「こんな飛び込みは“1発アウト”です」

想像を超えた「戦略性」。若手起業家・しゅんダイアリーはなぜ“格上に一目置かれる”のか

仕事

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あのビジネスパーソンの「○○力」

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いち学生にして、DMM.com亀山会長、ファミリーマートの澤田社長など、数々の「ビジネス界の大物」にインタビューを実現している若き起業家がいます。

株式会社Diary代表取締役、福田駿さん。
【しゅんダイアリー】株式会社Diary代表。金沢大学在学中に立ち上げた「しゅんダイアリー就活チャンネル」で、数々の大物経営者やインフルエンサーにインタビューを実施。登録者数は10万に迫る。地方と都会の就活情報格差を埋め、誰もが気軽に就活の「具体的な一歩」を踏み出す後押しをする就活情報メディア「Flatto(フラット)」など、就活支援を軸にさまざまな事業を展開
現在チャンネル登録者数10万人に迫る「しゅんダイアリー就活チャンネル」など、“就活支援”を軸とした数々の事業を展開する24歳の若き起業家なのですが、驚くべきはその仕事相手。

前述の大物経営者のみならず、ひろゆきさん、箕輪厚介さん、田端信太郎さんなど著名なビジネスインフルエンサーとも数多く仕事をしている福田さん。

若手ビジネスパーソンには、職場の上司や取引先の重役など「格上のビジネスパーソンからの信頼」を獲得しなければならない場面が少なからずあると思うのですが、いったいどうすれば「大物からの信頼」を獲得できるのか…?

新進気鋭の起業家が見せる「懐飛び込み力」、徹底解剖します。

〈聞き手=サノトモキ〉

亀山さんへのアプローチは「実際、可愛げのある“脅迫”」

サノ

サノ

しゅんさんに「大物の信頼を勝ち取る力」をテーマに取材したいと思ったのは、こちらの動画がきっかけでして。
出典Youtube
4年前、当時20歳のしゅんさんがアポなしでDMM亀山会長への取材を実現した動画。いったい何がどうなったらこうなるの?
サノ

サノ

「いち学生がアポなしでDMMの亀山さんへの突撃インタビュー」って、これ本当にどうやったんですか…?
しゅんさん

しゅんさん

正直、亀山会長もビックリされてました(笑)。

田舎の学生が急にアポなしでやってきて、そのまま会長室にたどり着いてるわけなので…
サノ

サノ

いやそりゃそうですよね…実際どんな流れで亀山会長と話せることになったんですか?

オフィスに着いて…そこからは?
しゅんさん

しゅんさん

普通に受付で「亀山会長とお話ししたいんです」とお願いしたら、「一応確認してみますね」って想像以上にすんなり通してくれたんです。

しかも、「待ってる間、オフィス見学しますか?」って社内を案内してくれて。
DMMの受付の方、優しすぎんか?
しゅんさん

しゅんさん

で、そのままオフィスツアーをしている最中にばったり亀山会長にお会いして、改めて直接用件を話しました。

そこから、1時間くらい話して、僕のYouTubeチャンネルの動画も撮らせてもらい、さらには亀山さんのYouTubeチャンネル「かめっちTV」で1、2時間一緒にライブ配信もすることになって。

会長はジムに行く予定があったらしいんですけど、「まあこいつと過ごしたるか」って(笑)。
サノ

サノ

言ってみるもんですね…

でも、なんでそこで「じゃあ話聞いてやるか」ってなったんでしょう?

普通だったら「アポも取らない世間知らず、話にならん」って門前払いされると思うんですが。
しゅんさん

しゅんさん

強いて言えば、「必死さ」に応えてくださったのかなと思います。

実はあの日の一番の目的は、「DMMにイベント会場を貸してもらうこと」だったんですよ。
ほう?
しゅんさん

しゅんさん

当時は起業したばかりで本当にお金がなくて。

事業として“就活イベント”に挑戦してみたかったんですけど、当然会場を借りるお金もない。

そこで広いオフィスを持っているDMMに、「こういうイベントをやりたい。スペースを借りられないか」と相談しに行ったんです。インタビューは、そのついでで。
サノ

サノ

なるほど。でも、どうしてアポを取らなかったんですか?
しゅんさん

しゅんさん

さすがに大物すぎて、メールじゃほぼ無理だと思ったんです。それで一か八か、一番熱量が伝わる「対面交渉」に賭けてみようと。

非常識なアクションだとわかりつつも、当時は「事業を伸ばしたい、会社を大きくしたい、そのためにやれることは全部やりたい」という使命感があったので「やりたいので、ぜひお願いします!」って必死にお願いしにいった感じでした。
サノ

サノ

下心とかあざとさが一切ない、ピュアな「必死さ」だったから懐に飛び込めたのか…
しゅんさん

しゅんさん

どうでしょう…でも、「田舎者の大学生が一生懸命勇気を出して来た」感は、我ながらめっちゃ伝わってたと思います(笑)。

言っちゃえば、“かわいげのある強迫”みたいなものですよね。
この「許されちゃう」感じの愛嬌ずるいな…

こんな飛び込みは1発アウト。「いい飛び込み」と「悪い飛び込み」の違いとは

サノ

サノ

でも、「自分はこういう夢があって、●●さんに力を貸してほしいです!」みたいな“熱量だけのお願い”って、インフルエンサーの方はけっこう毛嫌いしている印象があるんですが…

飛び込みって正直、リスクありません?
しゅんさん

しゅんさん

ありますね。とくに、“想像力が欠如した飛び込み”は1発アウト

一度「相手のことを想像できない人」というレッテルが貼られると、覆すのは難しいです。
しゅんさん

しゅんさん

いい飛び込みと悪い飛び込みの違いは、“タイミングの見極め”がすべてだと思います。

「相手のメリットを最大化できるタイミング」を、意識的に狙えているかどうか
サノ

サノ

相手のメリットを最大化できるタイミングというと、たとえば?
しゅんさん

しゅんさん

たとえば今でもお仕事させていただいている編集者の箕輪厚介さんは、かなりタイミングを見計らいました。

あるとき箕輪さんがTwitterでLINEのQRコードを公開したので「チャンス!」と思ったんですけど、すぐには連絡しなかったんですよね。

本当に困ってそうなタイミングで送ろう」と。
サノ

サノ

箕輪さんが困ってそうなタイミング…?
しゅんさん

しゅんさん

当時の箕輪さんのTwitterを分析していると、YouTubeが伸び悩んでいるとわかりました。でも、まだ「本気で困っている」ようではなかった。

そこからじっとタイミングを見計らっていると、その2週間後ぐらいに、「YouTube頑張らなきゃ」みたいな直接的なツイートがされて。そのときに「よしきた」とすぐにLINEを送ったんです
サノ

サノ

箕輪さんのピンチに、どういう連絡をしたんですか?
しゅんさん

しゅんさん

僕としては弊社のYouTubeに出演してほしかったので、「毎月2、3時間ください。僕らが箕輪さんのYouTubeチャンネルを1カ月分撮り貯めして、運営します。そのかわり、3時間のうち1時間はしゅんダイアリー用の動画に使わせてください」と連絡しました。

相手のメリットを最大化しつつ、自分のお願いを伝えたんです。

そこからお付き合いが始まったんですよね。
策士だ…
しゅんさん

しゅんさん

今では、僕のところにも「若者からのお願いごと」が来るんですけど、多くが「相手のメリットを最大化できていない」。

行動してるのはいいと思いますけど…基本、「飛び込み」のチャンスは1回です。

ここぞというタイミングで「想像力のある図々しさ」を見せられるか。ここがミソなのかなと思います。

飛び込む人に待ってるメリット「タイムワープ」

サノ

サノ

僕、正直「人を頼る」のが苦手なんですけど…

思い切って飛び込むことの最大のメリットってなんだと思いますか?
しゅんさん

しゅんさん

一番は…「時間の概念が変わること」ですかね。

「格上の懐に飛び込む」って、“タイムワープ”的な側面があるんですよ。
タイムワープ?
しゅんさん

しゅんさん

僕らの会社は、今月から4年目に入ったんですけど、この1年で売上が4倍ぐらい増えたんです。

この成功要因は、「いろんな人の知見を聞いて、素直に実行したから」でして。
サノ

サノ

どういうことですか?
しゅんさん

しゅんさん

去年の4月に、大阪のスタートアップ企業が集まる「秀吉会」っていうコミュニティに飛び込んだんですよね。

売り上げによって、下は「猿」、上は「太閤」みたいに、“秀吉のキャリア”をもとに序列が決まっていて。
サノ

サノ

めちゃ面白そう。
しゅんさん

しゅんさん

粗利5000万以下は「猿」で、人間として扱われないみたいな、ガチの「安土・桃山」な世界観なんですけど
怖いコミュニティだった
しゅんさん

しゅんさん

平均年齢37歳ぐらいのおじさんの集まりなんですけど、そこに事業を伸ばすヒントを得ようと飛び込んだんです。

自分がまだ経験してない挑戦や失敗を体験している人に、今の自分たちの狙いを説明して、「ここが穴だ」「こうしたらもっと伸びる」とか指摘してもらう。そして、指摘されたことをそのまますぐ素直に実行する。

これを愚直に繰り返しまくった結果、事業がぐっと伸びたんですよね。
サノ

サノ

実際に行動してる分、説得力がすごい…
しゅんさん

しゅんさん

もちろん、自分で考えぬいて出す答えにも大きな価値があるとは思うんですけど、答えを出して行動を起こすまでにめっちゃ時間がかかりますよね

自分のような若手はまだ見えてないことが多すぎるからこそ、「まずは先輩方のなかに飛び込んで吸収する」ことに徹する。そこに集中しきることで成長スピードが格段に上がるんです。

このタイムワープ機能が、飛び込みで得られる一番のメリットだと思っています。
しゅんさん

しゅんさん

僕、環境がその人の「当たり前」を決めると思うんですよね。

先ほど「人に頼るのが苦手」とおっしゃいましたけど、それも「人に頼るのが当たり前の人たちの環境に飛び込む」のが一番の克服法だと思うんですよ。
サノ

サノ

…!

自分の目線を強制的に上げていくと。
しゅんさん

しゅんさん

自分の手が届く範囲の、「最優秀グループの最後尾」にいるのが一番いい

この実感があるから、僕はどんどん先輩方のなかに飛び込んでいきたいんです。
24歳のアドバイス、めちゃくちゃ刺さるな…

成長するなら二股をせよ。しゅんダイアリーが徹底して意識していること

サノ

サノ

ちなみにいろんな人にアドバイスをもらうなかで、とくにどんな人たちのアドバイスを聞くようにしているんですか?
しゅんさん

しゅんさん

僕が常にイメージしてるのは、「2、3個上の先輩」と「20、30個上の先輩」の二股です。

アドバイスをもらうときは、ちゃんとこの“二股状態”になってるかをつねに意識してます(笑)。
なんかトンデモ発言きたぞ
しゅんさん

しゅんさん

「2、3個上の先輩」からは、明日からアクションに移せる実用的なアドバイスをもらえることが多い。

視座の高さも起業フェーズも近いので、聞けば聞くほどすぐ成長できる気になるんです。

でも、「自分の一手先にいる師匠」のもとにばかり飛び込んでいると、すごく短絡的な視点になりがちなんですよね。
サノ

サノ

ああ…
しゅんさん

しゅんさん

“人として”とか“ビジネスとは”みたいな「原理・原則」の部分は、やっぱり修羅場をくぐってる20、30歳上の将軍クラスのほうが、圧倒的に説得力のあるアドバイスをくれるんです。

そこを同時に吸収しつづけないと、小手先の短期的な成長だけになって、本質的な成長が疎かになってしまう感覚があったので、注意深くそこのバランスを取りながら飛び込むようにしています。
しゅんさん

しゅんさん

ただ、自分に対して客観的に意見をもらえること自体すごく価値があることなので、とくに最初は人を選ばないほうがいいかもしれません。

というのも…悩みとか課題って、自分だけで考えていても顕在化してないことのほうが多いと思ってて。
サノ

サノ

人から言われて初めて気づくみたいな。
しゅんさん

しゅんさん

いろんな人に会っていろんなものさしに触れて、外の世界を知ることで「自分の形」がわかってくるっていうことはすごくあるんですね。

「しょぼいよ」とかきついこと言われることもいっぱいありますけど、大将軍を目指してボロボロの槍でいろんな敵に立ち向かう“足軽”の気持ちというか。大将軍から受ける傷、同ランクの足軽から受ける傷、落武者から受ける傷…それぞれ全然違う学びがあるので。

だから今も毎月大阪に行ってますよ、秀吉会の会合に出るために。
サノ

サノ

ちなみに秀吉会での今のランクは何なんですか?
しゅんさん

しゅんさん

「木下」ですね
「木下秀吉」ってことは…まだまだ下から2番目くらいってことか。先は長い

「頑張ってる」だけじゃ差がつかない。「飛び込み」こそが希少スキルになる

サノ

サノ

飛び込む人になるメリットがすごくよくわかりました。

飛び込める人になるために、まずは飛び込んでる人たちのなかに飛び込めというお話も。
しゅんさん

しゅんさん

よかったです!

飛び込める人を増やしたい」というのが、僕の人生のテーマなので。
しゅんさん

しゅんさん

飛び込むこと、行動を起こすことって、人生を豊かにすると思うので。

正直、飛び込めない人に関しては少し「もったいなさ」を感じるんです。
サノ

サノ

もったいなさ?
しゅんさん

しゅんさん

世の中の人ってだいたいみんな頑張ってるじゃないですか。一生懸命頑張って、朝早くから夜遅くまで働いてる素敵な人って本当にたくさんいる。

でも、だからこそ「頑張ってる」だけじゃ差がつかないという現実もある気がしていて。
しゅんさん

しゅんさん

「飛び込む」って、今はまだほかの人がなかなかできないスキルだから、相対的に市場価値が高くなる。

価値観は人それぞれですけど、「飛び込んでみたいけど飛び込めずにいる」なら、絶対やったほうがいいと本気で思います。
サノ

サノ

それこそ株式会社Diaryの動画も、福田さんをはじめとしたメンバーのみなさんの「飛び込む姿」を観れるわけですもんね。

そういう姿に触れることも、ある意味飛び込みの第一歩なのかも。
しゅんさん

しゅんさん

まさに、今まではYouTubeでコンテンツを通じて、一歩踏み出す勇気を応援するってことをやってたんですけど…

最近は新たに、地方と都会の就活情報格差を埋め、誰もが気軽に就活の「具体的な一歩」を踏み出す後押しをする就活情報メディアFlatto(フラット)というサービスに挑戦しています。

僕らの事業を通じて「飛び込んでみよう」と思ってくれる人が増えていったら、何よりうれしいですね!
想像を超える戦略性の数々。筆者は28歳なのですが、対峙していてとても「24歳の若者」とは思えませんでした。

「愛されキャラで得をしているだけでは…?」なんて邪推しているところもあったのですが、まったくの見当違い。大物に一目置かれるのは、熱意を秘めつつ冷静に飛び込む行動力があったからこそ

しゅんダイアリー率いる、株式会社Diary。まだまだ学ぶべきことがたくさんありそうです…!

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=福田啄也(@fkd1111)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉