ビジネスパーソンインタビュー
「30歳でアイドル?(笑)」と言われても「迷惑かけてなくない!?」
「アイドルは黒髪で笑顔」なんて自分ルール、なくしていきたい。柏木由紀が目指す30代アイドルの境地
新R25編集部
毎月新R25の “表紙”を飾る、「つきヌケ企画」。
若手時代のモヤモヤを乗り越えブレイクのきっかけをつかんだ方々に、「つきぬけた瞬間~ブレイクスルーポイント~」と題し、モヤモヤ期から抜け出した瞬間のお話をお聞きします!
3月号の表紙は…柏木由紀さん!
2019年の「30歳まで卒業しない」宣言から2年。AKB総選挙では常に10位以内をキープし、“アイドル戦国時代”の最前線で駆け抜けてきたトップランカーが挑む、「30代現役アイドル」という境地。
今年7月にグループ初の「30歳」を迎える柏木さんに、宣言の真意についてお聞きしました。
〈聞き手=サノトモキ〉
【柏木由紀(かしわぎ・ゆき)】国民的アイドルグループAKB48のメンバー。2006年第3期AKB48追加メンバーオーディションに合格、AKB48選抜総選挙では3位の記録を持つ。2013年、AKB48メンバー史上初の個人レーベル「YukiRing」を立ち上げ、ソロ活動を開始。横浜アリーナ、全国ツアーを経て、AKB48グループ在籍中のメンバーとしては初の単独アジアツアーを成功させる等、国内外問わずこれまで定期的にライブツアーを行っている。2021年3月に秋元康氏以外のプロデュースによるソロシングル『CAN YOU WALK WITH ME?』をリリースするなど、「しぶとかわいい」をキャッチフレーズに唯一無二の“アイドルアーティスト”として挑戦をつづけている
「グループに“いてしまっている”」20代後半は、ずっと申し訳なさがあった
サノ
今日は「30歳まで卒業しない宣言」についてお聞きしたくて。
グループ初の30代に挑戦すると公表したとき、いったいどんな心境だったのでしょうか?
柏木さん
いやもう…めっちゃ不安でしたよ!(笑)
私、絶対に批判が起きるだろうと覚悟してたんです。
歌番組(『ベストヒット歌謡祭2019』)で個人的な発表をすることもそうだし、そんな場で「卒業します」じゃなく「まだいます」と宣言することも、すごく不安で。
柏木さん
でも私、あの宣言でめちゃくちゃ吹っ切れたんです。
デビュー以降、一番「つきぬけた」と思えたのは間違いなくあの瞬間でした。
20代後半の私は、ずっとどこかで「申し訳ないな」と思いながらグループにいたので。
サノ
申し訳ない…!? それは誰に対しての?
柏木さん
後輩たちですね。
後輩のために卒業していく子もいるなかで、自分だけがいつまでも「いて“しまっている”」という思いがずっとあって。
実際私のファン以外の方からはそういう声も届きますし。
そうだったんだ…
柏木さん
もともと15人くらいいた同期も3年前に私以外全員卒業してしまって…さっしー(指原莉乃さん)が卒業したときは、いよいよ本当に取り残されたなと感じましたね。
「あれ、私も卒業しなきゃいけないのかな」 って。
「30代アイドル」になることで、“アイドルはこうあるべき”という概念を変えられる存在に
サノ
そんななか、柏木さんはなぜ「卒業しない」という選択肢を選んだんでしょうか?
柏木さん
やっぱり、私自身に「卒業したい」って気持ちが1ミリもなかったんですよね。
女優とか「アイドル以外の夢」を見つけて卒業する子も多いんですけど、私は歌う、踊る、ステージに立つ、「AKB48」という仕事がずっと好きだった。
柏木さん
私、ファンがいないなら、すぐ辞めると思うんです。でもまだ今の私には、目の前に「ファン」という存在がちゃんと見えている。
AKBは総選挙もあって、ファンの方にお金と時間をかけて押し上げてもらった感覚がすごくあるから…今度は自分が恩返しをしたいんです。
だから、まだ卒業しないと決めました。
サノ
実際に宣言をしたとき、まわりの反応はどうだったんですか?
柏木さん
私Twitterですっごいエゴサーチするので、番組が終わってすぐ調べたんですけど…(笑)
想像以上に温かい反応ばかりだったんですよね。「“女性アイドルの賞味期限・年齢制限”という概念をなくしてほしい」という応援の声もいただいて。
たしかに「カッコイイ」という声がとても多い印象でした
柏木さん
それで、30歳を前にして“新しいアイドル像”と言ったら大げさですけど、そういうものを考えてもいいのかなって思ったんです。
私、30歳になるにあたって、20代に置いてきたいものがあって。
サノ
20代に置いていきたいもの。何なのでしょうか?
柏木さん
「アイドルとはこうあるべきだ」という自分のなかのルール。
アイドルは絶対黒髪、ずっと笑顔で涙を見せない、意見を言わない…「アイドルなんだからやっちゃダメ」と自分に課してきたルールが、数えきれないくらいあったんです。
でもそういうの、もういらないです。髪も速攻茶色に染めましたし(笑)。
取材中、清々しい笑顔がすごく印象的でした
柏木さん
30代は「アイドルとして」じゃなく、「ひとりの女性として」自分が興味のあることに目を向けて、考えて、発信していく力をつけたいなと思います。
20代のころはその一連の流れからとにかく逃げてたんですけど、そこに向き合わないとどんどん視野が狭くなって、本当は行けるはずだった道に気づけないことがたくさんあると感じたので。
サノ
「アイドルだから」っていう大義名分を理由に逃げてきたことを、片っ端から潰していくと。
柏木さん
「アイドルだから」って言いながら、めちゃくちゃ個性をなくしてたなって。
アイドル、とはいえ“人”。
「30歳」だからこそできること、いっぱいあると思うので。
キャリアを積んでから「成長」が難しい問題。「大々的に宣言すること」の効果は絶大だった
柏木さん
そして、「30歳でもやる」という目標を大々的に“宣言”したことで私、すっごい生きやすくなったんですよ。
「宣言すること」の力って、すごいんです。
「宣言すること」の力…?
柏木さん
私もともと、自分の目標を公言するのがすごくイヤな人間だったんですよ。
まわりに言うことで「動きが制限される」と思ってたんです。目標から逃げられなくなるし、プレッシャーを感じて身動き取れなくなりそうだなって。
でもいざ口に出してみると、「やるしかない」と覚悟が決まることで「できること」が格段に増える。効果は絶大でした。
サノ
たしかに宣言後の柏木さんは、リミッターが外れたように新しい挑戦をはじめた印象があります。
YouTubeの「ゆきりんワールド」とか、今月発売のソロシングル「CAN YOU WALK WITH ME?」でBiSHのプロデューサー・渡辺淳之介さんとコラボしたりとか。(※秋元康氏以外によるプロデュースはグループ史上初)
柏木さん
そうなんですよ。
私この年齢になって、「現状維持ってすごく難しいな」って感じてて。
柏木さん
アイドルになったばかりのころは、何もかもが初めてで、「できないこと」の数だけ「頑張ること」が用意されているんですよ。
目の前の「頑張ること」をガムシャラにやっていれば、自然に力がついて成長できる。
でもある程度キャリアを積むと、「成長」ってめちゃくちゃ難しくて。
サノ
ああ、それすごくわかるかも…
柏木さん
もはや「頑張ること」を自分で用意していかなくちゃいけない。
「新しいこと」「まだやってないこと」を見つけていかないと、自分を成長させる機会がないんですよ。
そうやって、時代やまわりに置いていかれないよう毎日必死に自分をアップデートさせて…それでやっと「現状維持」なんですよね(笑)。
柏木さん
だから「CAN YOU WALK WITH ME?」で渡辺淳之介さんにプロデュースいただいた際も、とにかく「身を委ねよう」と決めてました。
長くやっていると、「得意なこと/苦手なこと」「やりたいこと/やりたくないこと」がある程度精査されちゃってるから、新しいことが来てもついリスクヘッジしてしまうので…
新しい方にプロデュースしていただけるせっかくの機会に、「自分はこう」とか言ってちゃダメだなと。
グループの後輩に対しては「矢面に立ってあげたい」「自分の言葉を押し付けない」
サノ
AKB48に残ると決断した今、「後輩にしてあげたいこと」などもあるのでしょうか?
柏木さん
先陣切って新しい挑戦をして、後輩の選択肢を増やしてあげたいですね。
30歳現役アイドルという道を作ることもそうだし、「まずいったん私が試してみますね!?」じゃないけど…
切り込み隊長みたいな(笑)?
柏木さん
あとは長年かけて強くなったので、矢面に立っていきたいです。
誹謗中傷を気にして傷ついてる後輩ってやっぱりたくさんいるので、「真正面から受け止めなくていいんだ」ってことをちゃんと伝えてあげたい。
私はもう慣れちゃったんで(笑)。
コメント欄での誹謗中傷を右へ左へぶん投げエンタメへと昇華してしまうゆきりんさんはコチラ
サノ
まわりが後輩ばかりの環境ですし、「頼れるリーダーにならなきゃ」という感覚もあるんでしょうか?
柏木さん
いや…むしろ私は「若いリーダーを立てる」ようにしてますね。
柏木さん
AKBには総監督という役職があって、私よりめちゃくちゃ若い子がそれをやってるんですよ。私はそれでいいと思っていて。
先輩すぎる私が引っ張れば、きっと私の発言は後輩たちのなかで「絶対の言葉」になっちゃう。それが怖いんです。
どうしても気になるときは、「私の考えがすべてじゃないから、みんなは自分にあった考え方を探してね」と前置きしたうえで、自分の考えを伝えてます。
サノ
自分の影響力を自覚して謙虚さを保ってるのか…
完全に理想の上司だ…
柏木さん
いやいや、 「キャプテン」という役職も任されたときもあったんですけど、私、全然向いてませんでしたから!(笑)
でも、今のメンバーに「ヘビーローテーション」とか「フォーチュンクッキー」のような(勢いのある)時期を経験してる子は、もうほとんどいない。
当時学んだことを下に伝えていくのはさっしーがやってくれていたんですけど、いよいよ自分の番が来たなと…自分にできるかたちでなんとか頑張ってる感じです。
最後に、ゆきりんさんからのうれしいお言葉…
柏木さん
ちなみに…この取材って、1月から始まった表紙企画ですよね!?
サノ
えっ、はい…ご存じなんですか!?
柏木さん
私じつは、新R25の大・ファン・で!
勉強になるし視野が広がるし、めっちゃくちゃ読んでるんですよ、いつも!(笑)
聞きました? 聞きました!?
柏木さん
だからマネージャーさんから「新R25のお仕事入った」と聞いたとき、「もしかして1月から始まった表紙のやつですか!?」って聞いて(笑)。
本当にうれしかったんです! 第1回のマヂカルラブリーさん、第2回の後藤真希さん、どっちも読みましたもん!(笑)
サノ
やってて…よかった…
今日はありがとうございました! ぜひまたよろしくお願いします!
最後に思わぬうれしいサプライズをくれたゆきりんさん。新R25スタッフが一瞬にしてゆきりん推しになりました。さすが…。
「30代現役アイドル」として先陣を切り、新たな歴史を作っていく柏木さん…さらに目の離せないアイドルになること間違いなし!
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=森カズシゲ〉
7年5カ月ぶりのソロシングル「CAN YOU WALK WITH ME?」が3月3日発売!
30歳を迎えるアニバーサリーイヤーに、7年5ヶ月ぶりとなるソロシングルCDをWACK代表取締役社長・渡辺淳之介氏プロデュースでリリースが決定!
柏木さんとBiSH、豆柴の大群など数々のアイドルユニットを手掛けるプロデューサー渡辺淳之介氏のコラボにより、AKB史上初「秋元康さん以外のプロデューサーによる楽曲」が実現。
鬼才・渡辺淳之介氏と、“しぶとかわいい“をキャッチフレーズに「アイドルアーティスト」として新たな道を切り開く柏木さんの化学反応…気になった方はぜひチェックしてみてください!
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