ビジネスパーソンインタビュー
「凡人サバイバル術」を学ぼう
【無料試し読み】ひろゆき『凡人道』
新R25編集部
2015年からフランスに拠点を移しているひろゆきさん。
移住した理由は、「日本で生きてても、明るい未来が見えないから」と言います。
近い将来、大企業に入っても数万人規模のリストラに巻き込まれる人や、結婚できず孤独になる人が増えていき、日本全体が暗い社会になる、とひろゆきさんは予言しています。
そんな暗い社会を生き抜く方法を伝えるため、ひろゆきさんは『凡人道』を上梓しました。
ひろゆきさんが客観的に日本を見て考えた「仕事選び」「お金との向き合い方」を著書『凡人道』より抜粋してご紹介。
凡人でも、いや、凡人だからこそ実現できるサバイバル思考を学んでいきましょう!
「好きな仕事」は搾取されやすい。“凡人”が日本でサバイブするための仕事の選び方
カンストの訪れが遅い仕事を選ぶ
先行きが超不安な日本で、「凡人」がどうやってサバイバルしていけばいいのか。
まずは、仕事ですね。どんな生き方を選ぶにしても、お金をどう手に入れるかは重要になってきますから。
仕事選びで迷っている人に僕がおすすめしているのは、「カンストの訪れが遅い仕事を選ぶこと」です。
カンストとはカウンターストップの略で、ここでは仕事の熟練度とそれに伴う生産性を示しています。
カンストの訪れが遅いというのは、要はマスターするには時間や手間がかかって、そのマスター具合により生産性がアップする仕事です。
たとえばプログラマーならレベル1で詳細設計を担当し、レベル5で基本設計に着手でき、レベル10でシステムの品質管理を担うといった感じでしょうか。
レベル20で複数案件を同時並行でき、レベル30でITコンサルになってあがり…みたいなのが一例です。
マンガに登場したプログラマーの浦島二郎の例は、業務歴が10年でプログラマーのレベルが10程度。
プロジェクトの特定部分を担当するチームメンバーのマネジメントを覚えている最中のPL(プロジェクトリーダー)で、年収が700万円という設定でした。
そんな彼が目標としていた先輩の龍宮乙葉は、業務歴18年でプログラマーのレベルが20のPM(プロジェクトマネージャー)。
彼女はプロジェクトの全体を統括し、各部門がうまく進行をしているかを取りまとめ、クライアント先への報告も担当します。
年収は1200万円と二郎の倍近くにアップしていますね。
プログラミング言語はさまざまな種類があります。
プログラマーは、この複数の言語を身につけることで活動領域も広がり、貴重な人材となって、レベルアップしていく。
SE(システムエンジニア)になり、PL(プロジェクトリーダー)を経て、PM(プロジェクトマネージャー)になる、といった順にポジションもアップしていく。
たいていの場合は、それに従って、収入も増えていきます。
そのため、業務10年目と業務18年目の人では生産性が顕著に異なり、それが給与にも反映されているわけです。
積み重ねが利かない仕事は給料が上がらない
一方、ガムを剥ぐ清掃のバイトを始めて1ヵ月の大井凛子の時給は580円でした。
その業務レベルはカンスト3のうちの2まで来ています。
そして、バイトの先輩である猿渡康二は5年働いていたようですが、時給は600円と凛子とたった20円しか違いませんでした。
彼も、おそらく始めて1カ月や2カ月で、この仕事をマスターしたことが予想できますね。
どんなに長く働いても、それ以上意味のあるレベルアップをしなくなってしまった。
積み重ねがこれ以上できなくなってしまったのです。
そのため、業務歴1カ月の新人と業務歴5年のベテランの時給が変わらない状態ということをマンガは描いていました。
こういう積み重ねが利かない仕事は、マンガの例にあったように、給料がたいして上がらない傾向があります。
そのため、「絶対にこれがやりたい」というこだわりがあるわけでもない人は、自分の職場で働く優秀だと思える3年上、10年上の先輩の給料をそれとなく探ってみるといいかと思います。
自分とたいして変わらなければ、おそらくそれはカンストの訪れも早く、自分と3年上の先輩、10年上の先輩では生産性も大差ないってことになりますからね。
それ以上そこの職場にしがみつくよりは、別のところに行ったほうがいいかもしれません。
投資は積み重ねが利かない仕事
さて、「通常の労働でお金が稼げないなら、投資で稼げばいいじゃない」という声もありますが、僕は投資というものは積み重ねが利かないカンストの訪れが早い仕事だと考えています。
マンガに登場した清掃バイトの猿渡もFX投資を10年行なっているようでしたが、1日で3万円も損してしまい、1週間分のバイト代をドブに捨ててしまいました。
投資は一度成功したとしても、常に勝ち続けられるとは限りません。
コツを覚えたり経験を積むことで儲けられるようになればいいのですが、僕が見てきた限り、投資歴1年の人と10年の人で差があることはなく、結果が出せるかどうかは、単に投資に向いている能力を持っているか、もしくは運がいいかだけの問題でしかないように思えました。
しかも、たとえ手堅くいい投資先を見つけたとしても、年の利回りは1%いくかどうかの銘柄がほとんどです。
資産が100万円の人だったら、1年に1万円得をするかどうかなんですね。
だったら、投資なんて勉強しないで日払いの仕事を2日間やったほうが、リスクなしで1万円以上稼げます。
正直、金融資産が1000万円程度貯まるまでは、投資について調べること自体が無駄だと思います。
「好きなことで生きていく」という考えに囚われない
2019年4月、「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」という法律が施行されました。
「長時間労働の是正」「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」「多様な働き方の実現」という3つの柱を持つこの法律が施行されたことで、日本社会でも生活と仕事の調和を目指すワークライフバランスという考え方が浸透してきた感じがします。
生活と仕事の調和というと、日本人だとつい「やりたい仕事や天職を見つけたい!」という発想に行き着きがちです。
でも、僕はそんな「好きなことをして生きていこう」みたいなのは、なかなか難しいな、と思っています。
働き方改革で本当に働き方が変わっていくなら、やりがいや生きがいを求めず、仕事はあくまでも稼ぐための手段と割り切る価値観が広まればいいと個人的には思います。
そうやって仕事は仕事と割り切って、それとは別に趣味や好きなことを楽しむほうが、健全ではないでしょうか。
そもそも仕事って、誰かがやりたくないことを代わりにやって、お金をもらうという場合が多いです。
それに、「やりたいこと」や「天職」なんて、自分ではなかなかわからない。
すごくやりたかった職業でも、実際就いてみたり、しばらくやってみたりすると、なんだか思っていたのと違うな…なんて、よくあることです。
プログラマーなんかも、働くことが嫌いな人のほうが向いているんですね。
プログラムが大好きな人は、自分でアルゴリズムを考え始めちゃったり、いかに早くするかばかり検討することに時間や労力をかけてしまうんです。
でも、プログラムは、「自分の手をいかにかけずに、コンピューターにやらせるか」を考えるものであって、すでに作られたものをコピペして使っちゃうような人のほうが仕事が早いんです。
だから、「やりたいこと」と意気込むよりも、「やっていて苦じゃないな」くらいを基準に仕事を探せばいいんじゃないかと思います。
基本的に、あんまり簡単すぎると飽きてしまうし、難しすぎたりすると苦痛に感じるので、自分の力よりもほんの少しレベルが高いくらいの仕事が、クリアしたとき適度な達成感が得られておすすめです。
そういう意味で、「まぁ苦じゃないな」くらいの距離感が適当だと思います。
好きな仕事の給料は安くなる
あと、好きな仕事ややりがいを感じる仕事には、搾取されやすいという落とし穴があります。
アメリカ社会は企業が従業員を解雇しやすい仕組みで回っているんですが、意外なことに失業率は約4パーセント。
一方、解雇しにくいフランスはアメリカよりもずっと高く約9パーセント。
解雇しづらいから最初から人を雇わないようになってしまっているんですが、そうすると足りない労働力は外注することになる。
日本も解雇しづらい社会なので、そういった流れになっていくと思います。
外注なら、残業や解雇にも細かな決まりごとがなく働かせ放題ですからね。
そして、こういう時に搾取されやすいのが、アニメーターやゲームクリエーターやプロゲーマーといった、やりたい人がたくさんいる仕事。
2019年の6月から7月にかけて、民間の生命保険会社が中高生に「将来なりたい職業」を聞いたところ、男子の上位には、ITエンジニア・プログラマー、エンジニアや公務員と堅実的なものに並んで、プロeスポーツプレイヤーやゲームクリエーターなどが入っていましたし、女子の上位には公務員や看護師などとともに、絵を描く職業(マンガ家、イラストレーター、アニメーター)や芸能人が入っていました。
こういった多くの人が憧れる職業は、安くてもやりたいという人もいるために、低賃金構造から抜け出しにくいんです。
ちょっと前に、人気のアニメ製作会社の給与が月給20万円にも満たないことが転職サイトでの記載をもとにネットで暴露されて話題になっていました。
同じく、人気女性誌をいくつも刊行している東京の出版社が募集した編集者の条件は、週休2日の契約社員で月給20万円。
税金やもろもろの諸費を引かれたら、東京でひとり暮らしをしたり家族を養ったりするにはかなりきつい金額です。
だから、こういった好きなことを本業にしてしまうのはツライですね。
これからの時代は、趣味なり本業とは別の副業なりを持っておいたほうが、自分だけの絶対的な幸せを手に入れやすいと思います。
趣味のつもりでもSNSで公開していたマンガがバズって出版社から声がかかって単行本化。
本業よりも儲かっているなんて「ワンチャン」も起こりえる時代ですしね。
ひろゆき「貧乏になった人はリアルでバカになり、ムチャクチャな方法でカモられる」
お金の欠乏は人間をリアルでバカにする
ほんの十何年か前までは「それなりの企業で稼いでマンションか一軒家でも買えば、リタイア後も安心」みたいな生き方が可能でしたが、これからの日本ではそういうロールモデルを持つことは、ますます難しくなっていくでしょう。
だからこそ、そういうことに振り回されないように、一般の方はお金を無駄遣いせず貯めておこうという考え方を僕は推奨します。
お金を貯めておいたほうがいい理由の1つに、思考力を落とさないためというのがあります。
というのも、自分の懐具合を心配してお金に欠乏を感じていると、人間の思考能力って大幅に落ちるんです。
米ハーバード大学の経済学教授センディル・ムッライナタンと米プリンストン大学の心理学教授エルダー・シャフィールが『いつも「時間がない」あなたに欠乏の行動経済学』(大田直子訳、早川書房)という本を出してるんですけど、その中に経済的な欠乏が人間の認知能力に与える大きな影響がわかる研究結果が載っています。
その実験では、ニュージャージー州のショッピングモールにいた人々にクルマに修理が必要になったという設定の質問をしたあと、知能検査を受けてもらったそうです。
すると、修理代300ドルと3000ドルでそれぞれ質問をしてみたところ、300ドルでは富裕層と貧困層で違いが見られなかったのに、3000ドルでは貧困層のみが知能検査の得点がかなり低くなるという結果になりました。
知能検査で正解を出したら報酬を上げるという実験も行ったそうですが、そのことでやる気を出した低所得者たちの成績も上がらなかったといいます。
それどころか、少し下がってしまったのです。
こういった結果はお金持ちには現れませんでした。
「これって頭がいいやつがお金持ちになるから、当然の結果じゃないの?」
そう思った人もいるかもしれませんが、同著にはそれを否定するもう1つの実験結果が載っています。
その実験はインドの農業地帯で行われました。
収穫前でお金が足りない状況と、収穫後でお金に余裕がある状況の農民に対して検査を行ったのです。
こうすることで、お金持ちと貧乏人を比べるのではなく、同じ人間がお金に余裕がある時とない時で、どう知能や判断能力に変化が出るかを調べることができます。
結果、お金への欠乏が知能に与える影響は、やはり大きいことがわかりました。
知能検査での正解率は、収穫後のほうが約25パーセントも高かったのです。
この違いはIQに置き換えると9~10ポイント相当にもなります。
これは「トンネリング」という、目先の欠乏に意識が行き過ぎて、他のことが見えなくなる視野狭窄現象が起きているからだそうです。
貧乏人ほどムチャクチャな方法でカモられる理由
お金がないとギャンブルなどで一発逆転を狙ったりする人を見て、周囲の人は「アホだなぁ」なんて思っているものですが、これってそもそも金銭的欠乏が脳のシェアを使いすぎていて本人の判断能力が下がっているからともいえると思います。
こういう脳の状態だと、ギャンブルでなくても、無駄遣いをしてしまったり、失敗する可能性が高い投資に手を出したりすることにつながり、無駄なリスクを負いやすくなる。
ずる賢いやつらにカモにされやすいわけです。
すると、さらにお金がなくなるという悪循環から抜け出せなくなってしまいます。
しかも、これはどれくらいの収入を得ているかに関係なく、たくさん稼いでいても「もっとお金がなければ、この生活を保てない」などのように欠乏への危機意識があると起きてしまう現象なので、どんな人にとっても他人事ではありません。
「自分へのご褒美」はただの損失
お金持ちをうらやむ人にそれが叶ったら何をしたいか聞くと、たいてい「タワーマンションに住みたい!」「ブランドの服やカバンが買いたい!」「豪華な海外旅行に行きたい!」などの答えが返ってきます。
これって生きるためには必要のないお金の使い方なので、僕には浪費に思えてしまいます。
普段の生活でこういう浪費がクセになってしまうと、生きるうえでのコストが上がっていきます。
僕は「凡人はお金を貯めたほうがいい」と思っている派で、こういった生活コストを上げることには賛成しません。
そして、とくに愚行だと思うのが、「自分へのご褒美」。
たとえばご飯を奢ってあげるなどの「他人へのご褒美」であれば、もしかすると奢った相手が恩を感じてくれたりして、自分への恩返しもあるかもしれません。
しかし、自分にご褒美を与えたところで、給料が増えるわけではない。
すなわち「自分へのご褒美」はただの損失です。
しかも、一生懸命働いていることを言い訳にして、「ご褒美エンジン」を使って自分の機嫌を取ることがクセになってしまうと、生活コストは上がることがあっても下がることはありません。
お金を貯めるためには、まずまっさきに止めるべき習慣のひとつです。
無駄遣いしそうになったら1カ月待ってみる
どうしても無駄遣いをやめられないという人におすすめしたいのが、欲しいと思ってから1カ月時間をおいて待ってみるという方法です。
食費や家賃は別として、洋服や外食、クルマやカメラみたいな趣味のアイテムなんかは、生きるためにどうしても必要ではないので、すぐに買う必要はありません。
だから、1カ月待ってみて、それでも買いたいと思ったら買えばいいと思います。
待っている間も、ただ我慢するだけでなく、欲しいものについていろいろ調べてみる。
たとえばクルマが欲しいと思ったら、どのメーカーがどんなブランドを出しているのかをはじめ、さらにそれぞれの機能やデザインの特性、実際に乗っている人のレビューなんかを調べまくる。
欲しいものについて調べるのは、それだけで結構楽しいものです。
しかも、僕の経験だと、こうやって調べているうちに満足してしまい、結局買わなくなることがほとんど。
現物ではなく、知識として手に入れてしまったんですね。
クルマだったら、お店に行って実際に試乗してみるのもいいでしょう。
そうやって行動すると、「だいたいこんな感じ」という知識や経験が得られます。
お金を浪費して物質を所有することだけが、満足を得るための手段ではありません。
「お金を使いたくない分野」では妥協しない
あとは、自分はこれにはお金を使いたくないなという「分野」を知ることです。
そして、その分野についての支出を徹底的に減らす努力をしてみる。
たとえば、僕がお金を使いたくない分野は「家賃」。
だから、家を探すときにも家賃には絶対に妥協しません。
住みたい地域が決まったら、まず最初に一番安い物件を探します。
そして、その物件を見に行き、納得がいかなかったら、次に安い物件に当たる。
とにかく安い順番に見ていくし、「ちょっと高いけど、疲れたからここらへんで妥協するか」みたいなことは、できる限りしないようにしています。
日々の支出を振り返ってみれば、こういう「お金を使いたくない分野」は誰にでもあるはずなので、一度自分の支出を洗い直してみてください。
自分の幸せレベルを下げずに支出を下げるポイントは工夫次第でいくらでもあるはずです。
現代って、いろんな技術が進歩したおかげで、お金持ちもお金を持ってない凡人も、やっていることは大して変わらないんですね。
江戸時代とかだったらお金のある殿様と極貧の農民では、暮らしぶりや遊びっぷりも月とスッポンだったんだろうけど、今は億万長者も時給1000円のフリーターもスマホを使って同じオンラインゲームで遊んでたりします。
1990年代にそれなりに便利に暮らしていた人たちは、クルマやオーディオ、テレビゲーム機などいろいろなアイテムをそろえていたため、お金が必要だったんです。
でも、昨今はスマホ1台持っているだけで、オーディオもテレビゲームも買わずに済むようになりました。
クルマについては、貸し借りするシェアリングエコノミーサービスが広がってきたことで、所有することにこだわらなくなっています。
流行りのサブスクリプション方式の映像配信サービスなんかも、月額1000円弱で世界中のコンテンツを観ることができます。
ひろゆきさん直伝「凡人サバイバル術」をもっと学ぼう
仕事がなくなるかもしれない。独身のまま結婚できないかもしれない。
そんな不安だらけの将来でも、幸せに生きる方法はあるとひろゆきさんは言います。
『凡人道』には、今回ご紹介した内容のほか、「恋人のつくり方」「欲望とのつきあい方」など、凡人だからこそ実践できるサバイバル術が掲載。
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