ビジネスパーソンインタビュー
「仲間に幸せになってほしい」を制度にした。アルバイトからZOZOの本部長になった男の生き様

「前澤さんって、世間の人が知らない『すごいところ』があるんです」

「仲間に幸せになってほしい」を制度にした。アルバイトからZOZOの本部長になった男の生き様

新R25編集部

連載

あのビジネスパーソンの「○○力」

2021/04/07

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仕事の現場で奮闘するビジネスパーソンたちの魅力、スキルを“○○力”と名付けて、読者の皆さんにお届けしたい! 題して、連載「あのビジネスパーソンの『○○力』」。

今回は、『新R25』の前身フリーマガジン『R25』を立ち上げ、さまざまな大企業を渡り歩いてきた田端信太郎さんに、「まわりに面白い会社員の人はいませんか?」ときいてみました。

すると…

田端さん

俺がZOZOにいたときにいっしょに仕事してた、西巻(拓自)さんって人が面白いよ。

なんせ高卒、アルバイトからの叩き上げでZOZOの本部長になった男だからさあ。前澤さんにも遠慮せずモノ言うし、それなのにかわいがられてるし。

とのこと。

ほう…。調べてみると、ZOZOのおひざ元・千葉出身。ZOZOとジェフ千葉をこよなく愛するアツい男とのこと。

田端さんの推薦で、株式会社ZOZO・西巻さんの「叩き上げな魅力」を聞いてみることしました!

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉

「僕はただのバカだったけど…」西巻さんが証言する“前澤さんとZOZOの本当にすごいところ”

ZOZOの西千葉オフィスと、Zoomでつながせていただき取材しました

天野

西巻さんは高校卒業後、アルバイトとしてスタートトゥデイ(現ZOZO)に入社されたんですよね。

西巻さん

そうです。「ZOZOTOWN」の1年目に入ってます。

当時、幼なじみが先に入ってたんですけど、会うたびに「すごい成長してる会社がある、面白い」って言うんです。

天野

それがZOZOだったと。

西巻さん

マエザワっていう社長が、この先すごいたくさん社員採るって言ってる」「『みんな、あっというまに大勢の社員の上に立つことになるから、自覚を持て』って言われたわ」みたいな話してて。

伸び盛りで、マジで面白そうだなって思いましたね。

…ってなると早く入ったほうがいいなって思ったんですよ。1年遅れたら先輩増えるしイヤだなって。

若干ヤンキーっぽい発想(失礼)

天野

最初の仕事は何だったんですか?

西巻さん

「物流」ですね。当時の自分は、社会人としての常識もなければ、エクセルもワードも使えない、本当の「バカ」。ただノリがいいヤツ。

物流は、前澤さんたちが仕事の仕組みをつくってくれてたので、とにかくオペレーションの仕事だった。4年半そこにいて、成長させてもらえたのはラッキーだったな。

僕はZOZOのラッキーボーイなんですよ。

天野

ラッキーボーイ…

西巻さん

最初から優秀な人がいるところに放り込まれてたら、何もできないまま終わってたと思います。

それまでは千葉の地元の人とかがたくさん働いてたんですけど、その時期以降、頭のいい人、優秀な人が会社を上場させるためにどんどん入ってきてたんですよ。

今の社長の澤田(宏太郎)さんも、コンサルとして入ってきて。

天野

会社が大きくなるタイミングですね…

そこまでイケイケで来てた会社だけに、「組織の空気が変わっちゃったな」ってことはなかったんですか?

西巻さん

なかったんですよ。そこがZOZOというか、前澤さんのすごいところだなと思うんです。

…前澤さんって「世の中に知られていない、本当にすごいところ」があるんですよ。

天野

えっ、なんですか? 知りたいです。

西巻さん

「人を選ばない」ことです。

どんだけ頭のいい「ザ・キャリアマン」でも、何もない「ただの服好き」みたいなヤツでも、絶対に対等に扱うんですよね。

天野

へええ!

西巻さん

「それなりの大学に行って、頭もよくて」みたいな人たちって、どこからでも引く手あまただと思うんです。でも逆に、世の中にはそうじゃない人がいっぱいいるわけですよね。

前澤さんは、全員同じ扱いをする。そのためにビジネスの仕組みをつくって、雇用でいろんな人を救ってきた

僕はそこが本当にすごいところだなと思うんです。

西巻さん

そして「人を選ばない」のは、ZOZOのすごいところでもあるんですよ。

プラットフォームをつくっているから、ZOZOTOWNを創業した当初から、言い方はおかしいですけど寝ててもお金が入ってくる状態ができている

それで、僕たちみたいな“お前ホントいい性格してんな”っていうだけが取り柄というヤツらも採用してくれて。

天野

なるほど。

西巻さん

いろんな人が会社にいて、全員が楽しく働ける。そういう文化をつくってくれた。会社というより、小さな社会

その文化があるから、澤田さんとか、コンサル出身の頭いい人たちが僕のような人間をバカ扱いすることもない。当時は相当生意気なことも言ったし、言い争いになったこともあるけど(笑)。

先代の人たちがそういう文化をつくってくれて、長く働けていることは、本当にラッキーボーイだと思いますよ。

「人を選ばない哲学」の先に行き着いた、驚きの採用方法

西巻さん

僕、そのあと経営企画室っていう部署に行くんですけど…

そこで、「採用」して人を選ぶことをやめようっていう話が出たことがあったんですよ。

天野

じゃあどうやって社員を入れるんですか?

西巻さん

抽選です。

抽選採用」。

ガチャで入社?

天野

抽選採用…!?

西巻さん

本当に「人を選ばない」っていう思想を現実のものにするなら、「学歴とかで人を選んで採用するってどうなんだろう」と

究極は“選ばない採用”をしたいんだよね」って。

天野

普通の会社じゃ考えられないですが…

西巻さん

先着採用」っていう話が出たこともあったな(笑)。

天野

そんなプレゼントみたいに…

西巻さん

ただやっぱり現場のスタッフのこととか、実現に向けての壁はあって、結局見送ったんですけど…

いろんな人が会社にいて、全員が楽しく働ける場所を作りたいという想いはずっと変わりませんね。

「この気持ちが、自分にとってのガソリン」西巻さんが高く評価される“姿勢”とは

天野

ここから、西巻さん本人の魅力にも迫りたいんですが…

「アルバイトから本部長にまでなった男」として有名ですが、西巻さんが叩き上げで高く評価された理由はどこにあるんでしょうか?

西巻さん

別に評価されてるのかはわからないですけど…

今、このZoomにいっしょに入ってる広報の山口っていう男は僕の後輩なんです。僕、いちおう山口より先に出世してますし、先に結婚もしてるんですよ

新しいiPhoneも先に買いますし…

天野

何の話?

西巻さん

これ何の話かっていうと、自分が何かをもらったり、買ったり、幸せになったりするじゃないですか。

そういうことがあったときに僕が考えることはひとつで、「この幸せを後輩や会社のみんなにも味わってほしい」ってことなんですよ。

「後輩が“給料上がらない”とか言ってると苦しくなっちゃう。まあ甘やかすわけじゃなく、自分で頑張れやって思うこともあるけど」

西巻さん

「この会社に入ってよかったわ」って思う人を増やしていきたい。その気持ちが自分にとってのガソリンなんです。

僕はそこがずっと変わらないですね。

それで、人自本部(※ZOZOでは人事をこう表記します)の本部長だったときに、「会社の仲間に幸せになってほしい」みたいな気持ちを全部“制度”にしたんですよ。

※西巻さんが本部長時代に部署で導入を推進したZOZOの制度

・家族時短…育児、介護、ペットの世話、同居人との時間をつくる、など本人が「家族」と認識する人のために1日最大2時間の時短勤務が認められる制度

・自学制度の増額…スタッフの自己成長、インプットのために月2500円~10万円までが支給される制度

・ZOZOコネ千葉の飲食店やサービス店などを中心に、社員優待が受けられる。地域に還元、またZOZOが千葉の会社ということをより認知してもらうための制度

・部署別フレックスの導入…全社一律の定時制度をなくし、業務内容や繁忙期にあわせた働き方が部署単位でできるようになった

福利厚生・制度 - 株式会社ZOZO

そのほか、「一般社員や管理職の給与制度の見直し」「千葉市や千葉大学と包括的連携協定を締結」「ジェフユナイテッド市原・千葉のオフィシャルパートナー契約およびブランディングパートナー契約を締結」など西巻さんの手掛けた取り組みは多岐に渡るそうです

天野

西巻さんの「仲間想い」な気持ちから、ZOZO独自の制度ができてたのか…

そういえば、前澤さんもインタビューで「社内から競争を排除したい」「資本主義でも社会主義でもない」と言ってて独特だなと思っていたのですが、西巻さんの考えもこれに近いのかな…

前澤さん:僕は本来、人間は競争するためじゃなくて、自分が楽しんだり人の役に立つために働くと思っています。

ただ、過度に競争が社内のシステムとして存在していると、隣の席の人に勝つために働くようになってしまう。

だから、なるべく社内から競争を排除することによって、みんなに本来の働く目的を再確認してほしいんです。

(中略)

渡辺:競争を排除するという意味では、社会主義的な発想に近いところもあるのでしょうか?

前澤さん:いや、社会主義は抑圧された感じがするし、資本主義も僕からすると抑圧されている。どちらでもないですね。

https://r25.jp/article/545051307150263563

西巻さん

そうですね。会社も大きくなってきて、今まで通りでずっと続くとは思わないですけど…

ただ、僕みたいな人は会社にほかにいないんで。これ、別に自分がすごいって言ってるんじゃないですよ。でも、かわりがきかないんです

天野

自分でそう言えることがすごい。

会社が大きくなるほど必要とされる“叩き上げの意義”だな…

西巻さん

ただのベテランじゃなくて、「らしさを体現する存在になる」っていうことですよね。

僕が好きなジェフ千葉の佐藤勇人っていう元選手は、ジェフのユースで育って一度は他のクラブに移籍したんですけど、ジェフがJ2に落ちたときに「J1に復帰させるために」って戻ってきたんですよ。それで“ミスタージェフ”と呼ばれるようになったんです。

やっぱり、愛を持ってひとつのチームや会社に人生かける生き方も、選択肢としてアリなんじゃないかって思うんですよ。

スマホを見ながら“サッカーアツい話”を熱弁する西巻さん

天野

ひとつツッコむと…最近の社員の人のなかには「そんなの求めてない」「暑苦しい」みたいに言う人もいそうじゃないですか…?

西巻さん

え?そんなこと言われても、変わらないよ!

だって、そういう仲間を想う“ハートの部分”がなきゃ、仕事してる意味ないって思っちゃうから。

まあ、そういう暑苦しいの嫌いな人もいると思うんですけどね。でも変わらない。

いい意味でヤンキー感あるのが西巻さんの魅力なんですね

西巻さん

マジメに答えると、「会社の象徴はひとつじゃなくていい」って思ってるんです。そのワンオブゼムとして、自分みたいなヤツがいることって意味があると思う。

最近は若くから転職する人も多いけど、1社に長くいるのも面白いし、いろんなメリットがあるよってことは言いたいですね。

「僕が、アルバイトからこの会社に入って学んだことは、『人生楽しいし、仕事も楽しいよ』ってこと」

「教えてくれた会社に対して感謝の気持ちがDNAに刻み込まれてしまったので、そういう人を一人でも増やしていくのが自然なこと」

西巻さんが取材のなかで言っていた言葉です。

会社は変わるし、組織も変わっていく。それでも、そのなかで誰かのことを想って頑張る人には、まわりもついてくる。

シゴトも、人生も、もっと楽しもう」をスローガンに掲げる新R25にいる自分も、大いに学ぶことのある取材でした。

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)〉

ラグジュアリー&デザイナーズ「ZOZOVILLA」に注目

アツい気持ちを持った西巻さんが今取り組んでいるのが、3月にオープンした「ZOZOVILLA」です。

世界中で人気のラグジュアリー&デザイナーズブランドが約90集結。

現代美術家の井田幸昌氏がキービジュアルを手掛けるサイトは、見ているだけで刺激的。

ふだんと違うオシャレに、ぜひ一度のぞいてみてください!

あのビジネスパーソンの「○○力」

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