ビジネスパーソンインタビュー
「自分が自分の仲間になること」N/S高生が聞く"はたらくWell-being"を考える

"自分の限界"、どう超える?

「自分が自分の仲間になること」N/S高生が聞く"はたらくWell-being"を考える

新R25編集部

連載

「“はたらくWell-being”を考えよう」

Sponsored by パーソルホールディングス株式会社

2023/11/24

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パーソルグループ×新R25のコラボでお送りする「はたらくWell-being(ウェルビーイング)を考えよう」と題した連載では、「令和の新しいはたらき方」を応援するとともに、さまざまな人のはたらき方や価値観を通して、ビジネスパーソン一人ひとりが今もこれからも「幸せにはたらく」ための考え方のヒントを探していきます。

「N/S高生“はたらくWell-being”を考える」と題した本連載では、学校法人角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校・S高等学校に参加してもらい、“はたらくWell-being”を体現している人や応援している人、あるいは組織を取材し、高校生の視点からこれからの「幸せ」について考えます。

今回ご紹介するのは、雑誌「ラ・ファーファ」や通販サイト、広告などでプラスサイズのファッションモデルとして活動されている吉野なおさんです。

吉野さんは今年の6月に「コンプレックスをひっくり返す〜見た目のなやみが軽くなるボディ・ポジティブな生き方〜」という書籍を出版されました。

この書籍では、吉野さんが抱えていた見た目へのコンプレックスをどのように「ひっくり返した」のかということについて、読者に寄り添うように語ってくださっています。

吉野さんには、お仕事や自分との付き合い方という視点から、自分らしくWell-beingな生活を送るためにはどうしたら良いのかということについて、現役N/S高生の福井がお伺いしました。

東京学芸大学卒。学習塾を創立し、塾生の進路や将来についての相談を受ける中で、作家になることを決意。2005年に作家デビューし、20作品を国内で出版。講演活動など幅広く活動している。

2013年、日本初のプラスサイズファッション誌『ラ・ファーファ(発行:文友舎)』第1号目からモデルとしてのキャリアをスタート。以降は雑誌のみならず、通販サイトや広告など、プラスサイズのファッションモデルとして活動。モデルになる以前は、極端なダイエットのあと、摂食障害(主に過食症)を経験。回復した経験をもとに、SNSやコラムなどでの執筆活動や、取材やイベント講演などをしている。これらの活動を通して、体について、またはダイエット思考や食べることに対しての『あたりまえ』を揺らがせ、自己否定の罠から抜け出すアプローチを発信している

ファッションの力を借りて、自分の限界を超えてほしい

福井

本日はよろしくお願いいたします!

まず初めに、吉野さんがされているプラスサイズモデルのお仕事について教えてください。

吉野さん

プラスサイズモデルとは大きいサイズのファッションモデルのことです。

日本では2013年からプラスサイズモデルを起用したファッション誌を発行しており、私は第1号目からモデルをしています。

仕事ではファッション誌や広告、通販サイトでモデルとして出たり、インスタライブなども行っていたりします。

福井

2013年からということは、10年間もモデルをされているんですね!

お仕事のやりがいを感じるのはどんなときでしょうか?

吉野さん

やりがいを感じるのは、読者の方が自分の着たお洋服を「素敵」「いいな、ほしいな」「私も着てみたい」と思ってもらえたときですね。

あと特に嬉しいのは「自分にはどうせ似合わないだろうな」と自分の限界を決めている人が、ファッションの力を借りて変わることができたというお話を聞けることですね。

ずっと引きこもっていた人が外に出られるようになったとか、インスタでファッションが好きなプラスサイズのお友達を作って、一緒にお買い物に行っていますといった話を聞くと、とても嬉しくなります。

雑誌の撮影風景

変化には時間がかかるもの

福井

吉野さんの著書「コンプレックスをひっくり返す〜見た目のなやみが軽くなるボディ・ポジティブな生き方〜」を拝読しました!

記者(福井)は、この本から多くの気づきと勇気を得ました

福井

本では、過去の吉野さんは自分の体型をコンプレックスに感じていたと書かれていましたよね。

現在は自身の体型をどのように捉えているのでしょうか?

吉野さん

昔はコンプレックスでしたけど、今は存在している以上は大事にしてあげたいと思いますね。

昔はお腹が出ているのが嫌だとか、否定的な視点で見ていたんですけど、今はお腹が冷えているから温めようかな、体の調子で悪いところはないかな、マッサージしてあげようかな、といったように捉えるようになりました。

福井

表面的にではなく、内面に着目するようになったのですね。

そう捉えられるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

吉野さん

自分の価値観が変わったきっかけは、世の中には本当にいろんな人がいて、同じ人は一人もいないと気がついたことでした。

そして「私は一体誰になりたかったんだろう」と感じ、今まで苦しかったのは自分を否定し続けて誰かになろうとしていたからなのかもしれないということがわかったんです。

それまでの25~26年間は、他人に揶揄されたり、いろんな経験を経たりすることでて「痩せなきゃいけない」「こうならなくてはいけない」と自分を否定していましたが、そもそもその考え方が間違っているかもしれないと思い、今までやっていなかった方法を試してみようと考えました。

それが「自分を認めること」だったんです。

吉野さんが作成した、ダイエット広告のパロディ画像

福井

自分を変えるために新しいことに挑戦されたのですね!

ただ、自分を変えることに対する怖さはなかったのでしょうか?

吉野さん

変わる怖さ……。

昔は他人にすごく合わせていたタイプの人だったんですけど、なんでもそうやっていると自分に不都合なことが起きるんだっていうことを実感したんですよね。

変わるには、今の自分のやり方が本当に正解だったのかということに気がつくことが大事なんだと思います。

私は今までのやり方だと何も進んでいない、むしろどんどんネガティブな方向に悪化していく状態だということに気がついたので、変えようとしました。

福井

変わるためには、今のやり方を見つめ直すことが大事なんですね。

吉野さん

ただ変えようと言っても、一気に変わるのではなく徐々に慣らすことが大事なんですよ。

例えばある山を登っているときに違う山に行きたいと思ったら、一度その山を降りないといけないですよね。

それと同じで「自分が嫌い」と言っている人が自分を好きになりたいと思っても、すぐには変われないんです。

福井

登っている山を降りるように、変わるためには、長い道のりを歩む必要があるのですね。

吉野さん

自分を好きになれないと言っている人は、高さが似ているからと思って、今いる山から行きたい山に、一気にジャンプしようとしていることが多いんです。

だからまずは平地に行きましょう。

いきなり自分のことを好きになるのではなく、まずは自分が嫌いというところから、一つ一つ荷物をおろして山を降りていかなければいけません。

だから、魔法のように変化をすることを期待しない方がいいと思います。

失敗しても大丈夫。成功体験よりも小さな失敗を積み重ねよう

福井

吉野さんにとってのwell-beingな状態とは何でしょうか?

吉野さん

今が豊かであることかな。

世の中には未来ばかり見ている人もいるし、過去の栄光ばかり見ている人もいるんですよ。

例えば「俺はもうちょっとで甲子園に出ていたはず」と過去をひきずる人や「将来は何歳までに必ず結婚しなければ……」と先のことを見過ぎて焦っている人とか、現在のことが見えていない方は結構いるんです。

「今を豊かに生きると考えた方が、未来も豊かになるはずですよ。」

福井

今を豊かにするために、吉野さんがされていることは何ですか?

吉野さん

私は最近料理にハマっているので、お料理をしているときには、自分の気持ちが満たされます。料理の場合、うまくいったら美味しく食べられるんですよ。

その達成感で自己効力感も感じられるし、料理のバリエーションも増え、自然と豊かな時間が過ごせています。

また料理だと失敗しても、おいしくないとか焦がしちゃうくらいで、ある程度大丈夫なんですよ。

福井

確かに失敗しても落ち込みにくいですよね。

吉野さん

何も始められない、ポジティブに考えられないという人の話を聞いていると、失敗するのが怖い、こうすると嫌われるんじゃないかと考えて行動できないという話が結構出てきます。

よく成功経験を積むと自己肯定感が上がると聞きますが、むしろ私は、失敗しても大丈夫だという経験を積む方が良いと思います。

だから小さく失敗して、そこから学びを得た方が成長するはずです。

福井

「小さく失敗する」ですか……。

吉野さん

そうです。大体のことは失敗しても大丈夫なんですよ。

人の目を気にしすぎて行動できない人へ

福井

失敗もそうですが、私は人の目を気にしたり、嫌われることを恐れて行動できないことが多いです……。

吉野さん

万人に好かれたいと思うことはあると思うんですけど、人気のある芸能人でもアンチの人は出てくるし、100%の人に好かれることは無理なんですよ。

だから好かれたいと考えるより、自分がどんな人といて居心地がいいのかという点に視点を変えてみたらどうでしょうか?

あとは自分が「何か嫌だな」と感じた時がどんな時だったかをメモしておくことですね。

福井

自分が感じていることを言葉にすることが大事なのですね!

吉野さん

社会に出てみると、色んな人が色んな生き方をしているのがわかるんですよ。

だから、この人といるとモヤモヤすると感じてしまう人とは、距離をとっていった方がいいと思います。そして好きな人と関わる機会を増やしていくみたいな感じですね。

あとは自分の過去の経験をもとに「私はこういう人だ」と決めつけて、その後もそのモードでいってしまう人がいるんですよ。

福井

私のことを言われているみたいです……。

吉野さん

過去の経験はその時そうするしかなかったから起きた経験ですし、自分がどんな人かということはこの先変えることができます。

だから過去を引きずらなくても大丈夫です。

だって新しく出会う人だったら自分の過去を知らないわけじゃないですか。

知らない人であれば新しい自分を作っていきやすいので、新しい出会いは新しい自分になれるチャンスだと思ってもらいたいです。

ラ・ファーファモデル兼編集長、安藤うぃさん(左)と、吉野さん(右)のツーショット。安藤さんとは、モデル活動を始めてから出会ったという

成長のカギは、視野を広く、伸びやかに過ごすこと

福井

吉野さんの本の最後には「まずは自分が自分の仲間になってあげてください」という言葉がありますよね?

最後に、自分が自分の仲間になるための方法を教えてください。

吉野さん

何かを感じたときに、自分の気持ちに嘘をつかないことですね。

例えばむかついたのに隠しちゃうとか、こんなことを思っちゃいけないと自分の気持ちに蓋をしちゃうとか。

別に本人に直接言えというわけではなくて、ムカついたら「まじムカつくよね。そんなことあったらムカつくよ。わかるわかる。」みたいに、もう一人の自分を作って話を聞いてあげることがいいと思います。

福井

私はつい、成長のためにと思って自分を責めたり、厳しい言葉をかけてしまうんですよね……。

吉野さん

私はむしろ、否定している方が成長を止めてしまっているんじゃないかと思います。

肯定した方がもっと伸びやかに生きられると思うんですよ。

例えばですけど、親から「あんたって本当にダメな子ね」と言われながら育ったら、将来すごくひん曲がった人になりそうじゃないですか。

もしかしたらそれで受験に受かったりするかもしれませんけど「どうせ親は自分のことを愛してくれない」「条件付きで何かをしなければいけない」と考えるようになりそうですよね。

福井

確かに心が荒んでしまいます。

吉野さん

あと「こうじゃなきゃいけない」「こうしなければ成長しない」と思っている外側に成長のチャンスがあることもありますよ。

もしかしたら努力で何かを成し得た経験があるのかもしれないけど、自分が能動的になってない時でも成長していることって結構あるんですよ。

いろんな人と話している中で知識が増えたり、色んな価値観に触れて自分の考えが出来上がっていって、いつの間にか成長しているということもありますし。

だからもっと視野を広く持った方がいいです。

福井

視野を広く持つことですか……!

吉野さん

そして目に見えるもの、努力して得るものだけが成長ではないんです。

だから自分に厳しくしなければと思いすぎず、視野を広く持つことが大事なのではないでしょうか。

<取材・文>=福井亜梨

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