企業インタビュー
自分の死が、自然を育む。「森に還るお墓」をつくった小池友紀さんの“はたらくWell-being”

自分の死が、自然を育む。「森に還るお墓」をつくった小池友紀さんの“はたらくWell-being”

連載「“はたらくWell-being”を考えよう」

新R25編集部

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リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。

そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載“はたらくWell-being”を考えようではモヤモヤを感じているあなたへ令和の新しいはたらき方を提案していきます。

今回紹介するのは、at FOREST株式会社の小池友紀さんです。家族や自身のお墓への疑問から、「森に還る」という新しいお墓のあり方「循環葬®︎RETURN TO NATURE」(以下、循環葬)を提案する小池さん。

2025年度にグッドデザイン賞とウッドデザイン賞を受賞するなど、徐々に浸透しつつある新しい終わりの形は、自分らしい最後を選ぶという新しい価値観をも届けてくれます。

「これまで生きてきたように、終わりも選ぶことができたら」

終わりを思い描くことは、「今」をどう生きるかを選び直すことでもあり、生き方そのものにも変化が生まれる。そう考える小池さん自身の、“はたらくWell-being”を聞きます。

広告クリエイティブの世界で15年間、コピーライターとして活動。さまざまな企業の広告やブランディングを手がける。両親のお墓の引越しをきっかけに、死と森林保全を掛け合わせた森林埋葬「循環葬 RETURN TO NATURE」を創案し、2022年、at FOREST(神戸市)を設立。2024年 Forbes JAPAN「RISING STAR AWARD 2024」受賞。現在、大阪と千葉の2拠点で循環葬の森を展開

「森に還る」という新しい選択肢

金子

まずはじめに、at FOREST株式会社を設立したきっかけを教えてください。

小池さん

最初のきっかけは、家族のお墓問題と向き合ったときに、先祖代々「〇〇家の墓」に入るという昔ながらの慣習に違和感を覚えたことです。今は納骨堂や樹木葬などの選択肢もありますが、「自分が選びたい」と思えるお墓の形がなかったんです。

そんなときに、母が「木が枯れるように、自然に死ねたらいいのに」とつぶやいたのを聞いて、はっとしました。私自身、神戸という都市に暮らしていながらも自然が大好きだったこともあり、森に還るお墓の形をつくろうと動き出しました

金子

「森に還る」というのと、いわゆる樹木葬とは違うんですか?

小池さん

言葉の印象は似ていますよね。樹木葬は、火葬後のご遺骨をそのまま入れた「骨つぼ」をカロートと呼ばれる石製の箱の中に納めるのが一般的です。プレート型の墓石があり、シンボルツリーとなる樹木が1本植えてあったり、もしくは花壇になっていたり、自然に寄り添いながらもご遺骨は残る形です。

そうではなく、循環葬では火葬後のご遺骨を細かく粉骨し、ご遺骨そのものを土と混ぜて、土のなかに直接埋葬します。木や動物たちと同じように自然に還る方法で、墓標も設けません。やがて木々の養分となったご遺骨は、自然の一部となり、未来へつながっていく。これが、私たちの循環葬というお墓の形です。

金子

海洋散骨が海に還るように、森に還るということなんですね。そんな方法があるなんて、初めて知りました! お母さまの言葉がきっかけだったとのことですが、小池さんが自分で事業を始めようとまで思ったのは、なぜなんですか?

小池さん

そうですね。1つは、自分が眠る場所は自分で選びたいと考えたことです

これまで私は進路も仕事も、自分で考えながら選択してきました。生きている間は自由に選んできたのに、どうして最後の最後は入る場所、つまりお墓が決まっていて、自分で選べないのだろう、と違和感を覚えたんです。

金子

言われてみると、最後だけ「選ぶ」という視点がありませんね。

小池さん

また、ペットと一緒に眠りたいと思ったのも理由の1つですね。7割以上の人がペットを「人間と同等」の家族だと考えているデータがある一方で、日本では「人間とペットは同じお墓に入れない」という観念がまだまだ根強いだけでなく、実際に別々にされるお墓も多いです。

私自身、17年間も一緒に過ごした犬のハチを看取ったときに隣町のペット霊園に埋葬したのですが、どこか薄暗い印象の場所で。「会いに行きたい」と思える場所だと感じられなかったんですね。だから代わりにハチの位牌をつくり、リビングでいつでも手を合わせられるようにしたんですけど、他の選択があったんじゃないかと、今でもまだ後悔しています。

循環葬では、ペットと人が一緒に入れる「循環葬andペット」というプランもあって、今では全体の20%のお客さまが選ばれているんですよ。

金子

これまでの慣習や観念を当たり前だと思うのではなく、自分で最後の場所を選べるっていいですね。

小池さん

私自身、お墓に対して良いイメージがなく、純粋に「行きたい」とは思えなかったんです。

循環葬の森はお墓に入る人にとっても、ご遺族にとっても、「行きたい」と思える場所を目指しています

よくわからないから怖い。循環葬は「死」のイメージそのものを、変えていく

金子

とはいえ、普段、「死」について考えたり、誰かと話をしたりする機会はなかなかないなって感じるんです。なんとなくタブーな話題のようにも思えて...

小池さん

おそらく、「死」というものがよくわからない状態なのかもしれないですね。医療や福祉など、その状況に対峙することの多い専門の方が関わるものだとされている風潮もあるかもしれません。

これは私も問題視していることでもあるんですが、街から死が隔離されているように感じます。お墓は郊外にあることが多いですし、私たちが命をいただくために必要な食肉工場なども、見えにくいところにあることが多いですよね。

金子

確かに、どちらも私たちの生活とは離れた場所にある印象です。

小池さん

人は、「わからない」から不安になるものです。わからないから、怖く感じてしまう。

死は誰にでも訪れるものなのに。その不安を払拭するためにも、もう少しみんなで死について話したり、見つめ直したりする時間が必要なんじゃないかな、と考えています。

金子

小池さんの会社では医師と死について話すイベントや、生と死についてのトークセッションなども開催されていますよね。

小池さん

そうですね。よくわからないもののままにしておくのではなく、死と向き合う機会を持つことは、生きていくためにも大切なのではないかなと思っていて。

これから日本は高齢化社会を迎えますが、それは同時に「多死社会」を迎えることになるんです。

金子

多死社会?

小池さん

多くの人が亡くなる社会ということで、亡くなった人が増えるということは、ご遺族となる人も増えるということ。新R25の世代も、他人事ではないんです。

金子

確かに…! その視点は、初めてです。

小池さん

多死社会を迎えるにあたって現役世代に大切なのは、グリーフケアです。

「グリーフ(grief)」とは、英語で深い悲しみという意味で、死別や喪失の悲しみに寄り添い、ご遺族が前を向けるように支援することを指すんですが、その必要性はまだあまり浸透していません。

金子

グリーフケア。

小池さん

故人の供養は、「想う」ことが大切だと専門家の方もおっしゃっています。ふとした瞬間に思い返すことでも供養になると。

でも、一般的にはお墓参りに行って、墓石を磨いて、お花をたむけて手を合わせる、という形式的なものが供養と言われていて、なんというか、「せねばならぬ」みたいな風潮になっているなって感じるんです。

もう少し、故人と落ち着いて向き合えたらいいですよね

小池さん

なので、循環葬の森には、木漏れ日のなかにウッドデッキを設けています。

それは、ゆっくり故人を思い返しながら、自然のなかで過ごしてほしいから。ご遺族の方々が故人と過ごす時間を、もう少し前向きなもの、美しいものにしたいですね

金子

確かにお墓は、あまり長くいる場所ではないという印象があります。

小池さん

加えて、ご遺骨を埋葬することは、森の栄養にもなります。遺骨の主成分であるリン酸カルシウムは、生物の成長を支える重要な栄養素。植物や微生物の養分となり、やがて森の循環へと組み込まれていきます。

私たちは土壌学や森林資源学の専門家の監修を受けながら、長期的な森づくりを行っています。実際、大阪・能勢妙見山では、少しずつ在来樹種が増え始めるなど、“その土地本来の森”へ近づいていく変化も見え始めているんですよ。2026年にはこうした植生変化について、日本森林学会でも報告を行いました。

私たち人間の生活は、自然の恵みに支えられています。自然がなければ、人間は生きていけません。森を守り自然を育むことは、ひいては人間の未来にもつながるんです

金子

本当に「循環」葬だ...!環境にも人間にもいいなんて、素敵ですね!

小池さん

私たちのお客さまは、都市部に暮らす方が中心です。森で暮らしたり、田舎へ移住したりすることは、誰にとっても簡単な選択ではありません。それでも、都市に暮らしながらいつか還る場所として通える森があれば、自然との関係は途切れずに続いていきます。

そして、それはご遺族にとっても同じです。お彼岸など、お墓参りの時期だから会いに行くという従来の考えではなく、「行きたいときに故人と過ごせる森」として豊かな自然を感じられる場所にしたいです

お客さまの“物語”に、耳を傾け続けられる幸せ

金子

小池さんたちも、森に足を運ぶことは多いのでしょうか?

小池さん

多いですね。私たちはお客さまの声を直接聞くことを大切にしていて、お客さまへのインタビューをさせていただくこともあるんですが、それも森のなかで行います。

私は、その時間が本当に幸せなんです。出来上がった動画も、何度も繰り返し見てしまうくらい、もう大好きで!

金子

なかには、新R25の同世代の娘さんも一緒に映っている動画もありました。終わりについてのお話をしているのに、木漏れ日のなか、親子で安心したようにほほえむ様子が印象的でした。親御さんが自分らしい最後の選択をすることは、子どもたちにとってもうれしいことなんだろうなって。

-【循環葬】という新たな自然葬の形を選んだ人たちvol.9-

小池さん

そうなんです! 本当に素敵なお客さまばかりで、多くの学びや気づきをいただいているんです。

実は、循環葬が掲げているキャッチコピーなどは、お客さまからいただいたお言葉がもとになったものもたくさんあるんですよ。

金子

え、そうなんですか!? 元コピーライターの小池さんが考えたのだと思っていました。どれも素敵です!

小池さん

素敵ですよね。コピーライター時代は、仕事上、インタビューを受け慣れていたり、イベントなどで登壇される方からお話を伺う機会が多かったんです。

でも今お話しするお客さまは、ごく一般的な生活を送る方々です。聞かれたり話したりすることに慣れていないにもかかわらず、みなさんとても丁寧にご自身のことをお話ししてくださいます。

お客さまそれぞれのライフストーリーは一つとして同じものはありません。まるで、たくさんの物語を読ませていただいているようです

金子

お客さまの人生を「物語」としてとらえる小池さんの視点に、その人の時間や選択を尊重する姿勢を感じます。

小池さん

私は、違う環境にいる人や自分と異なる思想の人の話を聞くのが好きなんです。

仕事を通じて、新しい価値観や考え方の人たちと出会えるのが楽しくて仕方がない。自分の世界が広がるような感覚にわくわくします。

金子

それが、小池さんにとっての“はたらくWell-being”なんですね。循環葬を決めたお客さまは、その後何か変化があったりするのでしょうか?

小池さん

そうですね。生きている時間をより充実して過ごそうとなさる方が多いです。新しい習い事を始めたり、住みたかった場所に移住された方もいらっしゃいます。

金子

わあ、それは楽しそうですね!

小池さん

私もびっくりしました。納得して選択した、ご自身の最後の目的地があるというのが大きいのかもしれません

たとえば仕事でも、ゴール設定をすると今とるべきアクションが明確になりますよね。時間やコストを有効に活用しようという意識が生まれます。

私たちの生活も同じなのではないでしょうか。納得した最後を選ぶことで、今やこれからの「生き方」をもっと楽しく、もっとおもしろくなるようにしようと意識が向く。そんなふうに、お客さまが「よりよく生きる」ことにつながったらいいなと思います。

ビジネスパーソンこそ、森で過ごしてほしい

小池さん

また、お客さまがリラックスされるのは、森の力も大きいと思います。

循環葬の森は大きな木々が立ち並び、小鳥のさえずりが響きわたる自然豊かな空間です。私たちも日々森に足を運びますが、自然のなかに身を置くことで、思考や気持ちが整理されていく「森林浴」の効果を実感します

金子

いいですね、循環葬の森へ行きたくなってきました!

小池さん

ぜひ、来てください。

森のなかで自然に囲まれていると、時間感覚がまったく違うんです。何百年も前からある木々があちらこちらにあって、まだ数十年しか生きていない自分がちっぽけな存在に思えてきます。風に揺れる木々のざわめきを聞いたり、木漏れ日のまぶしさを感じたりすると、時間がゆっくりと、でも確かに流れているのを感じます。

金子

非日常の世界で、五感が刺激されるんですね。

小池さん

自然のなかで過ごすのって、本当に気持ちがいいんですよ。毎日の仕事に追われるビジネスパーソンこそ、携帯電話をオフにして森で過ごしてほしいです。土に触れたり、鳥の声を聞いたりして、日常から少し距離を置くことで得られることもたくさんあります。

目の前の毎日ももちろん大切ですが、自然と触れ合う時間も必要なのではないでしょうか。私たちは、どちらの世界も行ったり来たりできることを提案したいです。

金子

デジタルデトックス、したい...! 昨今のサウナ人気にも通ずるものを感じます。

小池さん

サウナも携帯を持ち込めないですし、外界と離れる機会ですよね。森で過ごすことは、サウナよりも体への負担がかからないですし、気楽にできるのでおすすめですよ!

私も今毎日がんばれるのは、雄大な自然のなかでメンタルもフィジカルもリセットする時間を持っているからだと思っています

<取材・文=金子 明日香/編集=飯室 佐世子(株式会社声音)>

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