

“遺伝的夜型”は全体のたった10%
夜型生活は頭が悪くなる!? “時間”の専門家が語る「ラクに早起きできる方法」とは
新R25編集部
私、もともと夜型人間なんですが、最近頑張って早起きをして“朝活”をしようとしてるんです。
しかし、これがかなりツラい!「自分は夜型人間だから…」と、早起きを諦めてしまった人もいるのではないでしょうか。
でも、考えてみてください。そもそも「夜型」って何なんだ? いつからそうなった? 遺伝?
というわけで、早稲田大学教授・柴田先生に「朝型・夜型の真実」について聞いてきました。
〈聞き手=いしかわゆき(新R25編集部)〉
【柴田重信(しばた・しげのぶ)】早稲田大学理工学術院教授。先端生命医科学センター長。九州大学院薬学研究科博士課程単位取得。薬学博士。著書に『時間栄養学』(女子栄養大学出版部)、『体内時計健康法』(共著/杏林書院)など
夜型の人は「頭が悪くなる」「出社はしてるけど仕事ができない人になる」!?
~指定された取材時間は、朝9時…~

いしかわ
(眠い…)朝早くからお邪魔します!

柴田先生
あっ、もう仕事は終わっているので大丈夫ですよ。7時から仕事してるから。

いしかわ
!? 早い! やっぱり先生も朝型なんですねぇ…(目をこすりながら)。
実は私、最近「朝活」がしたくて、早起きを頑張っているんですよ!

柴田先生
なるほど。それはとても良いことだと思いますよ! そもそも、夜型ってデメリットしかないですから。
まず、頭が悪くなります。

いしかわ
(いきなりヤバいデメリットが来た)

柴田先生
以前、イタリアの生徒へのアンケート調査があったのですが、夜型の人はすべての科目の成績が壊滅的に低いという結果が出ました。当たり前ですよね。いくら夜更かしをしても学校に行く時間は皆変わらないわけだから、どんどん睡眠不足になっていく。
睡眠不足だと、頭も回らないから先生の話も教科書の内容も頭に入ってこない。これは生徒だけでなく、社会人でも同じことです。何でも朝からやるので、体内時計が間に合っていないんですよ。夜に授業をしてもらえれば、きっとそれなりの成績を取れるはずなんですけどね。
これが健康経営で問題とされている「プレゼンティズム」ですね。

いしかわ
プレゼンティズム…?

柴田先生
企業の生産力に悪影響を与える要因として「アブセンティズム」と「プレゼンティズム」というものがあるんです。
「アブセンティズム」というのはいわゆる病欠などで会社にいない状態のこと。そして、「プレゼンティズム」というのが、出社しているのに不調によって業務効率が落ちている状態のことを指します。

いしかわ
えっ、それって「ただ出社してるだけで使えない人」ってこと…?

柴田先生
そう。だから、会議でも何も発言しないし、何も吸収できないわけです。
常に眠そうなうえに役にも立たないなんて最悪ですよね。最近そういう人が増えてきているんですよ。

いしかわ
夜型、結構ヤバそうだぞ…
悪いのは夜遅くに寝ることじゃなくて、「社会的時差ボケ」

柴田先生
いしかわさんはなぜ自分のことを夜型だと思っているんですか?

いしかわ
いやぁ、昔から寝坊助で朝が苦手だったから…ですかね…? もう遺伝ですよ、遺伝!

柴田先生
なるほど。でも、「時計遺伝子」という、体内時計を司る遺伝子を調べた結果、遺伝性の「夜型」の人は約10%ぐらいだったというデータがあるんです。
この遺伝子だけで朝型夜型が決まるわけではないですが、生まれつきの「夜型」の人はそんなに多くいないと言われているんですよ。

いしかわ
えっ! そんなに少ないんですか!?
でも周りに夜型の人結構いるんですけどそれってもしや…?

柴田先生
いわゆるウソの夜型ですね。夜型は後天的にも起こりやすいんです。

いしかわ
そ、そうだったのか…。後天的なものはどのようにしてなるのでしょう?

柴田先生
そもそも、僕らが生まれ持っている体内時計は24時間以上の周期で動いているので、放っておくとどんどんズレ込んでいき、夜型になりやすいんですよね。
そのなかでも、もっとも体内時計を狂わせやすい原因は、「社会的時差ボケ」ですね。

いしかわ
社会的時差ボケ?

柴田先生
平日と休日の睡眠時間帯に差が生じることで引き起こされる状態ですね。
休日って大体昼くらいまで寝ている人が多いでしょう? 実は、それが夜型になる一番の原因なんです。例えば、平日は7時に起きているのに、休日は12時に起きてきたりしますよね。この5時間が、自分と社会との時差となるわけです。
いわば、日本時間で生活をしながら、外国の体内時計を持っている、という状態です。

いしかわ
ずっと日本にいるのに常に時差ボケ状態!それは確かにいつも眠いのも納得…!

柴田先生
そう。だから夜型を直す一番手っ取り早い方法は、まず、平日と休日の起床時間を統一することです。こんなふうに。
美しすぎる先生の睡眠時間

いしかわ
(毎日5時台に起きている…)

柴田先生
土日で夜更かしをして体内時計がズレる。そしてそれが月~金にかけて少しずつ戻ってきて、戻りきる前に土日を迎えてまた体内時計がズレていく。そんな生活を続けていたら1週間常にボーッとしていてもおかしくないですよね。
逆に、毎日12時に起きているなら何の問題もないんです。社会との時差がないんですから。
一見「夜型」と思われがちなホストやバーテンダーなどの職業の人は、仕事をするべき時間にはちゃんと覚醒している。常に夜に起きて朝に寝てますから、自分の体内時計と彼らの社会的な時間にズレはなく、単純に違う国で暮らしている、みたいな感覚なんです。

いしかわ
なるほど。ちょっと勘違いしていました。夜に起きているのがダメなんじゃなくて、社会時間との時差がダメだったんですね…!
夜型を直すには、光と運動をコントロールしよう

いしかわ
他に、気をつけるべきポイントはありますか?

柴田先生
夜型を促進させる大きな原因は光、特にブルーライトですね。これは強いエネルギーを持っており、睡眠へと導いてくれるホルモンであるメラトニンの分泌を抑え、覚醒作用のあるコルチゾールの分泌を促してしまうんです。
さらに、それとは別に体内時計も遅らせてしまう、というのも最近の研究でわかってきています。

いしかわ
光が良くない、というのは何となく聞いたことはあったんですけど、そう言われるとかなり怖いですね…

柴田先生
もちろん、ないよりはあったほうがマシですけどね…。最近の人の夜型増加傾向の要因はスマホの普及とも言われているくらい、ブルーライトが夜型へ導く力は強いんです。
あとは夜遅い時間の運動も夜型化の原因になります。最近夜遅くにジムで走っている人をよく見ますけど、寝る前の運動は体内時計を夜型化させますし、身体を覚醒させてしまいますし、電気も点けていて相乗効果で夜型まっしぐらです。
体温は夕方の5~6時から夜に向かって落ちていくのでそれにともなって眠くなっていくんですけど、そこで体温を上げたら本末転倒です。

いしかわ
でも、寝る前に運動をするといいって聞いた気もするんですけど…

柴田先生
それはストレッチなどの軽い運動ですね。あとはお風呂につかるとか。
体温が少し上がって、その後落ちるタイミングで寝やすくなるんです。暑い季節だとすでに体温も高いので、クーラーをつけてさっさと寝たほうがいいですね。

いしかわ
…肝に銘じます。
遺伝性の夜型は朝型にはなれない。でも早起きを楽にする方法はある

いしかわ
ちなみに、仮に私が遺伝性の夜型だった場合、朝型の生活を送ることはできるんですか?

柴田先生
正直に言うと、朝型にはなるのはかなり厳しいです。

いしかわ
えっ、厳しい!?(ここまで来て!?)

柴田先生
ただ、遺伝性の夜型でも、「早起き」が楽になるようにすることはできます。
私が推奨しているのが「早起き早寝」です。

いしかわ
早起き早寝? 早寝早起きじゃなくて?

柴田先生
そもそも、夜型の人ってなかなか寝付けないんですよ。
だから、まず起床時刻を早めに設定して、とりあえず起きてしまう。そうすると、疲れがどんどん出てくるので、結果として早く寝れるようになっていくんです。
早起き生活を続けていれば、体内時計が前倒しになっていきますが、大体慣れるまで3週間はかかると言われています。この間は睡眠不足状態が続く、とてもツラい時期になります。大体の人は挫折してしまいますね。

いしかわ
なるほど。遺伝性の夜型は相当な努力が必要だけど、魔の3週間を耐え抜けば早起き体質にはなれるということですね。

柴田先生
そう。例えば、iPS細胞でノーベル賞を受賞された山中伸弥先生は、糖尿病の家系の方ですが、元気に過ごされていますよね。そういう遺伝子を持っていると自覚されているからこそ、とてもストイックに生きていらっしゃるんです。運動もよくされているし、食べ物にも気を遣っている。
だから、仮に生まれつきの夜型なのであれば、夜型の“誘惑”に誘われないようなストイックな生活を送るしかないんです。つい調子に乗って「飲み会に行くか!」ってやるとすぐ戻っちゃう。
だから、「私は夜型人間、もうある意味病人だから夜に誘わないでください」と言ってまわりましょう。

いしかわ
何でもかんでも遺伝のせいにしがちだけど、ストイックに生きていくことで改善されるんですね…

柴田先生
そこまでストイックになってまで早起きする必要があるのか?と思う気持ちもわかります。
ただ、特にR25世代ってあまり夜型を深刻な問題と捉えていないんですよね。徹夜をして寝不足でも元気!みたいな人もいます。でも、それってたまたま持ちこたえているだけであるとき急にガクッと来るんですよ。

いしかわ
R25世代でも急に不調が来る…?

柴田先生
夜型の生活は、生活習慣病のリスクも高いんです。
夜型の人は脂肪の多いものやお菓子を好んで食べ、朝だけでなく昼の欠食率も高いというデータも出ています。さらに、夜型の人は食べる時間が遅くなるので食べた後すぐに寝てしまいますよね。そうすると血糖値が上がって脂肪になり、肥満の原因になります。
「夜型」みたいな習慣って意思がないと直しにくいもの。朝活ブームが再熱している今こそ、朝型生活を心がけてほしいですね。
頭が悪くなるのは嫌でしょう?
〈取材・文・撮影=いしかわゆき(@milkprincess17)〉
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