ビジネスパーソンインタビュー
「相手を嫌いにならない」ための努力も大事
「結婚はキケンな契約だから、徹底的にリスクヘッジする」下田美咲の“超合理的”結婚観
新R25編集部
結婚に対する価値観が変わりはじめている現代において、「一人ひとりに合ったパートナーシップや家族のあり方を提唱する」というコンセプトで多様な結婚観を紹介する連載「結婚2.0」。
今回お話を聞くのは、「コールの女王」として名を馳せ、現在は1児の母であるタレントの下田美咲さん。
「結婚はリスキーな契約」「離婚は早ければ早いほうがいい」など、過激に思える彼女の発言の裏にある真意とは…?
〈聞き手=あつたゆか〉
結婚は人生のリスク要因
【下田美咲(しもだ・みさき)】13歳でモデルデビュー。「飲み会コール動画」などのオリジナル動画を180本以上手がけてYouTubeにアップし一躍「コールの女王」として有名に。現在はエッセイストとして多数執筆、複数のマガジンも毎日更新中。その常識にとらわれない価値観が10〜40代の女性から支持されている。2016年に結婚し、現在1児の母
下田さん
私、結婚ってみなさんの想像以上にリスキーな契約だと思ってるんです。
あつた
えっ、なぜですか?
下田さん
だって相手が不健康な生活を送って病気になったら介護しなきゃいけないし、お金も払わなきゃいけないじゃないですか。
私自身は徹底的に健康管理をしているんですけど、パートナーも同じくらい健康に気をつけてくれるとは限らない。
結婚とは「自分がコントロールできない命を抱えること」であり、人生のリスク要因だと思います。
あつた
世間一般的には「結婚=幸せ」というイメージが強いと思うのですが、下田さんはかなり結婚を悲観的に捉えているんですね…意外です。
下田さん
幼稚園の頃から「結婚なんて人生の墓場だ」と思っていました。自分の両親も円満ではなかったし、周囲でも結婚の成功例なんて見たことがなかったので。
これだけみんな失敗しているんだから、私も失敗するに決まってる。周囲を見ているうちに、常に最悪の事態を想定してリスクヘッジするようになりました。
あつた
下田さんといえば飲み会好きなイメージがありましたが、けっこう冷静な部分もあるんですね。
下田さん
そうですね。
結婚生活は「大好きだから一緒にいたい!」という積極的な意思がない限りは、なんとなく続けるほど甘いものじゃないと思いますよ。危ない。
「恋愛も結婚も、1回目で成功することはないと思っている」
あつた
じゃあ、そんな下田さんはなぜ結婚しようと思ったんでしょうか?
下田さん
ひと通りやりたいことをやり終えてしまったからですね。
いわゆる「独身遊び」といわれるものは謳歌しつくしてしまって、あとはもう「結婚式」くらいしかやりたいことがないな、と。
そんなときに好きな人にプロポーズされたので、結婚しました。
あつた
え、そんな軽い理由!?
でもさっき「結婚は危ない契約」って言ってましたよね…!?(混乱)
下田さん
結婚式後にうまくいかなかったら離婚すればいいと思っていたので、そこはリスクだと思いませんでした。
あつた
結婚相手を選ぶときってもっと慎重になると思うのですが、離婚に抵抗はなかったのですか?
下田さん
あまりないかもしれません。だって結婚に限らず、根本的に1回目の試みで成功することはないって考えてるから。
はじめての彼氏を思い出してみてほしいんですけど、いまのパートナーとだいぶタイプのちがう人を選んでませんでしたか?
あつた
あ、たしかにそうかも…
下田さん
でしょ?
いろいろな人と付き合う中で、「私はこんな人の方が合ってるんだな」というデータが溜まっていき、最初の相手とは全然ちがうタイプの人を選んだりするじゃないですか。
あつた
わかります。
下田さん
だからはじめての彼氏とは結婚しないし、はじめての旦那さんと一生添い遂げることはないと思っていました。
結婚前はそもそも「自分はどんな人と結婚すれば合うのか」もわかってない状態なので、まずはデータ収集からはじめないと。
あつた
データ収集…(笑)
そう言われてみると、「結婚前にすべてを見極めろ」というほうが無理な気がしてきました。
下田さん
そうですよね。もちろんいまの旦那さんのことは大好きですが、1回目の結婚で成功したら奇跡だと思ってます。
出産はやり直しがきかないので別ですが、子どもがいない場合は「まずは結婚して情報を集める」という考え方もあっていいのかなと。
あつた
なるほど。
下田さん
あと私、「離婚は早ければ早いほうがいい」とも思っています。
あつた
なんでですか!?
下田さん
スピード離婚は世間から非難されやすいですが、3年目で別れても、25年耐えてから別れても、どれも同じ「結婚に失敗した人」じゃないですか。
むしろ耐えた分だけ歳をとってしまうので、そこから始められる新しい人生の幅が狭まってしまう。
「結婚したから」という理由で相性の悪い相手なのにずっと耐えたり、愛のない結婚生活を送ったりする方が人生のダメージが大きいと思います。
あつた
とことん合理的ですね。
下田さん
もちろん子どもが物心ついてしまったら少し考えなくてはいけないですけど、そうじゃなくて違和感がある場合は、さっさと離婚したほうがいいですよ。
あつた
(結婚観を聞きにきたのに、離婚というワードが炸裂している)
世論に流されず、自分がされて嫌なことはハッキリ伝える
あつた
「結婚式がしたいから」というカジュアルな理由で結婚された下田さんですが、エッセイを読んでいると出産後も夫婦円満な印象があって。実際どうですか?
下田さん
旦那さんは私のことを大切にしてくれますね。
妊娠中つわりで辛かったときも彼がいたから楽しく乗り越えられた部分もあったし、出産後も週2で旦那さんと子連れデートしています。
あつた
めっちゃ素敵だ…仲良しでいられる秘訣はありますか?
下田さん
「自分がされて嫌なこと」をはっきり相手に伝えることですね。夫婦でいつづけるためには「相手を嫌いになるような事件」をいかに未然に防ぐかがカギになります。
だから常識的には「それくらい許そうよ」と思われるようなことでも、勇気を出して伝えるようにしています。
あつた
たとえば…?
下田さん
うちでは仕事のためでも、キャバクラや風俗に行くのは禁止です。そんなことが仕事に含まれる職場なら転職してほしいですね。
私を幸せにするために働いているのに、その働き方で私を不幸にするのでは本末転倒でしょ、と思うから。
あつた
仕事のためのキャバクラは一般的に「いいでしょ」と思われがちですが、嫌なら「ダメ」って言っていいんだ…
下田さん
私は言います。ワガママというよりは家庭を崩壊させないためのリスク対策なので、壊れてから後の祭りになるよりは先に禁止する方が思いやりかなと(笑)。
さらにいうと、うちはAVも禁止です。
あつた
AVも!?(笑)
下田さん
家庭崩壊するリスクは徹底的につぶしておきたいんです。特に不倫はトラブルの元になるので避けたい。
「AV女優を好きになったところで、どうにもならないじゃん」と思うかもしれないですけど、AV女優さんなんて東京で仕事してるんだから会おうと思えば会えるじゃないですか。
AVすら「リスク」と捉える下田さん
あつた
男性からするとかなり受け入れづらい要望だと思うのですが、旦那さんはどのような反応だったのでしょうか?
下田さん
旦那さんは普通に受け入れてくれましたね。
やっぱり結婚って「ずっと一緒にいようね」という契約だと思うので、それに対する向こうの覚悟も生半可じゃないなって思います。
あつた
2人の中で合意がとれているのがすごいですよね。
下田さん
恋人のときは「いかに自分を好きになってもらうか」という努力をすればいいけど、結婚生活をずっと送るとなると「いかに相手を嫌いにならないか」という努力も必要になってくると思うんです。
世間的には「こんなのいいじゃん」と言われることでも、夫婦仲に亀裂が入るリスクはそこらじゅうに潜んでいますから。
だから、自分の頭で考えて「私はこれが嫌なんだ」と意思表示をするのが大事だと思います。
あつた
AV禁止の話はぶっとんでいると思いましたけど、正論な気がしてきました。
「責任感のない父親なら即離婚する」
下田さん
意思表示の話でいうと、いつも旦那さんに「責任感のない父親ならいらないし、そんな人なら即離婚する」とも言っていますね。
あつた
…!!!
下田さんはいま1歳のお子さんがいらっしゃいますよね。子育てこそ父親がいた方がいいと思うのですが、なぜでしょうか?
下田さん
私、責任感のない父親が大嫌いなんです。
「離婚するとお父さんがいなくなってしまってかわいそうだ」という意見もあると思うんですけど、育児に協力するだのしないだので両親がギスギスしていると、子どもに「自分の世話って嫌なことなのかな」と思わせてしまうじゃないですか。
父親が育児をしないのは論外だし、日常生活で少しでも責任感が見られないような行動があったら即離婚を提案します。
あつた
たとえばどんなシーンで「責任感がない」と思うのですか?
下田さん
たとえば、私が家事をしている途中に「赤ちゃんのオムツ替えてくれる?」と旦那さんにお願いして、「ちょっと待って、これ終わったらやるから」と後回しにされたとしますよね。
その時点でもう離婚や別居が頭をよぎります。
あつた
ええっ。
下田さん
赤ちゃんの肌は敏感だから、その「ちょっと待ってて」の5分間でかぶれちゃうんです。
「父親なのに、赤ちゃんのオムツより優先することってなんなの?」って。
あつた
ちょっと厳しすぎるような気もしますが、赤ちゃんのことを第一に考えた上での提案だと。
下田さん
そうです。父親がいなくなることより、子どもに「自分の存在は邪魔なのかな」と思わせてしまうマイナスのほうが大きい。
旦那さんからは「離婚と別居というワードを軽く使わないで」と言われるんですけど、ハッタリではなくていつも本気で言っています。
あつた
下田さんは本当に自分の意見をはっきり言うんですね。
下田さん
はい。子育て中は特に「赤ちゃんの命を守る」という難易度の高いミッションを最優先にしなければいけないので、普通に生きているだけで夫婦仲は危機にさらされます。
結婚生活はいまのところかなり順調ですが、いつだって「私たち夫婦は離婚する可能性を持っている」と思いながら過ごしていて。
特に子育て中は相手のことを嫌いになるキッカケが多くなるからこそ、「理解してよ」「察してよ」じゃなく、嫌なポイントをはっきり明示していますね。
あつた
ここまで要望がはっきりしているとむしろ清々しいですね。
主張に対する根拠も明確で、筋が通っている気がします。
離婚できる経済力を身につけてから結婚すべき
あつた
最後に、結婚を考えている20代の読者にアドバイスをいただけますか。
下田さん
「離婚できる力を身につけてから結婚する」というのがいちばん大事だと思いますね。特に女子。
あつた
また「離婚」というワード…!(笑)
それはなぜでしょうか?
下田さん
金銭面で依存してしまったら、相手に言いたいことを言えなくなっちゃうじゃないですか。
あつた
下田さんがこれだけ旦那さんに意見を言えるのも、離婚したとしても経済的に困らないからですもんね。
下田さん
はい。実は私、自分ひとりで子どもを成人まで育てられるだけのお金を貯めてから息子を産んだんですよ。
あつた
すごい。ちなみに、それってどれくらいのお金になるんでしょうか…?
下田さん
3000万円は最低限の生活や教育を受けさせるために必要なお金。
でもそれじゃ全然足りないので、子どもがスケート選手や医者を目指したとしても大丈夫なような額を独身時代には貯めきってました。
あつた
つ、強い…なぜそこまで準備してから産んだんでしょうか?
下田さん
いい夫がいい父親になるとは限らないじゃないですか。
だから、万が一クソみたいな父親で離婚することになったとしても、ひとりで子どもを養えるような経済力を身につけようと13歳の頃には決心していました。
小さいころに実家でお金に関するトラブルが多かったので、「お金がない」という理由で夫婦喧嘩する家庭にはしたくなかったんです。
あつた
幼いころの家庭環境が影響しているんですね。
下田さん
はい。大切な人との仲がお金で壊れるのはもう嫌だったんです。
特に父親としての自覚って「育てないと育たない人」の方が多いと思うから、幸せな結婚生活を送りたいんだったら経済力をつけてパートナーと対等に話せる関係になるべきだと思いますね。
あつた
最初は「離婚」を連発する下田さんにびっくりしていたのですが、お話を聞いているうちに納得しました。経済力は大事ですね。
下田さん
そうですね。よく家事の分担で喧嘩をする夫婦がいますが、お金があれば家事代行を頼んだり家電を買ったりすることで解決できるじゃないですか。
夫婦喧嘩の9割はお金で解決できると思います。逆に、夫婦仲なんて睡眠不足や空腹、体調不良が続くと簡単に壊れますから。
だから、夫婦間の「愛」なんてアテにしないで、ちゃんと睡眠をとってお腹を満たして、快適な家に住んで、パートナーを気づかう余裕があるぐらいの生活をするのが大事です。
あつた
結婚の話を聞きにきたのに、「仕事がんばろう」という気持ちになりました…
「結婚はリスキーだからこそ価値がある」
あつた
最後に、結婚してよかったことをお聞かせいただけますか。
下田さん
結婚はリスキーと散々言いましたが、だからこそプロポーズの威力はすごいと思います。
「こんなリスクのある契約を提案してくるなんて、めっちゃ私に惚れてんじゃん!」って。
そこまでして自分を選んでくれたんだから、自分も旦那さんを大事にしようと思えるし、そこに結婚の価値があるなって思います。
あつた
おお、やっと結婚の良さを語ってくれた…!
下田さん
ゼクシィのCMにもあるように、いまは結婚なんてしなくたって幸せになれる時代です。
でもだからこそ、結婚というリスキーな契約をしたくなるなんてよっぽどの愛で、頭がおかしくなるほどの恋で、そんな気持ちになれること自体が幸せだと思うんです。
大切な人とずっと良い関係でいるためにも、新R25の読者のみなさんにはまずお仕事をがんばって、自立した人生を送ってほしいですね。
記事中に20回以上出てきた「離婚」という言葉。その裏には、幼いころの経験をバネに経済力を身につけた下田さんの強さがありました。
「結婚相手選びには失敗したくない」というのがひと昔前のスタンダードだとしたら、「結婚してもどうせ失敗するんだから、とりあえず結婚してみる」というのが下田さんの価値観。離婚すらもポジティブに捉える時代の到来を感じました。
下田さんほど自立するのは難しいかもしれないけれど、私も目の前の仕事をがんばろう。
キレのある名言をたくさん残してくださった下田さん、ありがとうございました!
〈取材・文=あつたゆか(@yuka_atsuta)/編集=渡辺将基(@mw19830720)/撮影=森カズシゲ〉
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