企業インタビュー
「職人領域は急に変えるのが難しい。だから…」労働時間44%減を実現した老舗すきやき店改革

「職人領域は急に変えるのが難しい。だから…」労働時間44%減を実現した老舗すきやき店改革

データ活用で老舗が生まれ変わる

新R25編集部

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人手不足や物価高騰など、さまざまな苦難に直面する飲食業界。

そんななか、老舗鳥すきやき専門店「神田ぼたん」では、株式会社EBILABが提供する来客予測や店舗分析などでコスト削減や売り上げアップを可能にするシステム「TOUCH POINT BI」を導入。

その結果、なんとスタッフの労働時間が44%も削減されたのだとか。

TOUCH POINT BIを提供している株式会社EBILABの渋谷智子さんと、有限会社ぼたんの城一泰貴さんに、“データを活用した労働環境の改革”についてお聞きしました。

〈聞き手=山田三奈(新R25編集部)〉

コロナで長期休業…体力も気力も失った状況で出会った「TOUCH POINT BI」

城一さん

神田ぼたん」は、明治30年創業の「鳥すきやき」のお店です。

もともと義父を中心に回っていたのですが、現在は私が5代目店主として事業継承し、その味や伝統を引き継いでいます。

山田

「神田ぼたん」さんでは、「TOUCH POINT BI」を導入したとか?

渋谷さん

導入のきっかけは、新型コロナの影響でしたよね。

城一さん

そうですね。

コロナ禍の長期休業明けで、手作業でおこなっていたお店のオペレーションを再開するのが難しくなり、「どのように店を再開させようか…」と迷っていたときに出会ったのが「TOUCH POINT BI」でした。

山田

導入以前は、どんなことを手作業でおこなっていたんですか?

城一さん

たとえば縦書きの帳面をつけたり、出納帳を手書きでつくったり。

出金伝票と入金伝票をレシート1枚につき1枚書いて経理処理して、労務管理して給料計算して…というようなことも、すべて手作業でやっていました。

山田

それは大変ですね…コロナ禍の間にお店はどれくらい休業されていたんでしょうか?

城一さん

1年半ぐらい休業していましたね。こんなに長い期間休業したことは、今まで一度もありませんでした。

ですので、いざ店を開けるタイミングになったときに、経理の処理や労務管理、接客の注文から会計までのオペレーションまで、これまで人力でできていたことができなくなってしまったんです。

それで「どうしたらいいか」といろいろ調べていくうちに、小田島さん(株式会社EBILAB 代表取締役CEO)の「飲食DXセミナー」を受ける機会がありまして。

“似たような境遇”から脱却した会社がつくったシステムだったので興味をもちました。

山田

似たような境遇…?

渋谷さん

ゑびやも「神田ぼたん」さんと同じく、老舗飲食店としてアナログな方法で店舗運営を行っていました。

それを脱却したいと社長の小田島が考え、開発されたのが「TOUCH POINT BI」だったんです。

“老舗飲食店をDXで生まれ変わらせた”という点では、とてもよく似ていますよね。

城一さん

似た境遇の方がつくったシステムというだけでなく、もともと自分が“新しいもの好き”ということもあります。

きちんとした「ファクト」でメニュー改変ができたり、オペレーションを改善して労務時間を削減できたりと、かゆいところに手が届くシステムだなと思い導入を決めました。

改革① 飲食店で起こりがちな「長時間労働」を大幅改善

山田

「TOUCH POINT BI」を導入して、改善できたことを教えてください。

城一さん

まず、調理場でのオペレーションを簡素化したことで、長時間労働が圧倒的に改善されました。

具体的には、週78時間労働から週45時間へと、44%減に成功

ライフワークバランスも取りやすくなったことで、求人の応募数もかなり増えていて。当分は人材採用に困らないだろうなと思っています。

山田

週78時間労働はなかなかのハードワークですが…そんなにオペレーションが複雑だったんですか?

城一さん

かなり複雑でしたね。たとえば、仲居さんのオペレーション。

注文を受けたら手書きで書いて厨房に通し、勘定場にいるスタッフが計算する。最終的にそれを見て電卓で計算し、手書きで請求書を渡す…というようなやり方でした。

これは改善の余地が十分にある、どうにか効率化できるのではないか、とずっと思っていたんです。

山田

それで注文・計算・請求書の発行などを、人力ではなく機械でおこなうことにしたと。

城一さん

はい。さらに「神田ぼたん」は、歴史的な建造物の構造上、部屋数や階段が多いんです。

にもかかわらず、レジは1階の1箇所のみ。仲居さんは、会計のたびに行ったり来たりしていました。

城一さん

そこで、2階にもiPadとレシートプリンターを設置することにしたんです。

結果的に、注文やお会計でお客さまをお待たせすることも、仲居さんが何度も階段を着物で上り下りする必要もなくなりました。

山田

昔からいらっしゃるスタッフさんも多いと思いますが、お店のルールを変えていくことに抵抗の声はなかったんですか?

城一さん

急に変えていくのは難しいと思ったので…

スタッフと面談で導入背景をお話して、少しずつ納得していただきました。

スタッフとずっと一緒に働いてきた義父からは言いにくいこともあるかもしれないので、これは自分の役目だなと思いましたね。

山田

慣れるまではきっと大変ですよね…でも、スタッフさんたちもかなり働きやすくなったのでは?

城一さん

そうですね。

飲食店では長時間労働や休憩時間が短いことでトラブルが起こりがちですが…

仲居さんも休憩時間をゆっくり持てるようになったので、スタッフの満足度は向上したと思います。

改革② 職人領域の「メニューの改変」にも踏み込めた

城一さん

あと、ドリンクメニューの改変をきちんとした「ファクト」をもって実行できた、ということも大きかったです。

もともと「メインメニューの単価を上げる」以外の方法で客単価を上げたかったので、ドリンクの改変はとても大きな改善点でしたね。

山田

ドリンクメニューの改変って、「ファクト」がないと難しいものなんでしょうか?

城一さん

そうですね…調理場は、昔から働いてくれている“職人さんの領域”なので、難しいと思います。

私がドリンクメニューを勝手に変えることは“職人さんのこだわりを崩す”ことにもなってしまうので。

そこを変えるためには、きちんとした「ファクト」を持って話し合うことが必要でした。

渋谷さん

「TOUCH POINT BI」の店舗分析のなかには、理論原価率売り上げ分析などの機能があります。

さらに月間来客予測・時間帯別予測・当日予測などの機能を活用すれば、データから「時間帯別のお客さまの層」なども予測可能です。

山田

なるほど…そうした機能を上手に活用して、ドリンクメニューの改変のための「ファクト」をつかんだんですね。

城一さん

長年飲食店の経営者をされている方であれば、「この時間帯にこのメニューを出すのはどうなのか」とか「時間帯別のお客さまの層がどう変わるのか」などが肌感覚でわかるじゃないですか。

でも私は飲食や調理の経験もないので、それがわかりませんでした。

そんな状況下で数字的な根拠を得られたので、とても助かりましたね。

「ゆくゆくは『TOUCH POINT BI』を中心にスタッフ教育をしたい」

山田

城一さんが今後「TOUCH POINT BI」に期待したいことはなんですか?

城一さん

私はもともと「数字」や「分析」が苦手ではないので、「TOUCH POINT BI」 を見ても抵抗感なく使うことができましたが…

お店のスタッフが使うときに「難しい」と感じる人も出てくるのではないかと思います。

精密な分析機能を残しつつ“簡易的なアプリ化”をしてもらえると、もっと使いやすく、使える人も増えるのではないかと思いますね。

渋谷さん

なるほど。一目でデータを確認できる「簡易メニュー」みたいなものもあると便利そうですね。

城一さん

あと、ここまで数字がそろっているので、管理者がいなくても仕込み管理から発注管理までを一括でできる仕組みがあればいいなと。

スタッフが担当したお客さまがどんなものを注文してくれたのかまでわかれば、さらにデータとして可視化されて業務を効率化できると思います。

山田

たしかに…データをもとにメニューなどのアイデアが出てくるかもしれないし、スタッフが飲食店運営にもかかわりやすくなりそうです。

城一さん

そういった仕組みが充実すれば、「TOUCH POINT BI」を中心にスタッフの教育を進めていきたいですね!

飲食店の経理処理や労務処理、オペレーションなどの改善に必要な数字を可視化できるツール「TOUCH POINT BI」。

現状をデータとして知ることで、業務を効率化できるだけでなく、飲食店によくある長時間労働の改善にも活かせそうです。

飲食店を経営されている方や準備中の方は、導入してみては?

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