企業インタビュー
社内の仕事に値段をつけた理由 営業と内勤を分断しない“はたらくWell-being”

社内の仕事に値段をつけた理由 営業と内勤を分断しない“はたらくWell-being”

連載「“はたらくWell-being”を考えよう」

新R25編集部

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リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。

現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。

そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

今回紹介するのは、営業代行・営業コンサルティングを軸に人事・財務課題の解決まで手がける株式会社エッジコネクション代表取締役、大村 康雄(おおむら やすお)さんです。

営業が獲得した売上を、社内で案件に関わったメンバーへ「仕事」として再発注する。 同社が導入している独自の「社内発注制度」は、営業や内勤といった立場を超えて、自分の仕事が誰の役に立ち、どんな価値を生んでいるのかを実感できるようにするための仕組みとして運用されています。

無理なく、前向きにはたらき続けるための“はたらくWell-being”とは何か。お話を伺いました。

1982年生まれ、宮崎県延岡市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)に入行。法人営業を経て、2007年に株式会社エッジコネクションを創業。 営業支援・営業コンサルティングを軸に、現在は人事・財務課題まで、これまでに1800社以上の企業を支援。売上向上だけでなく、働き方や組織設計まで踏み込んだ支援を行い、「ワークライフバランスと業績向上の両立」をテーマに独自のノウハウを構築。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数

若い世代が営業を避けがちなこの時代「詰めないマネジメント」を選んだ

ーー(石野)大村さん、取材を受けることも多いようですね! こうした機会は結構慣れていらっしゃいますか?

大村さん

ここ3年ほど月に1回、出身である宮崎のローカルFMでしゃべっているので、話すことにはだんだん慣れてきました。

「仕事の悩み相談」みたいなコーナーをやっていて、20〜50代までさまざまな質問や悩みにお答えしています。

ーー(石野)へー! どんな相談を受けるんでしょうか?

大村さん

仕事における人間関係の相談が多いですね。

ーー(石野)そういう悩みを聞くのは得意なほうですか?

大村さん

そうですね。弊社は営業代行や営業コンサルを中心に展開しており、これは「モノ」ではなく社員が提供する労働力を売るビジネスです。

とすると、社員同士の人間関係が悪くなることは生産性の低下に直結するので、その改善に対応してきたなかで培ったものはあると思います。

ーー(石野)なるほどー! 営業代行って、具体的にどういう仕事をしてくれるのでしょうか?

大村さん

営業にまつわることであれば、ほぼ何でも対応はできます

そのなかで、最終的にお客さまと長いお付き合いになるのは、商談の機会をつくる「アポ取り」の代行ですね。

「なかなか自社ではうまくいかない」とおっしゃる企業さまが多い分野です。

ーー(石野)自社でアポ取りがうまくいかないのは、どんな理由が多いのでしょうか?

大村さん

多くの企業さまから聞くのは、そもそもアポ取りをする人材が確保できないとのお悩みです。

「最近は、若手の営業志望の人材が少ない」というところがやはり結構あるようで…

ーー(石野)なるほど。

大村さん

とはいえ、営業の仕事が敬遠される傾向はここ数年のことではなく、10年ぐらい前から強まっています。

ーー(石野)若い世代の多くは、なぜ営業を避けるのでしょうか?

大村さん

1つ目の理由としては、電話が苦手ということが挙げられます

営業の第一歩として多く行われているのが電話によるアポ取りなのですが、スマホの普及により知らない人に電話をかけること自体のハードルが高いようなんです。

昔は、友達と遊びたいとき、家に電話をかけるのが一般的でしたよね。そうすると親御さんが出て、「〇〇くん、いますか?」という内容の通話をします。

でも最近の子どもはスマホで直接話したい人とつながりますから、知らない人と電話で話す機会がそもそもないんです。

ーー(石野)確かに!!

大村さん

そのため、誰が出るかわからない営業電話をかけることに、とても緊張してしまうんです

たぶん「その辺の人をナンパしてこい」というのと同じぐらいの緊張だと思うんですよ。

ーー(石野)電話へのハードルが若い世代の営業離れにつながっている、と。これは個人的な考えですが、営業って「今期はこれが必達!」みたいに、数字に厳しそうというイメージはあります。

大村さん

そういったイメージもありますよね。

なぜネガティブなイメージが湧くかというと、できなかったことに対して注目し続けるマネジメントが一般的だからだと思っています

「やるって言ったじゃん!」とか「何で決まらなかったの? 決まるって言ったよね!」とかいう感じです。

ーー(石野)そうです、そのイメージ!

大村さん

自分なりに全力で頑張ったとしても、「なんでダメだったの?」と詰められてしまうと「頑張ったのに怒られる」という記憶になってしまう。

ですから、弊社のマネジメント陣には部下へ根拠のない詰め方をしてはならない」ことを徹底させています

ーー(石野)「詰めるマネジメント」をしない。御社ではどのような関わり方を大切にしているんでしょうか?

大村さん

上司の仕事は、部下に「自分にもできる」というイメージを湧かせることです

うまくいかないことがあった時は、「その原因と、次回に向けての対策は何だろう?」という未来に目を向くような関わり方をしています。

すると、数字の向き合い方への抵抗が減っていくような気がして。些細な違いのようですが、部下のモチベーション管理のためには結構大きい違いだと思っています。

社内の仕事に値段! 全員のモチベーションを支える「社内発注制度」

ーー(石野)さらに御社には「社内発注制度」というユニークなしくみがあると聞きました。

大村さん

社内発注制度は、営業が取った売上を、社内でその案件に関わるメンバーへ「仕事」として再発注し、売上を分配するしくみです

たとえば、電話によるアポ取り業務を100万円で受注したとしますよね。すると営業は、その電話業務を行うテレアポチームに50万円で社内発注し、残りの50万円を営業側の売上にします。

一方、社内発注を受注したテレアポチームには部門売上として50万円が計上され、実際に業務を担当した社員には、その売上の一部がインセンティブとして給与に上乗せされるのです。

さらに、全社の業務を支える管理部門については、全社売上に対する一定のパーセンテージをその部門の売上とし、そこから成果給が算出される仕組みです。「誰かの成果を支える仕事」も、会社の成長とともに正当に評価される設計になっています

ーー(石野)とすると、個人またはチームとして指名されればされるほど、営業職以外の方々も給料が上がるしくみなんですね。実際にこの制度を気に入って御社に入社してくる方はいらっしゃいますか?

大村さん

会社説明会を開いている人事担当者からは、この制度が動機で入った社員はそれなりにいると聞いています。

「こういう仕組みで動いてます」と説明すると「評価体系が明確なのが良いです」と。

ーー(石野)このしくみだと、営業から発注されないテレアポ担当者も出てくると思うのですが、その方たちはどうなるんですか?

大村さん

この制度があることで個人の生産性が明確にわかるので、なかなか成績が上がらない人には「どう改善したらいいか」という未来に目を向けさせた指導もしやすくなります

また、社内の営業から発注がこない間は、テレアポ担当者が自分で見込み顧客に対してアポを取って営業をすることもOKにしています。

ーー(石野)社内で発注がこなければ、「自分で実績を積んで証明する」みたいなことでしょうか?

大村さん

はい。自発的に実績を積めるチャンスも用意しています

一日どれだけ電話をして、どれだけアポを取れたのか、全社員がデータで見られるようになっているので、「最近あの人よくなってきたね」という挽回具合もわかりやすいです。

ーー(石野)「成績が上がらないからあなたはダメ」と切り捨てるのではなく、その場合でも成長できる機会があるということですね。実際に基本給プラスどのぐらいの成果給をもらえるのでしょうか?

大村さん

大体5%ほどですが、四半期の成績でさらにボーナスが支給されます。結果的に基本給の7割ほど上乗せされている社員もいますね

ーー(石野)7割の上乗せはすごい! そもそもこの制度を始めた動機はどんなものでしたか?

大村さん

クライアントと直に接する機会がないコールセンターのスタッフにクライアントを想像できるはたらき方をしてほしい」と思ったことが大きいです

「社内発注」というかたちにすると、まずクライアントがいて、お仕事を最初に受け取った営業がいて、営業が自分に仕事をくれているという流れが見えてきます。

自分が貢献できなければクライアントさんがリピートオーダーをくれなくなり、結果的に売上も止まるということを、内勤のスタッフも感じてもらえる制度をつくりたかったんです。

ーー(石野)内勤の社員の主体的なコミットに課題を感じていた、と。

大村さん

「社内発注制度」を導入して10年以上になりますが、導入前は「成果が出ようが出まいが、納期さえ守れば別に関係ないでしょ」というマインドに全振りするスタッフも少なくなかったと思います。

ーー(石野)「とりあえず今日、電話200件かけたからOK」みたいな感じですね。

大村さん

それで営業とコールスタッフで対立してしまい、私がその仲裁ばかりしていた時期もありました。

営業からすると「納期さえ守ればいい、みたいなマインドだと困る」という憤りがある一方、コールスタッフからすると「自分としては真面目にやっているつもりなのに」と、双方にすれ違うんです。

ーー(石野)評価のされ方の違いですれ違っていた状況を変えるために、「仕事の価値」を見やすくした、ということだったんですね。

大村さん

そうですね。実はうちの会社って、営業とコールスタッフとのやりとりだけでなく、社内で行うほとんどすべての仕事に値段がついているんですよ

ーー(石野)社内で行う仕事に値段がある!?

大村さん

「社内通貨」的なものですね。「社内発注」という概念を社内業務に取り入れた結果、そういった仕組みになりました。

たとえば、お客さまにアポイントを取る電話をする際に「不安だから同僚や先輩に同席してもらいたい」となった場合には、「1回につき3万円」といった感じです。

ーー(石野)「名もなき仕事」にも値段があるんですね。

大村さん

そういう感じで、何か追加の仕事が発生したときには「この業務、いくらですか?」というのが社員の共通言語としてあります。

ーー(石野)面白い! 社内でも明確に業務を「発注」するとなると、誰かに仕事が偏ってしまうという不公平感がなさそうですね。

大村さん

そうなんです。また、もし依頼した業務を完遂できなかった場合は、「じゃあ返金しておいてね」と言うだけでいいんです。「あの人、なんでお願いしたことをやってくれないの」という不満がたまらない。

ーー(石野)稼いだ社内通貨は、その後どう使われるんですか?

大村さん

さきほどお話しした例で言うと、テレアポ業務分を50万円で受注したら、それが自分の成績になりますが、同時に社内発注の原資です

いわば「お財布」に入った状態です。そのお財布のなかで、さらに社内発注をやりくりするかたちです。

月末の締め日に、そのお財布内に残っている売上から、5%をボーナスとして受け取ることができます。

ーー(石野)すごく合理的ですね!

「仕事は人生の枝葉にすぎない」根底にある、ある親戚の自死

ーー(石野)御社の経営理念は「人材育成と経営支援を通して、いかなる環境においても幸福を追求するヒトと企業をつくる。」とのことです。「幸福を追求する」という言葉を理念に出している理由を教えてください。

大村さん

根本にあるのは、「仕事だけに自己実現を求めるのは違うかな」という私の考え方です。人生を幹とするならば、仕事はあくまでその幹を豊かにするもの

死に際には誰しも、幸せだったなと思いたいはずです。それが仕事のせいで「幸せじゃなかったな」となるのは、本末転倒なのではないか、と。

ーー(石野)その思いに至った大村さんの原体験はありますか?

大村さん

事業をしていた親戚のおじさんの影響があると思います。可愛がってもらっていたのですが、事業がうまくいかなくなったことが原因で、夫婦で自死してしまいました。

後で話を聞くと、抱えていた借金は「いくらでもやり様があったのではないか」と思えるほどの金額でした。それなのに悲劇的な結末になってしまった。

「仕事でここまで追い込まれてしまうのはおかしい」と感じたんです。この経験からいかなる環境においても幸福を追求するヒトと企業をつくるという考え方になっていきました。

ーー(石野)はたらくことを通じて、その人自身が感じる幸せや満足感=“はたらくWell-being”を意識するうえで、とても大切な考え方だと思います。

大村さん

人によってはプライベートがボロボロになってでも仕事に打ち込むみたいな人もいらっしゃるかもしれません。

でも私は仕事とプライベートのどちらを取るかではなく、ずっと相乗効果が生まれる人生にしていきたいですし、社員にもそうなってほしい

ーー(石野)ちなみに、大村さんはプライベートではどのようなことに時間を使っていらっしゃるんでしょうか?

大村さん

平日は大体20時ぐらいに家に帰り、お風呂に入ってご飯を食べて、ちょっとゆっくりしたら22時半くらいには寝ていますね。

ーー(石野)しっかり休息をとっていて素敵です! 実は「深夜2時に起きる」とかではないですよね…?

大村さん

ないです(笑)。5時半か6時に起きて、7時半過ぎぐらいには出勤して仕事をしています。

週末はジムに行ったり、あとはたまに趣味でDJをやったりしています。

ーー(石野)DJですか?

大村さん

バーの奥にDJブースがあるお店でやっています。

お客さんに合った音楽がかかると滞在時間が増えるので、バーの売上も上がるそうなんです。私は音楽が好きなので、客層を見て選曲するのが楽しいですね。

ーー(石野)今後の展望を教えてください。

大村さん

いまの事業で、社会的に大きな貢献ができるように成長することが、向こう5年、10年の課題ですね。

これまで約20年の事業運営で、いろんな失敗をしながらここまでやってきたという自負があります。その経験から、事業責任者の方々が事業を運営しやすくするお手伝いをして、結果として、いま衰退に向かっていると言われている日本そのものをよくしていきたいです。

<取材・文=石野 志帆>

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