ビジネスパーソンインタビュー
#木曜日は本曜日
「紙の本に直接線を引いて読んでます」作家・岸田奈美がオススメする“内省できる”3冊
新R25編集部
小さい頃はよく本屋に足を運んでいたけれど、「最近は電子書籍で楽しんでいる」「そもそも活字をあまり読んでいない」「街中で本屋をあまり見かけなくなった」という人も多いのではないでしょうか?
実は電子書籍の台頭や、書籍のネット購入率増加等を受け、2000年には21495店舗あった本屋は、2020年には11024店舗と約半数に。
そんな現状に東京の本屋が一念発起したことで、テレビニュースやSNSなどで話題沸騰中のプロジェクト「#木曜日は本曜日」をご存知ですか?
忙しい日々の中でもゆっくり本と向き合う時間として、週の真ん中に位置する“木曜日”に目を向け、週に一回本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指して始動したというこのプロジェクト。
「本屋のピンチを救いたい!」との思いに共感する本屋と本を愛する著名人・インフルエンサー・作家十数名が「人生を変えた本」を選書し、本屋での本との出会い・エピソードを語るインタビュー動画も毎週木曜日に公開されています。
先週公開の佐久間宣行さんの動画はこちら
注目企業や業界の最新ニュースを、新R25が独自の視点でピックアップしてお届けする「特報 新R25」では今回、プロジェクト第2弾のインタビュー内容を一部抜粋してお届け。
今回は、作家・エッセイストとして活躍している岸田奈美さん。
街中で本屋を見つけるとつい入ってしまうほど本屋が好きだという岸田さんオススメする本とは…?
【岸田奈美(きしだ・なみ)】1991年生まれ、兵庫県神戸市出身。関西学院大学人間福祉学部社会起業学科2014年卒。在学中に株式会社ミライロの創業メンバーとして加入、10年にわたり広報部長を務めたのち、作家として独立。世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズ。 Forbes 「30 UNDER 30 JAPAN 2020」「30 UNDER 30Asia 2021」選出。2020年9月『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館)、2021年5月『もうあかんわ日記』(ライツ社)を発売
本屋に行く理由
岸田さん
京都に住んでるんですが、大きな書店も小さな書店もあるので散歩のついでに立ち寄ってしまいます。
売れる本だけが並べられた本棚より、書店員さんが読んでいて来た人に何かしらを伝えたいというエゴが漏れ出ている棚を見ると「やばい!この本屋は危険だ!」と思うこともありますね(笑)。
岸田さん
私にとって本屋は「不安の森」です。
積み上がっていく本を見ていると、「自分って今こんなことが辛いんだ、不安なんだ」という気持ちになるんですけど、それが見えた時点で読めばどこかに辿り着けるかもしれないという希望にもなるので、いい意味で「不安と出会える場所」だと思っています。
岸田奈美の「人生を変えた本」
那須正幹『ズッコケ文化祭事件』(ポプラ社)
おなじみ「ズッコケ」シリーズ。今回は文化祭で、六年一組は劇をすることに決まった。台本は、売れない作家の新谷さんにお願いして、いよいよ練習開始となるが…いつものズッコケトリオをまきこんでまともにいくはずもなく…。
岸田さん
この本は“子供をなめてない”というのが面白いポイントです。
子供って思ったより賢いし、ごまかされない。子供を1人の人間としてすごく尊重した上でおもしろいものを書いてるんです。
「人を感動させよう」とか「いい人と思われよう」って人間見透かすんですよね。
自分が本気で面白い、知りたいと思うことを書かないと通用しないんだなという厳しさを学んだ本でもあります。
沙村広明『波よ聞いてくれ』(講談社)
舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露する。すると翌日、録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまった。激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。この縁でラジオ業界から勧誘されるミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。
岸田さん
1話で元彼への呪いの言葉として「お前は地の果てまでも追いつめて殺す」と生放送のラジオで話すシーンがあるんですけど…(笑)
私もnoteを書いているときにこの発言くらいの疾走感を持つことがたまにあるんです。
これまでで一番読まれた記事ですごくいい下着屋を教えてもらったら胸がめちゃ大きくなったっていう話があるんですけど、それも試着して下着を買ってその興奮のままマクドナルドに入って書いたんです(笑)。
「これを言わずにはいられない」という感覚というか、私自身が主人公に共感できる作品のひとつです。
向田邦子『向田邦子ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)
お人好しと意地悪、頑固と機転…人間の面白さを描いた名エッセイ。家族、食、旅など、テーマ別に50篇を精選。
岸田さん
会社を辞めて独立を決める直前に編集者の佐渡島庸平さんに「岸田さんは向田邦子みたいなエッセイストになれると思うんだよ」って言われた時に初めて調べて読んだんです。
その時に「あ、こんな文章がいつか書けるのなら信じようかな」と思ったんですよね。
向田さんは、自分が「いいな」「愛しいな」と思ったことをいいも悪いも判断をつけずにそのまま書いていて、人を地位とかカテゴリで判断していないのに“その人らしさ”が伝わってくるというのが、今の自分にできてない部分。
このエッセイを読むたびに憧れを感じますね。
公開中のインタビュー動画のなかには、岸田さんが実際に書店をめぐりながら読書の楽しみ方や選び方について語るシーンも。
今回佐久間さんが選んだ本は、東京都書店商業組合加盟約180の書店にて販売されるほか、購入特典として本棚をイメージした「#木曜日は本曜日 限定しおり」の店頭配布など、本屋ならではのキャンペーンも実施中とのこと。
週の前半頑張った自分へのご褒美として、週の後半を楽しむための1冊として。自分がまだ出会っていない新しい本を楽しみに「木曜日」に本屋に遊びにいってみるのはいかがでしょうか?
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