ビジネスパーソンインタビュー
「俺たちホストは自粛に夢中!」と動画をアップ
「すぐ自粛できたのは、コンプレックスの裏返し」従業員の収入も補償するホストクラブの神対応
新R25編集部
新型コロナウイルスの感染拡大により、経済的打撃を受けている業界が多くあります。
連載「サバイバーは上を向く」では、そんな逆境に立ち向かう人たちの奮闘をお伝えできればと思っています。
彼らの試行錯誤や考え方を広めることが、同じように苦しんでいる人たちの勇気や現状打破のヒントになり、さらには彼らを応援・支援する動きにつながれば幸いです。
今回オンラインで取材したのは、ホストクラブ「group BJ ONE'S CREATION」代表取締役社長の一条ヒカルさん。
「クラスター感染の発生源になっている」と報道されてから批判も集まりがちな“夜の世界”で、いち早く営業自粛を打ち出したことで話題になっています。
しかも一条さん、お店を閉めているのに所属するホストたちのお給料を補償しているんだとか…!
こんな人たちがいることを、ぜひ知っていただければと思います。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
お店の営業を自粛し、ホストたちの「勉強期間」にした

天野
一条さんのお店のホストは、SNSに毎日動画をアップしてますよね? これはグループとしてやっていこうと決めてるんでしょうか?

一条さん
そうなんです。この期間中に、僕たちホストも“自己プロデュース”のスキルを磨けると思ったんですよ。
Zoomってちょっとブサイクに映るものですが(個人の感想)、モニター越しでもめちゃくちゃイケメンでした。悔しい

一条さん
今まであまりやってなかった画像編集や動画編集のスキルをつけて、自分のブランディングをする…
お店のみんなで、そういった勉強期間にしようと決めたんです。

一条さん
ホストの仕事って、誰かに「楽しい」と言ってもらうことがゴール。家からでもエンターテインメントを発信するべきだと思ったんですね。
それで、「俺らの仕事ってこういうものなんだ」という従業員に対するメッセージとして、まずは自分でやってみたんです。

天野
それが、一条さんが投稿していた「#うちで踊ろう」の動画なんですね。
「俺たちホストは自粛に夢中」というコール動画…
星野源もビックリでしょう

一条さん
そうなんです。ホストっぽい動画を上げようと思ったんですけど、普段のキャラと違いすぎてみんなビックリしてましたね。
「社長、家ではあんな感じなんですか?」って…

天野
ミュージシャンたちが感動的な動画を上げてるのに、いきなりシャンパンコールだったので驚きました。曲とも全然合ってないし。

一条さん
…いや、あれは自分のなかでストーリーを考えてたんですよ!
最初はふざけた姿を見せて、その後で、お店や仲間への想いをテーマにつくった感動的な動画をアップしてみたんです。
結果として“本当はみんなつらい”と共感してもらえて、たくさんの人に動画を見てもらえました。

天野
なるほど…複数の投稿で“文脈”をつくっていたんですね。
ホストもZoom会議。ただ、うまくいかないことも多く…

一条さん
あと、お店のホスト全員で、毎日定時にZoom会議をしてます。

天野
めちゃくちゃ“会社”じゃないですか。

一条さん
ホストって18歳以上なら雇用できる(※高校生を除く)んですよ。だから、社会経験がまったくない子や、まともな職に就いたことがない子もいる。
全員が仕事への意識が高いわけじゃないんですね。

一条さん
“自宅待機”となると、生活がめちゃくちゃになってしまう恐れもあった。
だから、みんなで生活リズムを整えるために、Zoomで顔を見ながら会議をしようと思ったんです。

天野
そういう側面があるんですね…
ホストのZoom会議ってどんな感じなんでしょう?

一条さん
「自分のSNSをどうしていくか」とかを話し合ってますね。
たぶん、『新R25』を読んでらっしゃるような方なら、Zoom会議があれば着替えて机まで行きますよね?

天野
? そうですね。

一条さん
でも、僕らの業界にいる若い子だと、ベッドに寝転がって、スマホで「おはざっす」みたいな子もいる。それが普通なんですよ。

天野
芸能人のライブ配信とかならそういうのが普通だもんな…

一条さん
ここに観葉植物があるじゃないですか。
取材はじまったときから気になってました

一条さん
これ、外出自粛が始まってから買ったんです。裏にある本棚が見えて生活感が出ちゃうと、見ている子たちの気持ちがゆるんでしまうので。
視覚的に、適度な緊張感を演出するように気を付けてますね。会議のときはある程度ヘアメをするようにしてますし。

天野
ヘアメ。
1秒考えて「ヘアメイク」のことだとわかりました

天野
「オンラインホスト」の構想があるとも聞いたんですが、実際に営業されているんでしょうか?

一条さん
先日、新型コロナウイルス対応のための期間限定オンラインショップを立ち上げまして…
キャッチフレーズは「Keep Distance Keep United」

天野
対応が速い…!

一条さん
まず、オンライン通話で恋愛相談に乗る「一条ヒカルの恋愛相談」っていう企画を始めました。
今後は“オンラインホスト”のような商品を用意するプロジェクトも進めてますよ!
ホストクラブは客が「担当」を決めると「永久指名=ほかのホストを指名できない」となるため、オンラインでそのルールをどうすべきか…という悩みもあるんだとか
自粛を決めた理由は「コンプレックスの裏返し」

天野
そろそろ本題のシビアな話もさせていただきたいんですが…
なかなか変化に対応できない企業も多いなかで、いち早く自粛を決められたのはなぜなんでしょうか?

一条さん
それはもう、「コンプレックスの裏返し」ですよね。

天野
コンプレックス…?

一条さん
いま居酒屋さんは、18時まで“お酒を出して営業すること”が認められてますが、それと同じことを僕たちがやったらどうなるか…重々承知しているんです。
「夜の業界が感染拡大の原因なんじゃないか」って言われだしたときから、悔しい気持ちはあって。

天野
たしかに、感染した芸能人を「どうせ夜の街で遊んでたんだろ」ってバッシングする声も聞きます。

一条さん
「ホスト業界は素晴らしい!」…とは言わないまでも、「僕たちもいち市民だ」「ちゃんと貢献してますよ」と胸を張って言いたかったんですよね。
言うことまでイケメンなんだよなあ

天野
とはいえ、営業しないとかなりの損失になるんじゃないですか? いくらぐらいの損害が出ているんでしょうか。

一条さん
売上がなくなったという話でいうと、グループ全体で月1億円以上あった売上がゼロになってますね。
都の「感染拡大防止協力金」という補償もあるんですが…
金額をどうこう言うつもりはないけど、“全然足りない”というのが率直なところです。手元にあるキャッシュを切り崩してなんとか耐え忍んでます。

天野
やはりそうなんですね…

一条さん
ただ、楽しむためにあるホストクラブをこそこそ開けても、意味がないですよね。
だったらその時間で人間としてのスキルアップを考えたほうがいいんじゃないかと思い、振り切った選択をしたんです。
営業自粛中なのに従業員の収入を保障してるってホント?

天野
一条さんのお店では営業自粛中のホストの収入を補償していると聞いたんですが、本当ですか?

一条さん
本当です。
通常、ホストは出勤することでもらえる1日の最低金額があるんですが、その7割程度を全員に払うことにしました。

天野
カッコよすぎる…
お店を閉めると決めたときは、反発はなかったんでしょうか?

一条さん
そのときは補償の話は出てなかったので、「僕たちの生活どうなるんですか?」って言われるかと思ったんですが、なかったですね。
本当に従業員に恵まれてるなと思いました。

一条さん
まだ営業を続けているホストクラブもあるので、自分たちだけが自粛してたら、お客さんを取られてしまうリスクがあるんですよ。
でもそれより「クラスター感染の発生源にならないほうが大事だ」と従業員みんなが言ってくれた。
普段から“ウチは、個人よりチームプレーで勝とう”と言ってきた結果がこういうときに出て、本当にうれしかったです。

“1億円プレイヤー”6人が在籍するホストクラブ経営者が教える【マネジメントの掟】5カ条|新R25 - シゴトも人生も、も
「思想はシステムに反映させる」
一度新R25で取材させていただいた記事がこちら。モットーは「お客様にモテる前にスタッフにモテろ」
多くの企業が変われないのに、ホストクラブが変われたのはなぜ?

天野
新R25に寄せていただいたこのメッセージ動画のなかで「面白い時代がやってきた」とおっしゃってますよね。

天野
多くの企業が変われないなかで、一条さんたちが“楽しみながら変化できている”のはなぜなんでしょうか?

一条さん
ホストって調子がいいときは“何をやっても稼げる”んですけど、ダメになるのも速い。
悪いスパイラルに入っちゃうとメンタルにくるので、普段から「ダメなときにどうするか」を考えるクセをつけてたんです。
人間、余裕があるときに人に優しくするのはできる。ダメなときに何ができるかが大事なんですよね。

一条さん
国中、世界中が“ダメなとき”に入っているので、「ここだな」という感覚が自然にあったのかもしれません。

天野
なるほど。

一条さん
もうひとつは「チームワーク」がありますね。まわりがいなくても1人で頑張れるやつって一握りの天才しかいないと思うんです。
「みんなで動画を頑張ろうよ」っていって、横見たらみんなやってる。チームでひとつの物事に取り組むことのパワーを実感しています。
これを読んでいる読者の方も「ダメなときこそチームで頑張る」と意識してもらって、この局面を一緒に乗り越えていければと思います。
ハートをつかまれた皆さま、営業再開の際にはぜひ歌舞伎町へ…
異例のスピード対応のウラにあったのは、「ダメなときこそチームで頑張る」という、あまりにもシンプルで力強いメッセージ。
さまざまな社会の歪みが浮き彫りになっているいまだからこそ、「僕たちもいち市民だと胸を張って言いたかった」という言葉が、とても重く感じられました。
一日も早く状況が回復し、一条さんの本気のシャンパンコールがお店で聞ける日が待ち遠しいです!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/取材時撮影=池田博美(@hiromi_ike)〉
一条さんへの応援は、ぜひこちらのオンラインストアから

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