企業インタビュー
一升瓶の不足、経営難…“日本酒業界”を襲う課題に、気鋭のベンチャーが「世界最高峰の真空」で立ち向かう!
「日本文化」を守りながら、酒蔵の新たな挑戦を支援
新R25編集部
10/1は「日本酒の日」。
全国各地の蔵が新米で日本酒造りを始める時期である10月を、十二支で表すと「酉」。そして、この漢字の本来の意味は「酒壺」…という由来から、1978年に日本酒造組合中央会によって定められた記念日なんだそう。
日本酒は、もはや単なる嗜好品を超えた“文化”。味の個性もクラフトマンシップも楽しめる日本酒が、お酒のなかで一番好き!という方もたくさんいるはずです(筆者もその1人です)。
…しかし。そんな日本酒業界は今、さまざまな困難に直面しています。
そんな日本酒業界を救うべく、「日本酒真空プロジェクト」なる取り組みを始めたのが、前回の記事でも大きな反響があった「株式会社インターホールディングス」。
一体、日本酒業界に何が起こっているのか? そして「世界唯一の“真空特許技術”」という、日本酒とは関連の浅そうな強みを持つ同社が、なぜ率先して立ち上がったのか?
同社代表取締役社長兼CEOの成井五久実(なるい・いくみ)さんに、プロジェクトの背景を聞いてみました。
〈聞き手=石川みく(新R25編集部)〉
経営難、一升瓶不足…日本酒業界を襲うリアルな課題
成井さん
私たちインターホールディングスは、ロケット油圧機器から着想を得た世界唯⼀の“真空特許技術”を活⽤し、さまざまな課題に向き合っている会社です。
世界最高峰の技術が、地球を救う!? インターホールディングス代表が語る、真空に賭けた“野望”
“真空特許技術”のとんでもない実力を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください!
成井さん
これまでも、個人向けの真空パウチの販売や、飲食店向けの大容量真空容器の開発など、さまざまなチャレンジをしてきましたが…
10/1の日本酒の日を皮切りに、新たなプロジェクトを立ち上げることになりました。
それが「日本酒真空プロジェクト」です。
石川
日本酒と真空…不思議な組み合わせですが、どうして「日本酒」に着目したんですか?
成井さん
日本のみならず海外でも愛されている日本酒は、これからもずっと継承していきたい「日本文化の象徴」だと思っていて。
ただ…今の日本の酒蔵さんは、さまざまな課題を抱えてしまっているんです。
石川
そうなんですか…?
成井さん
まず顕著なのは「売上の減少」です。
元々起こっていた“お酒離れ”にコロナが追い打ちをかけてしまい、日本酒の出荷数はピーク時の3割以下まで下がってしまっています*。
*国税庁「
酒レポート令和4年3月
」より。昭和48年度の出荷量は約177万klなのに対し、令和2年の出荷量は約41万klに
成井さん
もう一つの大きな課題は「瓶」です。
お酒業界だけでなく、瓶メーカーもコロナで打撃を受けていて…
実は今、一升瓶不足により出荷困難に陥っている酒造さんが続出してしまっているんです。
石川
そんな…! 知らなかった…
成井さん
しかも、瓶は重く割れやすいため、輸送や持ち運びに適していないという課題もあります。
コロナが落ち着き、海外からの輸入需要が戻りつつあるものの…その需要に応えられないこともしばしばあるそうなんです。
その結果、さらに経営難が進んでしまうので…今後、廃業する酒蔵さんが増えてしまう可能性も否めません。
このままいくと、日本・地域文化の衰退につながってしまうかもしれないんです。
「世界最高峰の真空技術」で、日本酒業界の新たな挑戦を後押し
成井さん
私たちはこの課題を解決するために、日本酒業界に「真空」で新しい価値を提供したいと思っています。
まずは、世界唯⼀の“真空特許技術”を活⽤した⽇本酒専⽤の超⾼真空パウチを新開発。
その「真空パウチ」に、提携してくださる酒造さんのおいしい日本酒を詰めて販売する予定です。
成井さん
この取り組みで提供できる“新しい価値”は、大きく2つあって…
1つは「利便性」。パウチは瓶に比べて、圧倒的に輸送や持ち運びがしやすいですよね。
石川
たしかに! 割れたりしないし、瓶より全然軽いですもんね。旅行先とかでも手軽に買えそうです。
成井さん
もちろん漏れる心配もないですし、素材的にも環境への負荷が低いというメリットもあります。
しかも送料も瓶より安く済むし、梱包の手間も省けるので、「海外にも輸出しやすくなる」というのが大きなポイントで。
石川
日本酒って、海外でもそんなに人気なんですか?
成井さん
はい! 日本酒も含めたお酒の海外輸出額は、2021年には1,000億円を突破*しています。
日本食レストランで本場の日本酒が振る舞われたりと、海外でも日本のお酒の人気がどんどん高まっているんです。
瓶不足でニーズに応えきれていない現状を打破するためにも、輸送のハードルを下げることで、日本文化を海外にもっと手軽にお届けできるようになるはず。
日本経済を盛り上げる“ビジネスチャンス”という観点でも、意義のあることだと思っています。
*国税庁「
最近の日本産酒類の輸出動向について
」より
成井さん
そして…真空ならではの大きなメリットは「開けたての味わいを長く楽しめること」。
真空状態で食品を保存すると、普通の状態に比べて大幅に長持ちすることはよく知られていますが…
弊社の真空容器で開栓後の白ワインを真空保存したところ、1カ月経っても味の変化がなかったという調査結果*が出たんです。
石川
1カ月も!? 思った以上に長持ちするんですね…!
*調査機関:株式会社味香り戦略研究所 調査時期:2022年12月~2023年1月測定分
石川
便利なだけじゃなくて、おいしく日本酒を楽しめるのも、真空ならではの“新しい価値”なんですね。
成井さん
まさにそうですね。日本酒は長らく「瓶」と一緒に発展してきた文化なので、そこをアップデートするのは簡単なことではありません。
いくら瓶不足と言えど、「とりあえず適当な容器で代用しよう」では、酒蔵さんも日本酒ファンも納得できないと思うんです。
だからこそ私たちは、真空パウチならではの“おいしさ、ずっと続く体験”も一緒にお届けすることで、⽇本酒業界の新たな挑戦を後押ししたいと思っています。
あの“人気酒造”も参画! プロジェクトの今後の展望
石川
日本酒好きとしては、どんなお酒が飲めるのかも気になるところなんですが…
成井さん
そこは“日本酒のプロ”の力を借りながら、酒造さんにお声がけを進めているところで…
「日本酒にしよう」という日本酒のサブスクサービスを運営されている、⽇本酒家の髙岡⿇彩さんをアドバイザーとして招聘しています。
成井さん
髙岡さんは「⽇本酒を知ることは、⽇本を知ること」というモットーを掲げていて、⽇本酒という⼤切な⽂化を守り伝えるべく、国内外で広く活動されています。
「⽇本酒業界を真空で⽀援したい」という私たちの想いにもとても共感してくださり、今回のプロジェクトに全面協力していただくことになったんです。
石川
同じ想いを共有されているんですね。素敵な話だ…
成井さん
そして…岩⼿県の酒造「南部美⼈」も、このプロジェクトへの参画が決定しています。
成井さん
「南部美人」のみなさんも、深刻な瓶不足や、日本酒の“ハードルの高さ”に以前から課題を感じていたそうで…
“瓶から真空へ”という大きなチャレンジに、一緒に挑んでいただけることになりました。
株式会社南部美⼈ 代表取締役社⻑ 久慈浩介さんのコメント
⽇本酒は現在深刻な瓶不⾜に頭を悩ませています。そして⽇本酒は国内でも洋服や靴と違いなかなか「試して」買える商品ではありません。
また世界に⽬を向けてみると、⽇本酒を全く知らない外国⼈がいきなり720mlをレストランで飲むのはハードルが⾼いと感じています。
⽇本酒をまだ飲んだ事の無い国内外の⼈に「試す」事を、インターホールディングスの“真空特許技術“により品質確保しながらSDGsにも配慮しつつ⾏える可能性を持ったプロジェクトになると信じています。
石川
業界全体を巻き込んだ挑戦になりそうですね…!
「日本酒真空プロジェクト」は、どんな感じで進んでいくんですか?
成井さん
まずは数量限定で、「手詰め」したパウチをトライアルで販売しようと考えています。
さらに、パウチだけでなく「真空量り売り容器」の準備も進めていて…
酒蔵さんのお土産ショップや海外の日本食レストランで、好きな量を開けたての味で楽しんでいただきたいと構想しているところです。
成井さん
そして次のステップとして、クラウドファンディングサービス「Makuake」で本格的に販売し、ゆくゆくは販路の拡大・専用の充填機の購入・海外販路への展開なども考えています。
まだまだ始まったばかりのプロジェクトではありますが…
今後のプロジェクトの行く末に、ぜひご注目いただけたらうれしいです!
“おいしさ、ずっと続く”真空が「日本文化」を守り、酒蔵の新たな挑戦を支援する。
日本酒好きとしては応援しないわけにはいかない、日本酒の未来を左右する一大プロジェクトになりそうです。
インターホールディングスでは現在、プロジェクトの本格始動に先駆けて、「お酒専用真空ボトル」のMakuake先行販売も実施中なんだそう。
まずはこちらを手に入れて、お気に入りの日本酒を詰め替えながら続報を待ちましょう…!
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