企業インタビュー
「社員のウェルビーイングは絶対条件」。大人気Podcast「コテンラジオ」を運営するCOTENに学ぶ“はたらくWell-being”
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

「歴史を面白く学ぶ」をコンセプトに、2018年に配信がスタートした「コテンラジオ(COTEN RADIO)」。一度は耳にしたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
これまでに第1回JAPAN PODCAST AWARDSでは大賞とSpotify賞をダブル受賞し、2025年にはSpotify上での累計ストリーミング数が5,000万回を突破、グローバル表彰プログラム「Creator Milestone Awards」でブロンズ賞を受賞するなど、国内外から注目を集めています。
そんな「コテンラジオ」を運営しているのが、深井龍之介さんが代表取締役を務める株式会社COTENです。同社は「人文知と社会の架け橋になる」をビジョンに掲げ、実は「コテンラジオ」もそのビジョンを実現するための事業の1つ。そして、COTENの組織文化には「社員のウェルビーイングは絶対条件」という考え方があります。
今回は、株式会社COTENで取締役を務める羽田隆也(はねだ たかや)さんに、COTENが考える“はたらくWell-being”とは何かを聞きました。
大学卒業後、大和証券SMBC(投資銀行部門)に入社。IPO業務に従事。2012年にラクスル株式会社に参画、事業開発、資金調達、CS部門の立ち上げ等を担当。その後独立し合同会社ウェアハウスを運営。COTENには2021年10月より参画
総再生回数1億回超! 人気の「コテンラジオ」を運営する株式会社COTENとは!?

田邉
「コテンラジオ」といえば、Podcastの先駆け的存在で、Apple Podcastランキングでも常に上位に入っている人気番組ですよね。一方で、株式会社COTENについては正直あまり知りませんでした。どんな会社なのでしょうか?

羽田さん
「コテンラジオ」も事業の1つではありますが、私たち株式会社COTENは、そもそも「人文知と社会の架け橋になる」ことを目指している会社です。現在事業は大きく4つあり、その1つ目が、「コテンラジオ」ですね。

羽田さん
そして2つ目が、歴史的な知見を活用した企業向けの研修・コンサルティングです。
たとえば、長く続いた王朝の特徴から企業の持続的成長のヒントを探ったり、歴史上の参謀タイプを分類して、ミドルマネージャーの類型分析に応用したりしています。

田邉
確かに歴史って、どんな社会環境のもとで、どんな出来事が起きたのかがわかる、一番の先行事例ですよね。

羽田さん
まさにその通りです。そして3つ目が2025年から本格始動した、企業とともに“問い”を起点に構造課題を探求する共創型プロジェクト「Co-Lab(コラボ)」。ダイバーシティなど、企業経営において重要な社会課題に対して、人文知の知見をもとに解決策を探っていきます。
そして、これらすべての事業の土台になっているのが4つ目、世界史データベース事業です。
世界史の情報を体系的に整理し、誰もがアクセスできるデータベースを構築しています。地球上で起きてきた社会の変化や、そこから生まれた衝突、今では当たり前になっている社会構造など、歴史というのは現代を生きる私たちにとって、非常に価値のあるケーススタディなんですね。
COTENが開発中の世界史データベース

田邉
たとえば、徐々に変わってきてはいますが「男は外ではたらき、女は家を守る」といった考え方も、歴史的に見ればそうした役割分担が求められた社会背景があったはずですよね。

羽田さん
そうなんです。代表の深井はよく、「今の社会は、50歳の人が49年間の記憶を失った状態で『来年どうする?』と考えているようなものだ」と表現します。本来、先人たちが積み重ねてきた膨大な知の蓄積があるにもかかわらず、アクセスコストが高いために、十分に活用されていない。
もし歴史上の先人たちが現代を見たら、「その失敗、もうやってるよ!」とか「その方法、昔はうまくいったよ!」と思うかもしれませんよね(笑)。
今、AIという誰も経験したことのない技術革新が起きていますが、歴史を振り返れば、蒸気機関が誕生したときも同じような転換点だったはずです。

田邉
言われてみれば確かに。

羽田さん
膨大な歴史というデータを通して、現代社会の認知変容や現状理解を深めていく。「人文知と社会の架け橋になる」ことこそが、COTENが実現したい姿なんです。
実は「歴史」は大の苦手だった!? それでもCOTENに参画したワケ

田邉
羽田さんは2022年から現職に就かれたと伺いました。どんなきっかけで株式会社COTENに参画されたのでしょうか? もともと歴史が好きだったとか?

羽田さん
実は僕、学生時代はずっと理系で、歴史は一番苦手な科目だったんです(笑)。大学時代は研究に没頭していたので、まさか自分が「歴史」を扱う会社で仕事をするとは思ってもいませんでした。
株式会社COTEN 取締役CFO 兼 CHRO羽田 隆也さん

田邉
ええ!? 意外です! 確か、新卒では証券会社に入社されていますよね。それも理系とは離れた業界のような…

羽田さん
証券会社に就職したきっかけは、たまたま日経新聞を読んで、経済の因果関係の曖昧さに興味を持ったからでした。
理系は条件と結果が比較的はっきりしていますが、経済は再現性がなく、同じ条件でも状況次第で結果が変わる。その分、人間力が問われる世界だなと感じたんです。

田邉
確かに、「こうしたら良くなる」「こうしたら悪くなる」といった正解が経済にはありませんよね。

羽田さん
まさにです。証券会社ではスタートアップの資金調達に携わり、その後ラクスル株式会社で事業開発や資金調達などを経験。一度証券会社に戻り、2018年に独立しました。

田邉
独立したのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

羽田さん
自分が「できること」と「それを仕事にしたいか」は別だと気づいたからでした。
キャリアを積んだことでファイナンスの知識はありましたが、それが本当に好きかと言われると違ったんです。加えて当時の僕は、「上には上がいて、自分は到底追いつけない」と比較で考えてしまっていた部分もありました。それなら自分が得意なことではたらこうと思い、独立を決めました。

田邉
羽田さんの得意なこと、知りたいです!

羽田さん
これまでの経験から、経営者の方にとことん寄り添うことが僕の強みなんです。ときには資本の相談に乗ることもありますし、事業の壁打ち相手になったり、本音を引き出したりする役割を担う。
実はこうした役割は歴史上にも存在していて、「宮廷道化師」というんですけど。
羽田さんの役割は、中世でも職業として存在していた!?

羽田さん
宮廷道化師は、おもに中世ヨーロッパの宮廷に仕えていたエンターテイナーで、王のそばで笑いを提供しながら、ときには皮肉を交えて意見を伝える、いわば王様に一番近い第三者。僕も自分としては、そのような役割だと思いながらはたらいてきました。

田邉
さらっと歴史を織り交ぜてくるのがさすがすぎます。そこから、どのようにCOTENへ?

羽田さん
もともと、コテンラジオのいちリスナーでした。ある回で深井が資金調達の話をしていたのを聞き、「何か力になれるかも」と思い問い合わせフォームから連絡したんですよ。
結果は、あっさり断られましたが(笑)。

田邉
すごい行動力!

羽田さん
一度は断わられてしまったものの、共通の知人を介して深井と会う機会があり、まずは業務委託として関わり始めました。そこから2022年に、現職に就きましたね。
COTENという組織の特性に合わせて、就業規則を全面的に見直した

田邉
株式会社COTENのコーポレートサイトを見ると、組織文化として「社員のウェルビーイングは絶対条件」と掲げられていますよね。


羽田さん
そもそもCOTENという組織の前提からお話すると、組織文化の形成を担うコアメンバーと、業務委託という2つの関わり方があります。また、新卒採用は行っておらず、各自が自分の専門性で価値を発揮する、いわばプロスポーツチームに近い組織なんですね。
メンバーの多くは、「稼ぎたい」「キャリアアップしたい」という動機よりも、「人文知と社会の架け橋になる」というビジョンに深く共感して集まってきている。社会を少しでも前進させる希望になるために、自分の時間を投下している感覚に近いんです。

田邉
プロスポーツチーム、ですか。

羽田さん
一人ひとりのパフォーマンスが高いからこそ、はたらくうえで場所の制約もなければ、時間的な制約もない。副業も自由。そうした前提の組織だからこそ、私たちの会社が行っている活動に共感し、時間を使ってくれる人に対して会社ができることって、「みんなのウェルビーイングが絶対条件」というメッセージを掲げて仕事もプライベートも思いっきり充実できるようにすることしかないと思うんです。
もし仕事や会社の存在が、メンバーの人生の豊かさを阻害しているとしたら、それは容認しない。ビジョンに共感して仲間になってくれた人たちが、仕事もプライベートも思いきり充実できる状態をつくりたいと思っています。

田邉
プロフェッショナルな集団だからこその考え方なんですね。

羽田さん
そうした状態をつくるために「COTENらしいな」と思ったのが、就業規則の全文見直しです。経営陣とともに半年をかけて、一言一句読み合わせました。

田邉
就業規則の全文見直し!?

羽田さん
歴史を事業の根幹に据え、「人文知と社会の架け橋になる」を掲げている以上、既存の就業規則をそのまま使うのではなく、「なぜこの規則が生まれたのか」という背景まで含めて精読しました。
就業規則は、会社のはたらくうえでのルールブックのようなもの。これはダメ、あれはダメと禁止事項を並べるのではなく、信頼が機能するための余白を残す言葉へアップデートしましたね。

田邉
途方もないプロセスのような気がしつつ、御社の「人文知」に向き合う覚悟を感じました。
月5万円で、人生が整う? COTENのウェルビーイング制度

田邉
就業規則の見直しを踏まえて、具体的な施策があれば教えてください。

羽田さん
特徴的なのは、コアメンバーを対象に、ウェルビーイングに寄与することに月5万円を補助する制度です。
これも社内の議論の末に生まれたのですが、たとえば給与を5万円上げる、という方法もありますよね。でもそれだと、必ずしもウェルビーイングに使われるとは限らない。

田邉
確かに…私だったら貯金したいかもです。

羽田さん
でも、「ウェルビーイングに寄与することへの補助」とすると、会社からメンバーへの“権利”になります。毎月5万円分の権利があって、使わなければその月で消える。すると、どうですか?

田邉
ちゃんと使います!

羽田さん
まさに、当社でもそうなりました(笑)。

田邉
この補助制度は、具体的にどんなことに使われているんですか?

羽田さん
僕の場合は掃除代行をお願いしました。ほかにも、出張時に家族のためにミールキットを購入した例があります。料理が得意ではない旦那さんがいる家庭で、出張中の食事問題が解消され、家族への心配が減った。仕事への向き合い方も含めてウェルビーイングになった、とか。
犬の散歩代行やベビーバウンサーを検討したケースもありましたね。

田邉
家族との時間を有意義に過ごせたり、仕事に集中できたり。みなさんそれぞれがウェルビーイングだと思うことに使われているんですね!

羽田さん
これがもし単純な給与アップだったら、恐らくみんな今負担になっていることは自分で頑張ることで解消したり、まあこのままでいいやって諦めちゃったりすると思うんですよ。

田邉
こうした制度を導入したことで、はたらく方々に変化はありましたか?

羽田さん
変化という点で先にお伝えしておきたいのが、「この制度を使ったことで、どう会社に貢献した?」と見返りを求めることはしていません。
「この制度を使ったなら、〇〇円売上に貢献してね」「会社に還元してね」って、ウェルビーイングじゃないと思っています。それなら、そもそも制度なんてないほうがメンバーのためになる。
なのでCOTENでは「この制度を使ったことで、どう会社に貢献した?」ではなく、「ウェルビーイングは豊かになった?」と問いかけています。

田邉
なるほど、それこそまさに“はたらくWell-being”ですね

羽田さん
そのうえで、「何に使おうかを家族と話し合えただけでも幸福でした」と言われたことがあって、とても嬉しかったことを今でも覚えています。それから「ベビーシッターがいるだけで、はたらくことへの罪悪感がこんなに減るとは思わなかった」という声もありましたね。
とはいえ、今でも試行錯誤の連続です。「ウェルビーイングに寄与すること」という表現は人によって受け取り方が違いますし、会社としても何でもOKにはできない。その都度、議論と調整を重ねながら、より良いカタチを模索しています。


羽田さん
ほかにも、1週間会社のことを考えずにしっかり休む「1week holiday」という制度もありますね。夏休み休暇として3日間ほどを付与する制度も検討しましたが、それだとつい「忙しいから3日だけ」「バラバラに3連休を3回つくって取得する」といったことが起こり得ます。

田邉
確かに、人によってはまとめて取得する、バラバラで取得すると差が出ますね。

羽田さん
ですがCOTENでは、ある意味覚悟を持って、1週間きっちり休んでもらう。メリハリをもって仕事に向き合える環境を用意しているんです。

田邉
なるほど、それはすごいです!

羽田さん
役所に行ったり参観に行ったり、プライベートなことを進めるためのファミリー休暇も年間5日間付与されています。
また、社内のチャット上で今の気持ちを吐露できる場所をつくり、無理なく、負担なく、その人の状態が知れるような場所も用意しています。
安きに流れず、自分の“はたらくWell-being”を見失わないために

田邉
最後に、今後の会社としての展望と、羽田さん自身の目標を教えてください!

羽田さん
僕らの最大の目的は、「人文知と社会の架け橋になる」ことです。その存在理由がなくなるとしたら、それを達成しきったときか、今の社会に必要とされなくなったとき。そのときは、心穏やかに解散すればいい。そうでないなら、粛々と続けていくだけだと思いますね。
僕自身も、この会社で貢献できることを丁寧に、誠実に続けていきたい。そして同時に、自分自身のウェルビーイングを見失わないことも大切にしたいです。

田邉
自分自身のウェルビーイングを見失わない。

羽田さん
やっぱり仕事って簡単にのめり込めてしまうと思うんですよ。お金も入るから、「仕事なんだよね」と言えば周囲への言い訳にもなる。でも以前、妻から「子育てよりも仕事のほうが簡単だからね」と言われたことがあって。その言葉はまさにだと、身に染みました。
仕事はある程度経験を積めば、急なトラブルにも対処できるし、自分で調整も可能。でも家族との時間や子育ては、「向き合うぞ」と決めて、覚悟をもって向き合う必要がある。仕事に比べると、時間も手間もかかるでしょう。仕事という安きに流れず、自分のウェルビーイングも大事にしていきたいと思っていますね。
<取材・文=田邉 なつほ>
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