ビジネスパーソンインタビュー

「本音で生きると決めたら、この形になった」“一夫多妻”で暮らす西山家のリアル(前編)

「3人で幸せに生きる道もあるのかもしれない」

「本音で生きると決めたら、この形になった」“一夫多妻”で暮らす西山家のリアル(前編)

新R25編集部

連載

結婚2.0

2018/11/12

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結婚に対する価値観がいま、変わりはじめています。

生涯未婚率が男女ともに過去最高になる一方で、離婚する人も増加。「結婚は25歳までにするべき」「結婚した人とは一生添い遂げるべき」など、私たちのまわりにあった「当たり前」も少しずつ崩れつつあります。

「パートナーとずっと幸せに暮らすにはどうしたらいいんだろう?」

そんなことを考えながら家でネットサーフィンをしていたら、佐賀県に一夫多妻を実践している「西山家」という一家がいるという情報をキャッチしました。

日本では相当珍しい一夫多妻。どうしたらそんな家族の形になるのだろう? 気になった私は、早速取材を依頼。

多様化する結婚観をフラットに見つめ直す連載「結婚2.0」。価値観を揺さぶられた「一夫多妻」のリアルを、前編/後編の2記事にわたってお届けします!

〈聞き手=あつたゆか〉

どういう経緯で一夫多妻になったんですか?

ライター・あつた

西山家は、日本にいながら一夫多妻制を実現されていますよね。

旦那様である嘉克さんは、もともと同時に複数の人を好きになる恋愛体質なんですか…?

嘉克さん

いや、今まではノーマルな恋愛をしていて。自分でもまさかこんな形になると思いませんでした(笑)。

ライター・あつた

どういう経緯で今の家族の形になったのか、詳しく教えてください!

嘉克さん

最初に結婚したのが、ゆかりさんです。ゆかりさんの人として尊敬できるところに惹かれて、結婚を決めました。

ところが結婚して半年ほど経ったときに、別の人のことも好きになってしまったことに気づいたんです。それが、僕の事務所のアシスタントをしていた裕子さんでした。

左側が第一夫人のゆかりさん、真ん中が嘉克さん、右側が第二夫人の裕子さん。佐賀在住とのことで、今回はWeb会議ツールでの取材にご対応いただきました

ライター・あつた

結婚したばかりなのに別の人も好きになるなんて、ひどい…

嘉克さん

僕もすごく困っていました。ゆかりさんを大事にしたい自分と、裕子さんに惹かれてしまう自分が両方いて。

ゆかりさんのことを悲しませたいわけではないし、どうすればいいのか途方に暮れました。

ライター・あつた

既婚者であれば他の人を好きになっても、気持ちを抑えようとするのが普通な気がしますが…

嘉克さん

はい。僕も何度も裕子さんのことを忘れようとしました。でも裕子さんとは事務所で毎日顔を合わせる関係だったので、忘れたくても忘れられなくて…

職場で会う関係でなければ、結果は違っていたかもしれません。

ライター・あつた

たしかに、毎日顔を合わせていると忘れるのは難しいですよね。

嘉克さん

恋って、コントロール不可能なものだと思うんです。僕は「事故にあったようなもの」だとよく表現しています。

ライター・あつた

恋は事故…言いたいことはわかります(笑)。

嘉克さん

3ヶ月ほど本気で悩んだ結果、このままだとゆかりさんにも失礼だし、自分を隠していても何も始まらないと思ったので、正直にゆかりさんに打ち明けることにしました。

「裕子さんのことも好きになっている自分がいます」「これが本当の僕です」と。

第一夫人・ゆかりさん

打ち明けられました。しかも妊娠しているときに

ライター・あつた

妊娠しているときに…!

嘉克さん

ただ、打ち明ける前「これから夫婦生活を送るにあたって、僕が本音で生きるか、本音を隠して生きるか、どっちがいい?」とゆかりさんに聞いたんです。

ライター・あつた

その質問、ちょっとずるくないですか? 「本音で生きてほしい」って答えるしかないですよね(笑)。

第一夫人・ゆかりさん

そうなんですよ!(笑)。

なぜか大爆笑の3人

第一夫人・ゆかりさん

だからイヤな予感がしつつも、「あなたと生きるなら本音がいい」「そういう生き方しかあなたはできないでしょ」と伝えるしかなかったですね。

「彼の気持ちはコントロールできないから、あとは自分と向き合うだけだと思った」

西山家は、ゆかりさんとのお子さんが2人&裕子さんとのお子さんが4人の9人家族

ライター・あつた

実際に裕子さんのことを打ち明けられたとき、ゆかりさんはぶっちゃけどう思ったんですか?

第一夫人・ゆかりさん

「何言ってんだクソ!」と思いましたね。

ライター・あつた

ですよね…

第一夫人・ゆかりさん

「こっちはつわりで辛い時期なのに、そんなこと言うなよ!」「状況考えろよ!」って。

私、結婚に夢を見ていたタイプだったんです。「結婚したら幸せにしてもらえる」と思っていたから余計ショックだったし、女性としての自信もなくなりました。

ライター・あつた

結婚したばかり、しかも妊娠中にそんなことを言われたらショックですよね…

その後、どのように気持ちが変化していったんですか?

第一夫人・ゆかりさん

混乱する一方で、「裕子さんだったら夫が好きになっても仕方ないな」という気持ちもあって。

裕子さんには彼の事務所を支えてもらっていて、プライベートでもすごくお世話になっていたんです。

ライター・あつた

ゆかりさんは、裕子さんのことを認めていたんですね。

第一夫人・ゆかりさん

はい。あとは、嘉克さんが本当に喜ぶ生き方をしてほしいなと思いました。

ライター・あつた

本当に喜ぶ生き方…?

第一夫人・ゆかりさん

私が「裕子さんのことを好きにならないでよ!」と言ったところで、彼の気持ちが変わるわけではないじゃないですか。だから彼の気持ちをコントロールしないって決めたんです。

そうなったら、あとは自分と向き合うだけだなと。嘉克さんを選んだのは私だし、ありのままの嘉克さんを受け入れようと覚悟を決めました。

ライター・あつた

すごい覚悟ですね…

隠れて不倫する道を選ばなかったのはなぜ?

ライター・あつた

嘉克さんに質問なのですが、自分の気持ちを隠したまま夫婦生活を過ごす道もあったと思うんです。

それこそ、隠れて不倫したりとか。どうしてゆかりさんに正直に打ち明けようと思ったんですか…?

嘉克さん

隠れて不倫する度胸の方がなかったですね。

ライター・あつた

え。 普通、逆なのでは…?

嘉克さん

僕がゆかりさんの立場だったら絶対イヤだなと思いますし、僕は普段人の目を見て感じたことを作品にする仕事をしているので、職業柄ウソをつけないんですよね。

嘉克さんは人の目を見て感じたインスピレーションを元に書道の作品を作る活動をしています

ライター・あつた

なるほど。

嘉克さん

あとはそもそも、ゆかりさんと結婚したとき「この人と一生一緒に生きていこう」と決めていたので、その決断をした過去の自分たちに失礼のない生き方をしたいという思いもありました。

ライター・あつた

とにかく自分の気持ちに誠実な生き方をしているんですね。

「従来の結婚の形にとらわれず、3人で生きる道もあるのかもしれないと思った」

ライター・あつた

第二夫人である裕子さんはそのとき、嘉克さんのことをどう思っていたんですか?

第二夫人・裕子さん

私も嘉克さんに対して「好き」という気持ちを抱いていました。

ただゆかりさんと結婚しているのは知っているし、「ゆかりさんとの仲を壊してでも嘉克さんと一緒になりたい」という思いまではなかったです。

ライター・あつた

その後、どのようにして今の家族の形になったんですか?

嘉克さん

この問題をどう解決したらいいのか、3人で話し合いをしました。

そのときに「結婚ってなんだろう」「奥さんはこうすべきとか、旦那さんはこうすべきとか、世間でいう結婚に縛られなくてもいいのかもしれないね」という話になって。

第二夫人・裕子さん

聞いたことはないけれど、「3人で幸せに生きる道もあるのかもしれないな」と思ったんです。

「誰かが不幸になったらやめる」という条件で、3人で暮らす生活が始まりました。このスタイルになってもう6年くらいが経ちますね。

ライター・あつた

こうして経緯を聞いていると、良い意味ですごく印象が変わりました。

ちなみに日本で一夫多妻の形をとる際、戸籍上はどんな形になるのでしょうか?

嘉克さん

戸籍上は3人とも独身です。日本では重婚が禁止されているので、ゆかりさんと籍を入れたあとに離婚して、次に裕子さんと籍を入れたあとに離婚しています。

第一夫人・ゆかりさん

離婚後は旧姓を名乗れるので、名字はみんな西山です。

ライター・あつた

だからみなさん苗字が「西山」なんですね。そんな裏技があるとは…!

「一夫多妻だから辛いこと」はない。普通の夫婦と同じように、嬉しいことも嫌なこともある

ライター・あつた

ちなみに嘉克さんは、2人への愛情に隔たりはないのでしょうか?

野暮なことを聞くようですが、ゆかりさんと裕子さん、どちらの方が好きなのかな…と。

嘉克さん

好きなのは裕子さんですね。

ライター・あつた

おぉ、即答…!

嘉克さん

ただ、愛しているのはゆかりさんです。

ライター・あつた

なるほど。「どちらの方が大事」というわけではなく、愛と恋の違いなんですね…!

嘉克さん

そうですね。ゆかりさんのことは人として尊敬していて、人生の同志という感じです。

裕子さんとはもうちょっと恋人っぽい関係です。

第二夫人・裕子さん

ゆかりさんと嘉克さんの方が、夫婦としての絆が深いなって思います。

私はいつまでも恋愛をしていたいタイプなんで、ゆかりさんとは全然違いますね。

第一夫人・ゆかりさん

以前テレビに出たときに、彼が同じように「どっちが好きですか?」と質問されたんです。

そのときは「好きなのは裕子さんです」と言ったところだけが切り取られて、大バッシングを浴びたよね(笑)。

第二夫人・裕子さん

そうそう、「愛しているのはゆかりさんです」という言葉がカットされてしまって。

「第一夫人がかわいそう」ってめっちゃ批判されてた。はははは!(笑)

そこ、笑うとこではないのでは…(笑)

ライター・あつた

なんだかお三方とも、めちゃめちゃ楽しそうですね。

この生活をやめたいな、と思ったことはないんですか?

ゆかりさん・嘉克さん・裕子さん

死ぬほどありますよ!!!!

ライター・あつた

(笑)。やはり一夫多妻は大変なことも…?

第二夫人・裕子さん

いや、どこの家庭でもあるようないざこざですね。

「一夫多妻の家族だから辛いこと」はないです。何かあればいつも本音で話し合いますし。

ライター・あつた

3人はそれぞれ、昔から本音をオープンにする性格だったんですか? 

嘉克さん

いや、そうではなかったです。

この3人は、これまでずっとパートナーと良い関係性を築けなかった人たちなんですよ。それこそ僕なんかは、彼女と良い別れ方をしたことがなくて。

だからこそ、「自分が結婚するときは相手にとことん向き合おう、自分をさらけ出そう」と決めていました。

その結果、たまたま3人で生きるということが成立した感じですね。

ライター・あつた

正直、取材する前はすごく特殊な考えを持っている人たちなんだろうなって思っていました。

でもこうやって話を聞いてみると、みなさん意外と普通なんですね。

第一夫人・ゆかりさん

話すと「思っていたより普通だね」と言われることは多いです(笑)。

第二夫人・裕子さん

「一夫多妻だから○○」って意外とないんです。普通の夫婦でもシングルマザーでも一夫多妻でも、嬉しいことや嫌なことは同じように起きるじゃないですか。

夫婦の形が違うだけで、まわりが思っているよりもそれほど実態は変わらないんじゃないかなって思います。

ライター・あつた

お話を聞いていたら、そんなふうに思えてきました…!

「ウソをつかない」「本音で向き合う」という言葉が何度も飛び交った取材現場。何を聞いても笑顔で楽しそうにされている3人の姿は、普通の家族と変わりない(むしろより強固な絆がある)ように見えました。

明日公開する後編の記事では、「夜の営みはどうしているの?」「奥さん同士は嫉妬しないの?」など、さらに突っ込んだ西山家のリアルを探ります!

〈取材・文=あつたゆか(@yuka_atsuta)/編集=渡辺将基(@mw19830720)〉

公式インスタ限定で「あしたの記事」をチラ見せしてます!

新R25のインスタグラムアカウントを開設しました。インスタ限定で「#あしたの予告」をしていますので、読者の皆さまはぜひフォローをお願いします!

明日登場するのは…?

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