

なりたい姿から逆算しなくてもいい
フォロワー数13万人超の“妄想ツイッタラー”さえりさんの「無理をしない発信術」
新R25編集部
ネット上での発信をもとに、自らの可能性を広げる人たちがいる。彼らの発信スタイルは、ボクらビジネスマンにも参考になるはず…。
そんな「自分メディアのつくりかた」連載で、今回話をきいたのはライターの夏生さえりさん。恋愛の甘い1コマを描写した“妄想ツイート”が話題を呼び、フォロワー数は13万人を突破。
2017年8月には自身2冊目の著書『口説き文句は決めている』も発売したさえりさんだが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかったという。
ネットで発信力をつけようとするも挫折。どこにも所属できない恐怖心でガチの引きこもりに
「実は一度、ボロボロに挫折してるんです」
ツイッターをはじめたきっかけを聞くと、意外な答えが返ってきた。
「学生の頃、就活の流れに乗れなくて。『なにがしたいの?』『やりたいことは?』と急に聞かれても、答えも持っていないしどうしたらいいのかわかりませんでした。周りは当たり前のように就活をはじめていましたが、私は幼少期から“理由”を求める子供だったので、スムーズに就活の波にのれなかったんです」
誰もがベルトコンベアに乗せられ、人生のレールをなんとなく歩いていく。確かにボクらもそうだった…。
「だから、別の道を探りました。ネットで発信力をつけようとしたり、学生起業家たちと交流を深めてみたり、何か自分で“新しい働き方”を見つけられないかなと、でも、学生の自分にできることはごくわずかだったし、学生起業家のアグレッシブな雰囲気にもなじめなかった。どこにも所属できない恐怖心と焦りをかかえていて、ピリピリしていたんでしょうね。結局人間関係もうまくいかなくなって。心身共に元気がなくなって、引きこもりになっていました。母親がドアの前にご飯を置くガチのやつですよ(笑)」
仕事を通じて発信に再挑戦。「人をマイナスな気持ちにしない」「疲れた人をハッピーに」がルール
1年間の休学を経て、半ば失意のまま出版社に就職。潮目が変わったのはその1年後、制作会社LIGへの転職がきっかけだった。
「LIGでは編集者として、クライアントのメディア運営を代行していました。そこで直面したのが、新規メディアの読者を作る難しさ。悩んだ結果、私自身が“媒体力”をつけてメディアへの導線になろうと思い立ちました。せっかくライターさんが書いてくれた面白い記事が誰にも読まれないのは悔しかったんです。同時に、LIGでは社員が月1本ブログを書くことがルールになっていて、表に出る機会も増えて。再度、発信力をつけるために頑張ってみようと思いました」
「発信する上で大事にしたのは、やりたいことを決めるのではなく“やりたくないこと”を決めることでした。人をマイナスな気持ちにすることは書かない、とか、誰かを貶めるようなことはしない、とか。あと、誰かを鼓舞するツイートはごまんとあるから、疲れた人が少しでもハッピーになれるものを作ろうと。これは今も大事にしているテーマですね」
上から目線の成功体験よりも、“横並び”の共感。誰もが今の日常を愛せるように
そんな想いは、2017年4月に発表した著書『今日は、自分を甘やかす』にも詰まっている。
「私のフォロワーに多いのは、真面目で気を張っていて、でも頑張ることにすこし疲れている女の子。つまり、昔の私に似た子たちなんです。この本は、昔の私と彼女たちに向けたメッセージとして書きました」
同書には、頑張りすぎた女性たちが、今の日常を愛せるようになるコツが書きつづられている。
「こういう自己啓発本って、自身の成功体験を語るものが主流ですよね。でも、私はそんなに強く意見を言って誰かを引っ張れるような人じゃない。そういう方法じゃなくて、『この人も自分と同じなんだ』って感じてもらえるような、横並びのポジションを大切にしています。この人も自分と同じ! と思えるだけでも、勇気って湧いてきます。誰かを励ますのに、強い言葉って必ずしも必要じゃないと思うんです」
そして、さえりさんの代名詞とも呼ぶべきが、情景が目に浮かぶような“妄想ツイート”。つい心を揺さぶられることも多いが、何かテクニックがあるんだろうか?
「意識しているのは、読者の感情の起伏を意図的に作ること。小説を読んでいても、不安にさせられたりホッとさせられたりしながらページをめくるじゃないですか。ツイートも同じで、上がりも下がりもしない文章はつまらない。たった140字の世界でも、山場をどこに設定してストーリーを展開するかには頭をひねらせますね」
野心家である必要はない。自分の“今”をなかったことにしないために、気軽に発信してみては
ボクらも日々感じている「上昇志向のない人間はダメ」という空気。しかし、遠い未来ばかり見据えていると今の自分を認められなくなってしまう。さえりさんは、夢はふんわりと持ちつづければ十分だと話す。
「昔は、『夢を叶えるために』と焦りすぎたこともありました。強い覚悟がないと、夢を叶える資格はないと思っていたことも。でも、私はそんなに強い人じゃない。それで、夢は一旦横に置いておいて、本を出したいな、ブランド力つけたいなってふんわりと思いながらも、まずは目の前の編集という仕事をがんばると決めました。そこで得たスキルが生きて、結果的にどちらの夢も叶ったんです。夢に向かってまっすぐ頑張れるような強い人には憧れるけど、そうじゃなくて、自分がやりたいこととベクトルの近いことをコツコツ続ける。そういう夢の叶え方もあるんだとわかったのは、本当によかったです」
さえりさんは、発信したくても一歩を踏み出せないボクらにもエールを送ってくれた。
「自分の感情とか才能は、外に出さないと誰にも気づいてもらえない。埋もれたままなのも寂しいし、自分自身の“今”をなかったことにしないためにも、気軽に発信してみたらいいと思うんです。未来を作るのは、そんな“今”の積み重ね。だから、焦らず目の前のことにトライすればいいのかなって」
「よく聞くのは、なりたい姿から逆算するべきという意見。でも、それって強さと野心がある人の方法論です。その雰囲気になじめない人は、自分にできることをコツコツつづけるのも一つの道だと思いますよ」
〈取材・文=佐藤宇紘/撮影=飯本貴子〉

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