ビジネスパーソンインタビュー

髪を切る以外でも「ジブン」を収益化。“多動力美容師”木村直人の仕事論

「美容師って仕事はもう限界」?

髪を切る以外でも「ジブン」を収益化。“多動力美容師”木村直人の仕事論

新R25編集部

連載

自分メディアのつくりかた

2018/07/01

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数多くの有名タレント・モデルが通うことで知られるヘアサロン「air」。その専属スタイリストである木村直人さんは、美容師の枠を大きく飛び越えた活動をしています。

Twitterのフォロワー数は3万人を超え、運営するWEBメディア「naotokimura.tokyo」は月間200万PV。さらに、ヘアカラー剤のプロデュースや3つのオンラインサロンを主宰するなど、大活躍を続けています。

いち早くネット上での発信を始め、現在のブーム以前からオンラインサロンの運営を開始していた木村さん。次にくるものはヘアデザイン×AR(拡張現実)

これまでの経歴から未来の話まで、その考えを存分に語っていただきました!

〈聞き手:ライター・田中一成〉

ライター・田中

本日はよろしくお願いします!

木村さん

よろしくお願いします。

あの…iPad見ながら取材受けてもいいですか

ライター・田中

もちろん構いませんけど…何か見られてるんですか?

木村さん

仮想通貨の値動きを見ていたいんです。

僕、同時にいろんなことに時間を割きたい人間なんですよ。喋りながら投資のチャートを見るし、ブログを更新するし。

ライター・田中

なるほど、だから美容師業のかたわらでメディア運営や商品開発、オンラインサロンの運営までできるのかな…

堀江貴文さんの『多動力』っていう本が話題になりましたが、まさにそれですね。

木村さん

そう。自分としては本が出る前からずっとやってたと思ってます(笑)。昔は先輩から怒られたこともありましたけどね。「飯食ってる時も仕事中も、携帯見てんじゃねえよ」と。

まあでも、わかってくれる人と付き合えばいいだけですからね。今は飯食ってる時も株価のチャートをずっとひらいてます。だめなら帰りますって感じで。

先輩に問題視され、1店舗目はクビに… ギャンブルで550万円の借金

ライター・田中

そんな木村さんの経歴をお伺いしたいです。はじめにこの話題で恐縮ですが、美容として勤めた1店舗目は「クビになった」と聞ききました。

木村さん

後輩をギャンブルに連れてって「悪影響を与える」ということで、勤めてたお店をクビになったんですよ。

ライター・田中

それだけでクビに?

木村さん

好きだった先輩以外の言うことは聞いてなくて、尊敬できない人の指示は無視とかしてたんで(笑)。そういうところも問題視されたんでしょうね…。今思えば自分が間違ってますけどね。

いきなり先輩に呼び出されて、「単刀直入にいうけど、お前もう今日でやめろ」と。

ライター・田中

その時はどんな感情だったんですか?

木村さん

あんまり記憶がないです。多分頭が真っ白になってました。友達の家に駆け込んで、2002年日韓W杯の日本対ブラジル戦を観ながら酒を飲んで。それでむちゃくちゃ泣きました。

でも、3~4時間寝て、起きたらすぐ次の会社に「雇ってほしい」と電話してましたね

ライター・田中

朝にクビ宣告をされて、その日のうちにってことですか? よくそんなに早く切り替えられましたね。

木村さん

切り替えというか、そのときギャンブルのせいで借金があったんで…

ライター・田中

え、いくらくらいですか…?

木村さん

合計で550万円くらい

働かないと生きていけないし、返済もできない。「明日からしばらく休めるな…」なんて言ってる状況じゃなかったんですよね

ライター・田中

そのときは、「こういうふうにして成功してやる」という、再起へのビジョンはあったんでしょうか?

木村さん

いやビジョンも何も、当時はただ生活苦しかなかったですね。

美容師って喋り好きなイメージだけど…「僕は1対Nのほうが好き」

ライター・田中

そこから“発信”をはじめたきっかけを聞きたいです!

木村さん

お客さんをちゃんとケアできてないことが気になってたんですよ。

3店舗目で今の会社に入って、なんとか仕事が軌道に乗るようになって、雑誌に掲載してもらえるようになってから、お客さんがすごい増えたんです。でも明らかにキャパオーバーで、1人ひとりにヘアアレンジを細かく教える時間がない。

けど、ネットがあればお客さんとコミュニケーションできると思ったんです。それで、ヘアアレンジのプロセスを撮影して、ブログにアップしはじめました。

ライター・田中

売れっ子で忙しい時にすごいですね…

木村さん

いや、別にそんなに時間がかかる作業じゃないんです。少し時間が空いた時に階段でパパッと撮影して、帰りにラーメン食べながらガラケーでブログにアップする…みたいな。

ただ、当時そんなことしてる美容師がいなかっただけ

ライター・田中

反響はすぐにあったんですか?

木村さん

わりとすぐでしたね。

その時はキャラを作って、面白おかしくブログを書いてたんで、それが反響を呼んだのかもしれない。いまの自分が書くと思うと気持ち悪いですけどね(笑)。

…あれは若いから書けたな~!

当時書いていたブログを思いだして、なんとも言えない表情を見せる木村さん

木村さん

そこからなんだかんだブログの更新は10年間毎日続けてます

ライター・田中

10年! 続けるモチベーションって何なのでしょうか?

木村さん

モチベーションというより、自分を形成するうえで当たり前のものというか。今は、「自分の人生をログとして残している感覚」というのが適切ですかね。

あとそもそも、1人に対して話すのがあまり好きじゃないというか。

ライター・田中

ええ…、美容師さんってとにかく会話好き、コミュニケーション好きなイメージがありますけど。

木村さん

僕は対面よりも、「1対N」で喋るほうが好きなんですよ

たとえば今日、こうやって取材受けてますけど、3人(※取材には3人でうかがいました)としか喋れない。でもTwitterなら、フォロワーが3万人いるんで3万人に向けて喋れますよね?

その方がコミュニケーションの効率がいいですし、そこで発信した方が面白い人とつながりやすいと思うんです。

(今日は3人で一瞬申し訳なくなる取材陣)

ネットの声を集めて商品を企画するが…「細かい作業はやらないで一任」

ライター・田中

ご自身のブログで「SNSでの反応をマーケティングに活かせ」ということをよく書かれてますよね。

木村さん

ネットの声から、流行をつかむというマーケティングですね。実際、それで実現した商品もあるんですよ。

ライター・田中

お、何か商品を企画されたんですね。

木村さん

お客さんがどういうことに悩んでるのか、ネットで声を拾って商品コンセプトを作ったんです。

THROW | こだわりのアッシュを、1本で。

THROWは、アッシュやマットなど寒色系の発色にこだわった、プロ向けヘアカラー剤です。アッシュをはじめとする、表現が困難だったクールカラーも

2016年に販売を開始したヘアカラー剤「THROW」は、女性の「髪の赤みを抜きたい」という声と、美容師たちの「使っててワクワクする、カッコいい製品がない」という声をもとにしたもの

木村さん

商品開発中に迷ったら自分の「LINE@」やFacebookグループでヒアリングする。僕はそれらの声を拾って組み合わせてるだけです。

自分では勝手に「アクティビスト」と言ってますね。

ライター・田中

アクティビスト。どういう意味ですか?

木村さん

発想同士を組み合わせて、稼働させる人」と。

実際、「THROW」は信頼できる美容師とデザイナーに、中身とデザインを一任しました。彼らがつくり、僕は全力で商品について発信するというように、リソースを分散させたんです。

ライター・田中

木村さんのなかに「こういう商品をつくりたい」という“こだわり”はなかったんですか?

木村さん

普通は細かくいろいろ言いたくなるのかもしれませんけど、時間にも限りがありますから、僕はそれにリソースを割きたくなかった。

まあ自分で全部やるのが面倒くさかったのもありますけどね(笑)。だからこの人なら絶対に大丈夫だと信頼できる人に、商品を任せました。

「面倒くさい」が結構重要な判断ポイントになっているっぽい木村さん

オンラインサロンを早くからスタート。美容師の「収益化の場」を作りたい

ライター・田中

木村さんは、美容師に技術を教える「オンラインサロン」を4つも主宰されてますよね。

今、オンラインサロンがブームだと言われてますが、かなり早い段階でスタートしているのにはどういう考えがあったんでしょうか?

木村さん

美容師業界で不思議だと思ってたのが、収益化の窓口が圧倒的に少ないことなんです。

要するに、「お店で髪を切ること以外にお金を稼ぐ方法があまりない」。

ライター・田中

そうですね。人気になれば料金が上がるようですけど…

木村さん

だから、髪を切る以外で自分の「コンテンツ」を収益化できないかなと思ったんです。

当時、技術について僕に質問してくる美容師さんが多かったんですよ。でも僕としては時間が取られるだけで、メリットがない!って思ってて(笑)。

木村さん

で、「美容技術をコンテンツにしてオンラインサロンで教えれば収益化できる」と思ったんですよ。

収益化できるし、それがコミュニケーションとして適切だろうと

ライター・田中

教わる人がお金を払い、教える人がお金をもらうという。

木村さん

そう、僕としてもお金をもらっていれば責任を持って教えることにコミットするし。

いろんな撮影とか、「無料で」みたいなことが多い業界ですけど、収益化の場をちゃんと作りたいなと思ったんです。

現状の「美容師」はもう限界? ARとの掛け合わせを模索中

木村さん

あとは、もっと新しい技術を取り入れないと、と思いますね。

ライター・田中

どういうことですか?

木村さん

たとえば、「髪を傷めたくないけど、面白い髪にしたい」って無理がありますよね? カラーを入れたり、パーマをかけたりすれば必ず傷みます。

でも、AR(拡張現実)を活用すれば、いろんな可能性があるんじゃないかな…と考えてます。

ライター・田中

ARと髪を組み合わせる…?

木村さん

ウェアラブルデバイスを通して見たら髪の装飾やカラーが見えるとか…

落合陽一さんによく相談するんですよ。「髪×AR」はあと5年もあれば実用化できるんじゃないか…って話です。

ライター・田中

実現したらすごそうですね! テクノロジーでいうと、AIをとりいれる話もあったりするんですか?

木村さん

そう、AIに正確に髪を切れるシステムを埋め込めば、既存の型に髪を切るなんてカンタンなはずですよね。

そういう意味では、現状の美容師という仕事は限界に来ている。“AIに勝てる”と思ってる人はおかしいですよね。0から1を作るような発想は勝てるかもしれないけど、そのうちディープラーニングでそこも負けますもん。

そうなったときは、今と同じことをしてても「お役御免」でしょう

「最初にやったもん勝ち」新しいものをつくるのが本当の職人

ライター・田中

今日はいろいろなお話、ありがとうございました。木村さんは本当に、さまざまな先進的なことを考えてらっしゃるんですね…

木村さん

基本的に、こういうのは「最初にやったもん勝ち」だと思ってるんですよ。今話したARの話も、最初は批判されるのも当然わかっています

でも、たとえばですけどジャスティン・ビーバーが「これは最高にクールだ」と書いてSNSにアップすれば、みんな手のひらを返したように「オシャレだ!」と飛びつくはず。そこから開発したんじゃ遅いんです。

ライター・田中

美容師さんって、こう…もう少し“職人的”なイメージがありました。1つのことだけに取り組むというか。

木村さん

そういうイメージに対しては、「職人の定義ってなに?」って言いたいですね。

古いものを守るのが職人じゃない。僕は新しいものをつくるのが本当の職人だと思っています

〈取材・文=田中一成(@isse_eee)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美〉

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