企業インタビュー
10年前からAIに着目。人材サービスを手がける「ディップ」が、AI領域で“日本初”に挑戦しまくるワケ
実は「スタートアップ投資」もしているらしい…
新R25編集部
「バイトル」や「はたらこねっと」など、数々の人材サービスを手がけるディップ株式会社。
社名は知らないまでも、サービス名は聞いたことある!という方がほとんどではないでしょうか。
実はこの会社、「人材」以外にも長らく力を入れている領域があります。
それは「DX領域」。なかでも、最近話題の「AI」に10年近く前から着目し、次々と新規事業を仕掛けているんだとか。
求人情報を扱う企業が、なぜそんなに早く「AI」に目をつけたのか?
ディップのDX化を第一線で推進しているという同社執行役員の進藤 圭さんに、詳しいお話を伺ってみました。
〈聞き手=石川みく(新R25編集部)〉
ディップが古くから「AI」に着目しているワケ
進藤さん
ディップ株式会社は、人材サービスとDXサービスの提供を通して、労働市場におけるさまざまな課題の解決を目指す会社です。
昨年3月には創立25周年を迎え、成長を続けています。
石川
「バイトル」で有名な会社さんですよね? 私もバイトを探すときにお世話になってました。
進藤さん
アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」、総合求人情報サイト「はたらこねっと」、看護師人材紹介サービス「ナースではたらこ」など、人材サービスの認知度が高い会社ではありますが…
実は私たちは、AI・DX に関する取り組みにも、10年近く前から力を入れているんです。
そんなに前から…!?
石川
「人材事業」と「AI」の関係がいまいちわからないんですが…どうして御社が、AIに着目したんですか?
進藤さん
一番の理由は「人口減少」です。
これからの日本では少子高齢化が進み、若年層、つまり生産年齢人口が先細ることが予想されます。
そんななか、ディップのメイン事業は「アルバイト・パート求人情報サイト」。減りつづけている「若い働き手」を仲介している状態です。
現時点では事業は順調ではあるものの…長期的に見ると、減りつづける「働き手」と「仕事」のマッチングでは、事業の成長が見込めなくなる可能性があるんです。
石川
なるほど…そう聞くと切実な問題ですね。
進藤さん
すでに飲食店や小売店では、人手が足りなくて倒産してしまうケースも相次いでいます。
そんな状況のなかで「私たちにもできることがあるんじゃないか?」と思い、いま人がしている仕事を代替できる「AI」や「人工知能」に着目したんです。
メディア、スタートアップ投資、新規事業まで…ディップがAIと歩む歴史
石川
具体的には、どんなことに取り組んでいるんですか?
進藤さん
たくさんあるので…時系列に沿ってご紹介させてください!
2016年:日本初のAI専門メディアをリリース
進藤さん
まずはこちら。AI専門メディアの「AINOW(エーアイナウ)」です。
進藤さん
ディップでは、2015年にAI専門組織「dip AI.Lab」を設立し、2016年には日本初のAI専門メディア「AINOW」をリリース。これまで6年以上運営してきました。
石川
2015年から…ずいぶん目をつけるのが早いですね。
進藤さん
このメディアのポイントは、国内のWebサイトから、AIに関連する情報をAIが収集していること。
独自に企業やイベントの取材もしており、掲載記事数は3万件を超えています。
現在では日本最大級のAI専門メディアとして、多くの業界関係者からご注目いただいています。
2017年:日本初のAI・人工知能ベンチャー支援制度を開始
進藤さん
「AINOW」をやってみて気づいたんですが…当時は特に、AI関連のサービスそのものが日本にあまり存在しなかったんです。
海外ではAIにたくさん投資されているのですが、日本にはサービス自体がないから、投資する先がない。
じゃあ我々がやろうじゃないか!ということで2017年に立ち上げたのが、日本初のAI・人工知能ベンチャー支援制度「AI. Accelerator」です。
進藤さん
本プログラムの対象は、AI、ビックデータ解析など、人工知能を利用したサービスを開発するベンチャー企業やスタートアップ企業。
公募による選考を通過し採択された企業・個人には、メンタリング、データ提供、事業資金、PR、採用支援など、成長に必要なあらゆる支援を行っています。
この取り組みは今も続いていて、これまで16期に渡るスタートアップ支援・投資を行ってきました。
AIに特化した専門家たちがアドバイザーとして就任。さらに、多数の企業が特別パートナーとして名を連ねています
進藤さん
この取り組みは、「競合」などは気にせずに、業界全体で広げていきたいと考えていて。
たとえばWantedlyさんのような競合企業にも、パートナーとして協賛していただいていますし…
プログラム内で支援したスタートアップ企業が、当社の競合にあたる企業の連結子会社となった例もあります。
石川
自社の利益が減るかも…みたいな心配はないんですか?
進藤さん
それよりは、業界横断的にAI分野のスタートアップを育てていきたいという気持ちが強いですね。
同じ人材業界でも、企業によって強みは異なります。
より親和性の高い企業への買収が進むのは当然ですし、競合にあたる企業さんがピッチに来てくださるのは、すごく喜ばしいことだと捉えています。
2019年:中小企業のDXを推進
進藤さん
さらに2019年には、新事業として「コボット」というDXサービスの提供を開始しました。
石川
「コボット」というのは…?
進藤さん
アルバイト求人の面接日程調整に特化したサービス「面接コボット」、人材・派遣会社向けの「HRコボット」、一般企業の採用に活用できる「採用コボット」、飲食・小売向けの「集客コボット」など、シリーズで展開しており、業務プロセスの DX を推進し、お客様の主要業務に集中できる環境づくりを支援しています。
おかげさまで、サービス導入企業は累計25,000社を突破(2022年8月時点)。中小企業のDX 推進を、ツールの力で支えています。
2023年:生成系AIを活用した新規事業&社内プロジェクトをスタート
進藤さん
最近では、今流行りの「生成AI」に関する取り組みにも力を入れています。
今年4月には、「AIエージェント事業」の開発を開始。生成AI技術を活用し、雇用創出の可能性の拡大を目指す事業です。
進藤さん
従来の「大量の求人情報から検索する・選ぶ」方法から、生成AIにより「対話しながら最適な仕事に出会える」方法へと進化させ、採用率を大幅に高めていくことを目指しています。
1年以内の実用化を目途に開発を進めているので、ぜひ今後にご期待ください。
石川
いよいよ、御社のメイン事業にAIが絡んできているわけですね…!
進藤さん
そうですね。より一層、社内のメンバーにもAIを使いこなしてもらう必要があるので…
今年8月には、AIを活用し、生産性向上を追求する全社横断のプロジェクトチーム「dip AI Force」を始動しました。
進藤さん
営業・企画・開発など、すべての部署にAI活用の教育を受けたアンバサダーを250名配置。
社内全体で生産性を向上していくプロジェクトです。
具体的に行うのは、AI利用に関するガイドラインの策定、「ChatGPT」などのAIツールを使う際にかかる費用の補助、教育体制の構築、求人原稿の作成…などなど。
たとえば営業なら、社員が抱える業務の約60%にわたる事務作業時間を削減し、3年で営業生産性を1.8倍*に引き上げていくことを目指しています。
*人材サービス(メディア事業)において、2027年2月期を目途としています
テクノロジーを活用して、誰もが働く喜びを感じられる社会に
石川
社外向けだけじゃなく、社内のDXプロジェクトまで…想像以上に幅広くて驚きました。
進藤さん
まだまだ紹介し切れていない取り組みもあるくらいなんです(笑)。
これらの取り組みの甲斐あって、2021年には、経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」に認定されています。
石川
行政からも評価されているんですね…!
進藤さん
私たちは、“Labor force solution company(労働力の総合商社)”というビジョンを掲げています。
今後も、AIの適切な活用とともにその可能性を最大限に引き出すことで、誰もが働く喜びや幸せを感じられる社会の実現に向けて取り組みを続けていきますので…
「バイトル」しか知らなかったという方もぜひ、これを機に私たちの今後にご注目いただけたらうれしいです!
ディップでは、人手不足や採用難に悩む企業に対し、DXの導入から運用までをサポートする「DXコンサル」も行っているそう。
「AIが話題なのは知ってるけど、どう事業に取り入れたらいいかわからない…」とお悩みの企業の方はぜひ、古くからAIに着目している“プロ”の力を借りてみてはいかがでしょう?
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