企業インタビュー
「木々家」リブランディングから、地方創生まで…小島有史の進める“生命の循環”改革
地方創生にも取り組み中
新R25編集部
「やきとん 木々家」を中心とした飲食事業と食肉加工業、卸事業を展開する株式会社木々家(はやしや)。
オーナーの小島有史さんは、コロナ後の人材不足で休業を余儀なくされた赤字状態から、オーナー就任9カ月で社員数は4倍、黒字再生に成功。
飲食を中心としたビジネスプロデューサーと、M&Aを含む組織再生をされているそう。
【小島有史(こじま・ゆうじ)】4年間パーソナルトレーナーに従事していた際に、高タンパク、低脂質、低糖質だけでなく鉄分やビタミンの観点でも栄養価の高い豚ホルモンに注目。そこから一気に食にのめり込み、名店で3カ月間の修行を経て「もつ焼き ふじ屋」ブランドを立ち上げ。2023年から株式会社木々家のオーナーとなり、現在は食肉卸会社のジャパン物産株式会社を含む株式会社木々家の代表取締役を務め、新ブランドのプロデュースと、自社の成功事例、失敗事例をSNSで公開している。
そんな小島さんが、食からつくる「地方創生」を始め、ロイヤリティ0円という新しいFCの常識にも挑戦していくそうで…?
〈聞き手=山田三奈(新R25編集部)〉
15周年を迎え、リブランディングした居酒屋「木々家」
小島さん
株式会社木々家(はやしや)は、2008年の創業後、東京都池袋を中心に「やきとん木々家」6店舗を運営しています。
昨年末に迎えた15周年を機に、リブランディングを実施。ブランドコンセプトを「生の居酒屋」にリニューアルいたしました。
山田
生の居酒屋。どういう意味なんですか?
小島さん
「生命をいただいている生」 「ありのまま(生)で働こうの生」、そして「生きるの生」という3つの意味を込めています。
ただ呑んで食べて酔っぱらうだけの居酒屋じゃない。
日頃お客さまが背負っている責任や肩書などを取っ払って「自然体」になれる場所であったり、明日を生きる活力になったりするような場所にしたいとリニューアルを機に改めて思ったんです。
山田
“素”でいられる場所、みたいな。
小島さん
職場や家庭で頑張っている人が、食と酒を通じて“生”であれる場所であることが、私たちの考える居酒屋の価値です。
こだわりの肉、期待に応える食と酒…心身の豊かさを感じられる居場所を、居酒屋という手段で実現したいと思っています。
コロナで打撃…“スピード黒字化”できた理由
山田
そもそも、15年も愛されてきたのがすごいですよね。
小島さん
「やきとん木々家」は、2008年の創業から大人気店でした。
ただ…私が共同オーナーとして経営を開始した2023年は、休業せざるを得ないほどの人手不足に加え、コロナ禍を経て慢性的な赤字状態だったんです。
山田
飲食店はどこも打撃を受けてた時期ですもんね…
小島さん
じつは、私が過去につくった繁盛店の「もつ焼き ふじ屋」は、やきとん木々家にインスピレーションを受けて、伸びたブランドだったんですね。
当時、いくつかベンチマークしていた企業の一つが木々家で、職人気質のあるお店の雰囲気も含めて個人的に好きだったので通い詰めていました。私にとっては大ファンであり、上司のようなブランドだからこそ、「俺がやらないで誰がやるんだ」と並々ならぬ覚悟を決め、事業再生に本腰を入れて取り組みました。
木々家のみならず100%子会社のジャパン物産も同時に業務改革を推進し、9カ月という短期間で黒字再生を実現。
今もまだまだ再建の途中ではありますが、ビジョンや考えに共感してくれる社員も4倍に増え、10年前とはまた違った新しい木々家の“気”が生まれ始めています!
山田
なぜ9カ月という短期間で黒字回復できたんですか?
小島さん
そもそも、再生以前になんとか赤字でも踏ん張れていた一番の理由は、長く続けてくれている老若男女の優秀なアルバイトの存在。この存在なしには不可能でした。
赤字を黒字に再生するにあたり、9店舗あった店舗を6店舗へ縮小、SNS、WEB周り、クリエイティブの刷新、しつこく採用ナンパ活動、過去に働いていた社員全員へ会うなど、やれることは全てやりました。
店舗は縮小しましたけど、売上、利益どちらも増加しましたし、社員に関しては12名まで増えています。
山田
全部一人で…!
小島さん
体力って重要な経営リソースだと感じています(笑)。
山田
とはいえ、過去にいた社員全員に会いに行くのは大変そうです…
小島さん
もちろん都合が合わず会えない方も数人いましたが、木々家が伸びていた時期に勤務してくれていたスタッフと丁寧にコミュニケーションを取って、カジュアルな話し合いの場を何度かセッティングしました。
これからの木々家が目指すゴールを明確化し、「あなたならこんなバリューを発揮できる」と、未来を具体的に共有したことで、2名のメンバーが戻ってきてくれた上に、アルバイト2名が社員になってくれたんです。
一見非効率に見える地道な働きかけではあるのですが、飲食業界を含め職人が一定数活躍する業界では、とても重要な働きかけだと感じました。
現在、バイトを含む計120名のスタッフが在籍していますが、会社経営の軸として“ビジネスとウェルネス(身体的・精神的によりよく生きること)の循環”を大切にしているんです。
山田
ウェルネス…たとえばどういう?
小島さん
シンプルに表すと「明日が楽しみな状態」がウェルネスな状態のわかりやすい指標だと考えています。
そもそも会社のビジネス(資本主義)と社員のウェルネス(幸福主義)は、当たり前につながっていますから。
小島さん
参考にビジネス強化のために買収した子会社のジャパン物産(豚の食肉卸売事業)の話をさせてください。
“ウェルネス”を軸として業務改革を推進するなかで、ジャパン物産では、手間がかかるのに、やると損する業務が多いという課題を発見しました。
例を挙げると、新鮮で品質の高い商品を飲食店へお届けすることとは全く関係がないところで余計なコストがかかっていたうえに、業務負荷も高い最悪なオペレーションになっていたんです。
そこで、当然業務改革に踏み切ったのですが、「当たり前」の違いにぶち当たりました…
山田
なるほど…
小島さん
そこで、経営者都合では1STEPで進めたいところも10STEPくらいに分けて事前の根回し、チャットや電話での密なコミュニケーション、飲みニケーション、現場で仕事してくれていたメンバーの内的世界を深く観察しながら、一つひとつ変革を進めました。
すると、不思議なことに「もっとこうしたら良いのではないか?」など、現場の食肉のプロが提案してくれる機会が増えたんです。
「手間がかかるのに、損する業務が多かった」と言う課題は、その地域で活躍する現場のメンバーの内的世界に合わせたマネジメントと、豚の上顎と下顎を分解するためだけの機械の導入など、現場に本当に必要なテクノロジーの導入で解決することができました。
小島さん
結果、総売上もメンバーも変動することなく、赤字だったところから10%の営業利益が出る会社になり、子会社とともにW再生することができました。
正直、予想を遥かに超える結果になり驚いています(笑)。
山田
すごいですね!
小島さん
W再生を同時に実現することで、飲食店における負担の1つである「仕込み改革」を実現し、飲食店舗のメンバーたちは正真正銘のサービスマンとして、営業のみに集中することができるようになりました。
実は、自分が飲食の現場に出ていたとき、売れるたびに「明日も仕込むのか…」と葛藤していたんです…
山田
疲れ果ててしまったんですね…
小島さん
お客さんのために準備して、おいしく召し上がっていただけてうれしいはずなのに、疲れていると素直に喜べない…そんな悲しい経験を他の企業もしないで済むように、この改革を真似できるよう情報を開示していきたいです。
山田
他にも、変革を進めたことはあるんですか?
小島さん
肉問屋・ジャパン物産を買収して、「木々家」への仕入れルートから流通を整備しました。
①生産の近くからチームを持つことで安定供給&安定加工
②清掃と肉以外の料理の準備をするセッティングチームは清掃と調理スキルのある、子育てがある程度落ち着いた中高年主婦を主軸としたチームを編成
③飲食のプロでありサービスのプロたちは、お店に来店されたお客さんに全集中
それぞれの強みを活かしたほうが、絶対に良いと思うんですよね。これが私たちのいう、ビジネスとウェルネスの循環です。
山田
ウェルネスの循環…
小島さん
これが新しい木々家らしさだと思っています。もちろん、残業もないです。
飲食店では珍しいかもしれないですが、一般企業のように評価基準と処遇を明確化して設けており、残業や長時間労働が無いので、勤務時間はお客様に最高品質のサービス・商品・体験を届けることに全員がフルパワーでコミットできる環境を用意しています。
その分、働いている時間は存分に価値貢献してもらっています。「私たちはスポーツチームだ」という合言葉のもと、チームプレーで高いQSC(品質、接客、清潔)をお届けします。
小島さん
これからは木々家以外のブランド開発にも注力したいと思っていて。
木々家を含んだ「食で循環をつくる会社」として更なるパワーアップを目指します。
既存ブランドの展望
小島さん
「やきとん木々家」の特徴はなんといっても、玄人にも自信を持って提供できる「ハイクオリティ居酒屋」だと自信を持っています。そして、コロナ禍を経験し、大変な思いをしながらも「破壊と創造」を経て、業務改革が実現したおかげで、再現性の高い出店ができる準備ができました。
これから「やきとん木々家」はちょっと変わったフランチャイズを始めます。それは、加盟店が毎月支払うロイヤリティはなんと0円!
山田
…⁉︎
小島さん
どこでお金を循環させるかというと、「仕入れ」です。肉の業態は特に、肉で儲けようとしても飲食店か顧客のどちらかに負荷がかかります。
居酒屋は特に、お酒が売れるお店が楽しんでもらえているお店であり、儲かるお店なのです。木々家の考えるフランチャイズは、新鮮そのものな状態で串打ちしたお肉を直接仕入れ、そのお肉代とクオリティを約束した串打ちを頑張った分、本部がお金をいただくモデルです。
通常のフランチャイズに比べて、長く続くモデルにこだわっています。これは、食肉卸会社を持っている木々家ならではの方法だと思います。
また、自社では新しいブランドを2つ準備している最中です。
山田
楽しみですね…!
食を通じたウェルネスの実現
山田
そもそも、小島さんはやきとん木々家で何を目指していますか?
小島さん
やきとん木々家は「明日への活力を得られる居場所を、居酒屋という手段でつくる」というテーマがあり、お酒の場ではあるが栄養価の高い食と働く人の活気にこだわり、人が心身ともに豊かさを感じられるウェルネスの実現を目指しています。
肉は栄養の塊であり、生きる活力そのものです。同時に、生命の循環に感謝する心も忘れません。
私たちが子供のころから自然と口にしてきた豚や牛をはじめとした食肉に向き合い、生きる活力そのものである、重要なタンパク質が全ての人へ供給され続ける未来をつくっていくことが、私の使命です。
山田
パワーと行動力がすごいですね…
小島さん
ここからさらに多くの循環を生み出す活動を広げていきたいと思っていて。
自社ブランドの運営だけでなく、経営難が続く企業を買収&再生する「再生事業」や、なかにがっつり入りビジネスプロデューサーとして動くことで他社の成功に貢献する「ビジネスプロデュース」にも着手しています。
一緒に活動を広げる仲間も募集中。「食」 「地域」 「人」が好きで仕事にしたい人や、クリエイティブづくりが得意な人は、インスタのDMも大歓迎なのでぜひお話を聞かせてください!
「木々家」ブランドの再生だけでなく、地方創生につながる新ブランドの開発や、再生事業・人材開発までパワフルに進めている小島さん。
そのパワーの源には…自身の“生(生き返り)”が土壌にあるのかもしれません。
採用も強化中とのことなので、興味のある方は応募してみては?
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