ビジネスパーソンインタビュー
「転職しても、働き方は変わらないと思った」
発信したら生きやすくなった。“下ネタ裏アカ”女子「あんちゃ」がプロブロガーになるまで
新R25編集部
「プロブロガー」なる存在をご存じでしょうか? 読んで字のごとく“ブログのプロ”。自身でブログを運営して生計を立てている人たちです。
今回取材したのは、そんなプロブロガーのあんちゃさん。会社に勤めながらブログを始め、4カ月後にはインフルエンサーの仲間入りをしていたシンデレラガールです。そんな前代未聞のスピード出世の秘訣を聞いてきました!
〈聞き手:佐藤宇紘〉
意味なく残業する日々…唯一尊敬していた先輩に「独立を考えてる」と言われてハッ
ライター・佐藤
今日はよろしくお願いします。まずは、あんちゃさんがブログを始めるまでについて教えてください!
あんちゃさん
はいー!
私は本当に、その辺にいるOLでしたね。北海道から上京して、電子書籍配信の仕事をやってました。大手の親会社から出向してきた人も多くて、体質的にはゴリゴリの「大企業」。
終業時間になっても上司がずっと残業してて、新卒の私たちは「帰りづらい…」とか言って、周りの目を気にしながら残業してました(笑)。
ライター・佐藤
いかにも楽しくなさそうな言い方ですね(笑)。
あんちゃさん
会社員に向いてなかったんですよね。
ベタですけど、「大人数の飲み会で気配りする」みたいなのもすごい苦手でした。朝も弱くて週3回は遅刻してたし。
しすぎでは?
ライター・佐藤
そこからブログをはじめたきっかけはなんですか?
あんちゃさん
会社で“唯一”尊敬してた女性の先輩がいたんです。その人はいつも定時退社してて、周りからは「ちゃんと仕事してんの?」って見られてたんですけど(笑)。
あるとき飲み会でその先輩と話したら、「仕事は全部定時で終わらせて、残った時間を独立のための準備にあててる」と言ってたんです。
それで「ああ、自分は将来のことなんて何にも考えてなかった!!」とハッとして。残業で働いてるフリをして時間つぶしてたのをすごい後悔したんですね。このまま続けてたら、自分の好きなことできるのは老後になってからだと。
「転職しても働き方は変わらない」“オッサンのいびき”がきっかけでブログデビュー
ライター・佐藤
普通はそこで、「もっと自分のやりたいことができる会社に転職しよう」という人が多いと思いますが…
あんちゃさん
最初は転職活動もしてたんですけど、途中でやめました。転職したところで「ワークスタイルは変わんねーな…」と思ったんですよね。会社の人との付き合いも、満員電車も。
自分はやっている仕事が不満というよりは、ワークスタイル、つまり毎朝9時に出社して18時まで拘束される生活自体がすごい疑問だったんで。
とことん会社員に向いてないことを主張するあんちゃさん
ライター・佐藤
なるほど…
あんちゃさん
それで、活躍している女性起業家の講演会に行くようになったんですよ。マザーハウスの山口絵里子さん、クレイジーウェディングの山川咲さんとか。女性でキャリアをガンガン切り開いているのがすごくカッコいいなと思ってて。
その流れで、たまたまある講演会で隣に座った人が「プロブロガー」で。話を聞くうちに、その人の時間や場所にしばられない働き方が面白そうだなと思ったんです。
ライター・佐藤
そこからブログを始めたんですね!
あんちゃさん
ちょうどそのあとに地元・北海道の友達の結婚式があって、成田空港に前泊したんです。一番安い、朝イチのフライトだったんで…。
で、空港のロビーで寝られるかな~と思ってたら、たまたま隣で寝ていたオッサンのいびきがうるさすぎて一睡もできなくて(笑)。
そのときに、ブロガーさんのことを思い出して、思いつきでブログを書いたんですね。今となってはオッサンに感謝してます(笑)。
オッサンのいびきがひとりの女子を覚醒させた
女性起業家に憧れてたけど、自分には“下ネタ”が求められてることに気づいた
ライター・佐藤
あんちゃさんといえば、
みたいな記事のイメージも強烈ですが、最初からこんな「下ネタ」を書こうと思ってたんですか…?
あんちゃさん
最初の2~3週間は社内の人間関係に悩んでたこともあって、本を読んで「コミュニケーション論」みたいな記事を書いてました。でもまったく読まれない(笑)。
「もうちょっとネタっぽい記事も書いてみるか」と思って「熱海秘宝館」を出したんです。そしたらめちゃくちゃ反響があったので、「あ、私に求められてるのはこっちか」と。
ライター・佐藤
ぶっちゃけ下ネタが好きなわけではなくて、読者を集めるためのフックなんですか?
あんちゃさん
好きというよりは、下ネタは日常会話です。
ライター・佐藤
日常会話。女子もそうなんですね。
あんちゃさん
じつは大学生のとき、ツイッターで「下ネタ専用の裏アカ」を持ってたんですよ(笑)。
ライター・佐藤
ええ~、それってどんなことをツイートしてたんですか?
あんちゃさん
まあ、大したことじゃないんです。彼氏とのそういう話とか、生理の話とか、あとは日本の性教育への不満とか。もう毎日のようにツイートして、仲良しの女子とだけ絡むという。
下ネタをブログに書くのも、その裏アカと同じノリなんですね。まさかそういう記事がウケると思ってなかったんで、最初は「こんな反響があるなんて」って感じでした。
ライター・佐藤
今ではそれが自分の“ウリ”になっていると。
あんちゃさん
今では「言葉に出せない性の悩みを代弁してくれてありがとう」なんてメッセージもいただくんですが、下ネタで誰かの役に立てるなんて想像つかないじゃないですか(笑)。カッコいい女性起業家に憧れてたのに(笑)。
逆に、勝手に自分のなかで決めた強みって、人前に出したら全然面白くなかったりするんですよね。
ライター・佐藤
出してみないと、何がウケるかわからなかったわけですね。何でも人に見せてみるのが大事なんだな…
あんちゃさん
「恥ずかしい」みたいな気持ちもなくはなかったんですが、出してみたら意外とみんな応援してくれるんです。
「自分が思うほど他人はそんなこと気にしてないんだな」というのをすごい実感しました。
「レールから外れて生きていく」話は炎上しやすい
ライター・佐藤
一方、何度か炎上も経験されてますよね。
あんちゃさん
そうなんですよ~。「地方でつまらない生活してる10代20代は、マジで1回上京すべき」という記事と、会社を辞めてブログで生きていくと決意表明した記事ですね。
どっちもバズって、「地方で~」は1日で3万PVぐらい、「退職宣言」は10万PVぐらいいったんですが、「そんな甘くねえよ」「地方をバカにすんな」みたいな声が殺到しまして…。
お問い合わせフォームから「お前がうまくいかない理由」というタイトルで、数千文字にわたる批判もきました(笑)。
なげえ…
ライター・佐藤
すごい労力。それ書いている人はうまくいってるのだろうか…
あんちゃさん
「レールから外れて生きていく」みたいなことに対して、すごい怒る人がいるんですよね。
ライター・佐藤
最初の炎上はブログ開始から2カ月目みたいですけど、それでもめげずに続けられた理由はなんでしょう?
あんちゃさん
反骨精神ですね。「ここで潰れたらコイツらの思う壺だな」と思って(笑)。
恐怖心で大きく見えているリスクも、具体化してみたらたいしたことない
ライター・佐藤
ブロガーとして独立するとき、月間のブログ収益は5万円だったと聞いて驚きました。
その状態で辞めるのはリスクありますよね。売上を伸ばす勝算はあったんですか?
あんちゃさん
いやー、何にもなかったですね。貯金も30万円しかなかったし(笑)。完全に見切り発車でした。
笑い事ではない
あんちゃさん
ただ、私はブログを始めた初月から2000~3000円収益が出て、それから翌月1万→次月4万と上がっていってたので、「このままもっと頑張ればいけるんじゃ?」とは思ってました。
失業保険ももらおうと思っていたんですが、「5万儲かった」ってブログで書いちゃったんで「行政に見られたらダメだな」と…(笑)。
ライター・佐藤
計画性があるのかないのかわからない。
あんちゃさん
まあ、ブログ収益が5万円あるということは、残りの生活費ぐらいなら週3日のアルバイトでも賄える計算だったんですよ。
リスクって結局、自分の恐怖心のせいで大きく見えるだけで、細かく具体化してみると案外大したことないんですよ。
だったら光が見えてるブログを頑張ってみるべきだなと。
ライター・佐藤
なるほど…
あんちゃさん
会社とかでよく「20代は我慢の時期」って言われるじゃないですか。でもその「我慢料」を払いたくなかったんですよ。
むしろ若いうちのほうが身軽で一番リスクを冒せると思ったんですね。
発信を始めたら、生きやすくなった。環境を変えたからこそ今がある
こうした活動のおかげか、ブログ開始から4カ月目には月間37万アクセス、現在では50万アクセスと、インフルエンサーの階段を一気に駆け上ってきたあんちゃさん。昨年末には著書『アソビくるう人生をきみに。』(KADOKAWA)も上梓しています。
ライター・佐藤
ブログを始めて発信力をつけたことで、一番大きく変わったことはなんですかね?
あんちゃさん
生きやすくなりました。
ライター・佐藤
というと?
あんちゃさん
発信力をつけると、自分の価値観に賛同する人が周りに集まってきてくれます。そうなると、仕事も生活も自分を偽らずにできるので、とにかく生きやすい。
以前は、ある意味「誰かの価値観に追従する場所」として会社にいたので、そうはいかなかったんですね。
ライター・佐藤
「自己ブランディング」という言葉を聞くと、自分を偽ってでもイメージをつくりこんでいくのかなと思っていましたが、逆なんですね。
ライター・佐藤
最後に、あんちゃさんのように自分らしく生きたいと思っているR25世代にアドバイスをお願いします。
あんちゃさん
私は、以前いた会社の人間関係しかなかったら、こんなふうにインタビューされるまでになってなかったと思います。でも、いろんな講演会とかに行ったり、ブロガーさんなどに会ったりして、考え方が変わった。
だから、昔の私と同じように悩んでいる人も、自分のいる環境を変えたらきっといろんなことが変わっていくと思いますよ。
〈取材・文=佐藤宇紘/編集=天野俊吉(新R25編集部)/撮影=福田琢也(新R25編集部)〉
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