ビジネスパーソンインタビュー
“視力の良い人”にもメガネを売る。販売本数日本一、安さを超えた「JINS」のヒット戦略

集中力アップにつながるメガネも新登場⁉︎

“視力の良い人”にもメガネを売る。販売本数日本一、安さを超えた「JINS」のヒット戦略

新R25編集部

連載

コスパの流儀

2018/04/05

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なんでも安く買える世の中になってきたが、何気なく手に取るその商品のウラ側には“安かろう悪かろう”ではない知られざる企業努力がある。そこにはどんな秘密があるのだろうか。

今回話を聞いたのは「メガネ界のユニクロ」とも呼ばれるJINS(ジンズ)。レンズ代込みで5000円(税別)という低価格と、ブルーライトカットを筆頭とした機能性メガネのヒットにより、近年躍進を遂げてきた業界のリーディングカンパニーだ。

JINSはなぜ、高機能なメガネを安く提供できるのか。株式会社ジンズ広報部の岡田真里奈さんに話を聞いた。

3人に1人がJINSのメガネ。日本一の販売数を武器にレンズを大量発注できるのが強み

JINSのメガネは現在、5000円、8000円、12000円の3プライス制。レンズの度数や薄さを問わず、追加料金はゼロだ。しかし、JINSの登場する21世紀初頭までは、メガネの相場は3万〜5万円。なぜこんなに安くできたのか?

「従来のメガネ店では、商社やメーカー、卸売業者などに支払う中間マージンがかかっていました。そこでJINSは、企画・生産・流通・販売までを自社で一貫するSPA(specialty store retailer of private label apparel=製造小売)を導入し、大幅なコストカットを実現したのです」(岡田さん、以下同)

元々アパレル業界から広まったSPAは、ユニクロやニトリといった製造小売業のトップも採用する戦略。こうしてJINSはメガネ1本当たりの利益率を保ったまま、コストだけを削減した。

唯一レンズの製造はメーカーに任せているが、その仕入れ方法もひと味違う。

「レンズの仕入れは、数社のメーカーに絞って大量に発注を行うことで価格交渉し、原価を抑えています」

こうした大量発注は、他社には真似できない。実はメガネの販売数は伸びづらく、買い替えスパンは2〜3年に1度。そのため競合他社の多くは、店舗に必要以上のレンズをストックできないのだ。一方のJINSには、他社を凌ぐ圧倒的な販売数がある。

JINSのメガネの年間販売数は、日本一の約560万本。国内における年間のメガネ購入人口は約1700万人なので、3人に1人がJINSユーザーという計算になります。店舗数も339店舗を展開しており、しっかりとした販売見込みを立てられるからこそ、レンズの大量発注も可能なのです」

株価低迷時、“安さ”に付加価値をつけて大ヒット!「自ら市場を創る」戦略でブレイクスルー

しかし、これだけでは単なる“安いメガネ”の域を出ない。人気のウラには別の強みもあるのでは?

「大切にしているのは、自ら“市場を創る”こと。既存の市場だけをターゲットにするのではなく、新たなメガネの使い方を提案することで、視力の良い人にもリーチを広げています」

一体どういうことだろうか。JINSとメガネ業界の歴史を振り返ると、いかに市場を創ってきたか見て取れた。

まずは2001年、創業当初のJINSは、メガネの安い韓国からレンズやフレームを仕入れて販売していた。日本におけるメガネは高額商品という位置づけであったため、1本5000円の低価格に人々は飛びついた。

同時期にはZoffやOWNDAYSといった同価格帯のライバルも台頭。メガネ業界は“価格競争の戦国時代”へと突入し、約6000億円だった市場規模も現在は約4000億円まで縮小している。

2005年頃になると、老舗メガネチェーンの“逆襲”も始まった。大打撃となったのは、業界最大手・眼鏡市場の「レンズ込みで18900円(税込)」という価格改定。当時のJINSはレンズの追加料金を設けており、結局は1本2万円を超えることもあった。こうした価格の不透明さを眼鏡市場は突いたのだ。

「2008年にはリーマンショックも重なり、株価は一時30円台まで下落してしまい…。辛い時期でしたが、『このままではダメだ』と改革に踏み切りました」

勝負に出たのは2009年。レンズの大量発注を実現したJINSは「レンズ込みで4990円(税込)」という大刷新を行い、さらには軽量素材を使った「Airframe」を発売。価格一辺倒だった市場に“軽さ”という新概念がヒットし、累計1800万本突破の人気シリーズへと成長した

チープになりがちな軽量素材をオシャレに仕上げた「Airframe」は、現在もJINSの主力商品だ

2011年には「機能性アイウエア」の展開を発表。ブルーライトをカットする「JINS PC(現JINS SCREEN)」や、フレームの側面に保水タンクを作り、微小な穴から蒸発させて目の乾燥を防ぐ「JINS MOISTURE」を世に出した。

特にJINS PCは、初月から過去のヒット商品の10倍にもなる2万本を売り上げ、オフィスワーカーの新習慣として定着する。

これを機にメガネ業界は、価格競争から付加価値の時代へとシフト。2012年にブレイクした花粉対策メガネ「JINS花粉CUT」もその傾向に拍車をかけ、見事JINSは“市場を創る”ことでピンチを切り抜けた。

岡田さんも愛用する「JINS花粉CUT」。目の周りを覆うカバーは目立ちづらく、花粉対策メガネの課題だったファッション性も維持した

メガネは新しいフェーズへ。運転中の眠気や、集中力を可視化するウエアラブルデバイスも

こうした付加価値の時代は、サイエンスと融合して未知のフェーズへと進もうとしている。その急先鋒とも呼ぶべきが、2015年に発表した「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」だ。

JINS MEMEでは3点式電位センサーと6軸センサーを搭載し、着用者の目の動きと姿勢から心身の状態を計測。それを専用アプリ上に可視化する。

「JINS MEMEを使えば、集中力の高まる業務や場所、時間帯などを計測できるので、その人に合った仕事スタイルも統計的に考えられます。実際にJINS MEMEで集中しやすい場所を見つけ、テレワークを導入することで集中できる時間を30%アップさせた事例もあります」

また、認知症の予兆は目の動きに出るという研究結果もあるという。今後はメガネで病気を検知する未来を目指す。

一見ただのメガネだが、目から発生する電磁波を感知できる

さらに革新的な商品を開発するべく、メガネ業界では世界的に珍しいR&D部署も設置した。

「R&Dとは、通常は製薬会社や食品メーカーなどに設置される研究開発部門。医師や大学教授と共同し、科学的な実証実験に基づいてメガネを開発しています」

視力補正のための存在だったメガネは、低価格化と共にファッションとして普及し、いつしか花粉やブルーライトから目を守るのも普通になった。

しかしそのウラには、メガネの市場を創るJINSの戦略があったのだ。未来のボクらはメガネとどう関わっているのか、JINSの次なるビジョンに期待したい。

〈取材・文=佐藤宇紘/協力=柚木ヒトシ〉

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