ビジネスパーソンインタビュー
転職サイトとどちらが有利?
転職エージェントのデメリットとは?プロに注意点と活用法を聞いた
新R25編集部
目次
- 転職エージェントのデメリットや注意点
- デメリット:①「転職ありき」で話を進められる
- デメリット:②希望とかけ離れた求人案件を提案されることも
- デメリット:③内定受諾を急かされることも
- デメリット:④長期的なアドバイスは期待できない
- デメリット:⑤客観的でないアドバイスをされることも
- 転職エージェントの6つのメリット
- メリット①:無料で相性のいい求人案件を紹介してもらえる
- メリット②:転職活動の相談に乗ってくれる
- メリット③:内定獲得のためのノウハウを教えてもらえる
- メリット④:面倒なことをアドバイザーに一任できる
- メリット⑤:非公開求人を紹介してもらえる
- メリット⑥:自分の市場価値を把握し、キャリアプランを整理できる
- 転職エージェントと転職サイトはどちらが有利?
- 転職エージェントと転職サイトはどんな人が利用すべき?
- おすすめの転職サイトと転職エージェント
- 精通者たちの詳細プロフィール
転職活動をサポートしてくれる便利なサービス、転職エージェント。
ですが、利用したことがない方からすると「転職エージェントにはどんなメリットがあるの?」「使えないって声もあるけど、実際はどうなの?」など、わからないことだらけで不安に感じるかと思います。
そこで今回は、転職の実態に詳しい2名の専門家にご協力を依頼!転職エージェントのメリットとデメリットについて、具体的に解説していただきました。
協力してくださったのは、こちらの2名。
松本さん
人事・戦略コンサルタントの松本です。
アクセンチュアなどの大手外資系コンサルティング会社に24年勤めて、プリンシパル(部長級)を経て現職に至ります。人材マネジメントの支援をした企業は600社以上です。
さまざまな企業の人事とのつながりがあるので、企業側からの意見をふまえてコメントをします。
小林さん
人材コンサルタントの小林です。法律系人材を取り扱う外資系ヘッドハント会社を経て、人材紹介事業をおこなう会社を設立しました。
2013年から厚労省認定の講師として、人材紹介事業者に対する法定講習を2500社以上に対しおこなっています。
転職希望者や転職エージェント、人事とのやりとりをベースに、私の利用経験もふまえてお話しします。
※詳細プロフィールは記事の下部に記載しています
〈聞き手=森かおる〉
転職エージェントのデメリットや注意点
森
転職エージェントにはいろいろなメリットがあるようですが、デメリットはないのでしょうか?
松本さん
デメリットと捉えられそうなことはいくつかありますが、どれも使い方次第で解決できる問題です。解決策もふくめてご説明しましょう。
デメリット:①「転職ありき」で話を進められる
松本さん
まず、求職者を転職させることで成り立つビジネスなので当然ですが、単なるキャリア相談のつもりが「転職ありき」で話が進むことをデメリットに感じる方はいるかもしれません。
実際、たくさんの求人票を見せてきて、応募を促してくるアドバイザーがいるのは事実です。
森
ということは、すぐに転職する気がない場合は登録しないほうがいいんですか…?
松本さん
いえ、そんなことはありません。「非公開求人」も含め、転職エージェントはたくさんの求人案件を持っているので、データベースとして積極的に活用すべきです。
小林さん
すぐ転職する予定がないと相手にされない場合もありますが、それは一部のアドバイザーに限った話です。まともなアドバイザーほど、転職意向度の低い方もちゃんと相手にしてくれますよ。
もし冷たい対応を受けた場合は、使うエージェントを変えてしまいましょう。どうしてもそのエージェントとやりとりをしたければ、担当アドバイザーを変えてもらうという手もあります。
デメリット:②希望とかけ離れた求人案件を提案されることも
小林さん
転職に関する意志が固まっていない方がエージェントを利用する際は注意が必要です。
たとえば事務職を希望しているのに「一度は営業も経験したほうがいいですよ」などと、希望とはまったく違う求人案件を紹介されることがあります。
そういった異業種・他職種への転職がいいほうに転ぶこともあるので難しいところですが、提案がしっくりこないときには断る意志が必要です。
森
希望と異なる求人案件を断るべきか、判断する基準はありますか?
小林さん
「なぜこの求人案件をおすすめしてくれたんですか?」と、担当アドバイザーに聞いて判断しましょう。
返ってきた答えが論理的でなく納得できないようなら、単に押し込みやすい求人先を紹介されている可能性が高いので、断ってもいいでしょう。
また、断る際には「なぜその求人案件が気に入らないのか」をはっきり伝えることも大切です。そうやってアドバイザーとコミュニケーションを取っていけば、提案の質も徐々に上がってくるはずですよ。
ちなみに、流されやすい方の場合は提案を断れずに応募してしまうことがあるかもしれませんが、最終的に転職希望者が承諾しなければ選考が進むことはないので安心してください。
デメリット:③内定受諾を急かされることも
松本さん
言ってしまえば、転職エージェントのビジネスは「いかに多くの人を転職させるか」にかかっています。
なので、1社から内定が出た途端にほかの企業を紹介してくれなくなったり、「2週間で返事をしないと企業側に迷惑がかかる」などと内定受諾を急かされたりする可能性は否めません。
森
もし気乗りしない場合は、内定を辞退してもいいのですか?
小林さん
もちろんです。無理に承諾して短期離職してしまうと、自分の職歴に傷がついてしまうリスクもあります。もし気乗りしない場合や、ほかに気になる企業がある場合ははっきり断りましょう。
そして、内定獲得後も転職活動を続けられるように、あらかじめ複数の転職エージェントに登録しておくといいですね。
デメリット:④長期的なアドバイスは期待できない
松本さん
1人でも多くの転職を決めたいアドバイザーが重視するのは、あなたが転職市場で「今」売れるかどうかです。
転職エージェントは利用期間の目安(約3〜6カ月)が設けられている場合も多く、長期的なアドバイスをもらえないこともあるかもしれません。
転職市場の長期的な動向を知りたければ、転職エージェントだけでなく転職サイトに登録し、スカウト機能を活用するのがおすすめ。
求人案件が掲載されたメールがたくさん送られてくるので、その数や内容の変化から、転職市場の状況や自分にチャンス上がるあるかどうかが見えてきます。
デメリット:⑤客観的でないアドバイスをされることも
松本さん
アドバイザーによっては、自分の経験だけをもとにした主観的な提案を押し付けてくる人もいるので要注意。ほかにも、提案力が低い、業界に関する知識が浅いなど、“ハズレ”のアドバイザーに当たる可能性は否めません。
担当アドバイザーの質が転職の成否を分けるので、もし信頼できないアドバイザーに当たった場合はすぐに担当者の変更をお願いしましょう。
そもそも転職エージェントをひとつに絞らず、複数のサービスに登録してから厳選するといいですね。
森
では、どうすれば「いいアドバイザー」を見分けられるんでしょうか?
松本さん
1つの方法として、自分の主観で相性がいいかを判断すること。これについては複数の転職エージェントに登録して、いろんなアドバイザーを相対比較するとわかりやすいです。
あとは、アドバイザー個人の実績を聞いてみることです。ある企業へ多くの求職者を転職させた実績があれば、そこに対しては信頼関係が築かれているはず。転職希望者の要望を通す強い交渉力があると見ていいでしょう。
転職エージェントの6つのメリット
メリット①:無料で相性のいい求人案件を紹介してもらえる
森
転職エージェントを使うと、どんなメリットがあるんでしょうか?
松本さん
そもそも転職エージェントとは、プロのキャリアアドバイザーが、求職者の希望や経歴に合った企業を紹介してくれるサービスです。
最初にあげたいメリットは、求職者は無料で使えるということ。
転職エージェントのビジネスモデルは、1人の採用が確定した時点で企業からお金をもらう「成果報酬型」です。求人している企業がお金を払うため、求職者側は無料で使えるんです。
森
なるほど。無料で利用できるなら、気軽に登録できそうですね!
メリット②:転職活動の相談に乗ってくれる
小林さん
2つ目のメリットは、アドバイザーが転職相談に乗ってくれること。
アドバイザーは、企業の担当者と綿密に連絡を取っています。なので、求人案件を紹介されるだけでなく、その企業のリアルな社風や中途採用者の活躍度合いなども教えてもらえます。
森
なるほど。転職サイト経由では、募集要項に書いてある情報しかわからないですもんね。
小林さん
はい。事前に企業のリアルな情報を知っておくことで、転職にありがちな「入社後のミスマッチ」を防げます。
また、アドバイザーと「キャリアの棚卸し」を一緒にしていくことで、自分では気づかなかった新たな可能性を見出してもらえるかもしれません。
たとえば自分では「営業しかできない」と思い込んでいても、過去の実績からリサーチやコンサルティングなどの営業以外のスキルがあることを指摘してもらえるかもしれません。
アドバイザーと一緒に過去の経歴を整理することで、業種・職種の選択肢が広がっていきます。
メリット③:内定獲得のためのノウハウを教えてもらえる
松本さん
提出した職務経歴書や履歴書を添削してもらえたり、面接での好ましい受け答えを教えてもらえたりと、基本的な転職ノウハウを教えてもらえるのもメリットのひとつ。
プロのサポートを受けながら準備できるので、右も左も分からないまま応募するよりも選考に通過する可能性が高まります。はじめての転職活動の場合は特に心強いでしょう。
メリット④:面倒なことをアドバイザーに一任できる
松本さん
また、面接日程の調整や、内定後の年収交渉、入社前の手続きなど、面倒なことを一手に引き受けてくれるのもポイント。
在職中で転職活動に割く時間がない方、急いで転職を決めたい方にとっては大きなメリットです。現在勤めている職場の退職手続きなど、まわりには聞きづらいことも相談できますよ。
メリット⑤:非公開求人を紹介してもらえる
小林さん
企業の採用サイトや転職サイトには公開されていない「非公開求人」を紹介してもらえるのもメリットです。
森
そういった求人案件はなぜ、わざわざ非公開にされているのですか?
小林さん
たとえば、公にしていない極秘プロジェクトの人員募集などは、なるべく外部に情報が漏れないように非公開にされています。
また、応募が殺到しがちな人気企業の求人案件や、専門的なスキルを持った人だけを集めたい求人案件なども、企業側の選考の手間を省くために非公開にされることが多いですね。
いずれにせよやりがいのある求人案件であることが多いので、アドバイザーに聞いてみるといいでしょう。
メリット⑥:自分の市場価値を把握し、キャリアプランを整理できる
松本さん
はじめて転職する方や20代の若手の場合、そもそも転職市場における自分の価値がわからないことが多いと思います。
アドバイザーにどんな求人案件を紹介されるのかを知ることで、おのずと市場価値が把握できるのも、転職エージェントを利用するメリットですよ。
森
自分の強みや需要を、客観的に見られるんですね。
松本さん
はい。転職初心者の場合、転職の理由がはっきりせずにもやもやしている状態が普通です。
転職エージェントを使えば、アドバイザーに悩みや希望を聞いてもらいながら「自分が今後どうなりたいのか」「そのためにどんな転職をすればいいのか」を整理できるでしょう。
転職エージェントと転職サイトはどちらが有利?
森
転職エージェントのほかにも、自分で求人を検索する「転職サイト」もありますよね。ぶっちゃけ、どちらのほうが有利なんでしょうか?
松本さん
どちらが有利とは一概には言えませんが、転職サイトも併用したほうが、チャンスが広がります。
企業からすると、転職エージェント経由よりも転職サイト経由で採用したほうが“おトク”なので、採用のハードルが低めになるんです。
森
というと…?
松本さん
転職サイトは、企業がお金を払って求人広告を掲載する「広告サイト」です。どんな面にどれくらいの期間で掲載するかによって料金が変わります。
一方、転職エージェントは成果報酬型なので、企業は採用する人数に応じてコストがかかります。そのため、転職サイトよりも割高になる傾向があるのです。
つまりもしそれぞれのサービス経由で同じレベルの志望者がいれば、サイト経由で採用したいというのが企業の本音でしょう。
森
なるほど。転職サイト経由で応募したほうがいい場合もあるんですね。
松本さん
そうです。自分で求人案件を探す手間はかかりますが、転職サイトも定期的に見ておくといいでしょう。
転職エージェントと転職サイトはどんな人が利用すべき?
森
転職サイトと転職エージェントは、それぞれどんな人におすすめですか?
松本さん
転職サイトは、すでに目指す業界や職種がはっきりしていて、ある程度は転職活動に慣れている方に向いています。
すでにご説明した通り、採用コストを抑えたい企業は転職エージェント経由よりも転職サイト経由の応募者を優先することもありますので、気になる求人案件があれば自分から積極的に応募しましょう。
森
なるほど。ただ、特に若いうちは希望がぼんやりしていたり、逆に視野が狭くなりすぎてしまっていたりする可能性もありますよね。
松本さん
そんなときに出番となるのが、転職エージェントです。
転職エージェントは、無料でアドバイザーに相談でき、内定が決まるまで手厚いサポートを受けられます。なので、どんな業界に行くか悩んでいる方や、転職にあまり慣れてない初心者に向いています。
とはいえ、転職サイトと転職エージェントそれぞれ強みがあるので、基本的には両方を上手に併用して、チャンスを逃さないのがベストだと思います。
おすすめの転職サイトと転職エージェント
新R25では、転職サービスの実態に精通した専門家にご協力いただき、「新R25キャリア総研」として、実際に利用したことのある約2000人を対象におすすめの転職サイト・転職エージェントについて調査しました。
こちらの記事では、新R25キャリア総研の調査結果や過去におこなった専門家への取材をふまえて、特におすすめできる転職サイト・エージェントのみをご紹介します。
松本さん
転職エージェントは、登録前の段階ではそれほど絞り込まないことをおすすめします。
担当アドバイザーが転職の成否を分けるので、複数のサービスに登録してから厳選するべきだからです。
転職サイトと転職エージェントには、どちらも求人案件を網羅的に抱えている「総合型」と、特定の領域に特化した「特化型」があります。
総合型の転職サイトと転職エージェントにはそれぞれ必ず1〜2個登録し、さらに転職先の希望が明確であればそこに特化したものも2〜3こ、合計で3〜6個ぐらいは登録するといいでしょう。
これ以外にも、詳細な評判やほかのおすすめサービスが知りたい方は、ぜひ下記のリンク先の記事もご覧ください。
Embedly〈取材・文=森かおる(@orca_tweet1)、編集=石川みく(@newfang298)〉
精通者たちの詳細プロフィール
【松本利明(まつもと・としあき)】人事・戦略コンサルタント。大手外資系コンサルティングファームに24年勤務しプリンシパル(部長級)を経験。人材マネジメントの支援をした企業は600社以上。HR総研の客員研究員も務めている。5万人のリストラと6500名以上のリーダーの選抜と育成をした人の「目利き」。著書に『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)『稼げる人稼げない人の習慣』(日経新聞出版)などベストセラー多数。BBC、TBS、日本経済新聞、東洋経済などメディア実績多数
【松本さんの関連リンク集】
・松本利明@人事・戦略コンサルタント(累計15万部)|Twitter
【小林毅(こばやし・たけし)】人材コンサルタント。外資系ヘッドハント会社を経て、2010年にホライズン・コンサルティング株式会社を設立。法務系人材を中心に約11年、延べ4400人の相談、サポートをおこない、日系大手企業、ベンチャー企業、外資系企業の採用支援にも従事。2013年より厚労省認定「職業紹介責任者講習」講師として、人材紹介事業者に対する法定講習を延べ2000社に対しおこない、不健全と言われる人材業界全体のボトムアップに尽力している。著書に『転職大全』(朝日新聞出版)、『成功する転職「5%」の法則』(自由国民社)がある
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