいな感じもするんだよね。
風俗ブログを両村上にたとえる田端さん。ファンに怒られません?
篠塚さん
楽しくなって風俗ブログを書きつづけてたんですけど、2019年6月にブログが大学に“通報”されて、教務主任に呼び出されました。
怒られるのかと思ったら、「違法なことじゃないし、文章も面白い。トラブルにだけはならないようにね」って感じで。
https://xiao3zhong3.com/entry/2019/06/17/132223「本当に先生によっては君の文章は読ませる文章だって言ってる人もいてね」
「ありがとうございます笑 僕は将来エロを発信する仕事がしたくてそれで学生のうちからこうやって自分のブログで書いてるのでどうしてもやめられないんです」
「ええ、全然やめなくて大丈夫ですよ。先生の中にもそういう職業もあって、それももちろん認められてるんだから、こちら側がとやかくいう権利はないと。しゃおじょん君がこういうことを発信してるのもまあ就活みたいなもんなのかなって言ってる先生もいてね」
このブログがツイッターでバズり、一躍注目を集めることとなりました
田端さん
俺が最初に篠塚くんのことを知ったのは、それで話題になってたときだね。「早稲田は自由で良いよなあw」ってツイートしたの。
篠塚さん
そうでしたよね。
田端さん
大学つながりでいうと、村上春樹が学生結婚してジャズ喫茶をやってるから授業に出られない、ってときに教授が店に来て「君も大変だなあ」って単位をくれた話があるじゃん。
村上春樹さん37年ぶりの記者会見 冒頭あいさつ
作家の村上春樹さん(69)が4日、東京都新宿区の早稲田大学で、同校への資料の寄贈に関する記者会見に出席した。村上さんが国内で記者会見に応じる
記者会見で明かした大学時代のエピソード
田端さん
前澤(友作)さんだって、大学じゃなくて高校時代(早稲田実業高)だけど、スタジオ代出すためにずっとバイトしてたのを、いい先生がかばってくれて卒業できるようにしてくれたらしい。
“そういうヤツがいてもいいじゃないか”っていう校風が素晴らしいなと思った。今ふうに言うと「ダイバーシティ」よね。
そして男優へ…。一番の懸念は、お母さんのこと
田端さん
そこまではわかるんだけど…そこからなんで男優に?
篠塚さん
僕、中学生のとき男が好きだったんですよ。でも高校入学して友だちに打ち明けたら「お前ゲイかよ?」みたいな感じで…
黒歴史扱いで封印してたんですけど、エロを自由に発信するようになったら「あれ、俺バイセクシャルだわ」「俺なら誰でもイケる!! AV行くしかない」ってなって。
田端さん
いやいや…また発想が極端だな!
篠塚さん
「AV女優とやれるってダマされてお金を取られた俺が、今度はAV女優とやってお金をもらう」って面白いじゃないですか!
そのストーリーが思い浮かんだ瞬間、やるしかないなと。
まわりはみんな就活の話してるんですけど、「俺はAV男優かあ~!」とは思ってましたけど。
田端さん
あ、不安はあるの?
篠塚さん
そうですね。葛藤はあったんですけど、ブログが大学にバレたのが“神風”になった感じです。
ただ、一番の問題があって…お母さんのことなんですよね。
何より大切にしていたお母さん…
篠塚さん
中国ってAVが禁止されてるから、お母さんは、中国にいる親戚とか知り合いには「息子がAV男優」なんて絶対言えないんですよ。
「AVに出たい」って言ったら、「親子の縁切る」って言われて、家を出ました。一時はホームレスになって、今はシェアハウスに住んでます。
田端さん
そうなんだ…今ではお母さんとは?
篠塚さん
今はもう和解できて、仲良しに戻りました。
1カ月に1回ぐらいは家に帰るようにしてるんですけど、僕が好きなキムチ鍋をつくってくれるんですよ。「性病うつるから帰ってこないでよ!」とか言いながら。すごくいいお母さんです。
すごいいい話のオチが…性病…
ついに男優デビュー。「みんなが熱狂してくれることは、○○○○より楽しい」
田端さん
もう1作目の撮影は終わったの?
篠塚さん
はい! 1作目は「女装AV」なんですよ。
僕が女装して(以下自粛)
展開が速すぎるし情報量が多すぎる
田端さん
なんでだよ!?(笑)
篠塚さん
10年後に「最初のデビュー作なんだったんですか?」ってきかれて、女装AVですって言ったらめっちゃ面白くないですか?最初の出方が重要なんですよ。
去年の11月に初めての撮影が終わりまして。
田端さん
どうだった?
篠塚さん
やっと夢が叶ったって思って泣きそうでした。
撮影場所だった四谷三丁目からの帰り道、1人で歩きながら「本当にうれしいんで、1曲歌いたいと思います」って言って、歌いながら動画を撮ったんです。
篠塚さん
動画をツイッターに上げたら、「おめでとう!!」って反応がたくさん来て、みんなめちゃくちゃ盛り上がってるんですよ! まさに熱狂。
そのとき思ったんです。僕は、みんなを熱狂させるのが何より楽しいんだって。
それこそ、セックスより楽しいです。
「すごい人生を生きてるな…」
田端さん
篠塚くんのいいところはさあ、「被害者意識」がないところだよね。
童貞でぼったくられるという経験をして、社会に対する恨みを持っても仕方ないんだけど、“自分の愚かさ”をさらけ出して、人生を切り拓いてる。
篠塚さん
そうですね。まわりに合わせて「どこにでもいる大学生」をやってたときは、“人生が皮かぶってた”って思います。
今の僕のキャッチフレーズは「人生にフル勃起」です。
田端さん
ハハハハ!
まさに、“パンツを脱いだ”人間のカッコよさがあるよね。だから共感を呼んで、応援されるんだと思うよ。
「監督デビュー」「事務所立上げ」「海外へ」…篠塚さんの展望は明るい
田端さん
最後に、今後の展望とかがあったら教えてもらえる?
俺は、男優よりも監督に向いてるんじゃないかと思うんだけど。独自の世界観があるし、ものづくりの才能がありそう。
篠塚さん
あ、監督はやりたいです。イメージありますよ!
田端さん
想像できるね~。
ブログの繊細な文章のように、めちゃくちゃ細かい脚本書いてきて、その通りに演技しないと怒るっていう。お前は山田洋次か!みたいな(笑)。
村西軍団ならぬ「篠塚軍団」ができそうだもん。
R25世代にはピンと来にくいネタばかり言わないでください
篠塚さん
あとは、AV男優ってみんなフリーランスで不安定なところがあるんで、事務所をつくりたいんですよ。
事務所の名前だけは、もう決めてます。
田端さん
なに?
篠塚さん
「AV演者ーズ」って書いて、「アベンジャーズ」。
「ガハハハ!(笑)」
田端さん
これだけ振り切ってる人見ると、素直に尊敬するね。俺なんか普通の常識人だな~と思わされる。
ただあえてオッサンから言わせてもらえば、“燃え方”がハンパなくて若干心配かもしれない。常に燃えていたいランナーズハイ状態というか。
篠塚さん
ああ、それは本当にそうですね。常に駆け抜けてないとイライラしちゃうんですよ。
田端さん
情熱の熱量が大きい人って燃えてるときはいいけど、反動でダウンも大きいから。
篠塚さん
ダウンも大きいです。めちゃくちゃ落ち込みます。
ただ、ブログの内省的な文章はそういうときのほうが書けるんですよ。
「なるほど…」
篠塚さん
あとは、世界でも有名なAV男優になります。
今はしみけんさんが有名ですけど、それ以上に有名になって、自分のように童貞や性的志向に悩んでいる人を救いたいんです。
田端さん
素晴らしいね。篠塚くんみたいに自分をさらけ出せる人は、YouTubeとかでも世界的にウケそうだよね。
篠塚さん
YouTubeもイメージしてますね!
考えてるのは、世界中を旅しながらいろんな人と出会うAV。ロードムービーにして、タイトルは…
田端さん
え、なに?
篠塚さん
『世界の射精から』っていう…
田端さん
ガハハハ!
まあ、燃え尽きすぎないでほしいけど、篠塚くんは明るくてヘルシーだから、大丈夫な気はしてるよ。健康そうだし…今何歳なんだっけ?
篠塚さん
ハタチです。
田端さん
ハ、ハタチ…!
いやもう、年齢関係なしに、「お見それしました」だね…キミならどこに行っても大丈夫だ!
俺もオッサン面してられないね。刺激をもらいました!
「新年早々、AVの話…?」
そう思った読者の方もいるかもしれません。
でも、篠塚さんの「挫折から立ち上がった力」「明るく自分の未来を切り拓く姿勢」を見ていたら、新年のR25世代に力を与えてくれるのは、こんな人なんじゃないか、と思えてきたのです。
2020年、あなたも「心のパンツ」を気持ちよく脱いでみませんか?
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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