ビジネスパーソンインタビュー
固定観念にとらわれず、サービスの見方を変えてみる
田端信太郎が考える「キッズラインの家事代行」を独身男性に広める5つのポイント
新R25編集部
世の中に、すばらしい商品やサービスはたくさんあります。
商品がよければ、その魅力は必ず人々に伝わる…といいのですが、実際には「本当の良さが知られていない」サービスは数多く存在するのが現実。
そこで重要になるのが、「マーケティング」や「プロモーション」。
新R25では新企画として、これらに精通したビジネスパーソンに、さまざまな商品の「魅力の伝え方」をコンサルティングしてもらおうと思います!
今回コンサルをしてくださるのは、この御方。
【田端信太郎(たばた・しんたろう)】株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室長。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げ、創刊後は広告営業の責任者を務める。その後ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN JAPAN、LINEを経て、2018年3月から現職
田端信太郎さん。
リクルート、ライブドア、コンデナスト・デジタル、LINE、ZOZO…と時代を彩る企業で数々の実績を残してきた“ユーザーコミュニケーションのプロ”です。
田端さん
わかってると思うけど、オレが来たからには、本気でダメ出しもするからね。
もちろんポジティブに問題を解決するつもりではいるけどさ。
いつにも増して気合い十分な田端さんに、今回「広め方」を考えていただくサービスはこちら!
ベビーシッター・家事代行サービス「キッズライン」。ベビーシッターと依頼者をつなぐCtoC型のマッチングサービスです。
ただ、キッズラインはどうしても“ベビーシッター”のイメージが強く、家事代行も頼めるということがあまり知られていないという悩みがあるそう。
「独身男性にとっても便利なサービスなので、ぜひR25世代のみなさんにも家事代行を使ってほしい!」とのことですが…
株式会社キッズライン マーケティング担当役員・やまざきさん
やまざきさん
よろしくお願いします! 今日は強めのツッコミも覚悟してきました…
「自分が今ほしいものを認識できている人は意外と少ない」
やまざきさん
まず、私から「キッズラインの家事代行」の特徴を説明させてください!
キッズラインは入会金、年会費0円で、1時間1500円前後の業界最安値で利用可能。面倒な手続き不要で、即日依頼もOKなんです。
マッチング型のサービスなので、好きな人を選んで、頼みたい家事を依頼できるのも魅力だと考えています。
田端さん
へえ。
やまざきさん
R25世代の独身男性にも、「家事代行」をカジュアルに使ってほしい…と思っておりまして。
たとえば、毎週シーツの洗濯とベッドメイキングをしてもらったり、汚い部屋を片付けてもらったり。料理が得意な方を選んで作り置きしてもらえば、冷蔵庫にきんぴらごぼうを常備しておいて、夕食に健康的なおかずが食べられる。
今こそ、ニーズがあると思うんです!
田端さん
なるほどね…
やまざきさん
どうしたら「キッズラインの家事代行」が、もっと使われるようになるでしょうか…?
田端さん
マーケティングの世界でよく引用される有名な格言に「ドリルを買いに来た人がほしいのは、ドリルではなく穴である」って言葉があるけど、ユーザーがほしいのは企業側が推したいサービスではなくて、「穴」っていう結果のみ…って場合が多いんだよね。
マーケティングモンスターがキバをむきはじめました
田端さん
別にきんぴらごぼうがダメってわけじゃないけど、R25世代の男子が本当にその「穴」をほしがってるのか?っていうのは考え抜いたほうがいい。
リアルに考えたら、おかずがいつも冷蔵庫に入ってたら「家帰って食べなきゃいけないからめんどくせえな」って気持ちになる人も多いんじゃないの?
やまざきさん
そ、そうですかね…
田端さん
あとはそもそも、「自分が今ほしいものを認識できる人は意外と少ない」と考えるべき。
キッズラインは、たくさんの人のなかから気に入った人を選んで、いろいろ依頼できるみたいだけど、ぶっちゃけ「何頼んでいいかわかんない」ってなってしまうと思うんですよね。
やまざきさん
なるほど…特に男性はそういう面があるのかもしれないですね。
田端さん
人に何かを指示するって、じつはすごくめんどくさい行為なんですよ。
急に部下持っちゃった3年目社員なんてみんなそうじゃん。何を手伝ってもらったらいいかすらわからなくて、「ああ~もう自分でやったほうが早いわ!」みたいな。
やまざきさん
それはすごくわかります…
田端さん
結論、オレがおすすめしたいのは、なんでもできますと打ち出すのをやめて、「水回りのそうじコース・週1回3000円」みたいにパッケージングすべし!
あんまり自由度が高いと、家事へのアンテナが低い男子は何も頼めなくなってしまう。こういう場合は、逆にある程度自由度を下げるべきだと思います。
⇒【田端流マーケティング術①】ユーザーが本当にほしいサービスを想像し、自由度を下げた訴求をすべし!
男性には「家事」という言葉がピンとこない可能性も…
田端さん
あと、言葉の解像度を上げたほうがいい。これは物事を伝えるうえでの最低条件です。
やまざきさん
どういうことでしょうか…?
田端さん
「家事代行」っていう言葉自体、言われてもピンとこないと思うんだよね。
これは想像だけど、R25世代の男子って「自分が家事をやっている!」っていう意識はないんじゃないの?
必要に迫られて洗濯とかはしてるだろうけどさ。
たしかに…
やまざきさん
家事をやっているという意識がないから、「家事代行」と言われてもメリットを感じにくいかもしれないですね…
田端さん
「ハウスキーピング」…とかでも伝わらないだろうなあ。
メリットを端的に言うとどんな感じなんでしたっけ?
やまざきさん
私は、家事代行を頼むことで結果的に「QOLが向上する」と…
田端さん
いや、それも同じ!「QOL」なんて全然ピンとこないよ!
すごく…声が大きいです
田端さん
オレがライブドアにいたとき、ポータルサイトの運営で、ニュースの見出しがどれぐらいクリックされるかチェックしてたんだけど、「てにをは」を変えるだけで数字が変わるんだよね。
それぐらい細かく表現を考えたほうがいい。
やまざきさん
男性向けな表現に調整したほうがいい気もしてきますね…
田端さん
言葉の解像度を上げるには、身近な言葉を使うこと。
「知っているものでたとえる」「誰もが使ったことがあるものに置き換える」といいでしょう。
「家事を代行します」ではなく、「ホテルのようなベッドメイキングサービスを毎日自宅で受けられます」とかさ。
やまざきさん
な、なるほど…! メリットがイメージしやすい。
⇒【田端流マーケティング術②】ユーザーにとって想像しやすい言葉を選ぶべし!
「男って、部屋が汚いのを気にしてないかも」
田端さん
あと、こういう新しいサービスを広めるときに大事なのは「階段の最初の一歩をどう踏ませるか」だね。
やまざきさん
たしかにおっしゃる通りですよね。
男性って、もしかしたらふだん部屋が汚いのをそこまで気にしてないんじゃないか?っていう懸念は私たちにもあって…
汚さって慣れていっちゃうじゃないですか。
田端さん
そう! となると、現状に不満を持ってない人に何かを勧めるわけだから、そこがハードルだよね。
ただ、一度“部屋がキレイな状態”を体験したら、そのメリットに気づくかもしれない。
施策事例でいうと、「1円ケータイ」とか。初期費用ゼロで何かを使わせて、そのメリットに慣れさせてしまってからマネタイズする。サブスク型の映像サービスが「初月無料」っていうプロモーション施策をやるのも同じ仕組みだね。
やまざきさん
まだ利用したことがない人に初回無料でつかってもらうキャンペーンは、キッズラインでも定期的に実施してます。
階段の一歩目を踏みだしてもらうために、ほかにどんな方法があるんでしょうか…?
田端さん
ある種の「ネガティブ訴求」が有効な場合もある。
ネットのバナー広告でよく見る「うそ、私の年収…」みたいなさ。
「うーん…」
田端さん
あっ、いいこと思いついた。
「女の子が家に来る前に、キッズラインの家事代行で掃除をしてもらいましょう!」ってPRするのは?
「女の子が部屋に来て、汚いと思われるかも」というリアルなシチュエーションを想起させつつ、ネガティブ訴求するという。
やまざきさん
それ、男子にはすごく刺さりそうですね…!
田端さん
でも部屋がキレイすぎて「ほかに女がいるんじゃないの!?」って疑われたりして!ガハハ!
ガハハじゃないですよ
やまざきさん
け、検討します…
⇒【田端流マーケティング術③】ネガティブ訴求も駆使して、「最初の一歩」を踏み出してもらうべし!
いっそ「家事代行」という固定観念から離れてみては?
田端さん
あとは飛び道具だけど、固定観念にとらわれずにサービスの見方を変えてみる。
別のものとパッケージングしてみるとか。
「キッズラインの家事代行」は、自分の家に呼ばなくてもいいんですよね?
やまざきさん
あ、はい、大丈夫です! ホームパーティーやオフィスに呼ぶ方もいますね。
田端さん
そしたらもう「家事代行」だと思わずに、民泊の貸し別荘なんかと合わせ技にして、パーティーやキャンプ用の料理を用意してくれたり、片付けしてくれたりするサービスっていう打ち出し方もありかもしれない。
グランピングで、BBQ職人みたいな人が呼べるとかさ。
やまざきさん
おお! なるほど。
田端さん
これ、けっこうリアルにいいと思うよ! 男何人かでコテージみたいなところに泊まりに行くときとか、料理や買い出しってめんどくさいじゃん。
サービスを提供してる側って、毎日仕事として考えてるから固定観念から離れにくいんだけど、ちょっと世の中を見渡してみれば、いろんな可能性があることに気づくんだよね。
⇒【田端流マーケティング術④】固定観念から離れて、意外なメリットを見つけるべし!
“イケてるブランド”はどうつくる? ヒントは「時計と車」
やまざきさん
私は、「家事をアウトソースしてる男子がモテる!」という時代が来ると確信しているんです。
そのために、「キッズラインの家事代行を頼んでる男子はイケてる」というイメージをつくりたいんですよね…実際どうやったらそういう空気を醸成できますかね?
田端さん
そうだなあ…「イケてるブランドをつくる」ってすごく難しいことだよね。
マーケティングの世界で「ブランド」を語るときに外せない商品が、「時計と車」だって言われてて。
なんでかわかります?
田端さん
時計と車って、“自然に見せびらかせる”からなんですよ。
いい時計をつけてたら、「この人はこれぐらい稼いでいて、こういうセンスの人なんだ」と自然に伝わるでしょ。
家事代行でそうなるかというと難しいよね。ユーザーが、「僕はキッズラインの家事代行を頼んでます!」って書かれたTシャツを着てくれるわけじゃあるまいし。
やまざきさん
見える商品じゃないとブランドにはなりにくいんですね。
田端さん
そう。
たとえばだけど、高級感ある紙でバウチャー(引換券、クーポン)みたいなものをつくるとかどうですか?
会社の上司が部下に、ちょっとした表彰の賞品で「キミはいつも頑張ってるから、コレで休日は自分の時間をつくりなさい」みたいな感じで渡せるようにしたり。
やまざきさん
それはいい…!
⇒【田端流マーケティング術⑤】ブランドは、「目に見えるかたち」でつくるべし!
これからは「アウトソーシングは合理的な選択」という世の中になっていく
やまざきさん
いろいろとアドバイスいただきありがとうございます!プロモーションのヒントになります。
最後にこれだけお伝えさせてください。
私たちがつくりたいのは、「得意なことは得意な人に任せるのが合理的な選択だ」という価値観なんです。
やまざきさん
今の若い世代は、男女問わず本当に忙しいじゃないですか。
家事が苦手な人がムリしてそこに時間を費やすのは、合理的じゃないよね?という価値観が、R25世代の男性にも定着してほしいなと思っていて。
田端さん
…これ言ったら炎上するかもしれないけどさあ、婚活市場で、実家暮らしの男は人気ないって言うじゃん。「家事能力が低い」ってことだと思うんだけど。
仮に「一人暮らしだけど、家事はほとんどキッズラインに外注してます」っていう男がいたら、婚活女子からはどう思われるんだろうね?
面倒なことをお金で解決する価値観のヤツだ…なんて思われるのかな。
「いや! そこは…」
やまざきさん
必ずしもそうではないと思ってます。今後はどんどん、「アウトソーシングする」のは悪い選択じゃない、という時代になっていくと思うんです。
これから結婚する人たちは、共働きが当たり前の社会になっていきますよね。
田端さん
それはそうだね。
やまざきさん
そういう社会になるからこそ、我々が「苦手な家事に貴重な時間を使わずに得意な人にまかせるという合理的な選択をしていいんだ」「むしろそのほうがイケてるんだ」という価値観を広めることで、世の中がいいほうに変わっていくと思っているんです。
田端さん
なるほどね。そういう流れはあるかもしれない。
やっぱり20代の時間って貴重だから、休日を掃除や洗濯でつぶしてないで外注して、そのあいだに本でも読んで勉強してたほうが“合理的”なのは間違いないだろうね。
ということで、「キッズラインの家事代行」のプロモーションアイデアを考える過程で、「田端流マーケティング術」を存分に学ぶことができました。
「マーケティング術③」では「最初の一歩」を踏み出しやすくすべし…という話が出ましたが、まさにキッズラインでは現在「5000円分のクーポン」をプレゼントするキャンペーンを開催中!
6月28日(金)17時までに新規でキッズラインに登録した方全員が対象の太っ腹なキャンペーン。貴重な休日を家事に費やしていた…という方は、この機会に「合理的なアウトソーシング」を体験してみてはいかがでしょうか。
そして今後、「女の子が家に来る前にキッズラインを呼ぼう!」キャンペーンが展開されることはあるのか!?(笑)
今後の「キッズラインの家事代行」に注目しましょう!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
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