企業インタビュー
はたらく概念そのものを変えていく。就活AIキャリアエージェント「BaseMe」を運営する起業家が語る“はたらくWell-being”
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

今回紹介するのは、株式会社ベースミーの代表取締役・勝見仁泰さんです。ご自身の就活で感じた違和感を原体験に、就活AIキャリアエージェント「BaseMe」を運営。「価値観」をキーワードに、選考突破を目的とした就活のあり方や、企業主導の就活プロセスなど、長年問題視されてきた課題と向き合っています。
「人類の価値観を解放し、つなげる」をミッションに掲げ、2024年には就活特化の対話型AIサービスを展開。個人の価値観に合わせたAIマッチングはZ世代を中心に話題をよび、日常的に使われるキャリアAIとして急速に浸透しています。
幼いころから八百屋を営む両親の背中を見て育ち、海外留学を経て日本の就活の壁にぶつかった経験から起業を決意した勝見さん。価値観を軸にすることで、“はたらくWell-being”をどう切り拓いてきたのか、お話を聞きました。
幼少期より実家の八百屋で家業を手伝い「商売や働くこと」「ものづくりをすること」に興味を持つ。大学1年次よりインターネットに没頭し、文部科学省代表プログラム「トビタテ留学Japan」に選出。ドイツでの学生起業経験やIT企業でのインターンを経て2020年に株式会社アレスグッド(現:株式会社ベースミー)を創業
就活のあり方を変えるために。「BaseMe」は、ほかの就活サービスと何が違う?

飯室
はじめに、「BaseMe」がどんなサービスかを教えてください。

勝見さん
「BaseMe」は、AIを活用したAIキャリアエージェントです。対話型AIを通じて、ユーザーの経験・思考・行動データを分析し、価値観に合う企業とのマッチングを全面的にサポートしています。


飯室
AIがマッチングをサポートしてくれるんですね。既存の就活サービスとは何が違うのでしょうか?

勝見さん
これまでの就活は、求職者自身が自分に合いそうな企業を探し、口コミを見て、説明会に参加して、IRを読んで…と、短期間で自力で膨大な情報を取りにいく必要がありました。
「BaseMe」では、就職に特化したAIがこれらの情報を整理し、TikTokやYouTubeのように「その人の嗜好や価値観」を理解したうえで企業をレコメンドしてくれます。さらに、エントリーシートや面接対策、「そもそも就活って何から始めるの?」といった疑問にも、キャリアアドバイザーのように寄り添って答えてくれます。

飯室
AIのキャリアアドバイザー!

勝見さん
情報収集したあとも、次にやるべきアクションを教えてくれますし、就活について繰り返し相談できるんです。
「BaseMe」はAIのキャラクター「Ken」とチャットでやりとりするUIになっています。わざわざスーツを着てエージェントに相談しに行くのではなく、自宅のソファに寝転がりながら「今日、こんなことがあってさ…」と相談できる。Kenに愛着を持って継続して使用してくれる学生も多いですね。


飯室
就活については友達に話しづらいときもありますし、人間のエージェントだと緊張するから、AIのKenの存在はちょうど良さそうです。

勝見さん
そうなんです。選考を受けて「あの企業、やっぱり違ったかも」と思ったらKenに相談して、何がどう違うと思ったのかを深掘りしてもらって、また別の選択肢を提案してもらう。イメージでいうと、結婚相談所に近いですね。

飯室
結婚相談所!?

勝見さん
結婚相談所って、「こういう人がタイプです」と伝えて紹介してもらい、実際に会ってみて「ちょっと違った」と思ったら、再度ヒアリングして、また別の人を紹介してもらえますよね。好きなタイプって、実際会ってみないとわからないことも多いじゃないですか。
就活も同じはずなんですよ。「友達の影響で商社がいいと思って選考を受けてみたけど違った」「年収重視だったけど、自分にとってはお金がすべてじゃなかった」。そんな気づきは、行動するなかで必ず生まれてきます。それを都度ヒアリングして、本来の価値観に近づきながら、「本当に就きたい仕事」へとつなげるのが僕らのサービスです。
企業と学生の「Win-Win」を生み出す、価値観のマッチング

飯室
実際、学生さんはどのくらい使ってくれるのですか?

勝見さん
今(2026年3月時点)、登録してくれているユーザー数は5万人、平均すると1人あたり月700件ぐらいはKenとやり取りをしていますね。
なかには、Kenに「おやすみなさい」と毎日挨拶をする学生もいて。日常の一部として使ってもらっている証拠ですよね。

飯室
月700件! 一方で、AIを使いすぎることへの懸念はありませんか? エントリーシートを丸投げしてしまうとか。

勝見さん
そうですね。今の時代、「この企業に行きたいから、エントリーシートを書いてくれる?」と指示すれば、AIがそれっぽいものを簡単につくってくれますからね。でも、その出力されたものを「このまま使っちゃえ」と思うか、「これで自分のことは伝わるかな?」「自分なりの言葉に変更したい」と調整するかは、その人次第なわけで。そこは、僕らにとってもチャレンジすべき課題ですね。
AIで何でもできる時代だからこそ、思考を深めて、自己探求を繰り返すことが絶対に必要です。Kenと何十回もチャットのラリーを積み重ねるうちに、自然と自己理解が深まり、自分の本当の価値観が引き出されていく。そんな体験を提供したいと思っています。

飯室
学生さんへのメリットはよくわかりました。企業側にはどんなメリットがあるのでしょうか?

勝見さん
大前提として「BaseMe」のユーザーは学生なので、学生にとってのメリットが最優先。ですが、学生が自分の価値観に合った就活を行えるようになれば、結果的に企業側の課題解決にも直結すると考えています。
今の就活は「いかに内定を取るか」に重きがおかれがちで、「とりあえず応募しておこう」と企業を理解しきれないまま選考を受ける学生も多い。その結果、企業側は「応募数は増えたのに、自社にマッチした人材がいない」という事態に陥っています。

飯室
なるほど。「BaseMe」で自己理解を深めれば、学生の“とりあえずエントリー”が減ると。

勝見さん
そうです。自分の価値観が明確になれば、手当たり次第にエントリーする必要がなくなり、自分軸で就活を進められます。結果として、就活生は自分に合う企業に入れて、企業はミスマッチな採用を避けられる。お互いにWin-Winな就活が成立するんです。

飯室
企業の採用を効率化するには、まず「就活生側の自己理解」を助けることが一番の近道なんですね。

勝見さん
さらには、最近は「Z世代キャリア研究所」として、「BaseMe」を使っているZ世代のキャリア観のリサーチも行っています。
たとえば、「Z世代の8割が直感で企業をあり/なしと判断した経験がある」「一度なしと判定された企業の印象が覆ったのはわずか5%」といったリアルなデータが出ています。
「最近の若者は〜」と一辺倒に切り取るのではなく、こうしたファクトデータを企業側と連携することで、より良質なマッチングを生み出していきたいですね。
なぜ「価値観」がキーワードに? 原点は八百屋を営む両親と海外留学


飯室
勝見さんは「価値観」というキーワードをとても大事にしていますよね。
どんなきっかけで重視するようになったんですか?

勝見さん
言語化できるようになったのは、起業してからですね。でも、はたらくことへの価値観や概念は幼少期からあったと思います。
僕、実家が八百屋で、小学生のころから家の手伝いをすることが多かったんです。朝は市場に行って、荷出しして、学校から帰ってきたら店の片付け。1日の最後の仕事は、ザルに入ったお金を束ねること。お札の束の数が少ない日は、その日の夕飯の雰囲気が悪くなるんですよ(笑)。
でも、お客さんから「今年のみかん甘いね」と喜ばれて誇らしげにしている両親を間近で見て、「誰かに喜ばれる仕事っていいな、かっこいいな」と自然と思うようになりました。

飯室
素敵なご両親ですね。

勝見さん
うちの父、よくオマケをする人で。600円の商品を「400円でいいよ」と言ったり、サービスでみかんをあげたりしちゃうんです。子どものころは「なんでタダで渡すの!」と思っていたんですけど(笑)。
でも父は「商売はお客さんに喜んでもらうことが一番大事で、お金はその結果だ」と言っていました。それが今でも心に残っていて、僕の事業の根っこである「ユーザーファースト」の原点になっています。それに、読書家の父からは「世界にはいろいろな人がいる」ともよく聞かされていましたね。

飯室
そこから、どう「価値観」の重要性に気づいていったのでしょうか?

勝見さん
大きな転機は、大学時代のドイツ留学です。言語も宗教も違う人たちと友人になるためには、自分自身の考えや価値観をハッキリと言語化して伝えないと、相手にしてもらえません。そこで揉まれたことで、「自分は何が好きで、何をやりたいのか」がどんどんシャープになっていきました。

飯室
海外で多様な価値観に触れ、自己理解が深まったんですね。

勝見さん
ところが、いざ日本に帰ってきて就活を始めると、自分の価値観をもとに企業を選べないことに気づいたんです。
自分自身が「こういう想いを大切にして働きたい」と価値観を明確にしても、就活の場で聞かれるのは「コンサル、商社、IT、金融。あなたはどの業界にする?」ということばかり。自分の価値観と仕事がまったくつながらないし、見つけ方もわからなかったんです。

飯室
確かに、業種や職種から選ぶのがスタンダードな気がします。

勝見さん
世の中には、映画でも音楽でも、自分の価値観に合うものを高精度でレコメンドしてくれるサービスがたくさんあるのに、なぜ「仕事」を探すのはこんなにも難しいんだ、と。
自分の興味・関心を切り口に企業を探せない。自分に合う市場がわからない。この就活の違和感をなんとかしたくて、「もっと自分の好きなことや価値観から簡単に仕事を探せる仕組みをつくろう」と起業を決意しました。
「AIに代替されても、その仕事がしたい?」これからの時代の“はたらくWell-being”


飯室
ベースミーは「人類の価値観を解放し、つなげる」というミッションを掲げていますよね。「価値観の解放」とは、具体的にどういうことですか?

勝見さん
価値観を一言でいうと、シンプルに「好き嫌い」のことです。自分の好き嫌いを言語化して、仕事につなげることが「価値観の解放」だと考えています。
ただ、多くの人は自分の価値観を言語化できていません。価値観は「自分の体験」と「思考」の掛け算で生まれるものなので、まずはそこをひもとく必要があります。たとえば「お金で困る人を減らしたい」という思考を深掘りすると、「実は幼いころに貧乏で悔しい思いをした」という原体験が出てくる。そこで初めて、自分の本当にやりたいことに気づくんです。

飯室
自分のなかに眠っている価値観を、「BaseMe」ではAIとの対話を通して紐解き、解放していくんですね。ゆくゆくは就活の先も見据えているのでしょうか?

勝見さん
もちろんです。価値観は人生のあらゆる選択に関わるものなので、あらゆる「好き・嫌い」を明確にして選択をわかりやすくしていきたい。その一丁目一番地が、まずは就活なんです。
就活が終わったあとも「BaseMe」に戻ってきて、「今日上司とうまくいかなくて…」とチャットしながら自己理解を深めている社会人のユーザーも実際にいます。環境によって価値観はアップデートされていくので、長く続くキャリアのプロセス全体をサポートしていきたいですね。

飯室
AIの発展で「仕事が奪われる」という声も多いですが、勝見さんはこれからの労働観はどう変わっていくと思いますか?

勝見さん
AIに仕事を奪われるのではなく、AIをうまく使う人に奪われるというのが実情ですよね。
ただ、AIによって「労働の価値観」そのものは劇的に変わっていくと確信しています。僕、労働の歴史を調べたことがあって。アダムとイブの話まで遡ると、もともと「労働」って罰として生まれたものらしいんです。

飯室
罰として?

勝見さん
アダムが禁断の果実を食べた罰として「労働の苦しみ」が与えられ、イブには「陣痛の苦しみ」が与えられたという教えがあります。それくらい、労働は歴史的に苦しいものとして定義されてきたんです。
でも、AIが発展してその苦しい作業を代替してくれるようになると、労働の定義が変わりますよね。マズローの欲求階層でいう「承認」や「自己実現」を叶えるための、ポジティブなものに変化していくはずです。そうなると、AIに代替されるかどうかはもはや重要じゃありません。「AIに代替されても、あなたはその仕事をやりたいか?」が問われる時代になってくるんです。

飯室
「AIに代替されても、やりたいか」。すごくハッとさせられる問いですね…!

勝見さん
実際に、新卒一括採用をやめてジョブ型採用に移行する大企業も増えています。
膨大な種類の職務から自分に合った仕事をいきなり選べと言われても、自分の価値観がわかっていなければ決断できませんよね。だからこそ、スキルや経験だけでなく、「それが好きか嫌いか」「夢中になれるかどうか」という新たな指標づくりを「BaseMe」でお手伝いしていきたいです。

飯室
「BaseMe」の存在が、“はたらく”の概念そのものを変えていきそうです。

勝見さん
「いい大学に行って、いい企業に勤めて高給取りになれば幸せ」という方程式が、AIによって確実に変わっていきます。
「自分の好きはこれだ」と意思決定をして、好きなことに純粋に夢中になっていく。将来の世代のために、僕はそういう世界を本気でつくりたいんです。

飯室
お話を聞いていると、未来がとても楽しみになってきました!

勝見さん
僕、本当にめっちゃいい時代に生まれたと思っています! AIのおかげで、情熱があって仲間がいれば大きなことを成し遂げられるようになった。最高ですよね!
僕自身、自分の強みが全部わかっている訳ではありません。でも1つだけ、「変化を怖がらないこと」が自分の強みだと思っています。昨日の自分よりももっとよくしていこうという気持ちを、これからも大事にしていきたいですね。
<取材・編集=飯室 佐世子(声音)・文=小林 おすし>
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