ビジネスパーソンインタビュー

ドーパミンで脳をダマせば続けられる。医師に聞く「三日坊主の解消法」

「人間の脳は、もともとサボリ魔なんです」

ドーパミンで脳をダマせば続けられる。医師に聞く「三日坊主の解消法」

新R25編集部

連載

シゴトに効く「カラダハック」

2018/07/10

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新しいことを始めようとしても、気づけば“三日坊主”になっている、なんてことはありませんか? 私はインストールしただけのダイエットアプリや、買って満足した参考書が視界に入るたび、心がチクリと痛んでいます…。

でもまわりをみると、うまく継続できている人もいるよう。一体なにが違うの?

気になったので、脳神経外科医の菅原道仁先生に「どうすれば三日坊主を解消できるのか」を聞いてきました!

現役脳神経外科医。「病気になる前にとりくむべき医療がある」との信条で、新しい健康管理方法である予想医学を研究・実践している。著書に『死ぬまで健康でいられる5つの習慣』(講談社)、『「めんどくさい」がなくなる100の科学的な方法』(大和書房)などがある。

脳はサボリ魔。生存本能でエネルギー消費を抑えようとする

ライター・森

私、つい三日坊主になってしまう性格なんですが、直せますか? たとえばダイエットとか、全然続かなくて…

菅原さん

それは性格ではなくて、脳が原因。人間の脳は、もともとサボリ魔なんです。

ライター・森

私じゃなくて脳が、ですか?

菅原さん

人間は本能として、生きるために省エネでいようとするんですよ。

脳という臓器は、摂取カロリーの約20%も消費してしまうので、新しく何かを始めようと脳を働かせるのは生物的には“コスパ”が悪い。何も考えず、いつも通りの行動をするのが普通なんです。

しかもダイエットに関しては、食欲という本能に抗わないといけないので、よりハードルが高いですよね。

ライター・森

じゃあ諦めるしかないのでしょうか…

菅原さん

いや、そんなことはありません。本能に抗うためには「絶対に継続してやるぞ!」くらいの強い気持ちがあれば大丈夫です。

ライター・森

強い気持ちってそんなカンタンに持てますか?

菅原さん

痛い目に遭うのはひとつの手段ですね。たとえば、プレゼンの準備が不充分で大勢の前で恥をかくとか。やはりそうやって、心底必要だと思えないと続きません。

ライター・森

あえて失敗するのはちょっと…。ほかの方法はありませんかね。

菅原さん

ありますよ。それでは継続の秘訣をお教えしますね!

「ドーパミン」が継続のカギ! 口角をあげて作業するだけでも効果あり

菅原さん

森さんはすでに習慣になっていることはありますか?

ライター・森

犬の散歩は習慣になってますね。

菅原さん

なぜそれは続けられていると思いますか?

ライター・森

えーっと、愛犬がかわいくて、散歩が楽しいからです。

菅原さん

そう、その感覚が大事なんですよ!

実はそうやって「楽しい」と感じているとき、人間の脳の中では、快楽物質である「ドーパミン」が出ています。これが継続するための“エサ”です。

ライター・森

エサですか?

菅原さん

省エネ志向の本能に抗うために、ドーパミンが活躍するんですよ。

たとえば読書でドーパミンの放出を経験した人は、その快楽をもう一度味わおうと、また読書をします。成功体験にもとづいて行動する傾向を、心理学用語で「強化」といいます。

いい刺激を得られた行動は、たとえエネルギーを消費するとしても自然と繰り返し、習慣になっていくんです。

ライター・森

でも、すべての活動が「楽しい」わけではないですよね。勉強とか…

菅原さん

そういうときは、まず口角を上げてみましょう

ライター・森

え、なぜです?

菅原さん

人間は、楽しいから笑うだけじゃなくて、笑う表情をするだけでも楽しくなっちゃうんです。

ペンを横に噛み、口角を上があった状態でマンガを読んだ人のほうが、口をとんがらせてマンガを読んだ人より「おもしろかった」と答えたという、有名な実験結果もあります。

批判されがちな“つくり笑い”も、習慣化には効果があるんですよ。

ライター・森

なるほど。それはすごいですね!

菅原さん

そのほかに、想像力を働かせるだけでも効果あります。

みんな「続けなきゃ」と思っていることを修行のように捉えがちなんです。でもその先にはきっと、ワクワクすることが待っているはずですよね。それをイメージするだけでもドーパミンの放出につながります。

ライター・森

ダイエットだったら、ビーチでかわいい水着を身につけている…とか?

菅原さん

そうです。自分にとって必要なものなんだったら、脳をダマして「楽しい」と思ってしまうことが大事。ダマせばダマすだけ、脳は働いてくれますからね。

目標の達成もドーパミンを出す手段。主体性と具体性を明確にするのがポイント

菅原さん

ドーパミンは目標を達成したときにも出ます。継続したいことがあるなら、目標設定を正しくするのもポイント

ライター・森

たしかに達成感を味わえると、続けられる気がします。

菅原さん

目標設定で大事なのは「主体性」と「具体性」。自分がなぜその目標を達成したくて、具体的にどこを目指すのか、を明確にしましょう。

ライター・森

もう少し詳しく教えてもらえますか?

菅原さん

たとえばダイエットなら「モテたい」「着たい服がある」など、なんでもいいので自分がなぜやせたいのかを追求しましょう。

加えて、ただ「やせる」という目標ではなく「5kg体重を落とす」とか「このズボンが入るようにウエストを絞る」といった具体性があるといいですね。

ライター・森

でもその目標を、長く掲げてるのも難しいですよね…

菅原さん

そういった場合は小さな目標をたくさん設け、少しずつ達成していくようにしましょう。この方法を「スモールステップ」といいます。

定期的にドーパミンが放出されるので、くじけずに継続できるはずです。

ライター・森

なるほど! 逆に「こういう目標はやめたほうがいい」というものはありますか?

菅原さん

ふたつあります。まず、否定形の目標はやめましょう

ダイエットでいうと「食べない」という目標。この言葉を人間が理解するときには「食べる」「ない」の2語を頭に入れてしまうので、「食べる」という言葉が無意識に脳に入り込んで、食べたくなっちゃうんですよ。

菅原さん

あとは、お金なんかを目標にしてはいけない

ライター・森

えっ、お金が目標だとダメなんですか?

菅原さん

最初のうちはいいんですが、だんだん効かなくなってしまうんですよ。

外から与えられるものを目的とすることを「外発的動機付け」と言いますが、それよりも自分の心の底から湧き出る「内発的動機付け」のほうが長く続きやすいです。

誰かから認められることや、なにかをもらえることを目指さず「みんなの役に立ちたい」といったように、内から湧き出る動機を大切にしましょう。

まずは外発的動機でもいいので動き始め、その過程で内発的動機を探ってみてください。

やる前のめんどくささ解消には、とにかく始めてしまうのがポイント

ライター・森

もうちょっと悩みを相談させてもらってもいいですか?

菅原さん

はい、なんでも聞いてください。

ライター・森

習慣になる前に「これをやらなきゃ」と思っていても、なかなか手をつけられないんですよ。これってどうにかなりますか?

菅原さん

森さんは、ふと掃除を始めたら、止まらなくなった経験ありませんか?

ライター・森

ありますね。

菅原さん

それは心理学用語で「作業興奮」といって、とりあえず始めてしまえば、勝手にだんだん楽しくなってくるというメカニズムです。

なのでとにかく始めてしまいましょう。

ライター・森

なるほど! “やる気スイッチ”は動き出すことで作動するんですね。

それを知っていれば、とりあえず動くことができそうです!

菅原さん

それはよかったです。最近ちょっと心配してることがあって、本人に継続する意志があっても、ひとつの失敗を責められすぎて再起のチャンスを摘まれてしまうケースが多くなってきてますよね。ネットの炎上とか。

ライター・森

そうですね…

菅原さん

そういうものに巻き込まれないためにも、余計な情報はシャットアウトしましょう。「不安要素」などが頭に入ってくると、継続しづらくなってしまいますからね。こういうWebメディアの記事も読まない!

ライター・森

それは読んでくださーい!(笑)

〈取材・文=森かおる(@orca_tweet1)/編集・撮影=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

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