企業インタビュー
人事の新しい役割を「共創」する株式会社Palletの“はたらくWell-being”
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンのなかには、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。

今回紹介するのは、株式会社Palletの代表取締役の羽山暁子(はやま あきこ)さんです。東京から仙台にIターンした羽山さんが出会ったのは、震災後の東北の地で志を持って生きる経営者の方々。
その姿を見て、「私も、この地に根を張り、小さくても何か貢献できる自分になりたい。」と2019年に移住先の仙台市に株式会社Palletを設立しました。個人の幸せと組織の成果を共に創る「共創人事™」を提唱し、組織づくり、人づくり、まちづくりの3つの事業を展開しています。
「人が輝けば、組織が輝く。人と組織が輝けば、まちが社会が輝き、未来が輝く」と、コミュニケーションを軸に一人ひとりの心に炎を灯す羽山さんの“はたらくWell-being”を聞きました。
神奈川県横浜市生まれ。国際基督教大学(ICU)卒業後、2003年に株式会社インテリジェンス(2017年〜パーソルキャリア株式会社)に入社し、法人営業や人事に従事。2011年、企業の経営改善を支援するビッグデータ活用やデジタルマーケティングを事業とする株式会社ブレインパッドに転職し人事マネージャーを担う。2015年に東京から仙台にIターン。人事関連のフリーランスを経て2019年に株式会社Palletを設立。アドラー心理学をベースとしたコーチングスクール「Life Design Lab.」や独自開発の伴走型組織開発プログラム「共創人事実装プログラム」などのサービスを提供
個人の幸せが、組織の進化を加速させる


メリイ潤
2019年に移住先の仙台市で株式会社Palletを設立された羽山さん。まずは、なぜ仙台に移住されたのか教えてください!

羽山さん
私は神奈川県横浜市で生まれ、新卒から東京の企業ではたらいていました。
2015年に、それまで縁のなかった仙台にIターンしたのは、2011年に東日本大震災が発生してから、復興支援に積極的だったパートナーの転勤がきっかけでした。私もボランティア活動で何度も仙台を訪れていたので、Iターンすることに大きな抵抗感はありませんでした。

メリイ潤
東京では、どんなお仕事をされていたのでしょう?

羽山さん
新卒でインテリジェンス社(現在のパーソルキャリア)に入社し、営業や人事に従事しました。その後、企業のDXを支援するブレインパッド社に転職し、人事マネージャーとしてマザーズ上場などに立ち合う経験もさせていただきました。
仙台に移住してからは、それまでの人事経験をもとに、企業の組織づくりや人づくりの支援をするお仕事をフリーランスとして請け負っていたんです。
東京での約12年間は、人事を中心として企業における「数字」と「成長」に、全力で向き合うはたらき方をしていました。仙台にIターンしてからは一転、自分の「幸せ」や「満足」を追求するはたらき方を目指すようになったんです。

メリイ潤
自分の幸せや満足を追求するはたらき方とは?

羽山さん
自分の幸せや満足を最優先に、必要以上に仕事を請け負わないと決意しました。

メリイ潤
必要以上に仕事を請け負わない…!

羽山さん
もちろん、仕事への成果はとことん追求して最大限の価値を提供します。そのうえで、自分が豊かに生きられるよう、就労時間と売上額に上限を決めて「これ以上は、はたらかないぞ!」とラインを決めたんです。
ただ、そのはたらき方に満足していたつもりだったのですが、東北の地で震災復興に奮闘する経営者の方と日々お仕事をしていると、「私、何やっているんだろう」と思えてきて。

メリイ潤
何やっているんだろう…?

羽山さん
とある社長からは、「震災の津波で、すぐそこにいた従姉妹が流されたんだ。俺は、流されなかった。この生き残った命を何に使うか、日々、考えている」と聞きました。
震災を経験した東北には、「地域をいかに次世代につないでいくのか」を考えている経営者が多くいます。経営の目的は、単に「事業をつくること」ではないのだ、と。

メリイ潤
会社経営の目的が、単に事業をつくることではない。

羽山さん
はい。日々、そういう話を聞いていると、「私は、何をやっているんだろう」と。自分の幸せや満足だけを追い求めていることに、恥ずかしさを感じることが増えていったんです。
もっと、私も本気で、はたらきたい。もっと、ご縁をいただいた東北の地に根を張って貢献したい。それならば、「私の本気を表現するには、起業だ!」との考えに行き着いたんです。起業するなんて、それまでまったく考えたことなかったんですけどね。

メリイ潤
東北の地だからこそ、起業に至ったのですね。
羽山さんの本気の形であるPallet社が提唱する「共創人事」とはどのような概念なのでしょう?

羽山さん
私はこれまで、300社以上の企業とお仕事をご一緒してきました。そのなかで、事業の成果に対するボトルネックは、経営層と事業部、人事がしっかりとタッグを組めていないことにあると見えてきました。

メリイ潤
タッグ?

羽山さん
今、日本の労働生産人口は急速に減少しています。これまでは、経営層が掲げた経営戦略を目指して多くの人材で向かっていけば事業を成長させることができました。しかし、人手不足が叫ばれる現代においては、一人ひとりの能力を最大限発揮できることが重要になってきます。
そこで、経営戦略や事業戦略と人事戦略が一体となり、個人の幸せと事業の成果を共に創っていくという人事の新しい役割が、私たちが提唱する「共創人事」です。
なかでも私たちは、「日本型戦略人事」という概念を大切にしています。

メリイ潤
日本型とは?

羽山さん
「助け合い」や「お互いさま」といったつながりを大切にする日本人特有の精神は、日本社会に脈々と受け継がれてきた価値観だと考えています。その価値観を重んじながら、一人ひとりが大切にしている個別の価値観や未来への意思を重ね合わせるのが、日本型戦略人事です。
そのために一人ひとりが大切にしている価値観を対話を通して最大限に引き出したうえで、チームとして「共に考え、共に動く力」につなげ、組織の進化を加速させたいと思っています。

メリイ潤
一人ひとりが輝くことをとても大切にされているんですね!

羽山さん
これまでの会社経営は、「売上」という成果を出し続けることが重要視されてきたように思います。売上目標に向かって仕事をして、「目標を達成したら、じゃあ次は115%達成だ!」という感じで。
でも、業績だけを追いかけていると、一人ひとりが心に抱いている大切な炎が消えてしまうんじゃないかと思っていて。組織としての継続的な成長を追い求め続けることで、企業の理念に共感して入社した社員がだんだん疲弊していく。はたらくことで実現するはずだった個人の思いが、会社の売上向上とともに遠ざかってしまう。
労働人口が減少しているからこそ、今一度、一人ひとりを輝かせることに立ち戻ってもいいのではないかと思っています。
心の炎を消してしまった部下とのコミュニケーション


メリイ潤
なぜ、そこまで一人ひとりを輝かせることを重要視されるのでしょう?

羽山さん
新卒のときは、「みんながもっと、当たり前に幸せに働ける社会になるといいな」と思い、人材サービス会社に就職しました。入社後は法人営業として、任された売上目標をとにかく達成することを目標に、日々仕事をしていました。
私は上司から発破をかけられることで、「なにくそっ!」と火がついてがんばれる、負けん気が強いタイプだったんですよね。

メリイ潤
負けん気で火がつくタイプ…!

羽山さん
ただ、人間はそういう人ばかりではないということを痛感する出来事があったんです。

メリイ潤
痛感した出来事とは?

羽山さん
入社4年目に、新卒で入社してきた部下のマネジメントを任せられました。すごく優秀でキラキラしていた子です。私は、自分が成長できた方法で部下を指導しました。上司が私にしてくれたように、成長してほしいと愛情を持ち、毎日、その日の活動内容を確認する。逐一、目標数値の達成状況を報告してもらっていました。
それを繰り返しているうちに、徐々に、部下のパフォーマンスが落ちていってしまって。表情もどんどん曇っていったんです。
当時の私は、その子を成長させたいとの思いで精一杯指導していたつもりだったのですが、今思えば、完全に追い詰めていたんです。ロウソクの火を完全に消しちゃった状態ですよね。

メリイ潤
ロウソクの火を消してしまった…

羽山さん
結局、それを見ていた私の上司から「君は、相手を見ていない」とマネジメントを外されました。
ショックでした。私としては、よかれと思って一生懸命やっていたつもりだったので。
私はこうやって成長してきたけれど、あの子には何が必要だったのか。どうすれば部下とうまくコミュニケーションをとることができたのか。悩みました。マネジメント関連の本を読みあさりました。そして、心理学や脳科学を活用した日々のコミュニケーションを重視するコーチングに辿り着いたんです。

メリイ潤
ショックな体験から、コーチングに出会ったのですね。

羽山さん
2006年から独学でコーチングを学びはじめ、2015年からはアドラーの心理学をベースとしたコーチングを本格的に学びはじめました。
その学びを持って、2018年からコーチングスクール「LifeDesignLab.」を開講することにしました。アドラー心理学をベースとしたコーチの在り方とスキルを学び、コミュニケーションを見直すスクールです。経営者や企業のリーダー層に伴走するコーチングは、現在のPallet社の「人づくり事業」にもつながっています。
人が輝けば、組織が輝く。人と組織が輝けば、まちが社会が輝き、未来が輝く


メリイ潤
Pallet社では、現在「人づくり」「組織づくり」「まちづくり」の3つの事業を展開されています。まずは「人づくり事業」について教えてください!

羽山さん
人づくり事業は、職場や家庭、地域においてコーチングを活用したコミュニケーションをとることで、よりよい人間関係の構築を目指すものです。
サービスとしては、コーチングスクールを提供しており、上司と部下との人間関係やチームのモチベーションアップなどの課題を解決するサポートをしています。アドラー流ビジネスコーチングの基礎を身につけられるオンラインでも実施可能な「Basicクラス」と、実践重視のカリキュラムでビジネスコーチングの知識を対面で取得する「Advanceクラス」を設けています。

メリイ潤
「組織づくり事業」は、どんなサービスですか?

羽山さん
組織づくり事業は、「共創人事」の考えをもとに、組織における課題解決をサポートしています。たとえば、当社が独自開発した「共創人事実装プログラム」では、経営者と事業部と人事部でプロジェクトチームを組み、3〜12カ月にわたりじっくり伴走するシステムを提供しています。
経営戦略の理解や戦略人事の立案、戦術設計などから携わりながら、個人の輝きを最大化させることにも意識を向けることで、人が動き、組織が変わる「共創の和」を養うことを目指します。また、組織の状態に合わせて単発の研修やワークショップなども行っています。

メリイ潤
企業としての方向性を定めながら、個人の輝きを最大化するためには、どのようなことが必要なのでしょうか?

羽山さん
コミュニケーションです。私たちは「WiLLベースマネジメント」と言っているのですが、WiLLを一人ひとりが大切にしている「個人の価値観」とどんなキャリアを形成していきたいかの「未来への意思」の2つに分けて定義付けています。
そこに、会社側が興味を持ち耳を傾けることがスタートです。さらに、組織にもWiLLはあると考えています。

メリイ潤
組織のWiLL?

羽山さん
組織には、ミッションやビジョンを実現するための経営戦略があります。それを、企業が大切にしている価値観や未来への意識や想い、目標にブレイクダウンすると、組織のWiLLになります。
組織と個人、それぞれのWiLLを明確にしたうえで、重なっている部分を発見し、共有することが大切です。もし、まったく重なっていないのであれば、その組織でいくら頑張っても、残念ながら、個人の幸せなはたらき方には向かっていかないんですよね。そして、ほとんどの方は、なんとなく重なっている気がするから、日々頑張っているという状態です。そこを改めて、組織のWiLLと個人のWiLLとの重なりを発見し、上司と部下で共有することが大切だと考えます。
仕事に対する価値観は人それぞれです。上司が、部下の価値観を理解しておらず、挑戦することが面白いと思っている部下に対して、毎日ルーティンワークをする業務を与え続けていたら、疲弊していくんですよね。「会社の理念に共感して入社したのに、私、こんなことやりたいわけじゃない」と、モチベーションの低下や離職につながるかもしれない。
会社と個人が大切にするWiLLを上司と部下で共有することで、適材適所での個人のパフォーマンスの発揮につながります。
一人ひとりがご機嫌にはたらくことで、メンバー同士もご機嫌な組織になるという好循環が起こり、ひいては組織の成長が最大化されます。

メリイ潤
なるほど! だから、人が輝けば組織が輝くのですね!

羽山さん
はい。さらに、弊社では「まちづくり事業」も担っています。この地に移住したいと思えるような元気な地域であるために、一人ひとりがイキイキと働ける仕事や地域をつくるお手伝いをしています。
また、サポートさせていただく組織は企業だけではありません。プロバスケットボールチームの「仙台89ERS」のメンタルコーチを担当したこともあります。実は、そのときのヘッドコーチは、2026年2月にバスケットボール男子日本代表のヘッドコーチに就任された桶谷さんでした。
選手一人ひとりの能力を最大限に発揮したいという要望があり、監督と選手同士のコミュニケーションのサポートを行いました。練習後や試合後のミーティングに参加させていただき、一人ひとりが何を大切に日々の練習をしているのか、できるようになったことなど対話をするんです。すると、対話を通じて、本人も自分自身と向き合い、振り返ることができる。さらに、チームメイト同士も理解が深まり、お互いに応援しあえて切磋琢磨できるチーム風土ができあがります。

メリイ潤
組織に人にまち、人と人が集まる場所には、Pallet社のコミュニケーションが活きるのですね!

羽山さん
「地域をいかに次世代につないでいくのか」と東北の地を育み続ける経営者の姿が、私の心に火を灯しました。私にとって「はたらく」とは、「自分が生きたいと願う未来をみんなで創る営み」です。それぞれの価値観を大切にし合うために、対話を通じて一人ひとりの心の炎を明るく輝かせてほしいと願っています。
そうすることで、人も組織もまちも輝く。さらには、未来も明るく輝くのだと考えています。
Palletの社名は、「一人ひとりの色と個性を活かし合う社会をつくりたい。単色のままでも素晴らしいし、混ぜ合わせた色も素敵。さまざまな彩りを創るパレットでありたい」との思いで付けました。Palletを通して、みんなで人の幸せと組織の成果、両方の「共創」の和を広げていきたいですね。
<取材・文=メリイ潤>
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