ビジネスパーソンインタビュー
“好き”だけじゃ仕事にならない気も…
【金言の嵐】「自分を仕事にする」なんて無理じゃない? はあちゅうに聞いてきた
新R25編集部
「個人の時代」を代表する存在として影響力を高め、昨年末には「『自分』を仕事にする生き方」という本を上梓したはあちゅうさん。
しかし、この本のタイトルを見て
「自分には無理な生き方なんじゃないか」
「特別な人たちだけがたどり着ける世界なんじゃないか」
こんなふうに思ってしまう人も少なくないはず。
そこで、新しい時代の到来を感じつつも踏み出し切れないR25世代のモヤモヤを、編集長の渡辺がはあちゅうさん本人にぶつけてきました。
ブレイクするには無理しないといけないんじゃない?
渡辺
はあちゅうさん、今日はよろしくお願いします。「自分を仕事にする」というのは個人的にも気になるテーマです。
はあちゅう
何でも聞いてください。
渡辺
まず、「自分を仕事にしたい」と思っている人たちって、はじめは無理をしてでもブレイクするきっかけをつくらなければいけないんじゃないかと思っている気がします。
はあちゅう
みんなそう思いますよね。でも私は、無理をしないでたどり着けるのが「自分を仕事にする生き方」だと思ってます。
無理をしないということは、「ありのままの自分がそのまま仕事になる」ということです。それはすなわち、自分の人生を振り返ったときに「ココとココがつながってる」とか「ぜんぶ必要だったんだ」って思える生き方。
渡辺
それは、はあちゅうさんの場合でいうと?
はあちゅう
私もまわりから見ればわかりやすいブレイクポイント(「クリスマスまでに彼氏を作る」ブログ)があったかもしれないですけど、そもそも小学生のときからずっと日記を書いていて、ブログというのはそれがネットに移っただけだと思っています。
イケダハヤトさんだって、昔からネットや書くことが好きでたくさんのWebサイトをつくって運営していた経験があったり、いまの活躍のウラにはそういう“積み重ね”があるんですよね。
それはその人が世に出てきたタイミングでは見えづらい部分なんですけど。
渡辺
なるほど。いま自分を仕事にできている人たちは、そういう人生の積み重ねが効いている領域で活躍しているということですね。
では逆に、その積み重ねがないところで山っ気だけで勝負しようとしてもうまくいかないということでしょうか?
はあちゅう
そうですね。ただ“有名になりたい”という動機だけでやっても難しいと思います。自分のいまの結果はすべてこれまでの土台のうえにあって、どこが抜けても完成しなかったはずなんです。
だから、「自分を仕事にする生き方」というのは“無理をしてたどり着くもの”ではなく、“継続していれば自然とたどり着けるもの”だと思ってほしいですね。
“好き”だけじゃダメなんじゃない? 差別化しないといけないんじゃない?
渡辺
でもやっぱり自分を仕事にしようと思ったら、ただ好きなことをやるだけでもダメで、「これが仕事になるかどうか」は意識しないといけないですよね?
はあちゅう
いや、しなくていいです。
私は、それは「いつか誰かが考えてくれるもの」だと思ってます。自分が本当に好きなことを継続していれば、ビジネスにするのが上手な人が現れて、勝手に道をつくってくれるんですよ。
たとえば、私はいまnoteで毎月の固定収入を得てるんですけど、その仕組み自体は私がつくったものではないんですよね。たまたま新しい有料課金のプラットフォームができて、そこに自分がいままでやってきたことがハマった結果です。
インスタグラマーだって、ただ自分の日常を投稿しているインスタグラムが仕事になるなんて、はじめは誰も思わなかったと思います。
はじめる前から「これ需要あるかな?」と考えすぎたら、何も踏み出せなくなってしまいます。
はあちゅう
あと、「お金になりそうだからはじめる」という考え方は、新しいものを生まないんです。
だから私は、需要の有無にとらわれずにやりたいことを続けていくのが「自分が仕事になる生き方」につながると思っています。
渡辺
なるほど。でも、「まわりと差別化できているかどうか」を考える必要はありますよね?
はあちゅう
それも意識しなくていいです。差別化というのは、いつか見えてくるものなので。
私は、誰かのマネをしていても漏れてしまうものがその人の個性だと思っています。日本語だって、はじめは誰も知らないじゃないですか。そこから同じように言葉を習っても、話し方や言葉の使い方に人となりや個性が出てくる。
それと同じで、仕事のやり方や趣味に関しても、気づかないうちに自分の個性は出てくるはずなんです。
渡辺
ユーチューバーとかはまさにそんなイメージかもしれません。
ある程度(動画の)テンプレート的な表現手法が確立されたうえで、そこから分岐してさまざま個性が生まれているというか。
はあちゅう
そうですね。マネをしていても次第に「ココはこうしたい」というのが出てくるはずなので、それが個性なんだと思います。
はじめは手を広げすぎないほうがいいんじゃない?
渡辺
いまはあちゅうさんはグルメの仕事などもしていますが、「はじめは手を広げすぎず、1つのことに集中すべき」ということはないんでしょうか?
まずは何かで突き抜けないと、横に広げていくことも難しいのではないかと思うんですが。
はあちゅう
それ(突き抜けないと広がらない)はそうだと思います。ただ、私はもともとグルメに興味があって、昔からずっとブログに書いたり、発信したりしていました。
当時はそれが注目されていたわけではなかったと思うんですが、何かひとつが突き抜けると、ほかに手を出していたものもそこにうまく絡められるようになるんです。
なので、“はじめからたくさん耕しておく”というのはけっこう大事です。
渡辺
なるほど。じゃあ必ずしも一本に絞る必要はなくて、興味があることであればたくさんの種をまいて継続していくことが大切なんですね。
仕事のオファーも選り好みせずに、いろいろやってみたほうがいいんでしょうか?
はあちゅう
私は、やったことがない仕事のオファーに関しても、まず「もしかしたらこの仕事が自分の才能を引き伸ばしてくれるかもしれない」って思うようにしてます。
もちろん、やってみてダメなこともあります。私もコメンテーターをやって自分には向いてないことがわかりましたけど、それでもテレビの世界を知ることはできたし、人とのつながりもたくさんできました。
だから私は、やらないで判断を下してしまう人は学ぶ機会を逃していると思いますね。
本当に自分が好きなことを見つけるのって難しくない?
渡辺
なるほど。でもいざ「自分を仕事にしたい」と思っても、「自分が本当に好きなことってなんだろう?」と悩んでしまう人もいるんじゃないかと思うんです。
はあちゅう
それでいうと、私は「嫌いなことを克服する」というのも自分を仕事にする生き方になると思っています。
私の友人でダイエットコーチをしている人がいるんですけど、彼女はもともとすごく太っていて、そこから一念発起して1年で20キロ痩せたんです。
そのときに痩せ方を必死に研究した経験があるからこそ、それをいま人に教えることができるし、仕事にすることもできています。
渡辺
はあちゅうさんも“嫌い”を仕事にしている面があるんでしょうか?
はあちゅう
そうですね。私も批判されたらまともに傷つくタイプだし、ぜんぜん強い女じゃないんです。
でも“強い女になりたい弱い女”だからこそ、「どうすれば強くなれるんだろう」というのを日々考えていて、「それをこうやって克服しました」というのをブログや本で伝えています。
だから、“好き”だけじゃなくて“嫌い”もひとつの才能なんだよっていうことを伝えたいんですよね。そこまで含めて、自分が丸ごと仕事になるんだよって。
正直、「この人は厳しそうだな…」っていう人もいるんじゃない?
渡辺
でも正直なところ、好きなことをやっているし行動力もあるけど、「この人は自分を仕事にするのは難しそうだな」という人もいるんじゃないですか?
はあちゅう
夢が定まっていない人は難しいですね。
それ(夢)がなくて興味本位であれこれやってるけど、どれもしっくりこないみたいな人。そういう人はまだ試行錯誤期で、もうちょっと先に到達したいイメージを持たないといけないと思います。
渡辺
本質ですね。痛いところを突かれたと感じる読者もいるかもしれません。
はあちゅう
あとは、自分で意思決定するのが嫌いな人。
自分で夢を見つけてそれに向かって進んでいくためには、そこに至るまでのすべてを自分で決めていかなければならないんです。
会社員だったら、朝起きて会社へ行くまでは特に頭を動かさなくてもいいじゃないですか。でもフリーランスになったら、朝起きて「まず何しよう?」っていうところから1日がはじまります。誰かに言われたことをやるほうが楽で、こういう生活が性に合わない人もいると思います。
そういう人がこの本を読んで「自分を仕事にしたい」と思っても、辛くなってしまうかもしれませんね。
渡辺
「意思決定のしんどさ」というのは、当事者じゃない人にはあまり見えていない部分かもしれないですね。
はあちゅう
そうですね。だから、「自分を仕事にする」というのはけっして楽なことではないんです。
渡辺
ちなみに、以前田端信太郎さんがこんなツイートをして議論を呼びましたが、はあちゅうさんもこの意見には共感しますか?
はあちゅう
たしかに、「自分をメディアにしたい」とか「まわりを巻き込みたい」という気持ちがあるのにフォロワーが1000人もいないというのはかなり厳しいと思うんですけど、その人に10万フォロワーを持つ親友がいれば、頼んですぐに拡散してもらえますよね。
私は、そういう目に見えないつながりも大事だと思います。
まだ時代がそこを評価するところまで追いついてないんですけど、これからはそういった部分も含めた信用や影響力が可視化される時代が来る気がします。
批判や厳しい意見を無視しちゃいけないんじゃない?
渡辺
「自分を仕事にする」という生き方を突き詰めると、必然的に批判に晒されることも多くなると思います。
はあちゅうさんは批判的な人と距離を置くことの重要性も説いていますが、一方で「厳しく言ってくれる人の存在も大事」という価値観もあると思います。
その線引きなどはどう考えていますか?
はあちゅう
愛がない人の言葉は聞かなくていいと思います。
渡辺
なるほど。すごいしっくりきました。
はあちゅう
たとえば家族の言葉であれば、どんなに厳しい内容でも聞こうとしますよね? でも、いつも意地悪なことを言ってくる人のことは聞かなくていいです。
衰退していく業界の人たちが、自分の立場を守るために言っていることもありますから。
そういう人たちの言葉を真に受けていると、自分のやろうとしていることを見失ったり、間違った方向に行ったりしてしまうことがあるんですよね。
渡辺
自分も過去、愛がない人の言葉を必死に受け止めようとして、一向に前に進まない経験をしたことがありました。
はあちゅう
特にSNS上で飛んでくる言葉なんて、「批判目的の批判」が大半なんですよね。それを心得てないと苦しくなってしまいます。
みんなに好かれようとすると、総合ポータルサイトみたいになっていくじゃないですか。なんでもあるけどなんにもない、みたいな。
だから、「優先すべきなのはあくまでも自分の意見なんだ」という強い気持ちを持っていないといけないと思います。
自己顕示欲が強い人だって思われたら恥ずかしくない?
渡辺
SNSがこれだけ浸透して個人の可能性が広がっている時代ですから、自分を発信していくことに興味がある人って、じつは潜在的にはたくさんいるんじゃないかと思っていて。
でもやっぱり、自己顕示欲が強い人だと思われたくないという気持ちもあるじゃないですか。それが原因で(発信に)億劫になってる人も多いんじゃないかなと。
そういう人たちに何かアドバイスはありますか?
はあちゅう
それはもう、開き直るしかないですよね。
自分のこれからの人生で実現したいことと、まわりにそう思われるというマイナスを天秤にかけてみる。そうしたら、絶対に自分の人生の方が大事なはずなんです。
そこで他人の目を気にして生きていたら、何をしていても中途半端になって、突き抜けることはできないと思います。
渡辺
そうですね…
はあちゅう
あとは、自己顕示欲が強い人たちと一緒にいることですね。「結婚しなよ」ってまわりが言い出すと焦りはじめるみたいに、人間はまわりに染まっていくので。
渡辺
それ、すごく大事ですよね。
はあちゅう
自己顕示欲を出さないことを良しとする人たちの中にいると、自分のそういう欲求って悪いものなのかなって思っちゃうんですけど、自己顕示欲を持つことって、本来まったく悪いものではないじゃないですか。
それがモチベーションになったりするわけだし。
渡辺
自分もふだん積極的に発信するタイプなんですけど、「渡辺さんって、しょっちゅうSNSに投稿してますよね」とか言われると、やっぱり「ちょっと控えようかな…」と思ってしまうところはあります。
はあちゅう
インフルエンサーの中に入ったら、絶対に上に引き上げられますよ。
だから、発信したい気持ちがあるのに億劫になっている人たちは、いる場所が間違ってるんだと思います。
はあちゅう
あと、このあいだ心理カウンセリングを受けたときに先生から聞いたんですけど、身体の不調や心の不調には、承認欲求が満たされてるかどうかが大きく関わっているそうです。親の愛が足りなかったり世間から虐げられたりしていると、よくない行動を起こしてしまったり。
だから、自己顕示欲や承認欲求をちゃんと自分で満たせる人になるべきですよね。
「自己顕示欲を出すことは恥ずかしい」というのはひと昔前の考え方だし、むしろこれからは自分の自己顕示欲に対して健全に向き合える人の方が活躍すると思います。
渡辺
なるほど。なんか背中を押された気がしました。
でも結局、「自分を仕事にする」なんて会社員には関係なくない?
渡辺
最後の質問になりますが、「自分を仕事にする」というのはわれわれ会社員にはあまり関係のないことでしょうか?
はあちゅう
いえ。そもそもこの本は、「会社を辞めよう」ということを言いたいわけではありません。
私が定義する「自分を仕事にする」というのは、主体性をもって人生を生きていくことです。
渡辺
会社員でも自分を仕事にしたほうがプラスが大きいですか?
はあちゅう
絶対にそうだと思います。
たとえば、飲み会の幹事をやるとたくさんのことを学ぶと思うんですよね。「このエリアの飲食店の予算はこれぐらいなんだ」とか「この人ってなかなか予定調整してくれないな」とか、いろいろなことが見えてくる。
もちろんすごく大変なんですけど、それをきっかけにつながりができて自分が人脈のハブになれたり、信頼してもらえるようになったりする。
渡辺
たしかにそうですね。
はあちゅう
でもなんとなく参加してる人って、幹事の苦労への想像力が及ばなくて、すぐ愚痴を言ったりするじゃないですか。
そういう人たちは、自分でも自覚がないうちに勉強する機会を失ってると思うんです。
はあちゅう
あとは、“自分”という存在を意識したほうが、仕事に喜びややりがいを感じられるようになりますよね。
渡辺
というと?
はあちゅう
主体的に仕事をしていると、自分がお客さんと直接つながる瞬間があるはずです。会社に対してだけでなく、個人に対しての「ありがとう」がもらえるようになってくる。
そうなると、仕事はすごい楽しくなると思います。
この取材だって、以前一緒にnoteの共同マガジンをやっていた渡辺さんから依頼が来たので、そのつながりで受けているという面が大きいですし。個人の信頼ベースで仕事ができると、物事が早く進みますよね。
渡辺
ありがとうございます。僕も最近、まさにそれを実感しています。
最後までちょっと意地悪(?)な質問をしてしまいましたが、「自分を仕事にしたい」と思っている人たちにとって、金言だらけのインタビューになったと思います。
お忙しい中取材にご協力いただき、ありがとうございました!
〈取材・文=渡辺将基(新R25編集長)/撮影=長谷英史〉
今回のインタビューの題材となったはあちゅうさんの本「『自分』を仕事にする生き方」は、R25世代が“個人の時代”を生き抜くためのバイブル。小手先のノウハウではなく、僕らの“はじめの一歩”を後押ししてくれる本質的な言葉たちが詰まっています。
取材協力/参照資料
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