

「EHIME新事業ラボ」から生まれた“新収益モデル”とは。南海放送×SHOWROOMが仕掛けたもの
テレビの枠を超えて。ローカル局の新たな一手
新R25編集部
愛媛県が県内企業とスタートアップのマッチングと共創を支援し、新規ビジネスの創出を図るプロジェクト「EHIME新事業ラボ」。
令和6年度は、株式会社ローカル大学が運営を担い複数の共創事例が生まれました。

そのプロジェクトのひとつとして、愛媛県の日本テレビ系列テレビ局/ラジオ局である南海放送が、ライブ配信プラットフォーム大手のSHOWROOM株式会社とタッグを組み、「RNBライバー事務所」を新設したんだそう。
SHOWROOM 代表取締役社長 前田裕二さんのプレスコメント

前田さん
「夢を叶えるにはまず上京」、そして地方都市にはチャンスが乏しいというステレオタイプは依然として存在しています。
その一方で、現実は大いに変わってきていて、インターネットで日本中どこにいてもバズることができる。もはや地域格差はほぼ皆無です。その中でも、ライブ配信の仕組みを活用すれば、全国の好きな場所に拠点を置きながら、濃いファンダムを形成したり、ファンの方との絆を育てる事ができます。
SHOWROOMは「努力がフェアに報われる世界」を目指してサービス運営しておりますが、今回の南海放送様との取り組みを通じて、愛媛・四国地域での機会創出にも力を入れます。そして文字通り、どこにいようとも努力次第で夢が追える環境を着実に整えて参ります。
南海放送株式会社 代表取締役社長 大西康司さんのプレスコメント

大西さん
地方に居ても自分の夢を叶えられる!
南海放送とSHOWROOMがあなたの夢を応援します!
ライブ配信サービス『SHOWROOM』でまずはエントリー。
あなたの夢の実現を全力でサポートします!
地方発のメディア革新がどのようにして実現したのか、そしてこの事業が目指す未来とは…?
この取り組みについて、南海放送株式会社の収益力強化プロジェクト2024統括・門田伸治さん、「EHIME新事業ラボ」の運営を担うローカル大学代表取締役・宮嶋那帆さんに話を伺いました。
〈聞き手=古川裕子(新R25編集部)〉
「南海放送×SHOWROOM」異色のタッグが生み出す新ビジネス

宮嶋さん
「EHIME新事業ラボ」は、愛媛県が主催するオープンイノベーションプログラムです。自社だけでは難しい新規事業の創出を、愛媛企業とスタートアップ企業をつなぐことで支援しています。
今回、このプログラムを通じてマッチングが実現したのは、1953年創業で愛媛県に本社を置き、テレビ放送・ラジオ放送を兼営する南海放送株式会社と、ライブ動画ストリーミングサービスを運営するSHOWROOM株式会社。
これにより、南海放送は「RNBライバープロジェクト」をスタートさせました。

古川
ライブ配信事業を始めるということですね。その背景は?

門田さん
近年、デバイスの急激な進化と普及により、人々の生活が大きく変化し、放送と通信の領域もシームレスになり、「視聴機会」という文脈で言えば、放送局にとっては競合がものすごく増えている状況です。
さらに、少子化の影響で、とくに地方では若い世代の人口が減少しているため、マーケットの縮小などさまざまな課題があります。

古川
確かに、若者のテレビ離れは年々進んでいると言われてますよね。

門田さん
そうした時代において、放送局が今後も発展するためには、新しいビジネスモデルを考えていく必要があります。
そこで、昨年3月に社内で収益力強化プロジェクトを発足させ、社内ベンチャー・新規事業を募集する活動の一環で、今回「新事業ラボ」さんに力をお借りしたという経緯です。

「“バズる”に地域格差はない」SHOWROOM前田社長の狙い

古川
SHOWROOM社と連携するきっかけは、何かあったんでしょうか?

門田さん
2024年5月に、SHOWROOM社の前田社長が弊社にいらっしゃったことがありまして。
その際、SHOWROOM社とさまざまなローカル局の取り組みについてご説明いただくなかで、イベントや番組のオーディションを主催することで収益化できるというお話を伺ったんです。
さらに、今はインターネットさえあればどこにいてもファンを獲得し、成功するチャンスがあると。

古川
なるほど。最近はライブ配信で知名度が上がって、有名になる方も多いですもんね。
タッグを組んで、とくに良かった点はどんなところでしたか?

門田さん
SHOWROOMさんが得意としている「10代、20代の女性をターゲットにしたさまざまなPRやイベント」ができるのは大変魅力でした。
ちょうどそのとき、弊社は「TGC MATSUYAMA 2024 by TOKYO GIRLS COLLECTION」のメディアパートナーを務めることが決まっていました。そしてSHOWROOMさんは、これまでにTGCモデルのオーディションなど、多くの事業実績があります。
ぜひ弊社も一緒に何かできないかと相談したところ、あっという間にオーディション企画を進めることが決まったんです。


門田さん
2024年7月に開催した「TGC MATSUYAMA 2024 by TOKYO GIRLS COLLECTION」において、南海放送×ネッツトヨタ愛媛55周年コラボステージのランウェイモデルのオーディションを、SHOWROOMで実施していただきました。

古川
へぇ〜! それはどのように進んだのですか?

門田さん
全国を対象とした「SHOWROOM枠」と、四国出身者や在住者、または四国地方を拠点に活動しているライバーを対象にした「四国枠」を設け、それぞれ1名ずつ選出し、ランウェイモデルとして登場していただきました。
手始めに開催したオーディション企画。手応えは?

古川
その後、「RNBライバー事務所」を新設されたんですね。そこに至るまでの道のりは?

門田さん
最初はライバー事務所を運営するなんて思ってもみなかったのですが…
前田社長からは、そこまでやらないと本当の意味での収益化は果たせないというお話をいただいて。
ただ、そもそもオーディションすら実施したことがなかったので、まずはそこから始めようという感じでスタートしたんです。

古川
ということは、オーディションの手応えはあったと…?

門田さん
はい。オーディションが成功して収益が得られ、TGCが盛り上がったというのは大きな意味がありましたね。
同時に、先ほど申し上げた社内ベンチャーによる新規事業への応募のなかに「自社のオウンドメディアを活性化して収益につなげる」というアイデアがあったんです。

古川
具体的にはどんなアイデアだったんですか?

門田さん
自社アカウントでTikTokやInstagramのストーリーズなど、ショートムービーをさらに強化して事業化できないかというものでした。
そのアイデアとライバー事務所というのは非常に親和性が高そうだったので、一緒に展開していけないかと考えたわけです。
ライバー事務所を運営しながら、そこで得た知見・経験・リソースなどを、今後また新たな展開に結びつけていけないかという話もでまして、ライバー事務所設立の構想が本格的にスタートしたんです。


古川
すごい! いろいろなことがタイミングよく重なったんですね。
でも御社のような放送局が、直接ライバー事務所を運営するのってあまり聞いたことない気がします。

門田さん
おそらく、同様の事例は数件ほどではないでしょうか。そういう意味では手探りになりますが、可能性はあると思っています。

古川
新規事業って「誰をアサインするか」という問題もあると思いますが、その点はスムーズに進んだんですか?

門田さん
そうですね。もともとオウンドメディア活性化事業のアイデアを出した者が、YouTubeチャンネルのマネジメント経験があり、配信の領域に関して知見が豊富だったんです。そこで彼にプロジェクトリーダーを任せるかたちでプロジェクトが立ち上がりました。
さらに、配信の運営に裏方で携わってくれている別会社(株式会社ライビット)の方や、制作、映像、広報関係のメンバーにも加わっていただき、スタートしました。
日々勉強しながら取り組んでもらっていますが、2月初旬から配信を開始しまして、滑り出しは非常に好調です。

“老舗×スタートアップ”で見えた新たな活路

古川
南海放送さんが、スタートアップ企業と連携するのは初めてだったんですか?
SHOWROOMさんと組んでみて感じたことは?

門田さん
このような取り組みは初めてでしたね。
一番違いを感じたのは、スピード感です。どうしても弊社では細かい部分を詰めていくのに時間がかかってしまいまして…
当初の予定よりも2〜3カ月遅れてしまいました。スピード感をもって進めることの重要性を実感しましたね。

古川
今後の課題はありますか?

門田さん
まずは、「ライバーをどうやって集めていくか」ということ。
また、弊社は放送局としてたくさんのコンテンツを持っているので、そうした資産を活用しながら、ライバーの活躍の場をどうつくっていくかが重要になってくると考えています。
現在はプロジェクトメンバー全員が兼務でやっていますが、今後事業を拡大していくうえでは、しっかりとリソースを確保する必要もあると思っています。


古川
では、今後の目標はどうでしょう?

門田さん
社内的には、3年で1000万円の売上目標をたてています。でも先日、前田社長から「それは最低限の目標であって、もっと高い目標を目指すべきだ」というお話をいただきました。
それをふまえつつ…将来的には、今回の連携で得られるリソースやノウハウを活用して、さまざまなショートムービーの制作や新たな領域への展開など、事業の拡大戦略を進めていきたいと考えています。

古川
それは今後が楽しみですね…!
最後に、今回「新事業ラボ」に参画した感想を聞かせてください。

門田さん
地元だけではどうしても関係性が限られてしまうなかで、県外のスタートアップ企業とコンタクトをとる機会をいただけたことは、非常に参考になりました。
そしてビジネスの可能性が広がったのはもちろんのこと、放送局としてやるべきこと、できることをあらためて考えるきっかけにもなりましたね。
社員の視野やネットワークも広がっており、本当に貴重なご縁をいただいたと感じています。
地方のテレビ局が運営する、ライバー事務所。ここから愛媛発の人気ライバーが誕生する日も近いかも…?
皆さんもぜひ、今後の展開を楽しみにしていてください。
〈執筆=吉河未布/編集=古川裕子〉
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