ビジネスパーソンインタビュー

必ず次につながる何かを生み出したい。“しおたん”が発信する「消費されない物語」

「ひとつひとつの発信に命をかけていきたい」

必ず次につながる何かを生み出したい。“しおたん”が発信する「消費されない物語」

新R25編集部

連載

自分メディアのつくりかた

2017/12/11

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ネット上での発信をもとに、自らの可能性を広げる人たちがいる。彼らの発信スタイルは、ボクらビジネスマンにも参考になるはず…。

今回話をきいたのはアルファツイッタラーの塩谷舞(しおたん)さん。個人メディア『milieu(ミリュー)』も運営し、多くのクリエイターや物事を独自のコンテキストでPRしてみせる彼女は、なにを考えて“自分メディア”をつくっているのか?

「クリエイターの才能を埋もれさせたくない」学生時代につくったフリーマガジンが発信のきっかけ

――Twitter、ブログ、milieu。いろんな“自分メディア”を持っている塩谷さんですが、発信をはじめたきっかけは?

原点は、美大時代につくっていたフリーマガジンですね。美大生って、いい作品をつくっても披露する場所が少ない。そして、デザイナーや建築家は別として、美術家として生計を立てている人というのは少ないから、多くの美大生が将来のプランを描きにくかったりするんです。『これ、マズイな』って思って。まわりには才能ある美大生がたくさんいるのに、彼らが作家として生きて行く道があまりにも狭い。素晴らしい才能を埋もれさせないためには、世の中にPRしなきゃダメだと。関西には芸術系のメディアが少ないから、自分たちでつくるしかないってことで創刊したのが、美大生や若手作家にフォーカスしたフリーマガジン『SHAKE ART!』だったんです」

ふと抱いた使命感を実行に変え、「フリーマガジン」というかたちで表現したのだ。この活動をきっかけに、“発信”する道を歩き始めた彼女は、卒業後はWeb制作・メディア系企業の「CINRA」でWebディレクター職を経て、独立。現在はWebメディア「milieu」を通じて才能あるクリエイターをPRしている。

Twitterで看板を立て、ブログで深掘り。消費されるコンテンツじゃなく、記憶に残る物語を作りたい

画像は「milieu」のスクリーンショット

塩谷さんは、複数のメディアを意図的に使い分けているという。

Twitterは、広く浅くでも良いから、まずは存在を知ってもらう役割。そして、本当に発信したいことはブログやメディア(milieu)で深掘りします。いわば交通量の多い道路に看板を立てて『こんなレストランがオープンしたよ』と広めたり、街行く人に試食してもらったりするのがTwitter、手塩にかけた料理を、内装にもこだわったお店で提供するのがブログやメディアですね。その料理を『おいしい!』と思ってもらえれば、リピーターにもなってもらえます」

さらに、発信の際に気をつけているのは、「ストーリー」を作ること

「私は興味ある人たちやモノを取材して記事にするとき、あまりその人が話したことをストレートに記事にはしません。まずは、世の中を俯瞰して『なぜこんな面白い人やモノが生まれたのか』とか『どうしてこの人がいま必要とされているのか』を、社会的な視点からひもときたい。たとえばアートの歴史も、ファッションの歴史も、それだけで成立していた訳ではなく、常に経済や戦争、テクノロジーと共に変化し、発展してきました。だから私は『いま』の時代背景を含めて語ることで、読者に消費されてしまうコンテンツではなく、記憶や歴史に残る“物語”になると思っています」

「こぼれ話」ツイートから、ゆうこす念願の鼎談が決定! 次につながる何かを生むメディアになりたい

そんな塩谷さんにとって最近のトピックといえば、堀江貴文氏らが集う鼎談を企画したことだ。

もともとは、milieuで行った、“モテクリエイター”菅本裕子さん(ゆうこす)へのインタビューがきっかけ。この記事を告知するツイートのなかで、塩谷さんは“こぼれ話”的に、

とつぶやいた。

これに堀江氏が「面白そ!セッティングして!」などと反応し、話が急展開! 結果、菅本さん、家入氏、堀江氏の3人が、それぞれの著書を持ち寄り、「どん底からの這い上がり方は?」「多動力とは?」といったテーマで鼎談。その様子をYouTubeで配信することになったのだ。

まさに、塩谷さんのメディア力が、思わぬ結果を生み出した事例といえるだろう。

「私は、milieuは“中継ぎメディア”だと捉えているんです。私が記事を書いて、SNSを駆使して広めても、せいぜい届く人数は数万人。マスメディアには到底敵いません。ただ、その数万人のなかには、テレビ局のディレクターさんや、雑誌の編集者さんや、タレントさん…ほかにも、研究者の方や、クリエイターの方などがいて、非常に濃い方々が読んでくださっている」

「だから、milieuに出たことをきっかけに、もっと広い世界に接続する…といったことがよく起きるんです。小さなメディアだからできることは限られていますが、必ず次につながる何かを生みたい。ゆうこすを取材するんだったら、彼女の『次の願い』を叶えられるような記事にしたいと思っていたので、あえて『対談したい人は?』と聞いてみました」

自分の意見だけが正義だと思い込むのは危険。ネットでも真摯なコミュニケーションをしたい

“物語を紡ぐ”発信と行動力でファンを積み重ねきた塩谷さんだが、自身のファンだけで周りを囲まれるような状況に対しては、危惧も感じているという。

「いわゆる“信者”のようなファンは作りたくない。私の言葉もあくまでも一意見として、ニュートラルに受け止められるべきなんです。私の記事を好んで読んでくださる方でも、私の意見に100%同意、というのはありえないと思うんです。他人なんですから、異なる意見を持っているのが当たり前ですよね」

でも、信者でないファンからは、ときに誹謗中傷を受けることもあるはず。無数に向けられる言葉の刃と、塩谷さんはどう向き合っているのだろう?

自分に向けられる『意見』と『誹謗中傷』を分けることは意識していて。真っ当な指摘をいただいたときは公開説教みたいで恥ずかしいけど(笑)、フリーで上司のいない私にとっては、ありがたいんです。インフルエンサーになると、賛同してくれる方が多いぶん、自分の意見だけが正義だと思い込んでしまいがち。それはとても危険なことです」

「ただ、ネット上での発信って、丸腰で何万人もの人と対峙するようなもので、そこをフィルタリングする事務所もないし、マネージャーもいません。なので、やっぱり近しい立場にいる仲間と相談することは、とても大切ですね。よく『インフルエンサー同士でつるみやがって!』って批判されることもあるんですけど(笑)、インフルエンサーという存在自体の先行事例がないから、どうフォロワーと向き合えば良いのか、どう仕事を受ければ良いのか…そんな悩みを共有するのも、必要なことだと思ってます」

――そんな塩谷さんは、今後どういう発信をしていきたいのでしょうか?

「いまのネットの記事って、バズったものがあれば、それをメディアが後追いで取材する…みたいなフローが主流ですよね。これ、逆転させられないかと思ってて。私はせっかくクリエイターの知り合いが多いので、『良い作品ができるよ!』ってときはあらかじめ教えてもらって、企画段階から濃密に取材できたら面白いなぁ、と」

「あとは、たとえネットでも真摯に読者とコミュニケーションしたい想いがあるんです。最近、ありがたいことにいろんな仕事の依頼をいただくんですが、メールの文面がコピペなのもザラ。宛名は『塩谷様』なのに、文章の途中からカツセマサヒコ様になってたり(笑)。いや、本当に多いんです。私とカツセマサヒコだと、フォロワーの方の層も、発信内容もけっこう違うのに、どうしてテンプレなんだろう?と思ってしまいます。逆に、私に相談された依頼でも、カツセの方が絶対にハマる!という案件は彼に相談したりもしていますが、やっぱりそうすると、良い結果が出るんですよね。この記事なんかは、私には書けなかったような愛にあふれていて…」

「“インフルエンサーなら誰でもいい”という感じでむやみに数を打つのって前時代的で、それはクライアントも、インフルエンサーも、ともに信用を削ってしまうことになりかねない。多方面に露出させたい…という広告側の気持ちはわかりますが、私はひとつひとつの発信に命をかけて誠心誠意仕上げる、というスタンスをこれからも貫いていきたいです」

「あとは、今まだ企画中ですが、海外へのクリエイティブ情報発信ですね。日本のクリエイターは、Instagramや、ポートフォリオサービスの『Behance』を積極的に使いこなしている人がまだまだ少ない。ネットで自己主張をするよりも、チームを組んで、質の高い物作りをすることが主流だからです。ただ、海外のメーカーや広告会社などが日本のクリエイターを探すときに、なかなかネット上で見つけられず、困ってしまう事例があるようで…。それって、ものすごい機会損失だと思いませんか?」

「私は今、ニューヨークと日本での二拠点生活をしているのですが、日本のクリエイティブは本当に質が高い。だからこそ、その素晴らしさをどんどん発信していきたいですね」

〈取材・文=佐藤宇紘/撮影=飯本貴子〉

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