セカンドライフで見つけた“はたらくWell-being”
平均年齢67歳!? 日本初のシニアeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」が第2の人生で新しい夢に挑戦する理由
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
「はたらくWell-being」とは、はたらくことを通してその人自身が感じる幸せや満足感のこと。それを測るための3つの質問があります。
①あなたは、日々の仕事に喜びや楽しみを感じていますか?
②自分の仕事は、人々の生活をよりよくすることにつながっていると思いますか?
③自分の仕事や働き方は、多くの選択肢の中から、あなたが選べる状態ですか?
3つの質問すべてに「YES」と答えられる人は「はたらくWell-being」が高いと言えます。
「“はたらくWell-being”を考えよう」では、日々、充実感を持ってはたらく方々へのインタビューを通して、幸せにはたらくためのヒントを探します。
今回紹介するのは、日本初となるeスポーツのシニアプロチーム、「マタギスナイパーズ」。マタギスナイパーズとは、日本一高齢化が進む秋田県で2021年に発足したシニアeスポーツチームで、プレイ中の配信動画がSNSで話題になり、今、注目を集めています。
「孫にも一目置かれる存在」をスローガンに掲げ、これまで2回の選手募集が行われました。応募のなかから、現在はトップチームが5名、アカデミーが6名、計11名で活動中。プレイするのは、主人公目線で銃器を撃ち合うFPS系の『VALORANT』というゲームで、月〜金の週5日、13時〜17時で合同練習を行い、技術を磨いています。
今回は、マタギスナイパーズからmark25さん、NAGIさん、ひろBooさんの3名に、マタギスナイパーズとの意外な出会い、そして活動しているなかで見えた新たな目標について聞きました。
2021年9月、日本一高齢化が進む秋田県にて発足した、日本初のシニアeスポーツチーム。秋田県に本社を置くIT企業、株式会社エスツーが本プロジェクトをスタートさせた。「高齢化」という言葉を、「eスポーツ」と掛け合わせることでポジティブなムーブメントを起こすこと、そして世代横断型のコミュニティ形成も目指している
平均年齢67歳!ゲーム好きの秋田県民が集った
ーー(編集部)「マタギスナイパーズ」のみなさん、本日はよろしくお願いいたします!さっそく、みなさんの自己紹介をお願いいたします。
mark25さん
プレイヤーネーム、mark25です。68歳、現役です(笑)。
今日はよろしくお願いいたします!
ひろBooさん
ひろBooと言います。
mark25さん、NAGIさんは一期生で、僕は二期生として入りました。4月で65歳になります。
NAGIさん
NAGIと言います。ひろBooさんと同い年です。よろしくお願いいたします。
ーー(編集部)みなさんゲームをプレイされるときのプレイヤーネームとのことですが、なにか由来があるんですか?
ひろBooさん
僕は、若い頃からゲームをするときに使っていたあだ名ですね。
mark25さん
昔乗っていた車からつけました。
トヨタのマークツーに乗っていて、その排気量の25を組み合わせてmark25です。
NAGIさん
私は、幸せを呼ぶといわれている観葉植物「ナギ」からつけました。
本名とはまったく関係ないです(笑)。
左から、mark25さん、NAGIさん、ひろBooさん。このビジュアルがカッコ良すぎる!
ーー(編集部)一番気になったのが、そもそもみなさんはどのようにしてマタギスナイパーズに入られたのでしょうか。
NAGIさん・ひろBooさん
年長者のmark25さんから、どうぞどうぞ。
mark25さん
もう2人とも〜……じゃあ、僭越ながら私から(笑)。
マタギスナイパーズはこれまで2回の選手募集をしているのですが、1回目の募集の時に妻から「やってみたら?」と勧めてもらったことがきっかけでした。
ちょうど定年退職し、「さあ、これから思いっきり遊んでやるぞ!」と意気込んでいたタイミング。説明会に行き、あれよあれよという間にeスポーツ選手になって、ここにいます(笑)。
ーー(編集部)奥様がきっかけで!でも、「思いっきり遊んでやるぞ!」と思っていたのに、勧めにのったのはどうしてですか?
mark25さん
もともとゲームとパソコンが好きだったからですね。
私はファミコンが誕生した世代ということもあり、昔からゲームが大好きだったんです(笑)。
パソコンも、仕事で使うようになってからは興味を持ち、自宅用にも購入していました。
募集を見たときに、ゲームといえばゲーム機だと思っていたので、パソコンでゲームをするというのが新鮮で「やってみたいな」と思ったんです。
プレイ中は冷静沈着なmark25さん
ーー(編集部)「好きなもの × 好きなもの」だったと。ひろBooさんはどのようにしてマタギスナイパーズに?
ひろBooさん
タイミングかなあ。実は私、1回目の募集のこともニュースを見て知っていたんです。
ゲームが好きだったことと、「日本初のシニアeスポーツ選手」という言葉に惹かれたんですが、1回目は年齢制限が65歳以上の募集で、当時の私は62歳。
仕事もしていたので、今ではないなと思っていました。
ーー(編集部)なるほど。
ひろBooさん
翌年に退職し、mark25さん同様「好きなことをやろう!」と思い、1ヶ月間ずっと寝ていたんです。
NAGIさん
寝ていた!? 1ヶ月間も!?
ひろBooさん
寝てました(笑)。
mark25さん
あはは、初めて聞いた!
ひろBooさん
すると、あっという間に体力も落ちちゃって、歩くのも大変になりまして…。
NAGIさん
ちょっと~まずいよ~。
ひろBooさん
まさしく「これはまずい、何かしなくちゃいけない」と思ったタイミングで、ちょうどマタギスナイパーズの二期生募集があることをネットニュースで知って。
2回目の募集は年齢制限が60歳以上だったので、「日本初のeスポーツ選手になるなら、今だ!」と。それがきっかけですね。
マタギスナイパーズに加入し、体力も回復!
ーー(編集部)ナイスタイミング!NAGIさんはどのようなきっかけだったのでしょうか?
NAGIさん
私は、若いときからゲームが大好きで、いろんなゲームソフトやゲーム機に触れていたんですね。
マタギスナイパーズの1回目の募集のことを旦那さんが教えてくれて「ゲーム好きな君にぴったりじゃない?」って。
ーー(編集部)あれ、NAGIさんは、ひろBooさんと同い年なんですよね。ということは、65歳以上という年齢制限があったと思うのですが…
NAGIさん
ひろBooさんの手前、恥ずかしいのですが、年齢制限には達していなかったものの、好奇心がむくむくと湧いてきちゃったんです。だから、図々しく電話で問い合わせて(笑)。
ひろBooさん
えー!すごい!さすが、NAGIさん。
NAGIさん
図々しいだけです(笑)。
電話口で「年齢に達してないんですけど、やってみたい」と伝えたところ、「それほど熱意があるなら説明会に来てください!」と言ってもらえて、1期生のジュニアメンバーとして仲間入りしました。
裁縫も得意で、手先の器用さはゲームに役立っているそう
好きだからこそ、eスポーツが楽しくて仕方ない
ーー(編集部)それぞれ出会い方があったと思うのですが、「eスポーツ」というと若者中心のイメージや大きな会場のなかで盛りあがる華やかな世界といった印象があって、抵抗感などはなかったですか?
mark25さん
そうですね。私は正直、「スポーツ」の部分に違和感がありました。
だって、ゲームじゃないですか。「なんでスポーツと言うんだろう」「真剣にスポーツしている人に失礼じゃないか」と思っていました。
NAGIさん
うんうん。
ひろBooさん
僕は人対人で戦うってところに抵抗感があったな。
画面上のキャラクターとはいえ相手は生身の人間で、撃ち殺すっていうんですかね。最初は「やってしまった……」という感覚がありました。
ーー(編集部)確かに、一人で完結できるRPGやパズルゲームとは違い、人対人の対戦ですよね。そういったお気持ちに何か変化はありましたか?
ひろBooさん
すごく変わりましたね。
mark25さん
そうそう。eスポーツは、まさしく「スポーツ」なんです。
試合を重ねるうちに、僕らと同じように対戦相手だって真剣にこのゲームと向き合っていて、取り組んでいることがわかるようになりました。
技を繰り出すタイミング、プレイヤー1人1人の戦闘力、チームとしての連携……さまざまな要素がeスポーツにはあります。
ひろBooさん
スポーツだからこそ、勝敗もあるわけで。ゲームではありますが、他のスポーツと同じで、いきなりポンとできるわけじゃないんです。
監督と一緒にトレーニングをして、自主練もして、基礎ができるようになってから、ようやく応用ができるようになるんです。
eスポーツに限らず、どんなことでも誰だって最初は0からのスタートですよね。自分を初心者だと自覚して、教えてもらうことで少しずつ成長できる。
できなかった技ができるようになったり、試合で勝てたりすると嬉しいですね。
ーー(編集部)そう思うとeスポーツは、身体を使うスポーツというより、考え方が「スポーツ」ですね。
mark25さん
そう!ほんとそうなんです。
連携のために、たくさんコミュニケーションをとるひろBooさんとmark25さん
ーー(編集部)退職されたあとで、また0から経験を積み重ねていく。その体験すべてがみなさんにとっての“はたらくWell-being”な状態かもしれないですね。
mark25さん
そうですね。私、セカンドライフは「自分の好きなこと以外はやらない!」を徹底しているんです。
これまでの仕事はやりがいや楽しさもあった一方で、苦手なことや意に反することも仕事としてやらないといけなかった。
だから今、自分の好きなことを思う存分できているうえに、仲間と目指せる目標もあるので毎日が刺激的で楽しいです(笑)。
NAGIさん
ほんとそう。
ひろBooさん
僕も「好きなことをやろう!」とゴロゴロしていたけど、それだと体力も落ちちゃうし、時間だけが余っちゃって(笑)。
eスポーツとして大好きなゲームをしていると、好きなことだから一生懸命になれて、できるようになりたいという思いも募っていくんです。
これからもずっと続けていきたいと思えるものに出会えて、感謝しかないですね。
誰もがスポーツ選手になれる。孫に一目置かれる存在を目指して
NAGIさん
それに少し前に、バズる?だっけ?
mark25さん
うん、バズる。
NAGIさん
そのおかげで、いろんな方たちにマタギスナイパーズのことを知ってもらえるようになりました。
eスポーツ選手としての技術もまだまだだけれど、いろんな人から「すごいね」「上手だ ね」と声援をいただくことが励みになっています。
そういったみなさんからの応援もすごく嬉しいんです。
ーー(編集部)私もSNSでみなさんの活躍を拝見して、「高齢者がeスポーツ!?」と思ったのですが、1から技術を習得されてひたむきにトレーニングをされている姿に胸が熱くなりました。
mark25さん
嬉しいですね。
ひろBooさん
ねえ。
ーー(編集部)では最後に、みなさんの今後の目標を教えてください。
mark25さん
一番は、技術を磨き試合に出て、1つでも多く勝つことかな。
だけどそれ以上に、高齢者のゲーミングの世界をもっと広めていきたいと思っています。
NAGIさん
そうそう。
ーー(編集部)高齢者のゲーミングの世界、ですか。
mark25さん
まだ肩身が狭いような気がするんだよな。
ひろBooさん
60を越えた僕らがゲームをしているというと、認知症予防のようなイメージで見られることがあるんですよ。
mark25さん
だけど、そうじゃないんだよって言いたいんです。本気でプロを目指しているんだと。
歳を重ねて「ゴルフをやっている」というと「いいね〜」と言われることはあっても、「ゲームをやっている」だと、未だに「え? ゲーム? 遊んでるだけじゃん」と言われてしまう。
mark25さん
だけど、息子や孫の世代では、ゲームをすることって違和感なく受け入れられるんですよね。
私がゲームをしていても「おー!親父もやってるの?」と言ってくれて、マタギスナイパーズのことを話すと「すげえじゃん!」って。
一緒に画面を見ながらゲームをして、「そんな技出せるの!?」と言われたときは嬉しかったなあ。
ひろBooさん
僕らはセカンドキャリアとして、eスポーツ選手を選んでいるんです。
真剣にゲームと向き合ってるし、高齢者であっても「eスポーツ選手になれる」ってことをマタギスナイパーズから広めたいですね。
mark25さん
いつか「ゲームやってるんだよ!」「eスポーツやってるんだよ!」と同世代とも話したい(笑)。
NAGIさん
私も、マタギスナイパーズに入っていなかったときは、周りの目を気にしてしまって「ゲームが好き」ってなかなか大きな声では言えなかったんです。
子どもたちや旦那さんからは「ママってゲーマーだよね」って言われるぐらいやり込んでいたのに。
だけど、今ではオリンピック正式種目になる可能性もあって、世界的にも注目されているからこそ、これからの時代はゲームをしていれば素敵なことが起こるんじゃないかなと思います。
ひろBooさん
そうだね。
NAGIさん
スポーツ選手、アスリートというと、身体的に優れた人しかできなかったけれど、eスポーツはそうじゃない。誰もが、何歳からでもスポーツ選手になれる。
年齢、国籍、性別、身体のハンディキャップ、そういうあらゆるしがらみを越えて、実在する自分ではない別次元の自分として活躍できる時代になっていくんじゃないかなと思っています。
マタギスナイパーズがその一助になりたいし、好きなものを胸を張って「好きだ」と言いたいですね。
<取材・文=田邉 なつほ>
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