ビジネスパーソンインタビュー
登録から入社までのフローも解説
転職エージェントの仕組みをプロが徹底解剖。なぜ無料なの? 転職サイトとの違いは?
新R25編集部
専任のアドバイザーが転職活動をサポートしてくれる「転職エージェント」。しかし、使ったことがないと、どんな仕組みなのかがわかりにくいですよね。
転職活動のサポートって、具体的に何をしてくれるの? 転職サイトとの違いって何? などなど、疑問は尽きません。
そこで今回は、転職の実態に詳しい2名の専門家にご協力を依頼!転職エージェントの仕組みや活用法、メリットやデメリットを解説していただきました。
協力してくださったのはこちらの2名。
松本さん
人事・戦略コンサルタントの松本です。
アクセンチュアなどの大手外資系コンサルティング会社に24年勤めて、プリンシパル(部長級)を経て現職に至ります。人材マネジメントの支援をした企業は600社以上です。
さまざまな企業の人事とのつながりがあるので、企業側からの意見をふまえてコメントをします。
小林さん
人材コンサルタントの小林です。法律系人材を取り扱う外資系ヘッドハント会社を経て、人材紹介事業をおこなう会社を設立しました。
2013年から厚労省認定の講師として、人材紹介事業者に対する法定講習を2500社以上に対しおこなっています。
転職希望者や転職エージェント、人事とのやりとりをベースに、私の利用経験もふまえてお話します。
※詳細プロフィールは記事の下部に記載しています。
〈聞き手=SYO〉
※2020年8月現在、記事内で紹介している転職エージェントについては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、ほとんどのサービスで「Web面談」もしくは「電話面談」での対応をおこなっています。詳しくは各サービスの公式サイトをご覧ください。
また、転職市場に対する“コロナショック”の影響は
こちらの記事
で解説しています。
転職エージェントってどんなサービス?
SYO
そもそも、転職エージェントとはどんなサービスなんでしょうか?
松本さん
ざっくり言うと、無料でアドバイザーがキャリアの相談に乗ってくれるサービスです。
相性のいい求人案件を提案してくれるのに加えて、過去の実績などをもとに選考のサポートもしてくれます。
SYO
転職サイトとはどう違うんですか?
松本さん
転職サイトは、さまざま企業の求人案件が集まっているサイトです。気になる求人案件を自分で探してスピーディに直接応募できるのがメリットですが、選考対策などは自分でしなければなりません。
なので一番の違いは「サポートをしてくれる仲介者の有無」ですね。
転職活動は慣れていないと自分ひとりで進めるのは難しいので、転職エージェントのアドバイザーに相談したほうがスムーズに転職できるかもしれません。
転職サイト | 転職エージェント | |
---|---|---|
求人数 | 転職エージェントと比べると多い | 転職サイトに比べると少ないが、 非公開求人がある |
理想の求人との 出会いやすさ | 自分で探す手間がかかる | アドバイザーが相性のいい 求人案件を提案してくれるので 出会いやすい |
選考の サポート | サイト上の説明を見ながら 自分で進めないといけない | 職務経歴書の書き方や 面接対策などを アドバイスしてくれる |
年収交渉 | 自分でやらないといけない | アドバイザーが代行してくれる |
退職 サポート | 自分でやらないと いけないケースが大半 | アドバイザーがサポート してくれるケースもある |
なぜ無料なの?転職エージェントの仕組みを解説
SYO
転職エージェントは無料で使えるんですよね。アドバイザーが付くなら人件費がかさみそうですが、どうして無料で使えるんでしょうか?
松本さん
その理由は転職エージェントの仕組みにあります。
転職エージェントは、1人の採用が確定した時点ではじめて報酬が発生する「成果報酬型」。採用した人の年収の3〜4割を、企業が“紹介手数料”として転職エージェントに支払う仕組みです。
SYO
年収の3〜4割となると、結構な金額になりますよね。
松本さん
はい。1人の転職が決まるたびに企業からまとまった報酬が転職エージェントに入るので、求職者は無料で使えるというわけです。
SYO
そういう仕組みだったのか…
松本さん
企業目線でいうと、転職エージェントは転職サイトよりも1人あたりの採用コストがかさみやすいとも言えます。
それでもお金をかけて質のいい求職者を吟味したいという企業の求人案件が集まりやすいのも転職エージェントの特徴です。
成長盛りの企業や、新規プロジェクトメンバーなどの重要なポジションを求めている企業が転職エージェントを好んで使っていますよ。
転職エージェントを使った転職活動の流れ
小林さん
転職エージェントに登録してからは以下のような流れになります。
小林さん
それぞれの公式ページから登録します。たとえばリクルートは「リクルートエージェント」という転職エージェントのほかに、「リクナビNEXT」という転職サイトも運営しています。
このように同じ運営会社が似たようなサービスを提供している場合があるので、間違えないよう気をつけましょう。
・マイナビエージェントの公式サイトはこちら
・リクルートエージェントの公式サイトはこちら
・パソナキャリアの公式サイトはこちら
小林さん
登録してから数日以内にメールや電話で連絡がきます。ざっくりと転職に関する要望を伝えてから、詳しい話をするために面談の日程調整をします。
場合によっては電話で対応してもらうことも可能です。
面談でキャリア相談や求人案件を紹介をしてもらう
小林さん
アドバイザーとの面談は転職希望者と企業の要望をすり合わせる場です。ヘンに気を使わず、率直に要望を伝えましょう。
事前のヒアリングもふまえて、合いそうな求人案件を紹介してもらえます。
リクルートエージェントなど、網羅的に求人案件を扱っている「総合型」の場合はいろんな可能性を提示するために数十件単位。
特定の業界・職種に強い「特化型」の場合は厳選して数件の提案となることが多いです。
提案されたからといって、すぐに応募する必要はありません。じっくり吟味しましょう。
選考の準備をサポートしてもらう
小林さん
志望する企業が決まったら、選考に向けた準備をします。
転職エージェントは転職者の年収の約3〜4割を報酬として受け取るビジネスです。
なので、求職者をなるべく高い年収で入社させられるよう、できるだけ魅力的に見せるためのサポートをしてくれます。遠慮せずに頼りましょう。
また、直接の応募と違って、転職エージェント経由だとアドバイザーが企業への推薦文を添えてくれます。
表面的なスペックにとどまらない魅力をアピールしてくれるので、書類選考の通過率は高くなる傾向にあります。
SYO
無事書類選考を通過したあとも、アドバイザーがサポートしてくれるんでしょうか?
小林さん
はい。面接対策を手伝ってくれるほか、サービスによっては模擬面接をしてくれることもあります。
面接の前に、アドバイザーから過去の選考情報を仕入れるといいですね。企業との信頼関係が築けているアドバイザーなら、面接官の人柄や好かれる受け答えなどの“裏事情”まで教えてくれます。
どんな面接官が出てくるのか、どんなことを聞かれるのかを事前に知っておけば、本番で焦らずにすむでしょう。
内定後は給与交渉や退職のサポートをしてもらう
小林さん
転職エージェントのサポートは、内定が出たら終わりではありません。特に給与交渉の強い味方になってくれます。
入社予定の企業の給与テーブル(年齢や能力に対応する給与の幅)をもとに、実現可能な範囲で高い年収がもらえるように交渉してくれます。
希望があれば、退職についてのサポートも受けられます。上司に引き止められたらどうすればいいのか、退職手続きを進めてもらえない場合の対処法など、状況に応じたアドバイスがもらえるでしょう。
転職エージェントを使う際の注意点
注意点①:アドバイザーは“転職ありき”で話を進めがち
SYO
転職エージェントが役に立つのはわかったんですが、本当にデメリットはないのでしょうか?
松本さん
転職させるビジネスなので当然ですが、単なるキャリア相談のつもりが“転職ありき”で話が進むことをデメリットに感じる方はいるかもしれません。
小林さん
求職者の採用が決まらない限り、転職エージェントは報酬をもらえません。
つまり、求職者のキャリア相談を受けるだけではボランティアも同然。彼らにとっては「いかに多くの人を転職させられるか」がもっとも重要なんです。
SYO
なるほど…じゃあ、転職するか迷っている場合は転職エージェントは使わないほうがいいんでしょうか?
松本さん
いえ、むしろすぐ転職するつもりのない方がほとんどです。なのでキャリアについて相談するために登録するのももちろんアリですよ。
ただ、アドバイザーがぐいぐいと転職を押し進めてくる可能性があることは頭に入れておきましょう。
小林さん
特に、転職に関する意向が固まっていない方は注意した方がいいですね。アドバイザーからの提案がしっくりこないときには、断る意志が必要です。
ただ、まともなアドバイザーであれば、転職意向度の低い方もちゃんと相手にしてくれます。すぐ転職するつもりはなくても、有用な情報源として積極的に活用するといいでしょう。
松本さん
もはや「転職エージェントは求人案件を持っている“人力データベース”」と割り切ってしまうぐらいがいいかもしれません。
注意点②:転職サイト経由のほうが有利なこともある
松本さん
転職エージェント経由で応募すると、採用した企業は転職エージェントに報酬を支払うことになります。
一方、直接応募や転職サイト経由で採用した場合は、紹介手数料が発生しません。
だから、まったく同じスペックの人が同じタイミングで応募していた場合、転職エージェント経由の応募者が不利になる可能性がゼロではないんです。
SYO
直接応募のほうが有利なんですね…!
松本さん
いや、そうとも限りません。転職エージェントを使うと、アドバイザーに職務経歴書の添削をしてもらえたり推薦文を添えてもらえたりします。
なので、直接応募するよりも選考が通過しやすいケースも多々ありますよ。
どちらが有利かはタイミングや受ける企業によって大きく異なりますので、転職エージェントと転職サイトの両方を活用してチャンスを逃さないのがベストだと思います。
【2020年】おすすめ転職サイトを1163人にガチ調査! 初心者は別サービスを使うべき!?|新R25転職
転職サイトの選び方や活用法も伝授
転職サイトについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【1128人が評価】おすすめの転職エージェント
新R25では、転職サービスの実態に精通した専門家にご協力いただき、「新R25キャリア総研」として、実際に利用したことのある約1000人を対象におすすめの転職サイト・転職エージェントについて調査しました。
この記事では、新R25キャリア総研の調査結果や過去におこなった専門家への取材をふまえて、特におすすめできる転職エージェントのみをご紹介します。
松本さん
転職エージェントは、登録前の段階ではそれほど絞り込まないことをおすすめします。
担当アドバイザーが転職の成否を分けるので、複数のサービスに登録してから厳選するべきだからです。
転職サイトと転職エージェントには、どちらも求人案件を網羅的に抱えている「総合型」と、特定の領域に特化した「特化型」があります。
総合型の転職サイトと転職エージェントにはそれぞれ必ず1〜2個登録し、さらに転職先の希望が明確であればそこに特化したものも2〜3個、合計で3〜6個ぐらいは登録するといいでしょう。
これ以外にも、詳細な評判やほかのおすすめサービスが知りたい方は、ぜひ下記のリンク先の記事もご覧ください。
Embedly〈取材・文=SYO(@syocinema)、編集=石川みく(@newfang298)〉
精通者たちの詳細プロフィール
【松本利明(まつもと・としあき)】人事・戦略コンサルタント。大手外資系コンサルティングファームに24年勤務しプリンシパル(部長級)を経験。人材マネジメントの支援をした企業は600社以上。HR総研の客員研究員も務めている。著書に5万人のリストラと6500名以上のリーダーの選抜と育成をした人の「目利き」。『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)『稼げる人稼げない人の習慣』(日経新聞出版社)などベストセラー多数。BBC、TBS、日本経済新聞、東洋経済などメディア実績多数
【松本さんの関連リンク集】
・松本利明@人事・戦略コンサルタント(累計15万部)|Twitter
【小林毅(こばやし・たけし)】人材コンサルタント。外資系ヘッドハント会社を経て、2010年にホライズン・コンサルティング株式会社を設立。法務系人材を中心に約11年、延べ4400人の相談、サポートをおこない、日系大手企業、ベンチャー企業、外資系企業の採用支援にも従事。2013年より厚労省認定「職業紹介責任者講習」講師として、人材紹介事業者に対する法定講習を延べ2000社に対しおこない、不健全と言われる人材業界全体のボトムアップに尽力している。著書に『転職大全』(朝日新聞出版)、『成功する転職「5%」の法則』(自由国民社)がある
【小林さんの関連リンク集】
ビジネスパーソンインタビュー
TikTok広告賞「Creative Category」全5部門のうち2部門をワンメディアが受賞! 広告会社として最多タイ
NEW
新R25編集部
「部下をコントロールするなんて傲慢」マネジメントを履き違えた社員に新R25社長が喝
新R25編集部
ハラカドにTENGAがオープンさせたのは“愛と自由のワンダーランド”TENGA LAND
新R25編集部
「DMM.com」が20年後の事業成長を見据えた採用特設サイトオープン! 事業加速のための会社変革とは。
新R25編集部
応援購入と推し活は似ている。Makuakeによるお買い物イベント「OC TOKYO -推しコマース東京-」
新R25編集部
【ガチレス】「プレイヤー評価だけで組織で突き抜けられる?」幅を広げたい中堅の焦りを田端信太郎さんに相談した
新R25編集部