ビジネスパーソンインタビュー
「熱中できる仕事を見つけたい」なんて、間違い。
「自分の運命は『決める』だけ」世界を変える男・ユーグレナ永田暁彦の“幸せに働く鉄則”
新R25編集部
仕事の現場で奮闘するビジネスパーソンたちの魅力、スキルを“○○力”と名付けて、読者のみなさんにお届けしたい! 題して、連載「あのビジネスパーソンの『○○力』」。
今回登場するのは、株式会社ユーグレナ取締役代表執行役員CEO・永田暁彦(ながた・あきひこ)さん。
株式会社ユーグレナは、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)をはじめとするヘルスケア商品の販売、そして昨今注目を集めている「バイオ燃料」の製造開発にも力を入れているベンチャー企業。
自分の仕事に純粋に熱中したいと思いつつ、モチベーションが上がらない…という人も多いはず。永田さんは、“途方もない社会課題”と感じてしまいがちなエネルギー事業に、なぜ心酔できるのでしょう?
お話を伺ううちに、人生すべてに通じるような“幸せに働く鉄則”がわかってきました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
「僕は怠け者なんです」という永田さんが“パワーを発揮するため”にやったこと
天野
ユーグレナがバイオ燃料で飛行機を飛ばしたというニュースを見ました。ヘルスケア事業だけじゃなく、そんな事業もやってるんですね…!
永田さん
そうなんです。2021年6月にバイオジェット燃料「サステオ」を使った航空機のフライトに成功しました。その後、プライベートジェット機のHondaJet Eliteにサステオを使って鹿児島から羽田まで実際に乗って帰ってきました。
じつは多くの先進国では、バイオジェット燃料を使ったフライトが実現してるんですよ。日本はその分野では最後進国。
ユーグレナ社のバイオ燃料サステオで日本のエネルギーを変えていくことが僕のやりがいですね。
天野
今日のテーマは、自分の仕事に“純粋に向き合う”力についてなんですが…
そんなふうに永田さんが自分たちの仕事に心酔できるのはなぜですか?
永田さん
事業が10倍成長したら、社会が10倍よくなっていると確信しているからですね。
バイオ燃料事業が伸びた分、石油の使用量が減って地球の未来が変わると胸を張って言える。
天野
純粋に事業の価値を信じているから?
永田さん
事業に価値があるのはもちろんですけど…自分は雑味があるとフルパワーで頑張れないんです。
この事業をやっていると、「純粋」とか「意志が強い」とか思われがちなんですけど、逆で…
僕、めちゃくちゃ意志が弱い怠け者なんですよ。
天野
怠け者?
永田さん
自分が怠け者だってわかっているから、「日本のエネルギーを変える」という夢を公言して、“人から期待されるのが当たり前な状況”を強制的につくっているんですよね。
10代のころ、「受験勉強に集中しよう」と思ったときも、まずテレビとかプレステとかを全部捨てましたし…
やりすぎでは?
永田さん
力って制限から生まれるものなんです。
サッカーのW杯も、昔は出られただけでお祭り騒ぎだったのに、今は当たり前じゃないですか。出られないと叩かれる。でも、「それが当たり前」になったからこそレベルが上がっていくわけですよね。
僕が純粋だと言っていただけるなら、純粋の秘訣は“当たり前”の環境を自分で整備することですね。
夢を公言し、誘惑するものを捨てる。怠け者の自覚がある人はお試しください
「熱中できる仕事を見つけたい」と思ったらやるべきこととは?
天野
ユーグレナの事業はすばらしいと思うんですが、「今の仕事に熱中できない」っていうビジネスパーソンは、どうやったら永田さんみたいに熱中できる仕事を見つけられますかね?
永田さん
“熱中できるものを見つける”って考えが、もう間違いだと思います。
永田さん
なんでもいいから「これに熱中する」って決めればいい。
僕も、「環境問題に関心が高くてすばらしいですね」って言われるんですが、本当は全然そんな人間じゃない。
「環境問題にコミットする」って決めただけなんです。
天野
え、なんでもよかったんですか?
永田さん
なんでもいい。決めることが大事。
一生を捧げるほどの“感動の出会い”を待ってたら、あっという間に50、60歳になっちゃうじゃないですか。
天野
たしかに…
永田さん
運命の人を待ってても一生来ない。
白馬の王子様も、プリンセスもいない。「この人と一緒になって幸せになろう」って決めることが大事ですよね。
…なんか結婚の話になっちゃいましたけど。
運命は決めるもの。婚活界隈っぽい話ですがめちゃくちゃ納得してしまいました
永田さんが考える“幸せに働く鉄則”
永田さん
と言っても、ユーグレナのようなベンチャーがエネルギー産業にチャレンジするのって、けっこうしんどいんです。潰れるリスクもありますし…
でも僕、大学受験のときから決めていることがあって。
「もし大学に落ちたら浪人せずに保育士さんになろう」って思ってたんですよ。
天野
?
永田さん
あと僕、ケンカが一番強い人って、力が強い人じゃなくて痛みを感じない人だと思うんです。
急に物騒なたとえ
天野
何の話です??
永田さん
何が言いたいかっていうと、“現状が崩れることへの恐怖心がない”んです。人生でもビジネスでも、今の環境が崩れることを恐れなければ、“なんでもやっちゃえる”なと。
よく「いわゆるいい大学を出たら選択肢が広がる」って言うじゃないですか。東大を出たらどこでも行けるよと。
でも実際問題、東大出てお笑い芸人になろうとする人って、なかなかいないじゃないですか?
天野
ああ~…
永田さん
いい大学に行けた人に実際に起きているのは、選択肢が広がるんじゃなくて、上のほうの選択肢にスライドしてるだけ。それって、今“持っている”環境や価値観のせいで「もったいない」って感情が出てくるからですよね。
僕は、「そんなの捨てればいいのにな」って思うんです。いま大切だと思っていることって、案外価値がない。
それを手放したほうが真の価値を手に入れることができるだろうって、昔から思ってるんです。
天野
“恵まれた環境やキャリアを失うことを恐れないから、逆に仕事に向き合えている”ってことなんですかね。
永田さん
「人に比べていい大学を出ている」「いい会社にいる」っていう相対的比較から脱却すれば、熱中できるし、幸せになれるんですよ。少なくとも僕はそうです。
永田さん
以前TikTokで流行った歌でね、“高校のときクラスでイケてるやつはそのときがピークだ”みたいな曲があるんですよ。
※「Justus Bennetts」(Cool Kids)
天野
へ~~、なるほど、面白い…!
永田さん
「クラスでイケてる」っていうのは、その瞬間は小さな社会の最高の価値観じゃないですか。
僕は高校生のときから、クラスのはじっこにいて、「なんでそこにこだわるんだろうな」ってずっと思ってたんです。
でも、「クラスのなかでイケてること」が大事なのが人生ずっと続いてる人っていると思うんです。
ああああ…
天野
う~~~~ん、否定できない人も多いかもしれません…
永田さん
僕が今ユーグレナで純粋に仕事に熱中していると言えるのは、相対的比較から脱却できる場所に身を置こうって決めてるからだと思います。
もし幸せに、純粋な気持ちで仕事をしたいなら、まずは自分がどういうときに幸せなのかを自分のなかで見つけて、そこに“考えと身を置く”ことが一番大切なんじゃないかなと思いますね。
「2050年までにCO₂の排出量、実質ゼロ」を掲げる日本。
そんなことが本当に実現可能なのか、半信半疑でしたが…
永田さんが考える“幸せに働く鉄則”を聞いて、「こんな人がいる会社なら、本当に叶えてしまうんじゃ…?」と希望を持てました。
もし「熱中できることがないまま人生が終わっていいのか」と悩んでいる人がいるなら、まずは熱中できることを決めてみるとよいのかもしれません。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/文=山田三奈(@l_okbj)〉
永田さんの熱量が伝わる取材風景の動画も、ぜひ観てみてください!
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