

「整えること」は、はたらく力になる──元宝塚歌劇団 星乃あんりさんと考える “はたらく Well-being”
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
はたらくことを通して感じる幸せや満足感、“はたらく Well-being”。 誰もがこれを実感することができれば、個人も会社も、もっと多様で豊かになれるはず。
パーソルグループでは、一人ひとりの“はたらく Well-being”について向き合い、ともに考え、行動をするオンラインコミュニティ「はたらく Well-being Lab.」を運営しています。
「はたらく Well-being Lab.」には、年齢や居住地、セクシャリティはもちろん、はたらき方や職種も多様なメンバーが集まっています。
「はたらく幸せ」を、さまざまな角度から考えるために。
「はたらく Well-being Lab.」では、ゲストをお迎えして“はたらく Well-being”を実現するためのトークイベントを開催しています。
今回はそのスペシャルゲストとして、元宝塚歌劇団・娘役の星乃あんりさんをお招きしました。
華やかな舞台の裏側にあった「心と体を整える習慣」や、宝塚退団後の「はたらくこととの向き合い方」。そして、母となった今、子育てと自身の“はたらくWell-being”をどう育んでいるのか。
多くの人が共感した、星乃あんりさんのリアルな言葉をお届けします。
〈聞き手=柴山由香〉
元宝塚歌劇団、雪組娘役。福岡県出身。宝塚を退団後、短期でイタリアへ語学留学。女優として舞台出演のほか、ウォーキングコーチ、バレトンインストラクター、ウェイミーインストラクター、モデルなど幅広く活動中。また、オンラインサロン「Anri’s Beauty Camp」や自身のアクセサリーブランド「Angelia」をプロデュースするなど、クリエイターとしても活動している
宝塚を卒業、とりあえずアルバイトではたらいてみた

柴山
星乃あんりさんといえば、宝塚95期生の華やかなスター娘役さん、といった印象です。宝塚を卒業されたあとは、何かやってみたいことがあったんですか?

星乃さん
いえいえ、全然そんなことはなくて…。むしろ「自分に何ができるんだろう」と、完全に宙ぶらりんな状態でした。
お芝居は続けたい気持ちもあったんですけど、それは逆に、それ以外に情熱を持てることが見つからなかったから。これをやってみたい、ここに出てみたいと思っても出られるとは限りませんし。本当に宙ぶらりんでしたね。

柴山
意外です。華やかなイメージが強いので、あんりさんにもそんな時期があったとは。

星乃さん
ありましたね(笑)。
でも、とにかくはたらかないと生きていけないから動いてみようと思って、スマホで「未経験 OK」の求人を探して、自分で応募して事務のアルバイトからスタートしました。
アルバイトで事務の仕事をしました

柴山
事務…! それは、かなりギャップが。

星乃さん
PCもそんなに使ったことないし、Excelとか全然わからない状態だったんですけど(笑)。教わりながら、なんとか。
それであるとき、新入社員の方に向けたプレゼンを任されて、「台本だと思えばいけるかも!」と思って。
ほかには、アパレルの接客のお仕事もしました。そのなかで、「あ、私、人と関わるのが好きなんだ」と、気がつけたんです。
その後、とある会社さんに出会って、宝塚時代、公演前にやっていたような心と体を整えるフィットネス要素を取り入れたオンラインコミュニティを立ち上げることになったんです。

柴山
今も活動されている、「Anri's Beauty Camp」ですね。

星乃さん
そうです。でも、始めた当初は何の資格も持っていなくて。宝塚時代のストレッチやウォームアップをベースに、みんなで一緒に体を動かすところから始まりました。

柴山
今は「バレトン」や「ウェイミー」のインストラクターの資格を持たれているということなのですが、それはいつごろ取られたんですか?

星乃さん
実は、コロナ禍なんです。外に出られなくなって、習い事もできなくなって、ずっと家にいなきゃいけなくなって…
「家の中でできる運動ってないかな?」と思っていたときに出会ったのがバレトンでした。

柴山
バレトンは、バレエ+ヨガ+フィットネスを掛け合わせたエクササイズですよね。

星乃さん
そうです。大きなスペースもいらないし、マンション住まいでも下の階を気にせず動けるから、オンラインでもできる。「これなら、続けられるかも」と、思いきってバレトンインストラクターの資格も取りました。
自宅でもどこでもできるから、お子さんがいる方もレッスンできる。自分も続けられるし、他の人にも届けられると思って。
今も、週一回のバレトンレッスンを中心にコミュニティが続いていますし、コミュニティ外でもリアルレッスンを時折、開催しています。
忙しい私たちに必要なのは「整える時間」だった

柴山
そこから、ウェイミーにも出会ったんですか?

星乃さん
はい。ウェイミーは、バレトンよりももっと「自分を整えること」に特化したセルフコンディショニングのプログラムで、2 年ほど前に開発されたんです。
その当時は出産したばかりだったので、子育てが大変すぎて、気になりつつも今じゃないかなと…

柴山
タイミングが合わなかった。

星乃さん
でも、産後落ち着いて、あらためてウェイミーのお話を聞いて「今こそ必要かも」と思ったんです。
出産・育児を経験して、情緒が不安定になったり、モヤモヤすることもあって…そんなときにウェイミーを試してみたら、すごくよかったんです。

柴山
どんなところがよかったんですか?

星乃さん
忙しいと、自分を癒す時間を外に取りに行くことはなかなか難しいですよね。
そんなときでも、ウェイミーならちょっとしたスペースがあればよくて、運動というより瞑想に近いから、動くことが苦手な人も気にせずできるんです。
実際に、ウェイミーを体験させてもらいました。あんりさん、美しい!

柴山
ウェイミーって、具体的にどんなことをするんですか?

星乃さん
基本的にはストレッチや深呼吸、セルフマッサージみたいなことを組み合わせて、“自分を整える”ことにフォーカスしています。
たとえば、目を閉じて深呼吸して、入ってくる空気の冷たさや、肌に触れる風の温度を感じるだけでも、副交感神経が優位になってリラックスできるんです。瞑想にも近いかもしれません。

柴山
なるほど。ハードな運動じゃないんですね。

星乃さん
そうなんです。バレトンだと「運動っぽさ」があるけど、ウェイミーはもっと優しい感じです。
寝る前にお布団の上でちょっとやるだけでも全然違うし、床に寝転がってゆっくり動くだけでも気持ちいい。

柴山
しかも、女性だけじゃなくて、男性でもできる。

星乃さん
はい。私の夫もそうなんですが、デスクワークが多い人ほど興味を持ってくれます。

柴山
なるほど。次は現在のあんりさんのお仕事について、聞かせてください。

星乃さん
今は三つ柱があって、 一つは俳優業。舞台に立ったり、ライブで歌ったりしています。
もう一つは、フィットネスのインストラクター。バレトンやウェイミーを通じて、心と体を整える時間を届けています。
そして三つめが、アクセサリーブランドのプロデュース。
年に二回ほど各地でポップアップショップを開いたり、あとはオンラインショップを展開したりしています。

柴山
すごい! 完全にパラレルワーカーですね。

星乃さん
そうですね。どれか一つに絞っていたら、逆に、今ほどはたらけていなかったと思うんです。

柴山
と、言いますと?

星乃さん
子育てがあると、自分の時間って全部“子ども軸”になるじゃないですか。もし一つの仕事だけだったら、きっと私は押しつぶされていた。「もう、はたらかなくていいかな」と思っていたかもしれません。
でも、三つの仕事があると、それぞれに違うスイッチが入るんです。舞台の日は、ここからは俳優モード、子どもが寝たらレッスン、またはアクセサリーの制作モード、みたいにちゃんと切り替えができる。
もちろん大変ですけど、切り替えることで自分を保てている。ときには子どもが寝てくれない日もありますが、「まぁしょうがないよね〜、今日は一緒にいた時間少なかったもんね」と思える余裕が出てきました。
「しょうがないよね〜」の精神、大事!
出産前よりはたらいてる!「整えること」は、また前に進むための“準備運動”

柴山
出産してからも舞台に立つというのは、大変なのかなと思うのですが…むしろ、以前よりもいろんなところでお見かけする気がします(笑)。

星乃さん
よく言われます(笑)。私はたぶん、外に出ていろんな人に会って、刺激をもらって…そういう時間が自分にとって必要だと、あらためて思ったんです。
知らないことに出会うのが好きだし、それが子育てにも生きてくる。自分の世界を広げることが、家庭にもポジティブな影響を与えているなと感じています。
“子どものため”だけじゃなくて、“自分のため”だけでもなくて、“まわりのため”にもなる。
はたらく自分が整っていると、子どもに対しても優しくいられるし、いろんなことを楽しめる余裕ができるんです。
子どもが私に似て好奇心旺盛で、何でも触りたがるんですけど「それ危ないからやめて!」と止めるんじゃなくて、「痛い思いして学ぶのもアリ!」くらいのテンションで見ていられます(笑)。

柴山
めちゃくちゃ“福岡の姉御”感出てますね(笑)。

星乃さん
…笑。それも含めて、今の自分のはたらき方や在り方があるから、そうできているんだと思います。

柴山
あんりさんのようにポジティブでちゃきちゃきした方も、やっぱり気持ちが落ちてしまうことはあるんですか?

星乃さん
あります、あります。産後や子育ての最中って、ホルモンバランスが崩れやすくて、自分でもコントロールできない不調に悩まされることがあるんです。
本当に、気持ちが沈んでしまったことがあって、そういうときは “この世にいなくてもいいんじゃないか”なんて思ってしまうことさえあって。
でも、定期的に体を動かしたり、自分に触れる時間をつくるようになってからは、そこまで落ちなくなったんです。 たとえば、深呼吸して空気の温度を感じたり、自分の肌を優しくなでるだけでも「今の自分で大丈夫」と思えるようになるんです。

柴山
まさに「整えること」が、心の土台になってるんですね。

星乃さん
整えることって、ポジティブになるための魔法じゃないんですよね。
また前に進むための“準備運動”みたいな感じかな。ちょっと止まって、深呼吸して、「よし、いけるかも」と思えるだけで、全然違うんですよね。
よし、いけるかも!

柴山
それが、結果的にはたらく力にもつながっていく。

星乃さん
そうだと思います。宝塚歌劇団を卒業後、やりたいことを見失っていたころは、何がしたいかわからないけれど、生きるためにははたらかないといけない、手に職をつけなければと焦っていたんだと思います。
でも、外に出てみたらいろんな人がいて、これが好き、これをやりたい! というのをお仕事にしてしっかり歩いている人たちに出会ったんです。
宝塚って、舞台に立ちたい、歌いたい、お芝居したいという思いで、みんなが好きなことをそれぞれ追っかけてきている世界だったけど、そこを出た先でも、そういう人たちがいるんだというのがすごく衝撃で。
事務は合わないな、接客も好きだけど、なんかここじゃないな。でも、じゃあ何ができるんだろう、と悩んだりしたけど、結果として今、私の三つの柱になってくれているお仕事は、どれも「好き」から始まっているんですよね。
まだそれぞれ小さいけれど、一応かたちにはなって続いている。これでいいんだって思えているのは、とても幸せなことだなと感じています。そして、そういう姿を見せることが、誰かの励みになったらいいなと思っています。
「これでいいんだ」と思える今の自分の姿が、誰かの背中を押せたら。
そう語る星乃さんの言葉から、“はたらく Well-being”のヒントが見えてきます。

星乃さんのInstagram
星乃あんりさんのレッスンや舞台などのスケジュールについては、Instagramをご覧ください!
「はたらく Well-being Lab.」は、これからも“はたらく Well-being”を考え、向き合う場をつくっていきます。
オンラインコミュニティ「はたらく Well-being Lab.」への参加申請はこちらから。どなたでも参加いただけます!
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