企業インタビュー
1冊の本をきっかけに“偶然”出会える。特許取得・短期黒字化した「新感覚オンライン書店」の実態とは?
発想の源は“あの映画”の名シーン…!?
新R25編集部
「あっ…」
本棚から偶然同じ本を取ろうとして、手と手が重なる。…こんなロマンチックな“偶然”、一度は憧れたことあるのでは?
「いやいや、そんな映画じゃあるまいし…」とお思いのみなさん。
オンライン書店「Chapters bookstore(チャプターズブックストア)」なら、こんな“偶然の出会い”が本当にできるかもしれません。
このサービスを運営する株式会社MISSION ROMANTICの代表で、書店主でもある森本萌乃さんに、一体どんなサービスなのか聞いてみました!
〈聞き手=山田三奈(企業トピ編集部)〉
発想の源は、ジブリの“あの名シーン”
森本さん
「Chapters bookstore(以下チャプターズ)」は、毎月1冊の本を通して1名との出会いをお届けする、月額サブスクのオンライン書店です。
山田
“出会いをお届け”…ということは、マッチングサービスみたいなものなんですか?
森本さん
ん〜…そこはあえて曖昧にしてて、「オンライン書店」でもあり「マッチングサービス」でもありたいと思ってるんですよね。
だって「マッチングサービス」だと意気込んで始めたら、ちょっと疲れませんか?
山田
たしかに…
森本さん
私も20代のときにマッチングアプリを頻繁にやっていたんですけど…
スペックや外見でソートされるシステマチックな出会いに違和感や疲れを感じていました。
「もっと自然でロマンチックな出会いがないかな〜」と思っていたときに、たまたまジブリ映画の『耳をすませば』を観て。
山田
ほう…
森本さん
読書が好きな主人公・雫ちゃんが、図書館で借りた本の貸出カードを見て…
そこにいつも「天沢聖司」という名前が書かれていたことからだんだんその存在を意識しはじめて、2人の関係が始まっていく、というストーリーなんですよね。
山田
…カントリーロードが聴こえてきました。
森本さん
この2人の関係を見て、「これだ!」と思いましたね。
本って“自己完結できるコンテンツ”だからこそ、共有できたときに心の距離がグッと縮まるんです。
それに「同じ本」を介して出会うだけで、死生観や恋愛観のような“人生の価値観”に迫る質問が自然にしやすくなるんですよ。
どこにもない“深くてロマンチックな出会い”を「オンライン書店」で実現したいと思って、2021年6月に「チャプターズ」をグランドオープンしました。
現在はビジネスモデル特許も取得して、日々運営に励んでいるところです!
雫と聖司のような“偶然の出会い”…オンラインで実現できるの?
山田
雫は「図書館の本棚」で聖司に出会ったと思うんですが…
この偶然をオンラインで実現できるものなのでしょうか?
森本さん
“偶然の出会い”はオンラインでも実現可能です。
「えらばない」「ひとりじゃない」「がんばらない」をテーマに、マッチングが前に出過ぎない“自然な出会い”を叶えています。
「えらばない」から起きる“本との偶然の出会い”
森本さん
まずお届けする本は、ユーザーさんではなく現役書店員と出版社が毎月4冊の本を厳選。
読書好きはもちろん、読書ライト層からも「間違いなく面白い本が届く!」と選書の質が評判で、圧倒的なサービスの継続理由にもつながっています。
なんと7割の方が、「チャプターズ」をきっかけに小説やエッセイの読書を再開したり始めているんですよ。
ちなみにユーザーは、平均年齢31歳・首都圏在住者が半数・97%が独身・男女比は女性が6割なのだとか
山田
そもそも“本が届くサブスクサービス”としての満足感が高いんですね。
森本さん
そうなんです。
ユーザーさんは、タイトルを伏せた状態の4冊のなかからイメージと推薦文だけを見て、直感的に「これだ!」と思った1冊を選びます。
これによって、「直感を信じて選んだ本が、偶然誰かと一緒になる」という体験ができるんですよね。
誰もが憧れる“偶然”なときめき体験。いいなぁ…
森本さん
タイトルを伏せるのには、もう一つ理由があって。
たとえばあらかじめ“村上春樹の本”ってわかっていたら、「俺が教えてやろう」みたいに張り切る人が出てくるじゃないですか(笑)。
知識をひけらかす場じゃなく、それを読んでどう感じたかの価値観を共有し合える場でありたいという想いも込めているんです。
“相性のいい相手”と読書するから「ひとりじゃない」
森本さん
直感で選んだ本は、3〜7日でご自宅にお届けします。
「この『開封の瞬間が一番楽しみ』と言ってくれる人も多いんです」
森本さん
届いた本を一人で読みふけるのもいいのですが…
毎月、同じ季節に同じ本を読んだ方同士でビデオチャット「アペロ」でつながれるので、読みすすめながら希望の日程を設定していただけたらと思います。
森本さん
日程調整以外はすべて運営任せでOK。
独自の指標で「相性のいい相手」とマッチングをして、こちらでスケジュールを組んで会をセッティングいたします。
山田
この時点では、まだ相手がどんな人かわからないんですか?
森本さん
あえて相手の「年代」「居住地」「好きな本3冊」の情報くらいしかわからないようにしています。
面倒なメッセージのやりとりもないので、本を読みながら「アペロ」の日を楽しみにお待ちください!
悪魔的な“じらし”で本の内容がちゃんと入ってくるか心配ですが…読書を楽しみながら待ちましょう
「がんばらない」から“気を許せる人”が見つかる
森本さん
いよいよビデオチャット「アペロ」でのご対面のときですが…
同じ本を読んだ共通体験があるとはいえ、初対面の出会いには緊張がつきもの。
だから「チャプターズ」では、冒頭10分間はお互いの顔が見えない状態から、20分かけて徐々に顔を出していく設計になっています。
会話が温まるまで顔出ししなくていい、人見知りにやさしい仕様
森本さん
見た目って情報量が多いじゃないですか。
どうしても「カッコイイ」とか「カワイイ」とかの第一印象で相手を判断しちゃうのが人間の性。
ただここでは、外見の印象じゃなく「本の感想」を通じて気の合う誰かと素敵な出会いがありますように…という願いを込めてこの設計にしました。
とはいえ、ときどき稲妻に打たれたようにタイプの人が現れて「ウソだろ…」ってなることもあるのだとか
山田
気の合う人が現れたら、どうしたらいいんですか?
森本さん
そのあと連絡先を交換していただいてOKです。
連絡先交換率は平均で約67%と高水準で、実際にマッチング後にお付き合いするカップルも。
交際報告は月に3件ほど来ていますよ。
既存の書店モデルに付加価値を。「チャプターズ」の次なる挑戦
森本さん
おかげさまで「チャプターズ」の登録者は、累計5,000名を突破しました。
山田
すごいですね!
“読書離れ”が進んでいるとも言われるなかで登録者数を伸ばせたのはなぜだと思いますか?
森本さん
既存の書店モデルに、オンライン×マッチングという“新たな利益モデル”の付加価値を加えられたことが大きかったと思います。
さらに、デジタル起点の発想で初期費用を抑え、毎月1,000名を超えるお客さまに少人数で対応できる運営体制を構築することで、販管費も調整。
その甲斐あって、立ち上げから約2年で黒字化も達成しています。
山田
本当にカッコいいです。次の秘策もあるのでしょうか?
森本さん
本を通じた「リアルイベント」にも力を入れていて、今年から月1回程度で開催しています。
定員30名の枠にもかかわらず、3日で100名の方からの応募があり…「チャプターズ」ユーザーさんの熱量を感じますね。
最初は「一人で完結していた読書という世界に『出会い』を取り入れる」という取り組みが、どれだけ多くの人に受け入れてもらえるかわからなかったんですけど…
スペックや肩書きに寄らない“感性での出会い”が生まれていることをうれしく思っています!
本を読むような文化的背景のある人と出会える「チャプターズ」。
ふつうのマッチングアプリに疲れてきた人は、映画のような“偶然の出会い”をしてみませんか?
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