ビジネスパーソンインタビュー
北野唯我著『転職の思考法』より
20代は「経験」よりも「専門性」を磨け。会社が潰れても生きていける人になる思考法
新R25編集部
新型コロナウイルスの登場によって、社会が大きく変化しています。
新R25が立ち上げた新連載「変化の時代にこの一冊」では、これまで多くの本に触れてきたビジネスインフルエンサーたちが「社会が大きく変化している今だからこそ読むべき一冊」をセレクト。
その内容の一部を抜粋して、時代の変化に追いつけるような気づきをお届けします。
もし興味のある本に出会ったら、ぜひ購入してこの機会にじっくり読んでみてください。
今回ご紹介するのは、未経験からエンジニアになる日本一のプログラミングスクールを運営し、自身のYouTubeチャンネルの登録者数が65万人越えの、“マコなり社長”こと真子就有さんが選んだ『転職の思考法』。
博報堂、ボストンコンサルティンググループ後、ワンキャリア最高戦略責任者取締役として活躍する北野唯我さんの著書です。
真子さんは自身のYouTubeチャンネルで「ビジネスマンなら全員必読の一冊。もしうっかり買い逃している人がいたら今すぐ購入してください」とまで語っている同書。
今後のキャリア選択の方法や、働くことへの考え方が180度変わる“転職の思考”について、一部抜粋してお届けします。
なお同書は、転職に関するあらゆる不安や葛藤を分かりやすく説明するために物語形式が採用されています。
転職に悩む主人公・青野に、実際の転職に必要なことを指南するコンサルタント・黒岩仁の言葉を抜粋しました。
転職に必要なのは知識や情報ではなく「思考法」
なぜ、初めての転職が多くの人にとって怖いと思う?
転職というのは多くの人にとって『初めての意思決定』だからだ。だから、怖いんだ。
多くの人は普段、じつは何も意思決定しないで生きている。
君は自分で大学を選び、就職先も自分で選んできたと思っているかもしれない。
しかし、それは、ただ単に、これまでレールの上を歩いてきただけで、自分で何も決めていない。
電車に乗り、目的地に進んでいく。大学であれば世の中からいいといわれる大学を目指し、就職先も、世間的にいい会社を選んできただけ。
だがな、意味のある意思決定というのは必ず、何かを捨てることを伴う。これまでの人生で、そんな決断をしたことがあるか?
多くの人が、転職に恐怖を感じるのは、何かを手にするからではない。人生で初めて何かを手放すことになるからだ。しかも自分の意思で。
転職に必要なのは知識でも情報でもない、どう選べばいいかの判断基準、つまり『思考法』なんだよ。
会社が潰れても生き残れるのは「マーケット」を見てきた人
簡単なクイズから始めよう。
ある会社に、AさんとBさん、2人の40歳の社員がいる。2人は同じ会社に勤めている。
だが、Aさんは今の会社が潰れたら生きていけない。
一方でBさんは今の会社が潰れても生きていける。
同じ年月働いてきたのに、まったく違う結果の2人。
それは2人が見てきたものが違うからだ。さあ、何だと思う?
結論は、上司を見て働くか、マーケットを見て働くかの違いだ。
この世の中に、会社が潰れても生きていける大人と、生きていけない大人の2種類がいるとしたら、両者を分けるのは何か。
それが、『上司を見て生きるか、マーケットを見て生きるか』だ。
上司を見ているAさんは会社が潰れたら生きていけない。
マーケットを見ているBさんはどこでだって生きていける。
50年は長い。そんな長い年月、どこを見て働くかによって、ビジネスパーソンとしての価値はほとんど決まる。
マーケットバリューがある人間には自由が与えられる。
好きなときに会社を辞めることができるし、好きなところで働くことができる。
マーケットバリューとは、市場価値のこと。
市場価値とは、その名の通り、今の会社での価値ではなく、世の中からみた価値、値段だ。
上司だけを見て生きてきた人間に自由はない。一生、自分の上司の顔色を見て生きなければならない。
まず、知るべきなのは、自分のマーケットバリューを測る方法なんだ。
20代は専門性、30代以降は経験で勝負。身につけたいマーケットバリュー
マーケットバリューは①技術資産、②人的資産、③業界の生産性の3つの要素に分解できる。
この3つを結んだ箱が大きいほど、給与の期待値は高く、小さいほど給与は低い。
そして、理想的なキャリアは少なくとも2つ以上が高い。
技術資産とは、その名のとおり、価値のある技術をどれくらい持っているか?だ。
そして、技術資産は『専門性』と『経験』でできている。
専門性は、職種に近い。たとえば、営業やマーケティング、会計や税務、プログラミングやデザイン、こういうものを指す。
一方で、『経験』というのは、『職種に紐づかない技術』だ。もっと幅広い。
代表的なものでいうと、たとえば、事業部長の経験、子会社の経営、プロジェクトマネージャーの経験、リーダーの経験などだ。
わかりやすく言うと、チームを率いた経験だろうか。
他にもたとえば、営業開発、商品開発、人事制度の設計など、企画系の仕事も入る。
大事なのは、他の会社でも展開できるかどうか?だ。
もし他の会社では展開できないなら、それは技術資産ではない。
年齢によって身につけるべき技術は違う。
20代は専門性、30代以降は経験をとれ。これが結論だ。
20代のうちはとにかく専門性で勝負しろ。
専門性のないやつに打席は回ってこない。
だから、20代は専門性を身につけて、それを生かして30代は経験をとりにいくのがベストだ。
専門性のある人間にこそ、「貴重な経験」が回ってくる、こういう構造なんだ。
マーケットバリューはあくまで相対的に決まる。高い技術を持っていても周りが同じスキルを持っていたら価値は出ない。
だからこそ、「レア度」にこだわれ。
そして「専門性」は誰でも学べば獲得可能であり、年を取るほど、差別化しづらくなる。一方で、「経験」は汎用化されにくい。
だから、20代は専門性で、30代以降は経験で勝負すべきなんだ。
人脈を使えるのは40代から
次はマーケットバリューを構成する2つ目の要素、「人的資産」だ。
人的資産はよく使われる言葉でいうと、人脈だな。
どの業界にも、人脈だけで仕事を引っ張ってこれる人がいる。
その人だからこそ動いてくれる社内の人や、指名で仕事をくれる人間。これが「人的資産」だ。
人的資産は正直、20代はたいした価値にならない。
だが、年を取り、40代以降になるときわめて重要になる。
というのも、ビジネスの世界を見ると、優秀な人ほど意外と、あの人が言うからやろうとか、あの人のためなら一肌脱いでもいいとか、「貸し借り」で動いているからだ。
もちろん、それは自分にマーケットバリューがあることが前提だがな。
つまり、キャリアとは20代は専門性、30代は経験、40代は人脈が重要なんだ。
「人的資産」は柿の木のようなもので、価値を生み出すのに時間がかかる。だが、40代以降は極めて重要になる。
その果実を生かせるかどうかは、君の20代と30代次第だ。
マーケットが伸びている産業に就職・転職せよ
次は3つ目の話、マーケットバリューを決める最大の要素、「業界の生産性」だ。
言い換えれば、その業界にいる人間が、平均一人当たりどれほどの価値を生み出しているか。
仮にいちばん低い産業の、一人当たりの粗利が1000万円だとしたら、いちばん高い産業では2億円。最大で20倍近い。
つまりマーケットバリューというのは、どの業界を選ぶか?で圧倒的に上下する。
言い換えれば、いくら技術資産や人的資産が高くても、そもそもの産業を間違ったら、マーケットバリューは絶対に高くならない。個人の資質や努力で覆すのは非常に難しい。
その業界が伸びているか、伸びていないかを見るべきなんだ。
伸びている産業で働くというのは、たとえるなら、上りのエスカレーターに乗って、上を目指しているようなものだ。
とくに自分が何もしなくても、売上が1.5倍になったりするわけだからな。
一方で、縮小している産業で働くのは悲惨だ。何もしなければ、売上が0.8倍になる。
反対に絶対にダメな選択肢は、生産性が低くて、かつ、成長が見込めない産業で働くことだ。永久に豊かにならないからな。
業界を間違えれば、せっかく経験を積んでも、無効化してしまう。
逆に、伸びている業界はその何倍もの価値を持つ。
たとえば、2010年からの5年間は、スマホゲームが爆発的に伸びた。
この時期に、この産業で働いた経験というのは、それだけで貴重な「技術資産」になった。
なぜなら、経験者を雇いたいと追随する会社が山ほどあったからだ。同業他社で成功を経験している人がいたとしたら、シンプルに「欲しい」と思わないか?
伸びている業界に身を置くことは、それだけで価値がある。
全体的に利益を落としているのは、マーケットが縮小している証し。
マーケットが縮小しているとき、負けているのは自社だけじゃない。競合も利益をすり減らしているからな。
このフェーズに入ると、社内では、減っていくイスを奪い合う熾烈な競争が繰り広げられる。
マーケットバリューのない人間が、会社にしがみつこうとするからだ。社内政治も生まれ、噂話に花が咲く。
そうこうしているうちに、「技術資産」の価値はどんどん目減りする。だからこそ、伸びているマーケットに身を置くことが重要なんだよ。
成功した人間のうち、いくらかの人は、とりあえず目の前のことを頑張れ、と言う。
これはある側面では正しい。
ただそういう人のキャリアを注意深く分析すると、結局、才能とタイミングにたまたま愛された人間であることがほとんどだ。
つまり、再現性がない。
特別な才能を持たないほとんどの人間にとって、重要なのは、どう考えても、どの場所にいるか。つまりポジショニングなんだ。
仕事や会社の選び方がガラッと変わる!最強「転職本」
同書で北野さんは「転職を考えることは、働き方だけでなく、生き方にも影響を与えます」と語っています。
転職は悪いことではなく、自分らしい人生を歩むためのきっかけのひとつなんですよね。
家で過ごす時間が増えた今、自分の生き方や働き方を見つめ直している人も多いでしょう。
ぜひ同書を手に取って、働くことが一層楽しくなる“思考”を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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