ビジネスパーソンインタビュー
「R25世代が試せる“ファシリTips”」がここに!
スゴい人ばかりの会議は「フィジカルで勝つ」奥井奈南が語る“何も持たない弱者のファシリ力”
新R25編集部
『ABEMA Prime』で司会進行を担当するテレビ朝日・平石直之アナに、「ファシリ力」の真髄をきいた記事。
手前味噌ですがたくさんの人に読んでいただけたようで、大きな反響がありました。
そして、この人からも“参戦表明”の連絡が…!
【奥井奈南(おくい・なな)】1993年生まれ、兵庫県出身。10代からモデル活動を始める。現在は経済情報を議論する番組『The UPDATE(アップデート)』の司会進行を担当
『NewsPicks Studios』が運営するライブ経済情報番組『The UPDATE』で司会進行を務める奥井奈南さん! 経営者、学者、タレント…さまざまな論客たちの議論をさばいているMCです。
「こちらの記事最高でした!! 単刀直入に申し上げますと、私も少しでも読者の方に参考になることが言えるかなと思います」
「平石キャスターと比べると参戦といえるほど私は実力がありませんが、猛獣使いという点では似たようなものを感じました」
スキルも経験も心もとないR25世代が試せる“ファシリTips”をシェアしていただけるとのことなので、オフィスに呼び出させていただきました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
天野
まさか奥井さんが参戦してくるとは…
奥井さん
いや違うんですよ(笑)。参戦っていうとおこがましいんですけど…
奥井さん
平石さんはキャリアも技術もすごくある方じゃないですか。
でも私は、何の技術もない状態で番組MCになったんです。しかも相手は自分よりはるかにすごい人ばっかりで…
だから、まだキャリアが浅くて、目上の人がたくさんいる会議をファシる若い世代には参考になるかなと思ったんですよね。
天野
たしかに奥井さんはもともとモデルだから、MCのスキルとか教わってなかったわけですもんね。
奥井さん
『The UPDATE』はもう1人のメインMCが古坂大魔王さんなんですけど。古坂さんは“プロデューサー”としてすごい方なんで、めちゃくちゃ的確なアドバイスをたくさんもらって…今日はそのへんもお伝えできればと思ってます。
「おこがましいから、『参戦!』ってあんまり書かないでほしい…」と念押しされました。皆さんご理解ください
“弱者のファシリテート”は「フィジカルで勝つ」!…ってどういうこと?
奥井さん
まず、「ファシリテートはフィジカルから」ってことは伝えたいです。
私も、古坂さんから最初に「フィジカルが弱すぎて全然ダメ」って言われたんですよ…
なんでそんなサッカーみたいな指導を…
天野
…会議でフィジカル関係あります?
奥井さん
「姿勢とか、座り方の時点で場に押し負けるかどうかが決まる」って言うんですよ。
のけぞって座ってると押し負けちゃうから、イスの前半分にお尻をのせるイメージ。
手はこうやって、必ず机の上に置く。それが“ファイティングポーズ”なんだと。
奥井さん
司会って口を動かしてればいいって思いがちだけど、知識と経験があるベテランに、若手のファシリテーターが勝てるのは「フィジカル」なんですよ。
天野
なるほど…そもそもの“姿勢”が大事だと。
奥井さん
ほかにも、「第3の目で話す」っていうのもあって。
人間の目って普通2個だと思うんですけど…「ファシリテートがうまい人は、額に第3の目がついてる」って言うらしいんですよ。
奥井さん
これもフィジカルとか“姿勢”に関連する話で。
目でなんとなくモノを見てればいいんじゃなくて、「額の第3の目で、相手をとらえる」っていうふうに意識すると、自然と相手に正対できたり、真摯に聞く姿勢ができてたりするんです。
「ちゃんと聞いてます」っていうアピールになるから、相手からもよい話が引き出しやすい。
あと、声が通るようになるっていうメリットもありますね。
天野
自分、姿勢悪いんで座り方気をつけます…
「ファシリテートは、じつは“不安がある若者”のほうが向いている」!?
奥井さん
あとこれは自分の話なんですけど…
ファシリテートって、“不安がある若者”のほうが向いてるなって思うんです。
天野
不安…?
奥井さん
まず、自分に自信がなくて不安だからこそ、徹底的に準備する。これ、見にくいかもなんですけど私がいつも本番までに用意しているスプレッドシートで…
LinkedIn村上臣さんや正能茉優さんの経歴や「過去番組に出演したときのデータ」をメモしてるっぽい
経営学者・楠木建さんや産業医・大室正志さんへの「問い(質問したいこと)」をメモしてるっぽい
その人の持論も調べてるっぽい
天野
これもしかして…出演する人のデータを全部まとめてるんですか…
やっっっば…
奥井さん
はい、毎回してます。これぐらいやらないと不安なんです。
古坂さんに聞いたんですけど、あのタモリさんも、本番前には裏でめちゃくちゃ準備してるんですって。
天野
フラッと出てきて「髪切った?」って言ってると思ってました。
奥井さん
準備をすることで、“ファシリテートへの使命感”が生まれるんです。
まわりのすごい人に比べて能力は低かったとしても、情報量は私のほうが多いから、「この場をうまく回せるのは、自分しかいない!」って。
ファシリへの使命感をつくり出す。これはカッコいいですわ
奥井さん
あと、「何も持ってない“弱者”で将来が不安」なことによるメリットがもうひとつあって…
天野
なんでしょう?
奥井さん
立てられる“問い”が切実になること。
「不安じゃない人から生まれる問い」と「不安な人から生まれる問い」って、違うと思うんですよ。
これは哲学だ…でもわかる
奥井さん
会社で会議をしてても、「お金があって、もうすぐ定年で、悠々自適で暮らせる」って人と、「これから成果を出さないと、キャリアも収入も大変なことになる」って人では、“どうすべきか?”っていう問いの切実さが全然違ってくると思うんです。
不安な人の問いにはパッションがあるし、「不安を解消したい」っていう気持ちがあって、それが発言に乗るんです。だから、議論に深みが出る。
天野
それはたしかになあ~!
じゃあ、会議を進行するときも「すごい人に自分の不安をぶつける」くらいの勢いでいくと有益な議論ができますかね?
奥井さん
そう思います。『TheUPDATE』でも、自分自身の不安な気持ちをぶつけると、カメラの向こうの視聴者にもそれが伝わる感じがしますね。
天野
奥井さんって、以前のインタビューではけっこう無鉄砲なイメージがあったんですけど、何がそんなに不安なんですか?
奥井さん
私、ずっとキャリアとか将来のことが不安で…もう人生ずっと不安です(笑)。
「ジョブ型雇用」をテーマにした回で、「人がスキルで売り買いされる社会になる」みたいな内容があって、その日は不安になりすぎて半泣きで進行してました…(汗)。
天野
ただ…やっぱり経験が浅い若者が、レベル高い会議に入ると、どうしてもうまくいかないことは多いと思うんですよ。
話についていけなかったり、うまく進行できなかったり。
そういうときもありますよね…?
奥井さん
ですね。私もいまだにうまく進行できないとき、たくさんあります。
ただ、そんなときは古坂さんに唯一誉めてもらったときの言葉を思い出すようにしてて…
天野
唯一誉めてもらった…?
奥井さん
古坂さんって、「番組の締め方」をよく気にされてるんです。
私がアドリブで、「今日はこういう回でしたね」「次回はこういう回です」って要約して締めたら「すごくよかった!!」って言ってくれて。
ファシリテートは「締めがよければすべてよし」だって教わったんです。
奥井さん
議論って本気で向き合ってれば、場の空気が悪くなったり、きれいに着地できなかったりが当たり前なんですよね。
だからこそ、話の流れをわかりやすく要約して、ポジティブに“締める”。
締めさえうまくいけば、多少議論がゆらいでも、有意義に次につなげられるんだって言ってもらえて。
天野
なるほど…! 仕事でも、「そんなにきれいにまとまらない」ことばっかりですけど…
だからこそ締めをポジティブにすべきなんですね…
奥井さん
そうなんですよ。自分がうまく立ち回れなくてもよくて、「負けるが勝ち」だと思ってます。
自分が負けて「めっちゃ勉強になりました!」ってポジティブに締めるのも、ファシリに必要なこと。
“きれいな着地”なんてしようとしないで、せめて前向きに終わるっていうのは、若手の人に一番大切な姿勢かもしれないですね!
「ライブのネット番組では“バイブス”が大切だと思っていて。地上波では出てこない、ハプニングのある展開を生み出したいんです!」
熱い口調でファシリへの姿勢を語ってくれた奥井さん。
“不安をはらんだ問い”があるからこそ、思いもよらないリアルな議論が生まれる…というのは、R25世代の背中を押してくれる教えだと感じました。
読者の皆さんも、これからは、今までよりもっと等身大で会議に臨んでみるといいかもしれません。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/構成・文=山田三奈(@SfbnktLSdzoOkbj)/撮影=森カズシゲ〉
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